椎名作品二次創作小説投稿広場


GSメドヨコ従属大作戦!!

隣のドアを叩け!


投稿者名:まじょきち
投稿日時:12/ 5/21

あれから一ヶ月が過ぎ、GSメドヨコはいたって順調である。



つづく。












































とまぁ、そんなことで一話を使い切ったら投稿広場は即出禁になるので詳細を書こう。


横島忠夫とメドーサの小さな除霊事務所は、やっとその活動を開始した。
だが本当に小さい。広さ4畳半しかない。更に商売に必要な資金も無い。
本来なら商売を始める以前の状態なのだが、実は既にコネを持っていた。

GS本部の毛髪のほぼ無い事務員から、とある顧客を紹介されてたのだ。
それは都内に地所を幾つか持つ中堅不動産業の『新大塚不動産』である。

小さな仕事を一件だけという日から、それなりに仕事が入るようになる。
今回は、そんな軌道に乗り始めた一日を追ってみよう。







朝、メドーサが横島の頭を蹴って一日が始まる。



「いて!まだニワトリには勝ってる筈!あと五分、あと五分だけくだされえええええ!」

「残念だけどニワトリはもうアップ済んでるみたいだよ。ほれ、起きてエサを食いな!」

「もう出来てるの?くそ、裸エプロンで腰を振りながら料理する姿が見たかったのに!」

「あーはいはい。たまには先に起きて確かめてみればいいだろ。ほら、時間が無いよ!」



Tシャツにトランクス姿の少年が、唯一の家具といっていいコタツに載る料理を平らげていく。
メドーサの準備は癖の付いた後ろ髪をなでる程度である。外出用のボディコンには着替え済み。
ちなみにこの服装はメドーサの数少ない外出着で、GS試験の時から大事に手入れをしている。
やがて少年も食事を終えるとジーンズとジャンパーに着替え、二人揃って仕事に出かけていく。




「え?美神さんところ辞めちゃったの?ウチは助かるけどさ、業界的に大丈夫?」

「そんときゃ『泣きつかれちゃって仕方なく』って言っちゃっていいっスから。」

「そんじゃさ、横島くんの独立祝いに、もうひとつお願いしたい所あるんだわ。」



美神にとって横島はただの丁稚だったが顧客側にとっては横島は良い緩衝材だった。
なにせ美神さんは良くも悪くも『やり手』の経営者である。取り付く島がないのだ。
そんな中で霊の出待ちや長丁場の休憩中に、気まずい顧客側が横島に取り付くのだ。
特に東京生まれの東京育ち、地元の日常会話にとことん強い横島くんは話も上手い。



「うは、これ御殿場じゃないスか。神田の工場いよいよ売るんスか?」

「ちげーよ!こりゃ嫁の実家。整地してアパート建てるんだってよ。」

「そりゃ嫁さん喜びますな!しばらく遊びも許してもらえるでしょ?」

「判った!横島くんが今日中に仕上げたら合コンに連れてったるわ!」

「さすが社長、話がわかる!GSメドヨコの底力をご覧に入れます!」




クライアントに渡された地図を見ながら歩く2人。場所はまず神田、その後に御殿場である。
社長の住居兼工場の隣が最初の現場な為に歩いているが、通常は瞬間移動を使って移動する。
残念ながら横島くんにその様な能力は備わってはいない。もちろんメドーサさん頼りである。

現場は神田の工場脇の空き地。昼間でありながら悪霊が縦横無尽に何体も飛び回っている。
メドーサはその空き地の隅にある積み上がった土管に腰を下ろし、肘を突いて休んでいる。
そんな彼女が眺める先では、横島少年が手から光を出しながら必死に悪霊を調伏している。



