時は流れ,世は事もなし 交叉3
昼頃,芦が到着したという連絡が茂流田の元に入る。
知っているからあわてはしないが,それでも『始まった!』と緊張が高まる。
大きく深い呼吸で気を静めると,知らせてきた兵士にここに通すように命じる。さらに,呉公と義姫にここに来るよう使いを走らせる。
(自分と同じ)待っていた呉公はすぐに来るが,義姫からは夜に備え,霊力を練っているところなの行けないという知らせが入る。
「‥‥ これは珍しいこともあるものだ」と面白がる茂流田。
芦が来るとなれば,何を差し置いても現れベッタリの少女にしては初めてのこと。それだけ芦の望みをかなえることに真剣なのだろう。
ふむ‥‥ と顔を険しくする呉公,軽く不審に思う程度の茂琉田を横目に考え込む。
少女の”実力”を知るだけに日頃と違うことに深読みしてしまう。何か手を打つべきではないかと思うが,考えがまとまらない内に芦が来たので,目の前のことに集中することにする。
成功は確信しているものの,今は机上のこと。その意味で,ここからは一手の差し違いも許されず集中したい。
「お待ちしておりました」
茂流田はいつもの通りの恭しさ‥‥ というより卑屈な上目遣いで手を差し出して芦を迎える。
これまでは目の前の男の能力や容姿,纏(まと)ったオーラに圧倒されての振る舞いだが,今は意識しての演技。明日になれば目の前の男が消えると思えば,へりくだる自分も楽しめる。
「どうも」と差し出された手を握り返す芦,握手を終えると申し訳なさそうに
「こうして予定よりも早く来てしまいましたが,準備中,ご迷惑ではありませんか?」
「いえいえ,そんなことはありません‥‥」
といった実はないが潤滑油としての言葉のやり取りが続く。
それに一区切りがつくと,芦は背筋を伸ばすことで本題に入ったことを示す。
「今日,最終起動実験を行うわけですが,本当にできるのですか? 聞いていた予定より大幅な前倒しでしょう。確か”針”を仕上げる目処も立っていないということでしたし」
「そこは半島の雲行きが怪しくなったことを受け所員全員が一丸となって取り組んだ結果‥‥ と誇りたいところですが,どうやらこの”食わせ者”,ずいぶんと話を膨らませていたようです」
茂流田は『してやられた!』と冗談めかしたトーンで批難する。
それを受ける形で呉公も悪びれず
「左様,三日を三十日と‥‥ ”少し”はかり大げさに言ったわけじゃ! 最初にサバを読んでおけば,遅れて元々,早くできた分だけ手柄にできますからな」
「なるほど,それは良い手だ! 今度,こちらで期限を切れる仕事があれば使わせていただきます」
「大人のいい加減さの責は後日に問うとして,明日には我が国は圧倒的な霊的攻撃力と防御力備えた強国に生まれ変わるのです。この力を持ってすれば半島はおろか大陸をも手にすることも夢ではない。半世紀後には東アジアをまたぐ巨大な帝国が生まれることでしょう!」
後日,政府高官を招いてのお披露目で,思うままに奇跡を起こす自分を思い浮かべる茂流田,その台詞は自ずと芝居がかる。ちなみにその光景の中には芦も呉公もいない。
「その実験についてですが,気になる情報が一つ。それによれば,帝都を荒らす賊−”蝕”が”風水盤”を奪うため,今夜,ここを襲うというのです」
横浜でイギリス人が同じことを言った時には,それを誇大妄想狂の戯言と退けたのだが,そこに何の矛盾も感じていない。
「ここが襲われる‥‥ と?!」茂流田の顔から血の気が引く。
もちろん,ここが狙われているという情報に驚いたのではなく,その情報を掴まれたことに驚いたから。動揺を悟られないよう呉公に話を振る。
「大人! 奴ら‥‥ ”蝕”はどうしてここのコトを知ったのでしょうか?」
