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ナイトメア計画(修正版)

ナイトメア計画10


投稿者名:NOZA
投稿日時:17/ 9/12

【美神令子27】

洞窟の天井付近の空間が、裂ける。

美神の出て来いとの要求に応えたのか、それとも最初から姿を現すつもりだったのかはわからない。
その男は空間から現れると、優雅と言っても良いほど滑らかに美神からやや離れた岩の上に舞い降り、彼女を見下ろす。
自分が優位だと示すかのように。
そんな心理的な小細工は彼女には通じないこともわかっているだろう。その男はただカッコつけたかっただけかもしれない。

あらゆる物をバカにするかのような目付き。銀色の髪。詰襟の学生服。
カッコだけならおかしな男、の一言で片付けられるのに。

でもわかる・・・・・・この男はウマよりも厄介な男だ。

「はじめまして、美神令子さん。僕はーー」


【美神令子28 兵部京介1】

「はじめまして。『パンドラ』のリーダーさん」
美神は先に言った。兵部は少し驚く。
「あれ・・・・僕はGSにも知られた存在なのかな?」
・・・・・・まったく。エスパーはこんなのばっかりなのか。
「あなたねぇ・・・・・『電波ジャックがウザイ』ってみんな言ってるわよ?」
「あーあー・・・・・・そうか。僕は有名人なんだっけ・・・でも顔とかは認識にジャミングをかけているはずなんだけど?」
「私たちにそんなのが通用すると思ってないでしょ?・・・どんな組織かは強制コマーシャルで有名だしね・・・・・コマーシャルやるならもっとセンスのあるものにしなさい」
「センスはあまり必要ないんだが・・・・たとえば?」
「最低でも綺麗どころにレオタード着せて躍らせなさい」
「綺麗どころ・・・・・・紅葉とか澪とか黒巻あたりか?・・・・・」
兵部は腹を抱えて笑い出す。
「いいねそれ!スゴク嫌がられそうだ!今度命令してみるよ!!!」
ああ、コイツ人が嫌がることやらせるの好きそうだな〜〜〜
「でも、僕らは一昔前の消費者金融じゃないしね」
「ふん。限りある公共の財産である電波帯域を使ってやりたい放題だなんて。あなたたちは大したものだわ。沢山の人達が見ていることを全く自覚してないの?表現の自由とは別の問題なのに。政府が国民の税金大盤振る舞いしてデジタル化して帯域確保した過去とか知らないのでしょうね。ご立派なこと」
「あいにく犯罪者集団なのでね」
「それとあなたの名前までは知らないわ。せっかくだから教えてくれない?」
「失礼・・・僕は兵部京介。以後お見知りおきを・・・・美神令子さん」
・・・・・ま、当然こちらのことは調査済みなのだろう。

「自己紹介も終わったし・・・・・説明してくれるかしら?この一件」
「なんで?君が知る必要は無いんじゃない?」
笑い終わった兵部は美神を元の目付きで見つめる。
「君はこのまま何も知らずに無事に帰る。依頼達成して報酬を得る・・・・・それでいいじゃないか。君の信条とも合うだろ?」
そんなあたりまで調べているのか。たしかにそうだ。けれど。
「・・・・たしかに私は正義の味方なんかじゃない。事件の背景も本当はどうでもいいわ。でもね・・・・私はね、知らない誰かの手のひらの上でクレイジーダンスを披露する趣味は無いの。ましてやこんな茶番でね・・・・・・・・あなたはね、やりすぎたのよ」
「・・・・・・・・・・・教えない、と言ったら?」

「私の依頼はナイトメアの駆除と子供達の救出」

美神はスッと神通棍を構える。
「ナイトメアを操る黒幕を潰すのも、私の仕事かもしれないわ」
ビシリッ、と2人の間の空気が帯電する。
しかし兵部はニヤリと笑うと、あっさりと引き下がる。
「いいとも・・・・・・秘密にするような話じゃない。君は厄介なイレギュラーで僕個人の『計画』を滅茶苦茶にした1人だけど・・・・・君とは話したいこともある。教えてあげるよ」

