月の涙をすくうように


「なぁレオンー・・・これ・・・」
「え?・・ああ。なかなか似合ってるぞ」
とは言うものの、レオンの顔は面白がっている。
本人は意識してはいないのだろうけれど、その俺を見る目。笑っているんだ。
自分は椅子に座って、ベッドの上で着替えた俺を、丸ごと飲み込みそうな目で見て。
「やっぱパジャマ乾くまでTシャツでも着てようかな・・」
「いいじゃないか、丁度よく俺がパジャマ何着も持ってたんだから」
「だけどさぁ・・」
「何か不満か?」
レオンは、怒っている訳でも、無理にこのパジャマを着せようとしている訳でもない。
なのに俺は、口をつぐんでしまうしかなかった。
「洋服で寝るのもいいけど、それって結構疲れるんだぞ?」
「え、そうなの?」
「ああ、そうか。ビットは暖かい日は下着で寝るんだったな」
くすくす笑うその表情に、侮蔑など含まれてはいない。
ただ純粋に、俺を解ってくれているだけ。
「健康的だな」
「そ、そうかぁ?」
素直に喜ぶべき所なのか、戸惑う所ではあるけれど、笑うレオンには適わない。
俺がそうさせているのなら、嬉しい。
「それでパジャマを1着しか持っていないって言うのは、分かるけどな」
「・・うん」
「でももう寒いし、何も着て寝ない訳にはいかないだろう?」
「・・・・・・うん」
レオンの言うことには、説得力が、ある。
そこまで言われたら、着るしかない。
「じゃあ、今夜だけ、これ貸して?」
「いいよ」
本当は、ちょっと、カッコ悪いなって思ってたんだ。だって、
「でも、これ俺には少し大きいよな・・」
「ん?・・・・少し、な」
このパジャマを借りて着たとき、それが引っ掛かった。
レオンが俺より背が高いのは知っていたけれど、こうも身近に体格差を感じると、
少しショックっていうか、なんか、リアルで・・。
「レオンて、肩幅あるんだな・・」
「どうしたんだ?急に」
肩にあたる部分が、俺の場合は二の腕まできている。
「腕も、脚も長いのな」
袖からは、俺の手のひらは覗きもしなくて、指の何本かが見えるだけ。
ズボンなんかは捲くってしまった。
「サイズは大き目のばかり買うから、ビットには大きくても仕方ないさ。俺だって余裕をもって
着れるくらいなんだから」
「あーあ。俺もレオンくらい体格良かったらなぁ」
「本当にどうしたんだよ、ビット」
苦笑して、レオンはベッドへ歩み寄って来た。
「あ。何だ、やけにぶかぶかに見えると思ったら・・・」
ふわりと笑みを浮かべて、俺の胸元に、手を。
「ボタン、掛け違えてるぞ」
「えっ!?」
「ビット、顎上げて」
俺が動作をするより早く、レオンの手が俺の顎を上げて、パジャマのボタンを、外しにかかっていた。
「1番上から掛け違えてるぞ?」
これじゃまるで、世話の掛かる子どもだ・・。
「いっ、いいよ、自分でやるって!」
勢いで、レオンの手を払いのけてしまった。
「あ、ごめ・・」
顔を合わせづらくて、俺は視線をそらす。
どうしたらいいかわからないんだ。
レオンといると、いつもそんな時がある。
でも。
「ビット」
レオンは。
「・・いいよ。だから、俺の方を見てくれ」
そんな俺に答えをくれる。
そっと伸ばされた腕は、俺を包み。
やわらかい声は、俺の耳元で囁く。
「このまま、脱がせたら怒るか?」
「なっ、バカっ!・・お、怒るに決まってんだろ!?」
「そうか」
答えながらも、息で笑って、俺の背には手が差し入れられている。
「ちょっ、レオンっ!」
「俺こういうの弱いのかな」
「な、何がっ」
「俺のパジャマを着ているビット」
「はぁ!?・・あっ」
とうとう俺は押し倒されて、レオンの顔と向き合う。
途端恥ずかしくなって、自分でも分かるほど耳まで赤くなっていた。
レオンの表情は、蛍光燈の明かりの影になって上手く見えない。けれど、俺の表情は、
きっと分かってしまっている。
「れ、レオン・・っ」
レオンの指先は、器用にパジャマのボタンを外していく。
その度に俺の肌は空気の冷気を感じて、だけど鼓動は早まって。
すべてのボタンを外し終えると、レオンはちらりと俺に視線をよこして、
「・・・・怒らないんだな」
「ばっ・・!」
「俺、ビットが好きだなぁ・・本当に」

――こんなこと言われたら、怒る気なんて失せてしまう。

俺にはいつも笑顔を向けてくれる。
時間の流れも止めてしまえるほど、レオンの笑顔は俺の中に強く作用する。
「ビット、嫌だったら言えよ?」
言えないこと、知ってるくせに。
「うん・・」
言えないから、俺はこうしてレオンの背に腕を回しているんだ。

着るべきパジャマは、いつのまにかベッドから落ちて。
これが本当の答えだと、俺はようやく思う。
レオンの腕の中に、いることだと。

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レオビ公国様、8000打オメデトウゴザイマス☆☆☆(^∇^)
お祝いだー!!鯛ーー!!と思いつつ書いてはみたものの(汗)トホホ、こんな話になって
しまいました・・・。よ、宜しければ・・も、もらってやって・・く、下さい・・(小声)
表の8000打ですので、表向きに・・と、お、おも、思って・・!?でも冷めた話になっちゃい
ましたぁ(−−;ビットが大人しいからでしょうか(爆)苦情もバンバン受け付けますので(ヒー!)
最近、私パジャマネタに萌えまくっていたもので、すみませぇん・・<(_ _;>
しかも秋になると「月」関連も増え・・。私事ですが、「スクウ」の掛詞が好きです(笑)
「掬う」と「救う」で。ハハハハ、聞き流してやってくださいサラリと(汗)
それでは、レオビ公国様、これからもますますのご活躍を〜!!
H13.9.24 希空 槻
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No.45の希空槻さまより、8000Hit祝いに頂きました〜!
ぐはぁっ!!槻さんのレオンってば、男前過ぎ!!!!(吐血)
そして、ビットはメロメロ気味っすか!?
いや〜!いいよ〜v超ラブラブっぷりに、思わず変な所に火が点いちゃうよ〜!!(笑)
近頃「レオンのパジャマを着るビット」が、密やかにMyブームやった事もあって、
必要以上に萌え萌えに燃えてしまいました!
くそう…相変わらずのダメ人間…いや、犬か…(苦笑)

(お庭番わんこ青竜)


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