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GSメドヨコ従属大作戦!!

テロの脅威(前編)


投稿者名:まじょきち
投稿日時:12/ 7/ 3





東京都豊島区某所、安アパートの二階にある我等がGSメドヨコ除霊事務所。
設立当初の予想以上に収益が上がり、とうとう禁断の新兵器の導入となった。
横島忠夫が事あるたびにメドーサに申請し彼女が根負けをした形での導入だ。



「おおおおお!地デジテレビ様!この部屋にこんなブルジョア機材が入ろうとは!」

「横島さん、泣いちゃ駄目です!うふふ、変ですね、横島さんの顔がぼやけます!」

「小鳩ちゃんちにも入れるしな!俺らもこれでハイソの仲間入りだぜチクショウ!」



走査線数2倍を誇る地上波デジタルハイビジョン放送の鮮明な映像に涙する2人。
もう一人の住人であるメドーサさんはといえば、見向きもせず新聞を読んでいた。



「なあなあ、メドーサも新聞読んでないでテレビ見ようぜ!すげえんだから!」

「……何度も言うようだけどさ、うちに本当にテレビなんか必要なのかねえ?」



テレビに関しては少数派ながら嫌いだという人間もいる。
理由の多くは、局側の意向の如何によって情報の取捨選択を行っている点だ。
例えば提供側に「GS美神は玩具が売れないから困る」という意志が働けば
アニメ放送はあっという間に打ち切られる。日曜朝の提供となれば更なりだ。
原作が如何に素晴らしかろうと堀川ボイスが如何に楽しげだろうと関係ない。



「……でも、急に事件が起きたとしても、新聞だと何時間も後なんですよね?」

「それはあるね。即時性で言えばラジオも同じだけど、映像は情報多いしね。」

「ですよね?やっぱりこういう商売ですし、情報って重要って思いますけど?」



意外と食い下がる小鳩ちゃん。無論この新兵器の導入に喜んでいるのもある。
だがそれ以上に隣にいる少年に沈んで欲しくないという気持ちが一番大きい。
目の前の守旧派になんとか転向してもらって、全員で喜びを享受したいのだ。



「まぁね。でもさ、そんな大事件ばっかり起きるわけでもないだろうに。」

「おっ!言ってるそばからニュースだぜ?!なになに?ザンス国王暗殺?」

「な、なんだってえええええええええええええええええええええええ!!」



リモコンを横島くんから奪い取るメドーサさん。すばやく国営放送に切り替える。
更にdボタン、いわゆるデータ放送ボタンを押しニュース情報を十字キーで開く。
メドーサさんのその一連の淀みない操作に、しばらく圧倒される人間の少年少女。



「なるほど、暗殺は未遂だったみたいだね……他局でも同じ映像かい……」

「あ、あのー?メドーサさん?さっきから、なにをやらはってますのん?」

「なんだい横島!まさかあんた、ザンス知らないんじゃないだろうね?!」

「いや、その、ずいぶんテレビの使い方に詳しいみたいなんだけどさ……」



その一言で、急に我に帰る竜神様。
視線を何度も左右に泳がせた後に、高い背をちぢこませて頭を掻く。
そして数秒目を閉じ、そろそろと押入れから小さな機械を取り出す。



「な、なにこれ、ちっちぇえ画面……メドーサ!これってもしかして!」

「あはは、その、やっぱり情報ってさ、大事じゃないか、その、ねえ?」

「テレビ様なのか?これってもしかしてテレビ様なんじゃないのか?!」

「…………………………うん。」



彼女の持っているのはワンセグテレビと呼ばれる携帯用小型テレビだ。
地上デジタル波を受信できるが通常より小さい映像の受信に限られる。
受信エリアは狭いのだが、都心も都心、大都会の豊島区では問題ない。



「――――おっほん。さて、メドーサさん。俺の言いたい事、判ってるよな?」

「わ、悪かったよ。横島にテレビに染まって欲しくないってのもあってさ……」

「メドーサもテレビっ子!GSメドヨコは全会一致で地デジを祝う事とする!」

「ですよね!じゃあ私お祝いの準備します!三光まで買い物してきますね!!」

「あ、そ、それでいいんだ………」



拍子抜けしたようにへたり込むメドーサ。
ちなみに徹夜を何週間続けようが一向に苦にしない神族たるメドーサさんが、
最近何故か夜になるとすぐに押入れに入って休んでいた理由もこれであった。
音漏れ防止イヤホンを装着すれば、気付かれずテレビ鑑賞だって可能なのだ。

