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ナイトメア計画(修正版)

ナイトメア計画9


投稿者名:NOZA
投稿日時:17/ 9/12

【美神令子18 皆本光一22】

突如このもったいつけた洞窟に転がり現れたのはネクタイを締めた背広の男。
あの美神に食ってかかった真面目そうな現場運用主任、皆本君だ。

皆本は背後にいる美神に気が付いていない。状況がよくわかっていないらしい。

感じからして、タマモの一撃のあおりを喰らったのだろう。
突然、だぁぁぁぁぁぁぁ!!!!とか叫んで怒り出す。あのちょび髭といいバベルって組織の公務員は変人ぞろいなのか?

・・・・・しかし、よくも普通人がーーー説明では彼は超能力は持っていないはずだーーー世界を乗り越えたものだ。つまりはこの状況で説明できる理由はただ1つ。

「あなたが、勇者?」

・・・・・なるほど、3人のお姫様達の現場運用主任だものね。ご招待された勇者である可能性は高い。
・・・・・・・・・・しかしこの勇者にいったいどんな用があるのかしら?やっぱり意図がわからない。

皆本は意外と冷静に美神に振り返り、逆に問うた。

「あなたは、本物ですか?」

・・・・・やっぱりなんらかの悪夢を乗り越えてきたのか。よく無事だったわね・・・見かけからは想像できないが凄いなこの人。勇者は確かにたどり着くだろうがもっとボロクソな状態かと思ってた。手を抜いたのかしら?・・・・皆本君がにわかには信じられないのも当然か。

「私は本物のGS美神令子。ナイトメアはあの扉の向こうにいる。きっと3人のお姫様も」

美神は親指で肩越しに後ろにある巨大な両開きの扉を示す。
3人のお姫様、と聞き皆本の目の色が変わった。生気が戻る。

皆本は慌てて扉に近づくとそのふざけた張り紙を見た。

・・・・・・・・・・・・・

皆本はその張り紙をひっぺがえすと引きちぎりゲシゲシと踏みにじった!

あーーーーー、間違いないな。ご招待されている勇者は彼だ。
・・・・・・・さて、これでご期待に沿えるだろう。あとはウマを叩き潰すのみだ。

「では行きましょうか、皆本主任。お姫様の救出とナイトメアを倒しに」

皆本はその美神の言葉に反対した。
「待ってください美神さん。他の仲間との合流を先にすべきではありませんか?戦力をまとめないと・・・」

皆本の言っていることは正論だ。バラバラになった力を集めたほうがよい。しかし、
「何人無事でいるかわからない。どのような状況かもわからない。目の前の敵を逃がすべきではない。逃げられると面倒。それに、私はあなたを待っていただけにすぎない。勇者さん」
勇者・・・・・からかわれているのだろうかと皆本は思った。

「ウマヅラは私が片付けるわ。あなたは助け出したお姫様を連れて脱出。OK?」
美神はスタスタと歩き出す。しかしそれを皆本が止める。

「待ってください美神さん!!・・・・・お願いがあります!僕に、ナイトメアと戦わせてください!!」

へ?と美神は振り返る。皆本はえらく真剣な顔をしている。

「僕に戦わせてください。お願いします!!!」
真剣に頭まで下げる。美神にはわけがわからない。

「なぜ?これは私の仕事。あなたが危険な目に合う必要は無いわ」

皆本はジッと美神の目を見る。

「・・・・・僕が戦って、助けてあげないといけないんです」
美神は肩をすくめる。
「あなたの気持ちをお姫様たちは喜ぶでしょう。その気持ちだけできっと充分よ。あとは専門家に任せて」
「・・・・・・・・・・・」
しかし皆本は引き下がらない。
「こんなことを言うのは美神さんにとって大変失礼だと、わかっています・・・・許してください・・・・」