「さてな‥‥」呉公も驚きはしたが,欠片もそこは見せず
「奴らが襲った処の幾つかがここの建設に関わっておる。そこから嗅ぎつけたのではないのかな? 奴らがどこまで掴んでおるかは判らぬが,方術,仙術に通じておれば”風水盤”にどれだけの価値があるのかは知っていよう。ならば,横取りを狙ってもおかしくはあるまい」
「そんなところでしょう。それと奴らは仇敵として私の動向を見張っておりました。その線で気づかれたのかもしれません。今となっては手遅れですが,もう少し用心深く振る舞うべきであったと悔やんでいます」
「それもあり得るな。それで,その話,どれほど信じられる? 間違いのない情報なら増援の一個小隊でも引き連れてきそうなものだが?」
「言っておいて何なのですが,確証があっての話ではなく。一応は耳に入れておいて欲しいという程度なのです」
当人が半信半疑ということで,やや平静さを取り戻す茂流田,ここは所長らしく振る舞うべきと
「仮に本当だとしても無謀な奴らですな! ここには新兵器の機関砲を備えた歩兵小隊二個,それに少佐配下の(対霊的戦闘部隊)一個分隊もいるわけで,鼠賊ごときが手を出せるわけでもないのに」
「そこは信じていますが,奴らもバカではない。ここを襲う以上,何らかの成算はあるものと考えています」
「そういえば,連中には心を操る技もあると聞く。何人かがその餌食となり,内から掻き回せば,いささか手に余るかもしれん」
「(私が)懸念するのもそこ。しかし,見方を変えればそこさえ防げば,何の心配もないということにもなる」
と芦はポケットから符を出し
「何度も,“蝕”にはしてやられましたが,私も手をこまねいていたわけでありません。ここに来てようやくその対抗策を編み出すことができました」
差し出された符を手にする呉公。表裏を確かめ額にそれを当てると心機を整え,しばらく目を閉じる。
「‥‥ うむ,使えそうじゃ。霊波を介したやり取りを妨げるモノと見たが,どうかな?」
「さすが大人,もう見破るとは! 術の発動には霊波による命令が必要だと思われます。であれば,それさえ妨げれば,操るのを防げるというわけです。ここしばらく,奴らはそれを使わないので検証はできていませんが,自信はあります」
「それで,数は全員に行き渡る分はあるのかな?」
「時間がなかったので,全員分はありませんが,主なスタッフと指揮をする兵士分はあります」
芦は持ってきた書類カバンから符の束を取り出す。ここでも『忙しい中で自分は何時これを準備したのか?』という疑問はあるが,やはり気にとめない。
「人を使う立場の者が信用できるだけでもずいぶんと心強い。儂から配っておこう」
さりげなく束を自分の手に収める呉公,配るにしても効果を消してからだ。
「色々と心配していただき感謝します。警備については,今日という日,その情報がなくとも第一級警戒態勢を取らせるつもりでした。守備隊には,さらに警戒を厳とするよう命じておきます」
責任者らしくそう総括する茂流田。芦の策が事実上無駄になった以上(スケジュール調整はするにしても)計画を計画通りに進めれば良い。
「では‥‥」「ところで」と話を切り上げようとする所長の言葉を呉公が遮る。
「所長,守りを固めるということで,例の”とっておき”をやってみようと思うが,どうかのう? ちょうど芦殿もおるし,アレをしておけば,最悪の状況になったところで心配はあるまい」
‥‥ 提案の意図が読めず茂流田は言葉に詰まるが,共犯の目配せに促され
「アレをか?! 確かに,それをやれば安心だが‥‥ 実行には風水盤”の”力”があってことだろう。今すぐ(やる)となると必要な”力”をどう用意するつもりだ?」