「君は茶番と言ったが、この一件は最初の始まりから茶番だったんだ」
兵部は説明を始める。
「斜陽極まりない政府機関である霊能力研究分室は、秘密裏に政府上層部に1つの計画案を提出した。それが一番最初の『ナイトメア計画』。ナイトメア計画は3人のレベル7のクイーン達にコントロール下におかれたナイトメアってバケモノを取り付かせ、その能力をさらに向上させるってお題目だった・・・・・・・ 『超能力と霊能力の融合、または増幅。同質なら共振、異質なら加算による能力の増強』」
・・・・・・そんなことがうまくいくとはとても思えない。無茶苦茶だ。なぜなら同じものか違うものかすらわからない、なんだかわからないものに効果のみ都合よく期待するなんて、それは『予想』ではなく『願望』とよばなければならないものだ。

「もしレベル8や9と言ったありえない力を得られたら、大変な戦力になる。クイーンなら小国を丸ごと吹き飛ばす。ゴッテスなら小国を丸ごと地球の外に飛ばせる。エンプレスなら小国の国民まとめて操り人形、あるいはどんな情報も丸わかりだ。怖いものなどありはしない・・・」
なるほど、たしかに茶番だ・・・・・の、前に質問。
「クイーンとかゴッテスって・・・『ザ・チルドレン』?」
「ああ、そうだよ・・・・明石薫は僕らのクイーンなんだ。野上葵がゴッテスで三宮紫穂がエンプレス・・・・本当はもっと長い呼び名なんだけど省略している」
あらあら。お姫様では失礼だったかしら?

「もちろん、現実にそんなこと出来るとは思えない。人間の限界を超えている。もっともその目的は副次的なもの・・・・主目的が成功した上での余禄。そうであることを望む、ぐらいのもの。むしろ主目的を隠すためのカモフラージュさ」

兵部の目に怒りの色が浮かぶ。
「本当の目的はナイトメアによるレベル7の完全支配だ。政府上層部の一部はレベル7に対し常に恐怖を感じている。ナイトメアを利用してクイーンたちの誰かを人質にとる。あの3人は誰かを裏切ることは出来ない。誰か1人を抑えれば3人を支配することと同じだ」

大体そんなとこだろう。皆本君たちの態度からもそれはなんとなくわかった。
美神にはそこまでの情報は与えられていなかった。皆本たちも説明などしなかった。バベルの力で解決したいと思っていたのだろう。
そりゃーあの依頼主もそんな人権まるで無視なことおおっぴらに説明できないわよね。
美神は自分がナイトメアを使った悪巧みの尻拭いに使われているとある程度わかっていた。
さすがに情報屋を使っても『ナイトメア計画』とやらのことはわからなかったが・・・・・・ある程度確信したのは皆本の必死さからだった。

「だから事の始まりは・・・・『政府機関の勢力争い』さ。バベルがさぞかし羨ましかったんだろうねぇ。レベル7のクイーン達を抑えれば、霊能力研究分室は一躍重要度が増す。コトの始まりはそんなことだったのさ・・・それに飛びついた人たちがいたんだ。超能力者に恐怖する者たち。普段人権を声高に叫んでいるけど、僕らには適用されないらしい」
兵部はサラリと言う。当たり前のように。
「やつらノーマルはいつだってそうさ。そんなことはどうだっていいんだ・・・・だがね、僕らのクイーン達にあんなウマを取り付けてどーこーしようとしたことを許す気はまったく無いね」

・・・・・・ああ、この男殺る気満々だわ。
だからって美神はそれを阻止したいとかはまったく考えなかった。依頼されたことではないし、美神とは関係の無い話だ。
彼らは自分達が気がつかない間に、『パンドラの箱』を蹴っ飛ばしてそのフタを開けてしまったのだ。この『パンドラの箱』に『希望』は残されているだろうか?
箱から飛び出してきたこの男を見ると・・・『希望』は入ってはいなさそうだ・・・・