「あなたは子供達をこんな目に合わせた奴らから差し向けられた人間なんです。僕はできるなら、あなたの力を借りたくない・・・・・・・!!!」

あーなるほど。それが皆本君の本心か。こんな目に、か。やっぱり考えたとおりか。おそらく依頼者のハゲ親父がナイトメアを悪用しようとして失敗、私が尻拭い・・・
なるほど、皆本君にしてみると私はさしずめ『政府高官の犬』ってところなのだろう。
私は『実験中の事故により』としか説明を受けていない。詳しく聞こうとしても拒否されたし。
・・・・・まぁ報酬がベラボーに良かったから依頼を引き受けちゃったけど。テヘ。
胡散臭いとは十分わかっていた。しかし私は正義の味方なんぞじゃない。そんな背景は重要視しない。私の依頼はシンプルだ。

「最初に話したけど、私の仕事は『ナイトメアの駆除、子供達の救出』。それ以外のことは知ったことではないし、無関係なの。それでもダメ?」
皆本はそれでも引かない。
「今回の一件を引き起こしたのも自分の判断ミスからです・・・どうかお願いします」

やれやれ、どいつもコイツもバカばかりだ・・・・1円にもならないことしなくたっていいのに。

しかし美神はまた悪い笑顔を浮かべる。
「・・・・・そうね、わかったわ。ただし!あなたが失敗しても私はその後必ずウマヅラを倒す。そして子供達を救出する。これは私の仕事。この点は譲らない。あとあなたがナイトメアを倒しても、ギャラは分けてあげないわよ?」

それこそ皆本の望むところだ。

「これは予備の神通棍。私の念を込めてあるからあなたが使ってもウマには効くわ。これは破魔札、手榴弾みたいなものよ。これは護符、あなたを守る鎧のようなもの・・・・・銃はまったく役に立たないから」

美神にしてはえらく親切だった。横島かおきぬが近くにいたら《またなんかたくらんでる・・・・》と考えたかもしれない。皆本と美神はまだ会ったばかりだ。

皆本は知識としてGSの戦い方は知っている。基本近接格闘戦だ。何とか使えるだろう・・・もっとも知識と実践がまったく違うことも理解している。けれどこれは僕がやらなくてはいけない。

「ありがとうございます・・・・どうか美神さん、僕が倒れた後は、子供達のことをよろしくお願いします」

玉砕覚悟か・・・・・・・・・この人に付き合ってる人は苦労が絶えないかもしれないなぁ。

「えーと・・・・・安心しなさい、ウマは必ずコンビーフにしてやるから」


【皆本光一23 美神令子19】

美神は威勢良く両開きの扉を押し開く。
皆本は扱いなれない神通棍を構えつつ扉の内側へと入っていく。

中はだだっ広い洞窟。日本最大の鍾乳洞、秋芳洞のようだと皆本はイメージした。
ただ、岩全体がぼんやりと光っていて結構明るい。幻想的な、ありえない洞窟。
これだけだったら結構美しい夢。でもそんな都合よくは終わらない。

その洞窟の中の少し高い岩の上にそいつはいた。間違いない・・・・あれが、ナイトメア・・・・

大きい。体長は5メートルほどか。ウマの顔をした巨人。顔が牛だったらクレタのミノタウロスのようだ。体の左半分が焼け爛れていて、グロテスクな恐怖感を煽る。
荒い息でこちらを睨みつけている。
直接この目で見てもまだ信じられないぐらいだ・・・・・でも信じざるおえない。
目の前にいるソイツは確かにバケモノだ。夢、幻なんかじゃない・・・・実在している。
戦うしかないんだ!

美神さんは僕の後ろに下がり、静観を決め込んでいる・・・・・ありがとうございます。

皆本はナイトメアへと一歩ずつ油断せず近づいていく。

僕だって軍事訓練を乗り越えてきたんだ。ムザムザとやられたりはしない!