ちなみに彼らがそんなコントを繰り広げている間に、映像は新情報を伝えていた。
『テロ容疑者として元美神除霊事務所従業員、横島忠夫(17)を手配中です。』
若干関連がありそうではあるが、地デジ祭に沸く3人には些細な事かもしれない。







一方、東京都千代田区にある中央合同庁舎2号館。
ここには国家安寧を願う人間の最後の城、国家公安委員会が入っている。
ちなみに桜田門にあるのは警視庁の本庁舎で、首都警察本部でしかない。
まぁポリ公……おっほん、治安官吏たる警察官の方々に違いないのだが。

そこのとある一室に、警察に似つかわしくない女が椅子に腰掛けていた。
利益の為には多少の国家安寧も犠牲にしかねない、美神令子女史である。



「お兄ちゃん、これってあと何時間やればいいのかしら?」

「令子ちゃん、事は国際問題なんだよ。何度でも聞くけど横島クンはどこにいるんだい?」

「辞めちゃったって言ってるじゃないの。アパートの住所渡したでしょ?行ってみたの?」

「……君から渡された住所は存在しない。このままだと僕以外の担当が付く事になるよ。」

「それは残念。でもあまり任意で拘束できないでしょ?それとも冤罪しちゃうのかしら?」



皆さんは美神令子という人物を、どういう形で捉えているのだろうか。
現世利益最優先、一攫千金濡れ手に粟、追い越す出し抜くスッパ抜く。
だがそれだけでは単にひどい人である。彼女には行動原理があるのだ。

彼女は同心円状の人間を順番に大事にする。まず親、知り合い、近しい人という具合だ。
それだけなら普通の人も似たり寄ったりなのだが、美神令子の場合は非常に特殊なのだ。
親しい人間が目の前に居ない場合その人間を守り、目の前に居る場合その人間に甘える。
今回の場合は前者にあたる。



「犯人隠避は罪になるよ。君ほどの女性がまさかその事に気付かない訳ないと思うが。」

「それ脅迫になりかねないわよ、大丈夫西条さん?協力を求められたから来てるのに。」



そこに背広の男が駆け込んでくる。警察官僚であろうその手には書類の束を持っていた。
やはりなんだかんだ言っても西条さんには地位がある。警察庁本庁職員に一礼もしない。
手渡された書類に目を落とすと、美神令子の方を向き、おおげさに彼は溜息を漏らした。



「横島クンは独立したようだね。しかも近所の証言から、君の姿も何度か目撃されているね。」

「何度かなんて結構いい加減ね。7回よ7回。GS協会登録だってちゃんとしてるわよ、彼。」

「今頃SATとうちのメンバーがアパートに向かってる。……なんで彼なんかを庇うんだい?」

「そりゃあ簡単よ。警察と税務署が嫌いなの。あたしが世界の主になったら真っ先に潰すわ。」



目の前にいる尋問者に向かい馬鹿にしたような半目で受け答えする美神。
その表情に動揺や敵意などは微塵も見受けられない。極めて冷静なのだ。



「このままだと犯人隠避容疑で逮捕状が出てしまうが、情報提供者なら不問にできるよ。」

「バーター?ちょっと映画見すぎじゃないお兄ちゃん。日本じゃ司法取引ご法度でしょ?」

「それ位の権限はあるつもりだよ。無論有益な情報であれば、という条件が付くけどね。」



急に真剣な顔に戻る以前の雇用者。気のせいか視線も若干左右に泳ぎ気味だ。
その様を見る西条は平静を取り繕ってはいるが、その手は硬く握られている。
そして、美神令子はその口を開き始めた。



「あのね、横島くんに処女あげちゃったのよ。けっこう凄かったわよ彼。」

「ほ、ほんとうかい?!なんてことを!早まったなんてもんじゃないぞ!」

「う・そ!ジョークよジョーク。でも奴は奴なりに考えがあるんでしょ。」



そう言い放った後、椅子から転げ落ちんばかりに大笑いを始める。
頭を抱えて椅子にへたり込む西条氏。明らかにこの場は美神女史に支配されている。
この辺が事業規模が大きくなっても現場主義を貫いたトップGSの格なのであろう。



「ま、気が済むなら逮捕歴って奴つけてもいいわよ。表の仕事が減るだけだしねー。」

「令子ちゃん……判ったよ。14時31分、美神令子、犯人隠避の容疑で逮捕する。」

「ねえお兄ちゃん、ミランダ憲章読み上げてくれないの?楽しみにしてたんだけど。」

「令子ちゃん、アレはアメリカの話なんだけどね……えーと、君には黙秘権がある。」

「あら、優しいのねお兄ちゃん。そういうところ、好きよ。」



小さかった彼女は、モガちゃん人形をなくしている。
正直、そこまで大事に扱っていたようではなかった。
しかし忙殺される現在でも自分の人形を認識できた。
彼女はそういう人なのである。