ついでに美神は考える。人間関係の構図について。
この男はクイーンのお側付きのナイトなのか。やたらと物騒なナイトだけど。
でもこのタイプのナイトってクイーンに好かれるのよね。女心は複雑だわ。
お側付きのナイトってひょっこり現れた勇者と仲が悪いものなのよね。勇者もお気の毒に。

「パンドラは対応が遅れた。なにしろ霊能力研究分室なんてまるでノーマークだったからね。気が付いたのは政府上層部が動き出してからだ。こんなことはまったく想定外の事態だった。ナイトメアなんてわけのわからない存在を使ってくるなんて・・・・・」
「人間の想像力は突拍子ないものよ。悪だくみならなおさら」
まったくだ、と兵部は同意する。

「しかしギリギリで間に合った。ナイトメアとやらは僕が支配し、閉じ込めた。クイーン達は安らかに眠ってもらっていただけ。多少変な夢を見たかもしれないけど・・・・君が調べていたのはクイーン達に直接リンクした僕の精神世界、つまりここだ。君達が暴れていたのもクイーン達の精神世界ではなく、僕特製の世界さ」
そうか、子供達の精神世界に乗り込もうとしたときの力の嵐か・・・・あれは各個撃破以外の意図もあったのか。この男の世界に飲み込まれたのか。完全に騙されていた・・・・・

「ナイトメアはここに潜ませておいた・・・・もっとも君はあの時点で何かおかしいとわかってたみたいだけど」
「確信したのはあの張り紙。あたりまえだけど・・・・・ナイトメアがあんなもの張るわけが無いじゃない」
少しやりすぎたねと兵部は笑う。

「あなたはどうやってナイトメアを支配したの?正直、ごく小規模な政府機関がそれほど高度な術式を持っていたと思えない・・・・ナイトメアに逆転されて終わりのはずなのに」
「想定外の事態だった、と言ったじゃないか。僕らにどうしていいかわからない場合、僕らはどうすると思う?」
「『ナイトメア計画』に関わった者を皆殺しにするんじゃない?」
「そうするつもりだった。けど、間に合わなかった。おそらくは反エスパー組織『普通の人々』が関わっている・・・いかにも奴らが乗りそうな話じゃないか。政府上層部にまで喰い込んでいるとはね・・・・こちらの裏をかかれた・・・・間に合わなかったのさ、僕らとしたことが!」

兵部は悔しそうに歯噛みする。皆殺しより重要らしい。怖いわねぇ。
「だが、ナイトメアは3人を眠らせ取り付いたものの、すぐに動き出さなかった。バベルの対応が良かったのか・・・・・・いや、クイーン達が無意識で抵抗したのだと思う。おかげで今度は間に合った。僕が直接クイーン達の精神に乗り込んでウマを何とかできたのさ・・・・その結果がこの状態になったわけだ」
「皆殺しが間に合わなかったからウマのほうを何とかしたってわけね?・・・・・で、もったいつけずに教えて欲しいわね。あなたが手綱を握っていたから『ザ・チルドレン』は精神攻撃を使えないウマを潰せたけど・・・・フリーな状態ではあのウマ、超能力者ではどうこう出来ない相手よ?」
「僕は助力を請うたのさ。君がウマの始末を頼まれたように、僕も緊急に専門家からナイトメアとやらをどうにかする方法を授けてもらったんだ。クイーン達に被害が及ばないようなやり方を」
兵部は胸ポケットから2枚の呪符を取り出す。
「こっちがナイトメアを制御する呪符。こっちがナイトメアすら殺せる強力な威力を持った呪符・・・・・・片方はクイーン達と君のおかげで使わないで済んだ」
兵部は制御用の呪符を片手で丸めるとポイッと捨ててしまった。もう用済みだからだ。もう1枚は胸ポケットに収める。
美神はかなりウンザリとした顔をする。
「本当は聞きたくないけど・・・・・・・・・誰の助力?」
「情報によると日本最強の呪術師・・・・・銀行の地下金庫からガメてきた金塊を机いっぱいにのせたら快く協力してくれた」
「なんで私に依頼しないのよ!!」
「奴らが協力を求めてそれを拒否した呪術師って情報を掴んだんだよ・・・・今はやめているらしいけど、かつては政府の黒い仕事もやっていたらしくてね・・・奴らへの協力を拒否した人間に僕らが協力を求める。おかしなバケモノを退治するために・・・・この流れは必然だ・・・・どうでもいいけど、ツッコミどころはソコなのか?」