突如ナイトメアは跳躍する!
!!!!
ナイトメアはいきなり皆本の目前に着地する!デカイ!
ナイトメアの右腕の強力な一撃が繰り出される!
皆本は神通棍で払った。
イケル!!
そう思えたのは一瞬だった。すぐさまナイトメアは左足のミドルキックを繰り出す!!
皆本は捌ききれずに蹴り飛ばされた!

《グッ・・・・・・!!!》

痛みで悲鳴を上げたくなる。まともに喰らってしまった。
致命傷か・・・と思ったがそうはならなかった。

《護符が効いてるのか!美神さん、ありがとうございます!!!》

皆本vsナイトメアの予想もしなかった死闘が始まった。


【美神令子20 皆本光一24】

まったく・・・・・今度のナイトメアは見た目が派手だ。なによあれ。特撮ヒーローものの怪人じゃあるまいし・・・・
と、皆本の後方に下がった美神は考える。

まぁ以前のナイトメアのように『なんとかじゃない?!』とか変なセリフを喋らないだけ鬱陶しくは無い。

あの左半分はタマモの一撃の結果か。皆本君はタマモに感謝するべきね。じゃなきゃ最初の一撃か二撃目で終わっていただろう。

美神は皆本の戦いぶりを観察する。
あの動きは一般人の動きではない。訓練を受けた兵士の動きだ。真面目な優男に見えるが体も鍛えこんでいる。街のチンピラあたりだったら苦も無く捻るだろう。

だが相手は悪魔ナイトメアだ。GSでない人間には美神の装備であっても戦える相手では無い。
夢の力が使えないと低級霊並みだったはずだが今回のナイトメアはイヤに怪人っぽい。
うーむ・・・・やっぱり誰かがなんかやっちゃったのかもしれない・・・・茂流田がらみだろうなぁ・・・想像に過ぎないけど肉体面の弱点を克服するとかなんとかじゃないかなぁ・・・ナイトメアに都合がいいことやっちゃうなんてバカなんじゃないかしら・・・・おかげで『皆本君は』さらによけいな苦戦を強いられることになる。
しかし精神攻撃が一通り終わったからって肉弾戦とは・・・・・
本当に子供向け特撮戦隊モノみたいな展開だ。男の子が好きそうな・・・・戦い終わった後に皆本君とナイトメアの間に友情が生まれたりしなきゃいいけど・・・・

しかし皆本君はありがたい。これで大体ナイトメアのことは理解できた。また役に立ってもらえた。

それはともかくとして・・・・・・

美神は皆本をジーーーーーと観察する。

もうとっくにやられていてもいいんだけどなぁ・・・・攻撃喰らい過ぎてるし・・・・・護符の力じゃないわね、アレ・・・・・

美神はくたびれたように洞窟の天井を仰ぎ見た。

タマにいるのよねー。おかしな存在に好かれる男って・・・・しかも自覚して無いんだろうなぁ。 ウチの事務所にも元祖みたいな男がいるし。イヤだなぁ。そんな人が身近に2人もいて欲しくは無い。この一件が終わったらあの皆本君とやらにはもう会いたくないものだ。
あ、また一撃喰らった。さすがに守りきれないのか、力が存分に使えない事情があるのか。
ま、男だったら守護霊に頼らずに戦いなさい。
しっかし今のは綺麗に入っちゃったな。肋骨にヒビでも入ったのではないだろうか?

よく頑張るなぁ、悪魔相手に・・・・あ、よく考えたら彼GS免許持ってないんだった・・・・
まぁ黙っていれば誰にもわからないでしょう。
それよりも皆本君が戦っていられる間に・・・・

美神は注意深く洞窟内を見渡す。間違いなくここの洞窟だ・・・・美神は洞窟の天井付近の一角にピタリと目を止める。ちょうど皆本とナイトメアが死闘を繰り広げてるあたりの空間の真上だ。

