・かゆいこと

・典型的な場所に典型的な湿疹があること
乳児期は頭、顔に始まり、体、手足に下がってきます。このときの湿疹は顔が強く、じくじくして赤い湿疹や皮膚から盛り上がった丘疹、皮膚の成分が固まった固い湿疹、粉をふいたような湿疹を認めます。それに比べて体、手足は軽度です。生後6ヵ月時に膝、肘の裏の湿疹や耳切れがあればアトピー性皮膚炎が強く疑われます。2歳ぐらいまでは湿疹が急激に悪化することがあります。
幼少時期は頚部 肘 膝の裏側に思春期は上半身に発疹が出ることが多いです。全体的には額、目や口や耳のまわり、唇、首、肘や膝の裏側更に体にでます。2才を過ぎると湿疹はざらざらしてきます。乾燥のために痒みがまして皮膚を掻き皮膚を壊していきます。季節的に良くなったり悪くなったりして関節の屈曲部、首、股などが象の皮膚のようになることがあります。砂遊びをすると指先が乾燥して硬くなったり皮膚に細かい線が入ることがあります。これはいろんなものにさわって起きる接触性皮膚炎です。

・長く続くこと(乳児では2ヶ月その他は6ヶ月以上)

の三つがあればアトピー性皮膚炎が考えられます。


脂漏性湿疹は、アトピー性皮膚炎と区別ができないことも少なくありません。

・     ステロイド軟膏をつけると良くなるがつけないと再び悪化してしてくる。
・     生後6ヶ月までに湿疹が下半身の方に広がっていく。
・     湿疹が盛り上がっている。
・     痒みが非常に強い
・     なかなか治らない脂漏性湿疹
以上の場合はアトピー性皮膚炎が疑わしいと言われています。


アレルギー検査は湿疹がひどくなければ生後6ヶ月まで待ちましょう。ひどくて離乳食を早く決定したいときは生後4ヶ月で検査し、再びその後8-10ヶ月で検査しましょう。 
アレルギー検査で異常なくてもアトピー性皮膚炎はアトピー性皮膚炎ですが、検査で異常なければ食事制限や日常生活での無駄な配慮はいりません。また、おおむね経過が良好と言われています。


治療の心がまえ

アトピー性皮膚炎を治すためには、次のような心がまえをいつまでも忘れずに!


●忍耐強く

アトピー性皮膚炎をあっという間に治すことはできません。何年も忍耐強くがんばりましょう。よくなっても手をぬかず、一時的にわるくなってもがっかりしないで。長期戦になる、と覚悟をきめましょう。しかし4−5日ぬってもよくならないときは受診してください。乳児アトピー性皮膚炎の約80%は、早ければ1才前後遅くとも3才までに改善してくると言われています。また小児のアトピー性皮膚炎の70%が小学校1年生までに症状が軽くなり、ほとんどの人が中学校を卒業する頃に治ります。

●定期的に受診
症状が変われば治療も変わっていきます。必ず定期的に受診してください。くすりだけください、という姿勢では治りません。


●自己流は失敗のもと

よくなったのでぬるのをやめた、わるくなったので市販のくすりを使った、毎日くすりを使うのはよくないと思ったので減らした、など、自分の判断で治療を変えるのは失敗のもとです。わからないことは、必ず先生に相談してください。


●よけいなお世話
親切な人が、あれがいい、これがいいと教えてくれることがあります。
ついフラフラッとなりがちですが、浮気は禁物。相談してください。


食物、環境因子、細菌・真菌、接触抗原、ストレスなどが悪化因子と言われています。

家族にアレルギー疾患の人がいればアトピー性皮膚炎になりやすいです。

アトピー性皮膚炎の人は皮脂腺から出る油が少ない、汗腺から出る水分が不足しています。


子供が朝起きたら夜間アトピーの状態を知るために

・ 機嫌がよいか(かゆがって寝なければ機嫌が悪い)
・   爪をみて爪は汚れていないか 光っていないか(かくと爪が汚れたり、光ったりし  ます)

・   下着をみましょう。かいていると汚れたり血液がついていたりします。

以上を観察して朝保湿剤を塗ってあげましょう。

アトピー性皮膚炎の合併症
皮膚では、細菌感染特に黄色ブ菌によるとびひ、ヘルペスウイルスによるカポジ水痘様発疹症、更に水いぼがあげられます。皮膚合併症があるとアトピー性皮膚炎は悪化します。

アトピー性皮膚炎重症例では目のアトピー性白内障、網膜剥離、円錐角膜などがあり、視力低下があれば眼科の先生と相談しましょう。


治療の基本はスキンケア

1刺激をブロック  2皮膚を清潔  3水分油分補給


10才までの子供の皮膚の方が老人より乾燥しています。乾燥していると、皮膚のバリアー機能が低下し異物が入りやすく、アレルギーを起こしやすくなるのです。洗浄のスキンケアの後は皮膚が乾く前に保湿のスキンケアをしてください。


