ヒューヒュー ゼイゼイ、咳、呼吸困難といった症状を繰り返す疾患です。

気管支の周りの筋肉が収縮して細くなって、気管支の粘膜が腫れて痰が大量にたまります。

症状が強いときには鼻翼呼吸、肩呼吸がみられます。

症状がよく似た病気としては気管支炎、急性細気管支炎、喘息性気管支炎、先天性喘鳴、気管内異物などがありますが、症状が夜間、明け方が多く、家系にアレルギー性疾患の人がおり、喘鳴、呼吸困難を2回以上繰り返すときは喘息を疑います。また、かぜ症状と言われて治療を受けても10日以上ゼロゼロ、ヒューヒューが続くときは注意しましょう。喘息性気管支炎はゼイゼイはありますが呼吸困難はないかあっても軽度です。乳児は相対的に痰が多く、のど、気管、気管支が比較的細いのでよくゼイゼイ ゴロゴロとなることが多く、機嫌が良ければ心配ない場合が多いです。

発作を早く見つける
喘息発作が軽いうちに気づいて、早めに治療をはじめれば早く楽になります。なれないうちは、どんな状態が喘息なのかよくわからないでしょうが、病院に行くたびに先生に教えてもらって、発作を早く見つけられるようになってください。
お母さんは主治医です 。
お手伝いします

忍耐強く
喘息とは長いおつきあいです。発作が続いてもがっかりせず、発作がしばらくなくても油断せずに、根気よく治療していきましょう。

喘息をおこさない体をつくる

喘息の発作を止める治療はもちろん大切ですが、発作がないときに発作の予防をしたり体をきたえることはもっと大切です。指示されたとおりに定期的に受診しましょう。


喘息は治りますか?
 
最終的には最低2-3年以上経過した時点で診断します。

適切な治療を根気よく続ければ、小児の喘息の大半はおそくとも中学に入るころまでに治ります。しかし、その場かぎりの治療ですませていると、いつまでも治りません。また、おかあさんが自分だけの判断でくすりをやめたり、いろんなくすりをやたらに飲ませていては、治らないどころか、副作用が出ることもあります。何でも相談しながら希望をもって根気よくがんばりましょう。

小児気管支喘息の治療目標
スポーツを含め日常生活を普通に行う
昼夜を通じて症状がない

β2刺激剤の屯用が減少または必要がない
校を欠席しない

肺機能がほぼ正常
ークフローが安定している

小児喘息の急性発作の程度(小児気管支喘息治療管理ガイドライン2000)

喘息発作は 小発作 中発作 大発作 呼吸不全に分けられています。 症状 遊び 睡眠  機嫌 食事などをみながら発作の程度を考えてください。 SpO2とは酸素飽和度で肺での酸素化を表します。気管支の狭窄の程度が強いと低下し酸素が必要なことがあります。ピークフローは気道の閉塞を表し、小児では6歳以上訓練すれば4歳以上で可能です。ピークフローは適切な治療管理に役立ちます。

症状 遊び 睡眠 機嫌(会話) 食事 SpO2 ピークフロー 1秒量 学童以上
小発作 軽い喘鳴がある。
軽い陥没呼吸を伴うこともある。
昔通 普通 普通(普通に話す) 普通 96%以上 60%以上であることが多い
中発作 明らかな喘鳴と陥没呼吸を認め,呼吸困難がある。 やや困難 時々目を覚ます やや不良(話しかければ返事をする) やや不良 92〜95% 30〜60%であることが多い
大発作 著明な喘鳴,呼吸困難趨座呼吸を呈し,ときにチアノーゼを認める。 不能または それに近い 不能または それに近い 不良(話しかけても返事が出来ない) 不良または それに近い 91%以下 30%以下であることが多い
呼吸不全 著明な呼吸困難、チアノーゼ、呼吸音滅弱、意識障害(興奮、意識低下、疼痛に対する反応の減弱) 不能 不能 不良 不良 90%以下 測定不能

小児喘息の急性発作に対する薬剤治療プラン

発作のタイプにより吸入、アミノフィリン点滴、ステロイド点滴などが必要です。

・気管内挿管・人工呼吸 ステツブ4
・ステロイド静注 ステロイド静注

・イソブロテレノールの持続吸入

ステツブ3
アミノフィリン静注または点滴静注       (テオフィリン血中濃度5〜15μg/ml) アミノフィリン静注または点滴静注             (テオフィリン血中濃度15μg/ml以下)          適正補正アシドーシスの矯正 ステツブ2
β2刺激薬の吸入 β2刺激薬の吸入 β2刺激薬の吸入・酸素吸入 β2刺激薬の吸入・酸素吸入 ステツブ1
小発作 中発作 大発作 呼吸不全  