《あった・・・・薄皮一枚で違う世界。そこが特製ベットなのかしらね・・・・皆本君、あなたの犠牲は無駄では無いわ!!》

横島とおきぬが近くにいたら相変わらずヒドイなーと思ったに違いない。

美神は神通棍を握りなおす。さすがに皆本君も限界か・・・・潮時だ。
よく戦ったと思う。責任を感じるのはそのあたりでいい。人の『悪意』は簡単に防げるものではない。あなたが悪いわけではない。

しかしその美神を拒否するように、皆本はまだ立ち上がる。


【皆本光一25 美神令子21】

ゲフッと皆本は胃液を吐く。少量の血が混じる。

無様だ。なにがイケルだ・・・・・まるで歯なんて立たない。
なんとか戦えていたのは美神さんが貸してくれた力のおかげだ。

目の前にナイトメアは悠然と立っている。
ウマのくせに、小動物をいたぶるのが大好きな肉食獣のように。
余裕をかまして皆本が立ち上がってくるのを待っている。
何とか立ち上がる。神通棍で殴りかかる。簡単に蹴り飛ばされる。洞窟の壁にしたたか背中を打ち付ける。

クソ!・・・・クソ!・・・・クソ!・・・・クソ!・・・・

僕はいつだってこうだ。いつだって、みんなと戦いたいのに力が無い!!いつもいつも歯噛みをするんだ!!
わかっている!それでも僕がいるべきだとわかっている!
戦うことだけが力じゃない、僕だってみんなの役に立てることはわかっている!!

でも、でも、戦う力が欲しい!!みんなを助ける力が欲しい!!
漫画やゲームがうらやましい!!こんな時はすごい力に目覚めるんだろ?!
ショックで超能力に目覚めちゃったりするんだろ?!超人になれるんだろ?!
それでこのウマの化け物を倒すんだ!!倒すんだ!!倒すんだ!!倒すんだ!!
子供達を助けて帰るんだ!僕たちの居場所に!帰るんだ!!帰らないと!!!

なぜ僕には力が無い!!!超能力者をうらやましいとは思わない!妬ましくなんて思わない!

だけどうらやましいと思う!その力がひどくうらやましい!!
コイツを倒したい!子供達をひどい目にあわせた奴らを許せない!!

神様!!力をください!!この僕に力をください!!!!

意識が遠のく。涙が溢れる。なんてザマだ。今まで子供達に戦わせてきて、僕自身はなんてザマなんだ・・・・

《あなたが失敗しても私はその後必ずウマヅラを倒す。そして子供達を救出する》

唐突に、皆本は美神の言葉を思い出す。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・僕は救いの無い馬鹿野郎だ。

皆本、お前は本当にどうしようもない。美神さんは助けると言ったんだ。それを僕はなんと言った?
差し向けられた人間と言った、力を借りたくないと言った!
GSにとってはただの仕事なのかもしれない。つまらない仕事に過ぎないのかもしれない。

でもハッキリと言ったんだ!子供達を助けると!!

それをお前はなんだボンクラメガネ!!!差し伸べられた手を振り払ってこのザマか!!
ただ憎しみのために!ただ自尊心のために!ただ怒りのために!やるべきことを間違いやがって!!カッコ悪い!あまりにもカッコ悪い!!

お前はロクな手助けができなくても美神さんと協力すべきだったんだ!!
何か役に立てたかもしれないのに!!まったく役に立たずここでぶっ倒れているんだ!!
しかも力が欲しいとか!うらやましいとか!なんで力が無いとか!神様助けてとか!!
僕はただ言いわけにしたいだけだ!!!責任を擦り付けたいだけだ!!!
時計の針は戻らない。もう後悔も反省も役立たずだ!!
皆本、今お前がやるべきことは何だ!力が欲しいと泣くことか!

僕が僕を殺すぞボンクラメガネ!!!!!

できることはある。力が無いだって?あまりの馬鹿さかげんに腹が立つ!何が元天才少年だ!!
お前は小学生以下だ!!
力ならある。美神さんに貸してもらった力がある。僕がやるべきことはたとえ一撃しか与えられなくとも、あのウマにダメージを与えることだ!!次に戦う美神さんが有利になるように!!!