「だから『ちょうど』と言ったのよ。儂に義姫,そして芦殿,三人が揃えば,何とか足りよう」
呉公は『どうかな?』という視線を芦に向ける。
「何をしようというのですか?」
「そこは後のお楽しみということで,今は,守りに必要とだけいっておこう。”風水盤”のためじゃ,否応はあるまい?」
「私にできることであれば,何なりと仰って下さい」と話の流れ上,断る選択肢はない。
その後,準備に時間が欲しいということでその場は解散。
茂琉田は芦に応接室で待つようにいうが,芦はそれを断り施設の警備状況を見て回ることにする。
「咄嗟に話を合わせたが,この後に及んでアレを持ち出すとは‥‥ いったい,何を企んでいる?」
芦を見送った茂流田はニヤニヤ顔の呉公に猜疑心を上乗せしてなじる。
「これも芦を確実に葬る策(て)の一つよ! それこそ,上手い口実が見当たらなければ”蝕”がここを狙っているという話を持ち出して提案しようと思っておった」
「‥‥ では,その確実な策(て)とやらを説明してもらえるかな?」
「そこも後のお楽しみということだな! そもそも,芦の始末は儂に一任しておるはず。まあ,大船に乗ったつもりで任せておけ!」
‥‥ 揶揄する言いようが面白くない茂流田。
だが,これ以上聞き出そうとしても,はぐらかされるだけなのは判っている。呉公を見送った後,所長の椅子に座り心を鎮める。
今更だが,”蝕”の首領は手の内をすべてさらけ出すつもりはなく,こちらが出し抜こうとした時に備え何枚かのカードを隠しているようだ。もちろん,こちらも裏切りに備え相応のカードを隠しているのでお互い様ではあるが。
それらを出し合って後に生き残るはどちらか‥‥
‘もちろん,俺だ! 俺に決まっている!!’
と,自分に言い聞かせる‥‥ が,そう言い聞かせるほど水平線の向こうに一欠片の黒雲を見ているような不安は拭えない。
何をするにしても土地勘は必要なので,蛍と蝶々は周辺を一回りすることにする。
‥‥ 施設の裏に回ったところで,蝶々の表情が硬くなり足が止まる。
生来の能力に依る超感覚で重なる山並みの先に普通でない”力”を感じたため。
手をかざし山の彼方を見る”妹”と同じところに意識を集中する蛍,超感覚こそないが,乱波として研ぎ澄ませてきた勘がそこに滲む異質さを認める。
二人は視線を交わし”力”のありかに向かうことにする。
裏から山々に分け入る小道を進むこと約1km。いったん上がった道が下りとなり,底になるところにある少し開けた平地。
その真ん中に立ち周囲を見渡すと,ここを囲む形で強い霊力を帯びた”楔”が何本も打ち込まれているのに気づく。
方術,魔道の類に詳しければ,それがどういう効果をもたらすものかは判るのだろうが,二人ともそこは詳しくない。しかし,それがどんなものだろうと罠に違いなく,上司に伝えなければならない。
引き返そう振り返った時,目の前に女性の姿があった。
「フィフス‥‥ ね?」蛍は高ぶる感情を押さえるためにことさら低い声で尋ねる。
頭にある二本の触覚に顔の隈取り,黒灰色で体の線がそのままの服とベスパから聞いた姿。あらたまって訊くまでもないのだが宣戦布告のようなものだ。
「そうだ,よく知っているな」とゆっくりと霊力を上げるフィフス。
”盗聴”で二人が来たのを知り,その二人ならここに気づくと思い待っていた。
「セカンド,それにフォースのオリジナル。せっかく,芦様が危険から遠ざかるように仕向けたのに,のこのこ来るとは‥‥ 本当にバカね」
過去に戻りプローブの周辺情報を集めた際にオリジナルたちの存在に気づく。