・・・・・・・・・・やっぱりあの時代遅れのガングロクソ女か・・・・・
非常に腹立たしいが、あのガングロクソ女ならやってのけるだろう。

「やつらは専門家の忠告を無視したんだ。彼女は僕の依頼を聞いてすぐにこの呪符をくれた・・・『やらかすだろうと思っていたワケ』だそうだ」
・・・・あの女はいつも余計なマネをする。近いうちに決着をつけないと。

「制御用の呪符には使用期限があったけど、問題は無い。どうせあのウマは始末するつもりだったから」
あのウマの危険性を知っていたのか・・・・それともあの時代遅れのガングロに教えてもらったか。
「君もたいがい時代遅れな感じだけど?」
詰襟学生服に言われたくないわ!あと勝手に思考を読むな!!

「成り行きのなし崩し的なおかしな事態の展開だったが・・・・・・とてもおもしろい状況へと至った。天佑ってやつかな・・・・・僕はこのナイトメアを利用してやろうと思った」
兵部はスッと目を細める。

「どうせ事情を知らないバベルの奴ら・・・・・特に皆本の坊やがクイーン達の救出に乗り込んでくることは確実だ。あと、不二子さんあたりも・・・・。それも好都合だ。まとめて始末できる。 多分ヤブ医者の力で・・・・と考えていた。そうしたら精神的に廃人にしてやろう、ズタズタにね・・・・・それが僕が急遽立案した『ナイトメア計画』その2だった。だが・・・・・それを実行して本当に廃人にしてしまうと、クイーン達に僕のしでかしたことだとバレることは確実。
なにしろエンプレスがいる。どんなにカモフラージュしても本気の彼女のトレースから逃れることなんてできない」
「・・・・・・・・・・・・・」
「今この時点で僕がそんな真似をしたとバレたら、クイーン達は僕を許さない。『ナイトメア計画』その2は破棄せざるをえなかった」
美神に特に感想は無い。美神に詳しい人物関係はわからない。そうなのか、と思うだけ。
「結局のところ、大元のナイトメア計画を防いだことで満足しなければいけないようだった。しかし・・・・」
兵部は笑う。とても、とても嬉しそうに、ウキウキと。

「それじゃツマラナイじゃないか!せっかくのチャンスだ!廃人にできなくてもウマに利用価値はある!!!」

ああ・・・・・・そうかこの男・・・・・・・・
美神は頭を抱える。

イヤガラセが生きがいなのか・・・・・・・


【美神令子29 兵部京介2】

目的はわかったが、意図がわからなかった・・・・・わかるはずが無い。意図がイヤガラセだったとは。
「茶番には茶番の意図しか無い」
また思考を読んだか・・・・・たしかに真面目に考えすぎたのかもしれない。私もヤキが回ったわ。
「それが『ナイトメア計画』その3?」
「そう。僕としては不本意なのだが」
なるほど。この男の『ナイトメア計画』は順番通りちゃんと進行し続けていたわけね・・・・・
「そんなにバベルの人たちをケチョンケチョンにしたいの?」
「したい」
とても爽やかな笑顔で応える兵部。美神はバベルに同情した。

・・・・・・・本当の『ナイトメア計画』事件は私達がバベルに到着する前に終わっていた。
この男と時代遅れのガングロでロクでもない性格の悪い強欲な救いの無いあのインチキ呪術師の助力によって。