立てよ僕!!!立てないならここで死ね!!!!!!

僕がすべきこと、望むことは何だ!!!言ってみろ皆本光一!!!!!!!!


【美神令子22 皆本光一26】

よろよろと立ち上がった皆本は神通棍を振り上げ叫んだ!!


     「子供達を返せよこの駄馬がぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!」


美神は唇の端を吊り上げて笑った。駄馬か!いやはやまったくピッタリだ。あのウマは間違いなく駄馬だ。なにせ人に害しかもたらさない。駄馬でもまだ褒め言葉だ。
しっかし皆本君は外見に似合わず熱血ね。男の子に人気がある人かもしれない。

方針変更ね!勇者は勇姿を見てもらってこそ勇者だわ。さあ!お昼寝の時間は終わりよ!!!

美神は胸元の精霊石を引きちぎり狙いをつけた天井付近に投げつける!

まっすぐ駄馬を睨みつけていた皆本に、美神の行動は気が付かなかった。


【皆本光一27 美神令子23 ザ・チルドレン1】 

突然、皆本の頭上で何かが光った!

そちらに目を奪われる。なんだ?何かが落ちてくる!あれは!!!!!

「薫!!!葵!!!紫穂!!!!!!!!」

皆本が叫ぶ!彼は慌てて自由落下してくる3人を受け止める!!眠っている!!!

しまった!!!!!!

ナイトメアは時代劇の悪役のように待ってはくれない!!巨大な右腕が襲いかかってくる!!!
皆本はとっさに自分の体を子供達の盾になるように覆いかぶせ伏せる!
皆本は巨大な衝撃を待った・・・・・・・衝撃は来ない。かわりに来たのは耳を覆いたくなるようなナイトメアの絶叫。

皆本は顔を上げる。彼の目の前には、ゴロリと小ぶりのドラム缶のような右腕が転がり・・・・・・
ナイトメアは右腕があった辺りを押さえつけて苦しげにのた打ち回っていた!!

「油断しちゃダメよ」

皆本の背後に神通棍を無造作に肩にのせて・・・・・・美神令子が立っていた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・一撃か。あの化け物ウマを。

なんてことだ・・・・・・・最初から・・・・・・・・・・・

「子供達の身の安全は私の仕事。悪いけど手を出させてもらったわ・・・・その子達を起こして」

慌てて皆本は子供達を起こしにかかる!起きろ!起きてくれみんな!!!
しかし薫たちは起きない。
もしかして・・・・・・・何か精神に悪影響が!!!!


「グ〜〜〜〜・・・・目覚めさせるって言ったら・・・・キスだよな〜〜〜〜〜〜〜スピ〜〜〜〜〜」
「ウ〜〜〜〜ン・・・・・ソレや〜〜〜〜〜定番や〜〜〜〜〜ん・・・・・ムニャムニャ・・・・・」
「スーーースーーーー・・・・キスぐらい・・・・・どってことないわよね〜〜〜〜〜スーースーー」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「起きろおまえらぁ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

慌てて3人は目を開ける!どんな連携だったのだろう。超能力か?

「おはよう皆本!!・・・・・どうしたんだその傷!!ボロボロじゃないか!!!誰にやられた!!!」
と薫。
「な?!なんやココ!!なんやあの馬バケモノ!!特撮?!なんで馬?!」
と葵。
「私達皆本さんの研究のために医局に呼ばれたんだけど・・・・ここどこ?・・・・精神世界?」
と紫穂。さすがだ。

「おはようお姫様方。私はゴーストスイーパーの美神令子。あなた達とあなた達の主任の味方よ」

3人は一斉に美神を見る。

「おおお!!!!エロいネーチャン!!!乳デカ!!!それは伝説のボディコンってやつ?!はじめて見た!!!!」
と薫。
「・・・・また皆本はんに、皆本はんに女の影が!!!この浮気も〜〜〜〜〜〜ん!!!!!」
と葵。
《・・・・・・・・・何この性格悪そうで強欲そうな女?皆本さんに近づけるのは危険じゃない?》
と口に出さずに紫穂。

う〜〜〜〜〜〜〜んこの子達もアレねぇ。バベルって大変そう・・・・・もっともウチの事務所も他人さまのこと言えないけど・・・・・・美神は薫達に向けて叫ぶ!