”姉”たちの霊基構造の提供者を提供前に死なせてしまうと歴史が変わるという不安もあり,できるだけオリジナルたちに関わらないようにしてきた。
ちなみに,自分を送り出した者たちが言うには,そうなったところで,時間の”慣性”により別のマトリクスで”姉”たちが造られ,同じ展開になるだけだそうだ。
”妹”の自分からすれば,”姉たち”ではない”姉たち”がいるのは十分に”分岐”なのだが,送り出した連中からはその程度の違いは無視できるらしい。
それに彼らが支持する時間理論では,時間改変への不安の多くは杞憂だと。
明らかな時間改変を試みない限り,過去を訪れた未来人は思う通りに振る舞って良い‥‥ 振る舞うべきだというコト。
過去に戻れたという事実がそのタイムトラベルも”正しい”歴史に織り込まれている証明であり,未来人の行動も”正しい”歴史の一部だとか‥‥
ご都合主義の極致だと思うが,他に依るべき考え方があるわけでもなく,つい先だって,その理論に則(のっと)りオリジナルの魂を抜くのに手を貸した。
いよいよXデーまで数日となり,”主”に三人の霊基構造体がコピーする機会はない−これまでにコピーを済ませているはず−と割り切ったから。
遠ざけられた二人が舞い戻ってきたのも”正しい”歴史なら,こちらが任務のために二人を殺しても,それが”正しい”歴史ということになる。
‘芦様が危険を知っている‥‥ ?’
と一人で面白がる相手に集中しつつも疑問が浮かぶ蛍。
が,捕らえて聞き出そう‥‥ とは考えない。
軽く構える程度の”気”でも,そこに圧倒的な差があることが判る。
恥も外聞もなく逃げるという選択すら許されそうにない。ただ,退路がないことで覚悟は決まる。帯にさした小太刀を逆手で抜き,高めた”気”を全身,そして小太刀へと送り込む。
ちらりと横を見ると相手をにらみつける蝶々,こちらも勝てない相手であろうと一歩も引くつもりはないことが分かる。
戦う構えの二人に,それが無謀で無意味な選択なのにとわざと小首を傾げて見せるフィフス,判りきった結末を形にしようと無造作に進む。
「喰らえ!」と蛍,懐に手を入れ掴み出したものをフィフスの足下に叩きつける。
どぉぉん! と小さな爆発,威力はほとんどないが煙だけはもうもうと広がる。
‘目くらまし?’とフィフス。
煙に幻覚を引き起こす成分が含まれていることに気づくが,魔族に効くはずはない。煙に紛れ逃げるのかと踏み込むが,予想に反し相手も踏み込んできた。
うっ! 思わぬ出会い頭にフィフスは反射的に身を引く。
そこにつけ入られ,小太刀の一閃を二の腕に受ける。あっさりと傷が走ったことで刃に相当な”力”−S級には届かないがA級GSとしては十分通用する−が込めていることが分かる。
手傷を負わせたことでたたみかける蛍だが,二太刀目は色合いがより濃くなり金属質の光沢を帯びた腕に止められる。
受け止めた腕を力任せに振り払うフィフス。女性的な外見からすれば桁違いの怪力で体を持って行かれる蛍だが,さらに体をひねり込んでこめかみを狙った跳び回し蹴りを放つ。
’‥‥ 何だ!’側頭部に入った蹴りのダメージでよろめくフィフス。
霊力の差からすれば,硬化しなくとも蚊が刺したほどの影響しかないはず。それが,一瞬でも意識が揺らぐダメージがあるのが理解できない。
物理的なダメージよりも精神的なショックが大きく,立ち直れないままに次々と打たれ続ける。動きの関係で硬質化できないところに攻撃が決まればさらなるダメージが来る。
何度か反撃に出るが,ことごとく空振り。焦りが重なったところにカウンター気味の蹴りを鳩尾にもらう。
’ぐっ‥‥ 私が押されるなんて’とうめき後ろに跳ぶ。
余裕をかなぐり捨て,迫る相手に霊力を全方位で衝撃波として放つ。
うっ!