洗浄のスキンケア(異常な皮膚機能の補正)
アトピー性皮膚炎の治療で一番大切なのは毎日のスキンケア(お肌の手入れ)です。汗をかいたり、よだれや食べ物が顔についたら、すぐ洗い流して軟膏をぬりましょう。入浴により皮膚の細菌群の80%が減少すると言われています。お風呂に入ったら、肌が乾ききらないうちに軟膏をぬりましょう。ぬるめのお湯で短時間の入浴に。特に夏はぬるめのお湯がよいかもしれません。30分は涼しくして汗をかかないようにしましょう。洗いすぎに注意しましょう


石けん
石けんやシャンプーを使ってもかまいませんが、そのあとよく洗い流しておくこと。とくべつな石けんを買う必要はありません。タオルやスポンジでゴシゴシこするのはやめましょう。優しく手のひらに石鹸をつけて洗ってあげましょう。


保湿のスキンケア
入浴後は皮膚が乾燥する前に保湿剤やステロイド剤などをすぐに塗ってください

かゆい!アトピー性皮膚炎はかゆい・・かゆいからかく・・かくと傷がつく・・傷がつくとよけいかゆい・・またかくという悪循環をやめないと、ますますわるくなるばかりです。そこで、

●   爪を切り、ヤスリをかけておく。
●   厚着にしない。体が温まってかゆくなったり、汗をかいて皮膚を刺激します。
●   チクチクする衣類はさける。
●   洗剤や漂白剤が残っていると、かぶれてします。すすぎの十分できる綿の肌着がよいです。
●   ねているときに暖めすぎない。
●   すこしかゆいところは冷たいタオルで冷やしたりすこしたたいてみては?
●   入浴後は上昇した皮膚温をさましてから就寝しましょう。


*  汗、温かさ、湿気がかゆみ、不快を起こします。
*  かゆみ止めのくすりを飲むこともあります。抗ヒスタミン剤は服用15−30分後に効果が現れ1時間で最大効果が得られます。