そして時は同じく14時31分。
横島の部屋では依然として地デジ祭が、盛大に執り行われていた。
ただ、主役のテレビ様はどちらも消され部屋の隅に鎮座するのみ。
つまるところは、単なる身内によるお食事会の様相を呈している。



「うはははははは!順調すぎて怖いぜ!俺たちゃ金持ちだ!ヘイヘヘーイ!」

「ええ!テレビがあるっていうのは、お金持ちって事で間違いありません!」

「………………」



コタツの上には特売で買った袋入りのスナック菓子が、真ん中から開けられている。
同様に買い込んだ1.5リットルのジュース、2リットルの麦茶等がその脇に並ぶ。
楽しげに宴に興じる少年少女と違い、竜神様は時折窓の外を眺めているのみである。



「横島、小鳩、ちょっと耳かしな。」

「「?」」



顔を寄せる二人。
メドーサは、その二つの顔を両腕でがっちりと抱えると、大きく息を吸む。
そして、抱えた頭部の耳にあたる部分に腕と胸を強く押し当て耳栓をする。
われらが横島くんは勿論であるが、小鳩ちゃんもその感触に少々赤面する。



「キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」



大音量の黄色い悲鳴が、四畳半の中どころかご近所中にも広く響き渡った。
なんとその声は小鳩ちゃんでも横島くんでもなく、メドーサの声であった。
そして、2人の頭を思いっきり下げ床面に軽く叩きつけ、倒す格好を取る。



「突入ー!」



安普請の扉が、特殊な突起の付いたブーツによって蹴破られる。
一秒後にガラス窓も破れ、グレーの服とヘルメットに身を包んだ男達が現れる。
だが、部屋に乱入してきた彼らが目にしたのは、ターゲットの姿ではなかった。



「別々に入る馬鹿があるかい!訓練足りてないよマッタク!」



まず扉側の突入者は蹴破った扉上方からの板の奇襲に襲われた。
メドーサは押し込まれた相手の足を軸にして、更に上から扉を蹴りこんだのだ。
窓枠からの突入者は、伝ってきたロープから床面に体重を移す瞬間を狙われた。
床面すれすれに投げ込まれたコタツ板に足を乗せてしまい、重心を崩し倒れる。
二人の男は扉と天井を見た後に、正体不明の女性に横隔膜を強打され昏倒する。



「突入ー!」



更にその後ろから数人の同じ装束の男たちが、せまい横島の部屋に飛び込んでくる。
だが、彼らを待っていたのは制圧された仲間と刺叉を抱えた美人の笑顔だけだった。
手元の長い得物は乱入者の手にある火器を的確に薙ぎ、その頭、胴に吸い込まれる。



「な、な、なんじゃー!俺の部屋が一気に戦場に!一体何がおきとるんじゃー!」

「この動きだと、公安の組織か軍の特殊部隊だねえ。横島、心当たりあるかい?」

「うああああ!小鳩ちゃんの着替え覗いた!重罪だなんて知らなかったんやー!」

「え?ちょ、横島さん!通報なんかしてませんから!前から気付いてましたし!」



その後、次々と入ってくるアタッカーを7人ほどを鎮圧した所で乱入者は途絶えた。
そして少々間を置いて、多少楕円がかった金属製の玉が部屋に4個ほど入ってくる。
メドーサはそれを摘み上げると、あろうことかヒョイと口に入れた。



「な?!メドーサ、何食ってるん?!」

「……3、2、1、」

「きゃあっ!」



小鳩ちゃんの黄色い声に続いて、メドーサの腹部が一瞬、大きく盛り上がった。
だが当人は平然として鼻を少し摘みグニグニと曲げると、耳から薄い煙を出す。
そしておもむろにその口を開け放つと、金属片がバラバラと床に落ちていった。



「んー、催涙弾に白燐閃光弾か……逃げるよ二人とも。次に来るのは本気の連中だ。」

「賛成!どっか遠くに逃げよう!そうだな、大泉学園くらい遠くのがいいんじゃね?」

「馬鹿だね、大泉学園じゃすぐそこじゃないか。逃げる時は大きく逃げるもんだよ。」



メドーサは小鳩と横島を両腕に抱えると、その体を光らせ不意に姿を消した。
その3秒後に、グレーの装束の男たちが今度は雪崩を打って押し寄せてきた。
しかし、当然ながら、もぬけの殻である。居るのは伏した仲間達のみだった。