「みんなみんな聞いて!!!あそこにいるキモイウマ!!!アイツがあなた達の主任をイジメたのよ!!!ヒドイ目にあわせたのよ!!!!あのウマが!あなたたちの主任を!!かわいそうに!!!極悪非道にも!!!殴り飛ばして!!蹴っ飛ばして!!放り投げて!!踏みつけて!逆エビ固めキメて!!ムチで叩いて!!縄で縛って!!ローソクたらして!!三角木馬に跨らせて!!言葉攻めして!!恥ずかしい写真を撮った末に!!流出させたのよ!!!!!!!」

横島とおきぬが近くにいたら相変わらずヒドイなーと思ったに違いない。

「後半は大嘘だ!!!!子供達に不道徳なことを吹き込まないでください!!!!!」

「なんだとぉぉぉぉ!!!!なんてうらやましいことおぉぉぉぉぉ!!!!!!」
と薫。
「いやぁぁぁぁぁぁ!!!!皆本はんが・・・・皆本はんが穢れてしもうたぁぁぁぁぁ!!!!!」
と葵。
「なにあのウマ・・・・・・皆本さんイジメていいのは私達だけよ?」
と紫穂。

ナイトメアの右腕の傷はもう塞がっている。やっぱり徹底的にコンビーフの材料にしないとダメみたい。

「ほら主任さん!!あの駄馬、やっつけちゃいなさい!!!」

美神はビシッとナイトメアを指差す!

「・・・・あなたが倒せなくとも、『ザ・チルドレン』が倒すならスジは通せるでしょ?」

!!!!!

美神はヒラヒラと左手を振って元の位置に後退する。何事も無かったように。

皆本は駄馬に警戒しつつも、美神に素早く頭を下げた。


【皆本光一28 ザ・チルドレン2 美神令子24】
 
皆本は背広の内ポケットからリミッターコントローラーを兼ねる携帯を取り出す!
そして彼のキメ台詞!!!

「『ザ・チルドレン』!!解禁!!!!!!!!」

今度はタイミングを見計らったようにナイトメアは襲いかかってくる!!

「葵ちゃん!!左足が来る!!!!」
紫穂が叫ぶと葵はすぐに全員を短距離テレポートで移動させる!!
再び出現した所はナイトメアの背後だ!!

「薫ちゃん!!今よ!こいつまともな生き物じゃない!!遠慮は無用よ!!!」
紫穂の叫びに薫が呼応する!!

「サイキックゥゥゥゥーーーーーーー・・・・・・」

薫は両手を前に突き出しナイトメアに照準を合わせる!!!!!

「勝てない競走馬の末路ぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!!!!!!」

身もフタもない技の名だった・・・・


              以下惨劇


《さすが日本最強のレベル7・・・・力を使えないとはいえ『悪魔』をこんなアッサリと滅するなんて。3人揃うとあれは勝てない。正面からは戦えないわね》

美神はいいものを見させてもらった、とばかりにニヤニヤと笑う。

《悪魔をあっさり滅ぼすなら『天使』と呼ぶべきなのかしら》


【美神令子25 皆本光一29 ザ・チルドレン3】

こりゃこの子達3人揃えば力技の戦いだけならすぐ一流のGSになれるなぁ、と美神は思う。 実際GSはエスパーの仲間ってのがほとんどだし。
美神はコンビーフの原料になったナイトメアを見つめる・・・・・しばらくコンビーフは食べたくない。これが漫画だったらスクリーントーンのモザイクがかけられているところだ。
美神は念のために吸印札でナイトメアを吸印して火をつけて燃やした。
これで甦らない。こんな奴が甦ったらそれこそ悪夢だ。

皆本君は子供達を抱きかかえて泣いている。
子供達は困った顔をしているが・・・・・・泣き虫先生なのか皆本君は。
うーん、勝手な想像だけど皆本君は男の子のエスパー相手のほうが向いているんじゃないかしら?