入院の適応(小児気管支喘息治療管理ガイドライン2000)
大発作
中発作であっても2時間程度の外来治療で改善しないとき
中発作が前日から持続しているとき
乳幼児では、吸入手技が未熟であること、感染の合併が多いこと、急速に悪化する可能性があることなどより、早期の入院が必要となる。
肺炎、無気肺、気胸などの合併症がある場合
長期管理のステップアップにも関わらず症状が改善しない場合。


長期管理に関する薬物療法プラン

小児気管支喘息治療管理ガイドライン2000では長期の治療を計画する上で発作の回数で下記のように分けています。

間欠型

発作のない時期は、全く正常の生活を営むが、運動の際や時に季節の変わり目などに、せき込み喘鳴、呼吸困難が月に数回現れたり、あるいはしばしば、特に夜間に短時間のせき込み喘鳴が現れる。また乳幼児では夜間にたびたび断時間のせき込み喘息が現れることがある

軽症持続型

2回以上の短時間の喘鳴、軽度の呼吸困難があり、しばしば咳、喘鳴を発症する。

中等症持続型

2回以上の中発作がある。これは、時に大発作に及び、その後、症状の消失に7日以上かかることがある。従ってしばしば入院を必要とすることがある。

重症型持続型

症状が持続し、毎日の日常生活が障害される。しかも発作は、夜間しばしば増悪し、 眠れないだけでなく救急外来を訪れ入退院を繰り返す。

以上のような分類で治療を開始し改善あればランクダウン 改善なければランクアップします。

小児喘息の長期管理に関する薬物療法プラン

プレドニン経口
長期間では隔日
専門医指導の下
プレドニン経口
1週間を限度
長期入院療法
(考慮)
長期入院療法
アルデシン吸入 アルデシン吸入 アルデシン吸入 アルデシン吸入
インタール+ベネトリン
2回/日
インタール+ベネトリン
2回/日
インタール+ベネトリン
2-4回/日
インタール+ベネトリン
3-4回/日
インタール+ベネトリン
4回/日
テオドール テオドール テオドール テオドール テオドール テオドール
抗アレルギー薬
経口/インタール
抗アレルギー薬
経口/インタール
抗アレルギー薬
経口
抗アレルギー薬
経口
     
β刺激薬(屯用)
経口

吸入
β刺激薬(屯用)
経口

吸入
β刺激薬(連用)
経口

吸入
β刺激薬(連用)
経口

吸入
β刺激薬
(長期作動性)
経口
β刺激薬
(長期作動性)
経口
β刺激薬
(長期作動性)
経口
ステップ1 ステップ2 ステップ3 ステップ4 ステップ5 ステップ6 ステップ7
間欠型 軽症持続型 中等症持続型 重症型持続型

日常生活で気をつけること

喘息の原因として一番多いのは家のほこり(主成分はダニ)です。

家のほこりを少なくすることはとても大切なことです。

かびアレルギーが原因で発作をおこす子もいます。

家の中のかびを少なくするよう努力してください。

#よく掃除しましょう

掃除機でほこりを吸い取り、ぞうきんでふき取るようにしましょう。ほこりを舞いあがらせるだけの掃除は効果がありません。

#じゅうたんは、ほこりがたまりやすいので、敷かないようにしましょう

のどや鼻の刺激になるものは遠ざけましょう。

たとえば、たばこの煙、蚊取線香、花火、ペンキ、シンナー、接着剤、防虫剤など。

ペット

犬や猫の毛やフケ、小鳥の羽毛などはアレルギーの原因となることがあります。すでに飼っているのなら、せめて部屋には入れないようにしましょう。これから飼おうとしているなら我慢してください

#空調

エアコン

冷房または除湿でスイッチを入れた直後は室内を汚染させますが、最終的にカビが半数に減り全体的にカビを抑える効果があったとの報告があります。(大阪市立環境科学研)フィルターはこまめに掃除を。

