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■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ 2003/05/23/Fri. ■■■
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.:*:・'゜★。 シネマントロプスの百一夜物語 ☆彡
.:*:・'゜☆。 第98夜-----蒼い月の光
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モンゴル草原で体験したパオ生活は、多くの感動を与えてくれました。
何よりも強烈な印象を残したのは、草原で見た満月でした。
ちょうど先週末は十五夜。
東の空から昇る真っ赤な月は、このまま月に向かって草原を突っ切る
と、月面に届くのではないかと思うほど大きく、間近に見えました。
映画のワンシーンなどで、クレーターまで鮮明に見える巨大月とビル
群とを組み合わせた、ロマンチックでスタイリッシュな映像をよく見か
けます。
もちろん合成なのですが、私が見た月はまさしくそんな感じでした。
実際には地球と月との距離の関係で、月は出るときが一番大きく見え
るものですが…。
きっと私の驚きと感動が、月の大きさを何倍にもしたのでしょう。
夜中に天空高く上がった月は、冴えた銀盤に変わっていました。
蒼い月の光のドームの中で、私は妖しいまでの月の魅力に酔いしれた
のでした。
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【カオス・シチリア物語】(1984年度、パオロ・タヴィアーニ、
ヴィットリオ・タヴィアーニ兄弟、監督、脚本)。
シチリアの近くにあるカオス村(カオスは混沌の意味)に伝わる四つ
の物語に、プロローグ、エピローグを加え、民話的素材を詩情溢れる映
像で描いた佳作です。
心ない村の男たちに巣を壊され、温めていた卵をぶつけられ捕らえら
れた親鳥。
通りがかった男に助けられた鳥は、その首に小さな鐘をくくりつけら
れ、空に放たれます。
鐘の音を響かせて、村から村へと羽ばたき、四つの物語の世界へと誘
う親鳥…。
この鳥から見た景色、すなわち鳥瞰は、カオス村の出身者で原作者で
もある、ルイジ・ピランデッロの視点を意味しているようです。そして
このロマンチックな設定は、エピローグの伏線にもなっています。
第一話「もう一人の息子」。
アメリカに移住した息子たちに手紙を出しても、なしのつぶて。息子
たちの薄情と、我が身の不幸を嘆く母親ですが…。
実はまだ末っ子が残っていて、しかもその息子は母親思い。なのにど
うしてもその息子を愛することができません。
時代の波に翻弄された、一人の哀しい女の姿が描かれています。
第二話「月の病」。
夫のおぞましい「月の病」に脅える新妻。
昔から月光は人を狂わすこともあると言い伝えられ、狼男も月の光で
変身します。
男は赤ん坊の頃、夜も農作業に勤しむ母親に、畑の脇にほったらかし
にされ、月に魅入られてしまったのでした。
それ以来、満月になると気がおかしくなり、吠えまくるのです。
しかし本当に恐いのは、平気で夫を裏切る新妻の方だった、というブ
ラックユーモア。
月はただ、あまねくあたりを照らしているだけですが、光と影を使っ
て、人間に取り憑くイメージをうまく表現しています。
第三話「壺」。
注文した壺が割れてしまい、地主は職人に修理を命じるのですが、間
抜けな職人は、自分が中に入ったまま壺を閉じてしまい、出られなくな
ります。
横暴な地主と頑固な職人のやりとりが面白い、一種の風刺劇です。
職人が閉じこめられて幾日目かの夜。満月に誘われて集まってきた小
作人たちが、壺を囲んで踊り出します。そのコミカルなダンスが見所。
第四話「レクイエム」は、墓を要求して県庁に押し寄せる村人たちの
話です。
県庁前でストライキをしたり、長老が自分の死を賭してデモンストレ
ーションをしたり、たくましい村人たちの姿が、ユーモラスに描かれて
います。
「エピローグ」。
何十年ぶりかで故郷に帰った、原作者ルイジ・ピランデッロ。
もう誰もいない屋敷で、在りし日を懐かしんでいると、亡き母の亡霊
が現れ、二人は昔話に時を忘れます。
能楽ではよくある設定ですが、映画では居間の調度品や小物、母親の
衣裳といったディテールが楽しめます。
ルイジたち一家はその昔、亡命した父親のあとを追って、マルタ島に
移住したことがあります。
旅の途中で立ち寄った軽石の島。
兄妹たちと砂浜を走り回った記憶が、昨日のことのように蘇ります。
目の前に広がるコバルトブルーの海に向かって、白砂の山を、羽ばた
くように駆け下りる子供たち。まるで天使の降臨のようで、神々しささ
え感じます。
ニコラ・ピオヴァーニの音楽もすばらしい。
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【紅いコーリャン】(1987年度。チャン・イーモウ監督、クー・
チャンウェイ撮影)。
1920年代末の中国山東省が舞台。
ある村外れにある大きな造り酒屋の主人は、ハンセン病を患っている
50過ぎの男です。
そこに美しい娘が、身売り同然に嫁いできます。
そして嫁いで3日目。里帰りした彼女は、道中、嫁入りのときに輿を
担いだ「かつぎ屋」に襲われます。しかし女の方もまんざらでもない様
子。
女が実家から戻ってみたら、夫は殺されていました。
どうやら「かつぎ屋」の仕業らしい。男は何食わぬ顔で屋敷に乗り込
んできます。
はじめのうちはいざこざがあったのですが、男が手を加えた酒がヒッ
ト。二人は晴れて夫婦になり、一男を設け、酒屋も繁盛。幸せに暮らし
ましたとさ。
しかし、日本軍が侵攻してきたのです…。
起伏の激しいストーリー、情念的で生々しいエピソード、インパクト
の強い映像。それらを詰め込んだことによって、観るものに緊張感を強
いる結果に…。
また業の深い人間ばかり登場させた割には人間描写が稀薄で、共感し
にくいのも難点。
それではこの映画の魅力はどこか?
それは生い茂るコーリャンの緑、血の色をしたコーリャン酒の紅、そ
して恐いぐらいに冴えた月の蒼さではないでしょうか。
この作品に中間色は存在しません。
コーリャンは人間の背丈ほどもある植物で、一見、実のないトウモロ
コシ畑に似ています。
風でなびくようすは、「映像の魔術師」の異名を持つテレンス・マリ
ックの映像を彷彿とさせますが、マリックの「風」はさらさらと流れる
粒子を感じさせ、点描に似たリリシズムがあります。しかしこのコーリ
ャン畑の「風」は、目が痛くなるほど強いコントラストで、迫りくる臨
場感には強引ささえ感じます。
また、コーリャン酒、土、炎、血、夕陽…と、これだけいろんな「赤」
があるのかと驚くほど、バリエーションに富んでいます。
そして何といっても圧倒的な美しさを放っているのが月のシーンで、
「月」といえばこの映画を思い出すぐらい。
蒼い月明かりの中で、浮かび上がるアーチ型の門のシルエット。その
向こうにぽっかり浮かんだ冴えた月…。
その月の映像さえあれば、あとは何も要らないぐらいです(それでは
映画ではなくなりますが…)。
いずれにせよ、中国映画の高い芸術性を世界的に知らしめた作品であ
ることに間違いはありません。
今や中国で大女優に成長したコン・リーのデビュー作でもあります。
また、【山の郵便配達】で父親役を演じたトン・ルーチュンが、この
作品でも渋い演技を見せています。
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では、また。 シネマントロプスより…
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