【小笠原エミ2】

・・・・・・・・・・・・・・・非常に腹立たしい思念を感じたような気がした。

なんとなくこの思念は時代遅れのボディコンでロクでもない性格の悪い強欲な救いの無いあの色情クソ女のものであるような気がした。

せっかく大儲けで良い気分だったのに・・・・・・しょせん妬みかなにかなワケ。

小笠原エミは早めに日課のあのクソ女への呪詛の言魂を投げかけておくことにした。


             <小笠原エミ GOOD END>


【美神令子30 兵部京介3】

私達が関わったのは、その深刻な事件の終わった後のこの男のしょーもない悪だくみだったのだ・・・・・・頭痛がしてきた。

「しかし想定外な事が起こりすぎた。1つはすぐに君達GSが尻拭いにやってきたこと。しかも君がね・・・だからこの一件、僕が手を打たなくても大事にはならなかった可能性が高い・・・・まぁそれはともかくとして政府の対応が早いので部下に調べさせた。さっき報告を受け取ったよ。テレパシーで」
「・・・・・・その話は興味あるわね」
「政府の偉い人の1人が関係者だったのさ。『ア号事件』の」
チッと美神は舌打ちする。その隠語は聞きたくもない。
「『ア号事件』・・・・・この事件に関しては僕らパンドラでもわからない事だらけだ・・・・しかし君が関わっていることは掴んでいる。政府部内で『最強のGS』として君の名が知られているのもこの一件のせいだ。『ア号事件』の関係者なら君に泣きつこうと思うのも当然だ。黒い仕事をやっていた呪術師から拒否された以上、この流れも必然だろう」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「せっかくだから僕にも教えてくれないか?『ア号事件』の真相を」
「・・・・・魔神が天国と地獄を入れ替えようとしたのよ」
「・・・・・君はすごいな。そんなヨタ話を真実と思い込むことが出来るなんて。自己催眠か?」
真実なんだけどなー。別に自己催眠で思考を変えてるわけではないんだけどねー
「ま、僕も興味があるしいずれ真相を暴いてやりたいと思っている」
いや〜・・・・・やめといたほうがいいと思うけど・・・・さすがに相手が相手だから・・・・
「とにかく君のせいで番狂わせだ。君らが来なければボンクラメガネだけを徹底的にからかってやるつもりだったのに・・一挙に10人だ。しかも強力なGSも含めてね・・・・君の狙い通りになったのさ・・・・・バベルのやつらを囮か弾除けか撹乱用に使うつもりだったんだろ?つまり『捨て駒』だ・・・・君はそのために彼らを連れて来た」
ニヤッと美神は笑う。
「夢の世界構築への影響は想定外だったけど」
「君もたいしたタマだよ・・・・・・集団で行動されるとすぐ世界のメッキが剥げるので君達をできるだけ分断した。その上でやっかいそうな奴をナイトメアに選ばせて夢の集中攻撃をさせた。僕には誰が危険かは君以外はよくわからないから・・・・特に目的であった皆本の坊や以外にナイトメアは君を含め3人を危険と判断して力を割いた。あとの連中は適当な幻に潰させたり幻覚を使って同士討ちを狙ったり、または砂漠にただ放置した・・・・・・気が付かない事が重要だった。気がついても突破できなければそれで良かった。悪かったと思ってる。僕とクイーン達の力を借りても薄っぺらな世界しか形成できなかったんだ。力及ばずってやつさ」

ほぼ美神の考えたとおりだった・・・・GSはただ邪魔な存在で、目的は勇者。意図はイヤガラセ。
・・・・・・まったくしょーもないことを考える。この男の着々と進行していた『ナイトメア計画』は完全な成功ではなかったが、それなりの成果を挙げたということか。まったくロクでもない。子供達を救って満足してればいいのに。
よほど性格に問題があるに違いない。それともそこまで勇者が嫌いなのか・・・・勇者も大変ねぇ。
・・・・・頭が良かったのはナイトメアじゃない。この男だ・・・・この男がいなけりゃウマの駆除なんてもっと楽だったろうに。まったくしょーもない。

