椎名作品二次創作小説投稿広場

伊達除霊事務所・所属GSアシスタント横島除霊日誌

傷痕

　最近、横島さんの様子がおかしい……

　以前のように浮ついた考えなしの行動が無くなって常識的な行動をとるようになってる。
　
　…って……まぁ、それ自体はいいんだけど……何ていうのかな？皆と話す時なんとなく他人行儀というか、距離をとってるように感じるんだよね。言葉使いなんかとても堅くなってる。

　でも、本当に心配なのはたまに物凄く暗い顔して時がある。美神さんは余り気にしてないみたいだけど、前は絶対こんな事なかったよ。

　何に悩んでるのかな？
　　
　心配で理由を聞いても笑いながら『大丈夫』とか『心配ないよ』とか言って全然相手にしてくれない……

　ハァ……やっぱり私って頼りないのかなぁ…………もっと、好きなあの人の役に立ちたいのに……

　
　そう……私はあの人…………横島さんに恋心を抱いてる。

　あの人は幽霊だった私にも普通に接してくれた。人や幽霊、妖怪も差別しない彼の優しさが大好きだった。
　
　正直で思った事をすぐ言っちゃうから、それで騒ぎになる事も多いけど裏表がなくて一緒にいると凄く安心出来る。（幽霊の頃は『この人が死んで幽霊なればずっと一緒にいられる』そんな風に何度も考えちゃったな……しかも、何回か口にも出しちゃった…………本人からすれば洒落にならないだろうから、あれは反省……）
　
　そんな想いを始めて自覚したのは女の子に憑依してあの人を見た時。幽霊の私では感じる事の出来なかった胸の高鳴りを感じて思った。

　ああ、私この人が好きなんだって……
　
　それでも幽霊の私じゃ一緒になれるわけなんてない。仕方ない事だと諦めてた。
　でも、美神さんに横島さん。その他の大勢の人達の助けがあって生き返って……そして、二人の元に戻ってくる事が出来た。
　
　嬉しかった……これであの人に想いを伝える事が出来る。もう叶わない恋じゃなくなるんだって思った。

　……まぁ…………私の想いに気付いてる素振りはまるでないんだけどね……『大好き』とまで言ったのに……

　横島さん見境なくに女の人に飛び掛かる（私には全然来てくれないけど……）くせに、想い寄せてる娘の気持ちにはまるで気付かない。
　
　これは私だけに限った話じゃないけどあの人鈍すぎるよ！！！


　………………って……考えが脱線しちゃった。
　
　
　でも、今は近くにいる筈なのにあの人が前より遠くに感じられて仕方ない。体は近くにあるのに心が離れてる……
　
　そういえば話すことも少なくなってるよね……

　ここの所、仕事がある時にしか事務所に来ないし（しかも予定のギリギリに来る）、終わったらすぐに帰っちゃう。前は残ってご飯とかも食べてくれたのに……
　
　アパートもそうだなぁ……声をかけても『悪いから』って断られて全然“行けてない”…………


　………………………

　…………………………………………


　…………ひょっとして、頼りにならないんじゃなくて私避けられてるの……？

　嘘！？……どうして？！

　そんなの嫌！！　

　知らない内にあの人を怒らせるとか、傷つけるような事しちゃった？
　
　思い返してみても全然解らない。特に変わった事もなかったよね？

　根拠があるわけでもないのに、一度浮かんだ後ろ向きな考えがどんどん大きくなって不安ばかり募る……

　気のせいだよね……？

　私の考え過ぎだよね？横島さん…………

　やっぱり強引にでも話をした方がいいのかな？
　

　でも、どうしよう……それで本当に嫌われたとしたら私…………







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　……結局、その悪い考えは的中。横島さんは私達の前から居なくなってしまった。
　

　その日の出来事は今でも私の中に暗い陰を残してる。


　どうして？
　

　何がいけなかったの？
　

　横島さん何も答えてくれなかった…………