椎名作品二次創作小説投稿広場


伊達除霊事務所・所属GSアシスタント横島除霊日誌

除霊中


投稿者名:wood
投稿日時:24/ 6/17

 

 

 深夜、都心郊外にある共同墓地。その敷地内を俺達は大声を上げながら駆け回っていた。絶賛除霊中だ。

 

 

「そっちに二体行ったぞ!!」

 

 

 雪之丞の声に俺は苛つきながら悪霊を迎え撃つ。

 

 

「ったく、ちょこまかと!」

 

 

 右手の霊手を50cm程の鉤爪に変化させて一気に振り下ろす!!

 

 霊気の形状を自在に変えれるようになった今は、剣よりも鉤爪にして使う事が多い。剣術経験の無い俺が剣を振るうより、手の延長にしてぶん回す方がやりやすい。

 

 

 バシュッ!

 

 

 二体の悪霊が霊気の爪によって引き裂かれ、水滴が蒸発するような音を立てながら消滅する。

 

 

「後どれくらいだ?」

 

 

 拡大させた霊手を元の大きさに収縮させながら、俺は雪之丞に聞いた。

 

 

「奥に何体かいるだけだ」

 

 

 やれやれと言った感じで答える雪之丞。顔に少し疲労が出てる。ちなみに除霊中だが魔装術は使わずに俺と同じ黒のコンバットスーツ(正確には対霊体用の特殊スーツなんだが面倒なんでコンバットスーツと呼んでる)姿だ。

 

 理由は簡単。使う必要のない雑魚ばかり……ただ、想定より大量にいた上にあちこち逃げ回ってくれるから倒すのに手間取っちまった。

 

 

 やたら、だだっ広い敷地内を片方が追い込んで片方が倒す鬼ごっこのような真似をしながら2時間余り……いい加減うんざりだ。

 

 体力とい言うか精神的にキツい…

 

 

「そうか……とっとと終わらしちまおう」

 

 

 一言だけ絞り出すと俺は墓地の奥まで進む。雪之丞も無言で俺の横を歩く。考えてる事は同じみたいだな……

 

 

 

 奥には三体の悪霊が漂っていた。手間取らせやがって!

 

 

「俺は左に行く。右は頼むぞ!」

 

 

「おう!」

 

 

 雪之丞の答えと同時に俺達は奴らを挟むようにして飛び掛かる!

 

 

 俺の右手にはさっきと同じ鉤爪。雪之丞は霊波刀。奴も霊気の具現が出来るようになったけど、まだ剣の形にしか出来ない。

 

 

 先に仕掛けたのは俺。右腕を振りかぶって袈裟斬りのような軌道で振り下ろす!!

 

 

 バシュッ!

 

 

 一体だけ仕留めた!

 

 残りが逃げようとした瞬間に雪之丞の霊波刀が横一閃して二体同時に仕留める!! 

 

 

 バシュッ!バシュッ!

 

 

 ……やっと終わった



 

 

 残りがいないのを確認すると一仕事終えた達成感と言うより、面倒な作業から開放された安堵感みたいなものが湧いてくる。

 

 

 

「かったりぃ作業だったな……もっと歯応えのある奴とやりてぇもんだ」 

 

 

「余り強いのは勘弁だな……」

 

 

 隣にいる戦闘狂の嘆きに適当に応じながら俺は右手の霊気を解除する。こいつと組んでから戦闘系の依頼ばかり……と言うかそれしかしてない。

 

 

 …………何にしてもこれで依頼達成だ。文珠も使わずに済んだし良しとするべきか。

 

 

 

 仕事は週に2,3回。長い時はに2週間くらい空くこともある。

  

 

 給与が時給制から歩合制に変わった事で余り空くと不安になるが、除霊代金(経費を引いた後)を完全折半出来るんでサラリーマン並には貰えてる。

 

 

 時給『255円』なんかで良く生活してたな俺……

 

 

(次の仕事は5日後か……学校行ける時に行って出席日数稼いどくか)

 

 

 

 帰り支度……っても荷物なんかねぇから雪之丞の4WD(中古)に乗りながら、明日の予定について考えていると雪之丞が口を開いた。

 

 

 

「いつまで雑魚の相手しなきゃならないんだろうなぁ?とっと次のステージに進みたいぜ」

 

 

 いつものボヤきだった。ったくこいつは……

 

 

「また、それかよ。暫くは仕方ねぇだろ……んな、メドゥーサみたいなのがポンポン来られて堪るか」

 

 

 急ぐ必要なんてないだろ。お前はただでさえ一足飛びに駆け上がってるんだ。

 

 GSとして独立するには免許を取った後しばらくは見習いとして正式なGSの下で研修を積む必要がある。

 それを雪之丞はメドゥーサ討伐の功績が認められて特例として正式なGSに認められているわけだ。

 

 その前までモグリだったのが偉い出世だぜ。俺は失効したけど……

 

 

 ま…まぁ、そのお陰で俺はこいつの下に転がり込めたんだから文句の付けようなんか無いんだけどな。

 

 とにかく駆け出したばかりなんだから無闇に危ない橋を渡る必要なんかない。

 

 こいつは強い。特別な事なんてしなくても上に行ける。ついて行くのは大変そうたが何とかするしかないだろ。

 

 

 運転しながら、まだブツブツ言ってるアイツの声を聞き流しながら俺は決意を新たにした。

  

 

 


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