「もし私達GSだけが乗り込んできたらあなたはどうしたの?」
「君達全員夢に閉じ込めてバベルの連中を待っただろうね」
やっぱり戦力の逐次投入をしなくて良かった。あのちょび髭男がいなかったら私も危なかったし。 ・・・・・ただし子供達の安全は確約されていたわけで、いずれこの男もウマを始末して撤退することになるから、眠っていても依頼は達成されたわけだ。ヒドイ目にあうのはバベルの人だけだし・・・・・そっちの方が得だったかしら?・・・・・・・・・でもそれだとGSの信用を落としちゃうわね。

「夢の攻撃は私以外に誰を選んだの?」
「君の事務所の男と狐の少女だ・・・あと僕の目的のボンクラメガネ」
シロではなかったか・・・・考えてみれば楽天的とか野生のカンとかは数値化できないものだ。ナイトメアが危険と判断できなくとも不思議ではない。タマモと違いシロ本人は強力な存在ではない。だが警戒すべきはシロだったと思うが・・・
「いいや・・・君の事務所の人たちは皆凄かったよ・・・・あの巫女少女以外はね。彼女に被害は無いよ。若干のセクハラだけだ・・・・些細なことだ。きっちり反撃していたし」

「ナイトメアもあの犬っぽい子に力を割いていたらよかったんだけど・・・まぁ僕がボンクラメガネに力を割かせちゃったからなんだけど・・・・僕の目的だったから仕方なかった。あとあの狐の少女は凄かったな。おかげでもっとからかってやりたかったメガネまで開放されてしまったし・・・僕もナイトメアとの接続を一旦切らなかったらどんなダメージを喰らっていたか・・・・彼女、ウチの組織にくれないか?」
「噛まれるわよ?」
「ウチにも似たようなモモンガがいてね。今は眠っている僕の体のボディーガードをしてて連れてきてないけどね」
「勇気があるなら、ヘッドハンティングしてみたら?」
「今度試してみるよ」
それは楽しそうだ。あの子、どんな顔をするかしらね。

「だがたいしたものだったろ?君以外のGSチームは足止めと撤退させることに成功した。僕のイヤガラセは継続するはずだった。とりあえず皆本の坊やはあのウマにボコられて無様に敗北して自信を失くす予定だったんだけどね・・・・結局、君が気がついちゃってオジャンだったわけだ・・・まぁそこそこボコられてくれたけど」
美神は肩をすくめる。
「ええ、たいしたものだった。私も実質敗北したわ・・・・あなた、話をするのを避けているわね。大きな敗因があるはずよ?私が気がついたのはあの男のせいよ。話してくれないの?ちょび髭の男のこと。バベルの・・・・・・・謎の紳士よ」


【谷崎一郎15 氷室きぬ10 梅枝ナオミ11】

谷崎が抱きついたのは腰とお尻のギリギリの境界線!
かなり黒に近い灰色の・・・・と言うか真っ黒なセクハラだった!!!

「ナオミ!!!会いたかった!!!事情はわからんが巫女姿もステキだ!!!!!」
どさくさまぎれに谷崎はサワサワと腰とお尻の境界を撫でた。手つきがオヤジぽくてイヤラシイ。 そしてむき出しの胸の黒い胸毛が巫女服に擦れてジョリジョリと音がした。

「キャャアアァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!!!!」

・・・・・・・・・・・・・・あれ?
谷崎イヤーが異常を感知する。ナオミの声ではない?