暖房  空気がよごれない暖房、部屋のほこりが舞いあがらない暖房にしましょう

おすすめします

FF温風ヒーター        ●こたつ・床暖房         ●電気カーペット

●電気ストーブ          ●パネルヒーター

気をつけて使いましょう

▲床に温風がでるヒーター         ▲ガスストーブ

▲石油ストーブ                   ▲ファンヒーター

#寝室のほこりや寝具にはとくに気をつけましょう

● シーツ、毛布カバー、枕カバーなどはこまめにとりかえましょう。

● ふとんは陽にあてて干してください。

● 目に見えないフケやアカはダニの好物です。

● ソバガラ、パンヤの枕はスポンジに替えてください。
       ●羽毛ぶとんや羽毛枕は使わないほうがよいでしょう。

喘息発作がおこったら

水(イオン飲料)をコップ1〜2杯のませる

発作が出始めたらすぐに水(イオン飲料)をたくさん飲ませましょう。

ぜんそく発作では、気管が細くなる上に、痰が出てくるため、更に呼吸が苦しくなります。水分を取ることによって、痰が柔らかくなり、痰が切れやすくなります。痰が出れば(飲んでしまってもよい)、呼吸困難もだいぶ改善します。小学生以上はコップ2〜4杯くらい飲んだ方がよいでしょう。

実際に軽症の発作の場合は、水を飲むだけで随分よくなることが証明されています。ただし、あまり冷たい水はよくないかもしれません。

水を飲んだら、背中を手でポンポンとたたいてやります。この時手は、お椀を伏せたように指を丸く曲げます。こうすると痰が出やすいのです。この方法をタッピングといい、痰でむせたりしたときによく使います。

冷ました紅茶を飲ませる

紅茶に入っているカフェインには、軽い気管支拡張作用があります。紅茶が飲める人は紅茶に少しお砂糖をいれ、さまして飲ませてみて下さい。水分補給にもなります。

体を起こす(半座位)

発作が苦しくて寝ていられないことがあります。そのようなときは、横になっているより、少し体を起こした方が呼吸が楽です。ちょうど座椅子の背を45度くらいにして座った姿勢です。こうすると、横隔膜が重力に引っ張られて下がるので、息を吸いやすくなるのです。枕や布団を背中に入れるなどして、体を起こしてあげましょう。

腹式呼吸をする

こどもは普通、胸の筋肉を使って、胸(胸郭)を広げたり、せばめたりして呼吸をしています。これを「胸式呼吸」といいます。これに対して、腹筋を使ってお腹をふくらませたり、へっこませたりして、横隔膜を動かして呼吸するのを「腹式呼吸」といいます。腹筋は、胸の筋肉よりも強いため、呼吸が苦しいときには、腹式呼吸の方が楽で、疲れにくいといわれています。急にはできませんから、ふだんから練習しておくとよいでしょう。お腹に手を当てて、お腹をふくらませながら息を吸い、戻しながら息を吐きます。(30分)


夜など窓をあけたり散歩をして、外の空気を吸うと楽になることもあります。

車でドライブする

ぜんそく発作を起こして、救急病院まで車で走り、病院の受付に着いたときには、発作が軽くなっていたという経験をされた方は少なくないと思います。車でドライブしている間に発作が軽くなってしまうのです。

これは、不思議なことですが、よく見受けられます。気分が変わると、気が紛れて発作がよくなるのか、ダニのいる布団から抜け出したのがよいのか、こどもの目を覚ますことにより交感神経を刺激することが効くのか、その理由はよくわかりません。でも、一度は試してみる価値があります。

吸入器がなければ発作止めを飲んでください。

・さらに水をたくさん飲んでタンを出しましょう。

吸入器を持っていたらまず吸入をしてみてください。

おさまってもゼイゼイがわずかに残っているようなら、発作止めのくすりを飲んで発作がまた強くなるのを防いでおきます。

病院へ行くべきか?

吸入器がなく、くすりを飲んでもおさまらないとき

自宅で吸入しても効きがよくないとき、家であまりがんばりすぎるのは危険です。

吸入でおさまったあと、3時間以上たってまた息苦しくなった場合、

もう一度吸入してもよい。               翌朝受診

吸入でおさまったあと、3時間たたないうちにまた息苦しくなった場合。

                                                   早く受診を

唇の色がわるい、うとうとして呼びかけに答えない、尿や便をもらす。 
                         緊急受診


薬について

#ぜんそくの薬を使う(吸入、内服)

ゼーゼーいいだした場合、いつ薬を使ったらよいのか迷いませんか?

すぐに使った方がよいのか、それともなるべく我慢させた方がよいのか?