『エスパーチーム・ザ・チルドレンと現場運用主任皆本との関係は良好』・・・・・情報屋の情報の中にあったその情報を美神は当然重要視していなかった。だが今回一番役に立った情報だったのかも。

皆本は美神に向き直ると深々と頭を下げる・・・・・ホント、真面目な人だ。

「・・・・・・あの奥にある扉、見える?あれが現実世界へと続いている扉よ」

洞窟の奥に存在しなかったハズの扉があらわれていた。凝ってるわねー
ラスボスを倒せば出口が現れる。現れないこともあるけど、だいたいの決まりごと。

「あの、美神さん、この世界はもしかして・・・・・」
ああ、やはり気が付いたのか。それは気が付くわよね。でもときにはバカにならないと・・・・・・それと、多分あなた達がいるのは不都合だろう。

「皆本主任、今あなたがしなくてはならないことは何?」

「・・・・・・・子供達を無事に連れて帰ることです」

美神はニコッと笑う。正解だ。

皆本は事情の説明を求める子供達をなんとか説得した。代償は大きそうがそれはこちらの知ったことではない。

「あの扉は間違いなく現実世界につながっているわ。私が保証する・・・・・さ、早く行きなさい」
「・・・・・・・・・・わかりました。美神さんは?」
「私はまだ報告書とか書くために調査とかしていかないといけないのよ」
「・・・・・・・・・・・・」

皆本は何か言いたそうにしていたが、言葉を飲み込む。
美神は予備の神通棍を皆本から返してもらった。

「じゃあ『ザ・チルドレン』のみんな、元気でね。あなた達の主任と仲良くね」
美神は営業スマイルで子供達に別れの挨拶をする。

「ぜひぜひバベルに遊びに来て!!巨乳のネーチャンは大歓迎だ!!!」
と薫。
「来たらすぐにぶぶ漬け出してあげるねん♪」
と葵。
「来ないでね♪」
と紫穂。

・・・・・・・うーん、なんか誤解されているのかもしれない・・・・・まぁいいか。

「・・・・また改めてご挨拶に伺います、美神さん」

美神に再び頭を下げた皆本の後頭部に、まるでその頭めがけて投げつけられたかのように小さな円盤状のものがコーーーーンと命中する。上から落ちてきたようだ。

皆本は後頭部を抑えてうずくまる。かなり痛かったみたいだ。

「なんやこれ?メダル?」
葵が拾い上げる。
丸い金属製のメダルで『HERO』の文字がレリーフで浮かし彫られている。裏面は西洋の城の図柄とピースするウマの絵柄。

《芸が細かいわねぇ・・・・・・》
美神は声に出さず笑う。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!!!

皆本は葵からメダルを奪うと天井に向けて力の限り投げ返した!
よほど腹が立ったようだ。メダルは洞窟のどこかへ行ってしまった。

「帰るぞ!!薫!葵!紫穂!!」

ズカズカといった感じで皆本は子供達を連れて扉に向かう。
子供達を先に扉に入れた皆本は扉を閉める前に最後に美神に声をかけた。

「美神さん・・・・・・気をつけて」

てっきりありがとう、と言われると思っていた。頭が良いのはわかったから早く行きなさい。

扉は閉じられ、扉は消えた。

美神はただ1人、この洞窟のような世界に残される。


・・・・・・・茶番は終わりね。やれやれだわ・・・・


美神はとりあえず依頼達成に安堵した。



          <ザ・チルドレン HAPPY END>


  
  ***NEXT【ナイトメア計画10】***


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