「・・・・・て・・・・てんメェェェェェェェ〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!」

谷崎イヤーがナオミの声を捕らえる・・・・・背後から。

「・・・・・・え〜〜〜〜〜〜〜〜と・・・・・・」

谷崎は恐る恐る顔を上げる。

・・・・・・・・・しまった。ナオミにとても似てたので喜びのあまりキチンとした最終確認を怠った。この子はGSチームの

冷静な分析は途中で打ち切られた。谷崎は10メートルばかり空中に浮かび上がるとそのまま地面に叩きつけられた!!!!!

「なんじゃそのカッコはぁぁぁぁぁ!!!!!おきぬちゃんにまでセクハラかぁぁぁぁぁ!!!!!!ここで死ね!!!!!!!」

サイキックで谷崎は地面に潰される!!ミシミシと肋骨が悲鳴をあげる!!

「いや!!これは勘違いだ!!断じて浮気では無いぞナオミ!!!!!」
「バカ言ってんじゃねぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!」

おきぬはショックから立ち直った。ユラリ、と谷崎に近づく。

「・・・・・・横島さんにも!横島さんにも!横島さんにも!触られたこと無いのに!!!!」

おきぬはゲシゲシと谷崎を踏みつけた!!!!
ありえなかった。これもナイトメアの仕業であろうか。まさに悪夢だ。悪夢恐ろしや。

「それにそれにそれに裸体上半身裸体胸・・・胸・・・・げ・・・・キャアアアアアアアア!!!!!!!」

これは谷崎に非があると思う。
おきぬはナオミとの約束どうり一緒に戦うことになった。ナオミの敵と。

谷崎は悶絶しながら考える!!なんでこんなことになったのだろーかと!!!
記憶の一部があやふやだ。何があったのだろうか?しかし!しかしだ!!

《・・・・ナオミとナオミそっくりな巫女少女にWで足蹴にされるのってカ・イ・カ・ン♪》


        谷崎一郎36歳。男のロマンに果てなど無い・・・・・


            <梅枝ナオミ NORMAL END>
           <氷室きぬ BAD END>
           <谷崎一郎 HAPPY END>


【美神令子31 兵部京介4】

「あの男は正真正銘ただのザコだ!!・・・・不二子さんめ!!影響を避けるためにロクでもない方法で介入を!!しかもまったくノーマークだったザコを利用するなんて!さらにあのフザケたノリはなんだよ!!滅茶苦茶だ!!!!」

クールぶっていた男が地団駄踏んで悔しがっていた。よほど番狂わせだったか。
彼にも敵は多いに違いない。不二子とは資料に名前のあったバベル側のエスパーのことか。
この男も色々あるのだろう。ネクラそーだし。恨みがましそーだし。陰険そーだし。イヤガラセ大好きそーだし。タチわるそーだし。性格悪そーだし。恨まれそーだし。いろいろありそーだし。人を信じなさそーだし。悪党そーだし。イヤミそーだし。ガキそーだし。協調性なさそーだし。裏切りそーだし。ひねくれてそーだし。かっこつけそーだし。


【蕾見不二子7】

蕾見不二子はフカフカの大きなベッドの上で幸せな睡眠を貪っていた。皆本抱き枕はもう飽きたのかベッドの下に放り出されている。

「うひゃひゃひゃひゃ・・・・・ムニャムニャ・・・・あと〜・・・〜〜ろりこん・・・・ふにゃあ・・・・・・・・・・・・・・・・あとわ〜〜〜・・・・よろしく〜〜〜〜〜〜・・・・スーーースーーーー・・・・・」

彼女がどんな夢を見ているかは、まったくわからない。

彼女はずっと、幸せに眠り続けていたのだ。


                               <蕾見不二子 HAPPY END>


【美神令子32 兵部京介5】

「・・・・すっごい失礼だな、君は」
「あら。人の思考を勝手に読むほうがよほど失礼じゃない?」
「読まれること前提で考えている君も君だ」
「で、お話はおしまいかしら?」
「だいたいね。茶番だしね」

「あともう1つ教えて・・・・・私にくだらない悪夢を見せたのはあなた?」
「いや、僕はメガネのボンクラ以外にはノータッチだ。他はウマのしわざ」

そう・・・・・・・命拾いしたわねあなた。

「しかしウマだってデタラメな悪夢なんて見せやしないだろう・・・・夢ってのはその人の根源的な恐怖や願望が現れるとも言われている・・・・君は恐怖なんて何も無さそうだからね。君が見た夢は君の願望ではないか?」

ものすごい速さで何かが兵部の頬を掠め、彼の背後の岩肌に突き刺さった!!!