正解は、「すぐに使った方がよい」です。かなり前には、「我慢させても死にはしない」とか「ぜんそくは根性で治せ」とかいう人がいましたが、根性でぜんそくは治りませんし、ぜんそくで死ぬ人もまれにはいます。更に最近わかってきたのは、強い発作が起こるほど気管支の粘膜に傷がついて治りにくくなるということです。一度、傷がついてしまうと気管支がとても敏感になり、少しの刺激で、またぜんそく発作を起こしてしまうのです。傷が治るのには2〜3週間かかるといわれています。ですから、少しでも発作が軽いうちに(気管支に傷がつかないうちに)治してしまう方がよいのです。また、発作が軽い方が薬も効きやすいのです。ですから、少しでもゼーゼーいいだしたら、すぐに薬を使って下さい。

ポイント1「薬の開始は早めに!」

では、実際にどの薬をどうやって使えばよいのでしょうか?

まず、一番手っ取り早く効くのが、吸入です。吸入にもいろいろあるので、それぞれについて説明します。

<吸入薬について>

気管支拡張剤の携帯用吸入器

(メプチンエアー、メプチンキッドエアー、サルタノールなど)

これらは、発作がちょくちょく出る患者さんがもらっていらっしゃると思います。発作が軽いうちにうまく吸入できれば、かなり有効です。できるだけスペーサー(ボルマチック、エアーチャンバー等)を使用した方が、効果もよく、副作用も少なくなります。注意事項は、「一度使用したら、3時間以上あけること」と、「使用してもよくならないときには、我慢しないで病院を受診する潔さを持つこと」です。 携帯用吸入器の「乱用」による死亡事故が問題になり、最近、新聞に報道されたこともありました。この記事をご覧になって、「携帯用吸入器は怖い」とお感じになった方も多いと思います。でも、それは違います。この「乱用」というのは、薬を使いすぎて死亡したというわけではないのです。発作が強すぎて、吸入では改善しないのに、「この前は、これでよくなった」という信念(?)から、病院に行かずに吸入を繰り返し、そのうち呼吸困難に陥って死亡してしまう例が多いのです。こういう例は、母親が管理している低年齢児では少ないのですが、思春期以降の、自分で発作のコントロールをしている年齢に多いのです。ご注意下さい。

ポイント2「よくならないときは、潔く病院へ!」
  また、吸入の効果は一時的(1〜2時間)なので、内服薬も同時に使用しましょう。
ポイント3「内服薬も同時に使う!」
予防薬としての携帯用吸入器

(インタールエアロゾル、インタールインヘラー、ベコタイドなど)

これらは、いま起こっている発作には効きません。予防のために毎日定期的に行うものです。発作時に急いで吸入する必要はありません。

ネブライザーでの吸入

(インタール吸入液、メプチン吸入液、ベネトリン吸入液など)

発作がよく起こる方は、ネブライザーを購入されていることもあると思います。気管支拡張剤を入れて吸入すると、携帯用の吸入器よりもよく効きます。しかし、携帯用吸入器と同様、効果は一時的(1〜2時間)ですので、内服薬も同時に使用して下さい。重症の発作の場合は、ネブライザーでも効かないことがあります。その場合は、潔く病院を受診して下さい。

<内服薬について>

気管支拡張剤

「ぜんそく発作時に飲む薬」としてもらうのは、ほとんどこの「気管支拡張剤」です。少しでもゼーゼーしたらすぐに飲み始めて下さい。吸入と同じように、発作が軽いときの方が薬は効きやすいのです。

気管支拡張剤は、大きく二つに分かれます。一つは、テオドール、スロービット、テオロングなどの「キサンチン製剤」と呼ばれる仲間。副作用は悪心・嘔吐などの胃腸症状が多く、興奮、食欲不振、下痢、および不眠などが報告されています。もう一つは、メプチン、ホクナリン、スピロベント、アトックなどの「β刺激剤」と呼ばれる仲間です。副作用は手がふる振戦、心臓がどきどきする心悸亢進、吐き気、めまいふらつきがあります。ホクナリンテープを使用しているときは内服のβ刺激剤はやめましょう。キサンチン製剤は、よく効きますが、薬がゆっくり溶けだすように工夫されているので、飲んでから効果が出るまで2〜3時間かかります。β刺激剤は、30分くらいで効いてきますが、効果は必ずしも充分とはいえません(ただし、吸入で使用する場合は、はっきりとした効果が得られます)。これらをもらっている場合は、発作が起きたらすぐに飲んで下さい。

咳止め、去痰剤など

もし、これらの薬ももらっていれば、一緒に飲んだ方がよいでしょう。