砂遊び、粘土遊びをしたら手の湿疹がひどくなりますのでよく洗って保湿剤をぬりましょう。

汗をかいたらシャワーを浴びて保湿剤を塗りましょう。

食事をしたり、おやつを食べた後は洗い流すか水、ぬるま湯に浸した柔らかい布で顔を拭き取って保湿剤を塗りましょう。よだれをふいたら保湿剤を塗りましょう。

生活指導
<衣類>

・ ウールや化学繊維による皮膚刺激がアトピー性皮膚炎を悪化させるので素肌に接しないようにしましょう。肌着は綿が一番です。
・ 特殊加工は皮膚トラブルを起こす可能性あり。シャツやズボンの型くずれを防止 洗濯による収縮やしわ防止 アイロン不要の加工 防水加工 透湿防止加工 撥水加工 防汚加工
・ ボタン、ホック、ジッパー等に使用される金属やプラスチック、ラベルへの接着剤でもアレルギー性接触性皮膚炎の報告があります。
・ 硬い詰め襟の制服は刺激性皮膚炎を起こすことがあります。
・ 吸湿性、通気性の劣る化学繊維でできた体操服は運動に伴う発汗を吸収することができず、皮膚が膨潤し刺激に対する抵抗が減弱して刺激性皮膚炎を起こしやすい。
・ 硬い素材のジーンズは運動に伴って摩擦が起こり刺激性皮膚炎を起こす。繰り返し刺激が加わると色素沈着を起こすことがある。
・ パジャマは長袖、長ズボンが良いでしょう。アレルゲンが肌に触れるのが少なくなります。
<防止ダニ用品>
・気温20-30度、湿度が70-80%以上で増えやすくフケ、アカ、毛、ホコリ、カビ、食べのものカスなどはダニの大好物です。
・防止ダニパジャマ:木綿の繊維にダニが忌避するヒノキチーオールを染みこませて皮膚を刺激しない綾織り布を作り、ダニを寄せ付けないパジャマが開発されて、有用性が確認されている。洗濯で50回まではOK。
・ 防ダニ布団:非常に密な折り方をしてダニが通り抜けないよう工夫した布で布団ができている。ある程度の効果があるが高価である点がネック。寝る部屋の寝具はすべて防ダニ布団で。
・ ダニ退治用掃除機:集塵機能が高いハイパワー。掃除機内に熱風を送り込んでダニを死滅させる機能が搭載。布団専用吸い込みブラシはハイパワーで使用しても布団に吸い付かない。
・ ダニ対策用除湿器:多くのカビは湿度60%以下では繁殖できないが、湿度が下がりすぎると皮膚が乾燥しアトピー性皮膚炎が増悪することがあるので湿度が60%前後に保てるのが望ましい。
・ ダニ防止畳:合成床でベース部分には防虫シートを組み込んだ畳がある。 
・ 防止ダニぬいぐるみ
<寝具>
・ まめに布団を干し、ほしたあと軽く掃除機をかける。寝具類の管理は喘息発作を予防する上でも非常に大事で週1回20秒/m2の時間をかけてシーツをはずして両面行いましょう。
布団を干す時間は午前10字から午後3時頃までの太陽光線の強い時間帯が適しています。片面を2時間ぐらい干したら必ず裏返して、両面を太陽光線に当てるようにしましょう。黒い布を布団にかぶせて干すと光を集めて効果がアップします。干した後に布団を強くたたくとかえってホコリを多くします。天気が悪く布団が干せないときは布団乾燥機を使うと、熱風で、ある程度ダニを退治できます。
・ 布団カバーを掛け週2回程度カバーを洗濯する。
・ そば殻の枕はやめ、毛布よりタオルケットや大判のタオルまたは綿毛布にしましょう。
・ 1年に1度は布団を丸洗いという方法もあります。
・ 湿気を予防するため押入にはすのこを引くのはいかがでしょうか
・ ベッドは汚れていないように見えても、ホコリをかぶってダニが住み着いているものです。ベッドカバーは薄手のものにして、シーツや布団カバーとともにこまめに洗いましょう。ベッドの上で遊ぶとホコリが舞い上がります。ベッドでは遊ばないように。
<家具など>
・ 本箱もほこりがたまりやすいです。できれば扉付きに
・ ソファーは布製ではなくビニールか革張りを。
・ じゅうたんはダニを蓄積するので可能な限り取り除きましょう。
・ カーテンは凸凹したものはホコリがつきやすくできれば洗いやすい木綿製にして1回/月洗濯しましょう。
・ 床と畳の選択であれば床が望ましいです。床と畳は1日1回掃除機をかけてください。少なくとも3日に1回1畳2分の時間をかけて実行することがよいとされています。
・ 床以外の掃除はまめに掃除が必要ですが、電気の傘、タンスの天板なども年に1回は徹底した拭き掃除が必要です。
・ ハンガーにかけた洋服はホコリが付きやすくタンスに入れましょう。
・ 観葉植物は葉にホコリがつきやすいです。屋外に置きましょう。
<空調>
・室内の空気汚染に気をつけましょう。エアコンは冷房または除湿でスイッチを入れた直後は室内を汚染させますが、最終的にカビが半数に減り全体的にカビを抑える効果があったとの報告があります。(大阪市立環境科学研)エアコンのフィルターは1回/週間を目安に掃除を。除湿器や空気清浄機は勧められています。
・ 暖房をしていると、温度が高くなるのでかゆみが強くなり、また皮膚が乾燥するので更にかゆくなり、人が快適と思う温度でダニの繁殖が促進されると言われています。また赤ちゃんが汗をかいていないか気をつけましょう。暖房をしているときは掃除をこまめにして、保湿剤を使用し、できれば加湿器を使いましょう。
・ 冷房は外気温より約5度低くそして直接冷房の風が当たらないようにしましょう。
<その他>
・ ペット(ねこ ウサギ ハムスターが多い)は室内で飼うのはやめましょう
・ 遊び道具 粘土 絵の具 サインペン 接着剤 溶剤などの中にも刺激物があります。また新聞雑誌などの印刷物も刺激を起こすこともあります。
・ 沐浴剤は化学成分を大量に含んでおり慎重にすべきです。
・ 砂遊びは湿疹を悪くすることがありますが砂遊びの前に軟膏を塗って長袖長ズボンを着せて遊ばせましょう。遊んだら手足をよく洗ってください。
・ 午前中は紫外線をさけ、乾燥するので風もさけ、靴下も必ずはかせましょう。
・ 髪の毛はできるだけ短くして、先端が皮膚を刺激しないようにします。
<予防接種>
・ 卵アレルギーは麻疹、おたふくかぜ、インフルエンザの予防接種時には気をつけましょう。
・ BCGについては、接種箇所に明らかなアトピー性皮膚炎がある時や、全身型の重症のアトピー性皮膚炎の時は延期しましょう。
・ ゼラチンアレルギーの方は麻疹、おたふくかぜ 日本脳炎の予防接種時は連絡してください。
・ 水痘になるとかゆみがひどくなりますので水痘の予防接種はできれば受けましょう。
<海水浴の注意>
・ 徐々に日光にあたりましょう。
・ 徐々に海水浴の時間を延ばしましょう。
・ 日中の日差しの強い時間帯はさけて午前中や夕方に海水浴をしましょう。
・ 海水浴が終わったらすぐに真水でよく洗い流し、しっかり軟膏を付けましょう。
<スキーの注意>
・ 紫外線が当たりすぎるのは皮膚を痛めます。
・ サンスクリーン剤を使用されたらいかがでしょうか。
・ スキーが終わったらスキンケアも忘れずに。
<温泉の注意>
・ 皮膚病に効くといわれる温泉がありますが刺激となって痒みが増すことも少なくありません。
・最後にぬるま湯で温泉の成分を洗い流した方が良いでしょう。
・お風呂から出たらすぐにスキンケアも忘れずに。