「・・・・・・いささかショックだよ。僕のバリヤーがたやすく突破されるとね」

美神はさきほど皆本から返してもらった予備の神通棍を取り出す。さっきまで握っていた神通棍は兵部の後ろの岩壁に突き刺さっていた。

「おしゃべりな男はキライよ」

超能力は異常な力だ。だからこそ・・・・・彼女に打ち破れぬはずが無い。

「さすがそうでなくてはね・・・・・では本題といこうか」
「あれ・・・・今までのが本題ではなかったの?」
「君と話があると言ったじゃないか・・・・僕は解説のお兄さんとして出てきたわけではないよ」
「さっきは『早く帰れ』と言ってたじゃない」
「そう言われて素直に君が帰るのかい?」
本当にややこしい男だ・・・・・・・

「美神令子・・・・・僕らの仲間にならないか?」

兵部はあっさりと、唐突に美神に言う。
「・・・・・なんで?」
「そう遠くない未来、ノーマルとエスパーとの間で戦争が起こる。この運命は変えられない」
「『予知』?」
「そうだ。それもとびきりの」
美神は思う・・・・・・・・エスパーは予知が好きなのね。それこそ人間である証か。

「ノーマルは超能力者を憎み、殺しにやってくる。いずれ君達GSも標的になるぞ。今は超能力者ほど危険視されていないが君たちだって異常な力の持ち主なのだから・・・・君には霊能者を束ねてほしい。霊能者のクイーンになってほしいのさ」
たしかに大多数のGSは超能力者、または限りなく超能力者に近い。いざそんな戦争となったらかなりの数が超能力者にくみするだろう。その時美神はどうするのか。


「私は誰の風下にも立たない」


「その戦いのリーダーは僕ではない・・・・・僕達のクイーンだ」

「聞こえなかったかしら・・・・・私は誰の風下にも立たない」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「拒否、か」
「どう受け取ろうとも勝手だけど・・・・・私はそれだけは譲るつもりは無いわ」

「実に困ったね・・・・・・・・・敵になるかもしれない、と?」

兵部の目が怪しく光る。
美神の神通棍が青白く発光する。

「もうこの世界には君と僕しかいない。他の人間は現実世界に送り返し、残った世界もこの洞窟だけだ・・・・もう不二子さんも介入できない」
「いやらしい男。私に何をする気?」
「ハハハ・・・・気の強い女性は嫌いじゃないがいささか僕の周りには多すぎてね・・・・たいした事をしようというのではない」

兵部は1枚の呪符を再び胸ポケットから左手に取り出す・・・・使う必要の無くなったはずの、最強の呪符。

「悪魔すら殺す呪符・・・・・君にも効くのではないか?」
本当に、つくづく、あの女はロクな真似をしやがらない。

「これこそ超能力と霊能力の融合じゃないか?まさに『ナイトメア計画』だ」
美神は中段に神通棍を構え、ニッと笑った。
「あなたのこの異常な世界こそ私達のテリトリーよ。これこそ超能力と霊能力の融合、『ナイトメア計画』ではなくて?」

ここはまだ精神世界だ。しかし・・・・・
強力な異能の力同士が本気で激突したら、現実世界の自分達にも影響を与えることは疑いない。
最悪死ぬか、二度と目覚めないか、精神に異常をきたすか・・・・
特にあの呪符は危険だ・・・・・・殺る気なら、殺るしかないわね。

2人はまっすぐに睨み合う・・・・・


           
***NEXT【ナイトメア計画11 <END>】***


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