発動直前に攻撃方法を察した蛍,咄嗟に横に跳ぶと十字にかざした腕で自分をカバー。そこに見えない巨大な拳に殴られたような衝撃が来るが,何とか耐える。
はぁ はぁ‥‥ 霊力を出し切ったフィフスは肩で息をする。
使った霊力の大半が無駄になるが,効果はあったようなので,さらなる消耗覚悟で霊力を目一杯チャージする。その数秒の間を牽制すべく相手を睨むが,それで蛍の後にいる蝶々に気づく。
「‥‥ あはっ! そういうことか!」とここまでの苦戦の訳に気づく。
今の攻撃で蛍は蝶々を庇っている。もちろん,肉体的に脆弱な”妹”を庇うのは”姉”の務めだろうが,どうして足手まといの少女がここに残っているのか? 本当に守りたいのなら,こちらが押されているタイミングで逃がすべきだ。それを下がらせないのは幼い少女も戦っているということ。
”蝕”から聞いた情報ではフォース・オリジナルは知性のない虫や小動物にテレパシーで働きかけ感覚を借りたり操ったりできるエスパー。
対象の知性が高ければそうしたマネはできないようだが,テレパシー系の精神波なら感覚に働きかけ(わずかではあるが)ズレや歪みをつくることはできる。
距離感や時間感覚に狂いがあると正確な攻撃ほど当たらない。防御にしても,無意識なら(霊力の節約のため)相手の攻撃が当たる直前に霊力を上げ直後に霊力を下げる形になり,そのタイミングにズレがあれば,無防備なところに一撃もらうことになる。
‘拙い!’相手の表情で手品の”タネ”が割れたことを察する蛍。
目標を切り替えたらしいフィフスにあわてて打ちかかるが,それが誘いだと気づく。
切りつけた小太刀は硬質化した掌で止められ,さらにまごついたところで腕を取られてしまう。
ニヤリ フィフスは片頬で笑う。
捕まえてしまえば感覚の歪みなど関係ない。手首のスナップだけで相手をさし上げるや,大きく振りかぶって地面に叩きつける。
ずん! 腕を掴まれたままなので十分な受け身を取れず,背中から落ちる蛍。
かろうじて後頭部は空いた腕でカバーするも意識が暗黒に沈む。
後は簡単とフィフスは勝ち誇ろうとするが,見えない“力”が意識に体当たりしてきたような衝撃を受け,一瞬,体のコントロールを失う。
‘くっ! リプレイスか!!’
リプレイスは精神感応系エスパーが使う技でエスパーと攻撃対象の意識を入れ替えることができる(厳密にはテレパシーで相手の神経中枢に割り込み,相手の思考を自分の肉体へ流し,自分の思考を相手の肉体に送り込むことで擬似的に入れ替わった形にするのだが)。“蝕”は知らないようなので,切り札として取っておいたか,あるいは,”姉”を含む自分たちの危機への火事場のバカ力がそうした形になったのか。
精神エネルギー=霊力に大きな差がなければ,奇襲もあって”入れ替え”に成功したかもしれないが,上級レベルの霊力を与えられた使い魔とエスパーであっても人間では地力に差がありすぎた。割り込もうとする思念にこちらの攻撃意思を叩き込む。
送り込まれた精神エネルギーが,まるで物理的な力であるかのように吹っ飛ぶ蝶々。一度は顔を上げるが,すぐに意識を失う。
「ふっ‥‥ 意外に手間を掛けさせたな」フィフスはゆっくりと足を上げ蛍の頭を踏む。
かかった圧力で少女は少しうめくが意識は戻らない。あと少し圧を強めれば,頭蓋を卵のように潰せる。
「‥‥ なんてな」と足を離す。
”駒”はそれなりの数はあるが,使える”駒”は少ない。この二人ならベスパたちを相手にできるだろう。
人差し指の指先を針ほどに尖らせ,初めに蛍,次いで蝶々のうなじを刺す。
数秒で目を覚ます蛍と蝶々,ごく自然な所作で跪くと,命令を待つように頭を垂れる。