「い、いない!?馬鹿な、包囲していたはずだろうが!天井を探せ!必ず近くにいる!」



もちろん普通はそうである。周囲は完全に包囲されて装甲車まで出張っている。
上空にヘリも待機していた。オカルトGメンがウルトラ見鬼くんを持っていた。
しかし瞬間移動による逃亡となると、包囲陣による想定の範囲外であったのだ。









「現場のチームからの連絡じゃあ、横島クンは逃亡、協力者が二名ほどいる模様か。」

「大丈夫なのそのチーム?なんならウチの事務所に依頼してもいいわよ?高いけど。」

「やるな横島クン。いや、後ろに組織がいると見るべきか。しかし、だとしたら……」



美神事務所の隣にあるICPOの出張所に西条は詰めていた。
国際問題であり、元GSの容疑者であり、警察とのパイプもある彼が指揮を取っている。
その横に、手首には手錠、胸元からは札をぶらさげた美神がパイプ椅子に腰掛けていた。



「確かに変ね。もし本当にテロの仲間だとしたらアパートにいつまでもいるはず無いわよ。」

「無論それを逆手に取ったという予想も立つが……令子ちゃんの言うとおり、不自然だな。」

「でさ、結局横島クンに依頼したってのは誰なの?やっぱりザンス解放戦線あたりかしら?」

「それしかないとICPO本部は睨んでる。ただ、彼にそこまで人脈があるのか謎だがね。」



キャスター付ホワイトボードに、呆けた顔の横島の写真が中央に貼られていた。
その周囲にはマーカーペンで情報が書かれていた。その中に赤い部分が二箇所。

『情婦A』身長190cm前後、脱色した髪、軍人?オリエント系の顔、巨乳。
『情婦B』身長165cm前後、黒髪三つ編み、民間人、アジア系の顔、巨乳。



「このAがテロリストなのだろう、SAT隊員が顔も見れずやられているからね。」

「なら横島クン使う必然性が無いわ。誘引突起代わりなら一緒にいたら危険だし。」



パイプ椅子に浅く腰掛け、拘束された手を器用に前に回し顎を支えていた。
表情には悲哀も怒りも無い。半目の半笑い。逮捕前と全く変わっていない。
ちなみに彼女の言う『誘引突起』とはチョウチンアンコウの提灯部である。



「令子ちゃんは横島クンが目眩ましで、真犯人は別にいる、と?確証はあるのかい?」

「確証なんか無いわよ。安楽椅子探偵に求められるのは推理で、調査じゃあないわ。」

「じゃあミスマープル、事件の真犯人は誰だと思うかね?横島クン以外だとしたら。」

「村でこういう事件があったわ。情報不足でミスリードに騙された警官の不祥事よ。」



賢明な読者諸氏に説明する事ではないだろうが、一応書いておく。
ミスマープルはAクリスティの著作に出てくる有名な女性である。
本業は村のおばあちゃんで職業探偵ではない。ただし、謎は解く。



「やれやれ手厳しいな。じゃあ増員してザンスの入国者を洗おうか。これでいいかい?」

「上出来よ。後は手錠を外して私を解放してくれると、もっと上出来なんだけどなー。」

「それが出来るかどうかは一番判っていると思っていたがね。じゃ、留守は頼んだよ。」



暦の上では春節を過ぎ2月も中盤を越えたあたりとはいえ、外はまだまだ寒い。
木製のポールハンガーに掛けられたトレンチコートを掴み、西条氏は退出する。
遠ざかったのを確認した後、容疑者は肩を二三度揺らし、手錠から開放された。



「逃げるのはお兄ちゃんも多分想定してんでしょうから、ご期待には答えとかないとね。」



両手を上に伸ばして数回ストレッチをして、悠然と扉を開けて部屋を後にする美神女史。
そして30分後には部屋に戻り、自ら手錠をつけ、出た時と同じように椅子に腰掛けた。
その間この部屋での目立った変化といえば、隣のビルで爆発音が起きたくらいだろうか。
美神事務所で起きた原因不明の爆発、それは不幸にも帳簿類を復元不能な程に破壊した。



「あ、人工幽霊に始末させても良かったのか。」



何をどう始末させたかったか、これだけでは不親切なので情報を幾つか出そう。
美神令子は警察と税務署が大嫌いなのだ。ことのほか、税務署が大嫌いなのだ。
特に国税庁査察部が大嫌いなのだ。更に言えば納税義務とやらが大嫌いなのだ。
細かく言えば裏帳簿が見つかり追徴金を払うのは前科が付くより大嫌いなのだ。




(後編に続く)


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