「あー、横島、右から来てるよ。左流しながら右で受ける。あ、足元からも来てるかも?」

「ぬおおおおお!い、いい加減へばってきたぞ!手伝うか文珠許すかしてくれねーかな!」

「だーめ。そんじゃさ、その辺の霊こっちに誘導してみな。来た分だけ祓ってあげるよ。」

「そいつは助かる!!ぬおおおおおおお!貴様ら全員あっちに行きやがれええええええ!」



飛び回る悪霊を、今度は右手の霊力により光る剣<霊波刀>で次々と追い込んでいく横島。
本来なら浄化の文珠でこの程度の浮遊霊なぞ一網打尽なのであるが、それが出来ないのだ。
ギアスにより横島は文珠を封印された。メドーサを怒らせる様な何かをしたわけではない。
初日の仕事の前にいきなり告げられた。その言葉は強制力を持っていた。それだけである。



「力の出し方に強弱を付ければ、意識の弱い霊は誘導できるのさ。わかったかい?」

「わ、わかった!わかったから!そいつらを頼むってばよ!約束だぞメドーサぁ!」

「本当はこんな亡霊くらいでへばるんじゃ困るんだけどねえ。……よっこいしょ。」



ゆっくりと腰を上げ、右掌から刺叉を生やし、それを掴んで見得を切った後に軽く薙ぐ。
横島が何分もかけて必死に誘導し、メドーサの周囲に集まっていた低級霊共は全滅する。
なんと、この間わずか3秒。



「さ、さすがやなー。敵だとむちゃくちゃ嫌な奴だけど、味方だとすっげえ頼もしい!」

「あたしがやっちゃ意味ないって言ったろうに。ま、頼もしいのは事実なんだけどね。」



今の除霊が行われていたのは、神田の表通りから少し外れた工場脇の空き地。
その片隅には小さな鳥居があった。メドーサは土管を降り無遠慮に入り込む。
鳥居の中には小さな社があり、彼女はそこに顔を近付け、何かを話し出した。



『――――――――――、――――――。――――――――――、――――――。』

『――――――――――――――、――――――――――。』



お社に向かって数秒喋った後、先ほど手の平から出した刺叉で大きく地面を叩く。
すると直径20センチほどの石の筒が50センチほど高さにまで迫り出してくる。
その後メドーサは特に何する事も無く、平然と踵を返して鳥居からまた外に出た。



「何やってたんだメドーサ?」

「ああ、あいつがここの土地神なんだけどね、ビルの地盤改良で地脈切れたんだとさ。」

「地盤改良?ああ、地震対策か。そういや最近その手の工事が多いもんな、うんうん。」

「で、地脈誘導の石碑を立ててやったってわけ。まあ、これでしばらくもつだろうよ。」



メドーサは黒便覧に載ったとはいえ元々は竜神である。神族の事情には当然詳しい。
さらに魔族との繋がりもあるので、彼女のオカルト仕事に隙なぞ有ろうはずも無い。
仕事は完璧アフターも安心、その上相場よりもむちゃくちゃ安い。半額以下なのだ。



「金が無いとはいえオフダも無し文珠も無しじゃ俺がもたん!厄珍堂で道具買おうぜ!」

「駄目だよ。いいかい?あんたは今が一番の伸び盛りなんだ、絶対に楽はさせないよ。」

「もう伸びなくてもいい!金がもったいないなら、せめて文珠だけ使わせてくれーい!」

「兵に奇道無しって言うだろ。あたしの仲間である以上は実力以外は認めないからね。」



兵に奇道無し。これはメドーサの持論であると共に、プロとして生き延びてきた矜持でもある。
そして、美神令子との縁が出来てからメドーサが失敗続きなのは仲間の要素が少なからずある。
天龍童子暗殺の時も、白龍会GS試験の時も、香港原始風水盤の時も、そして月の騒動の時も。
同等とまでは行かないながらも背中を預けられる相棒さえ居れば、結果は変わっていたのでは。
その思いが、横島にこのような指導をする形となってしまっている。



そして2人は瞬間移動で次の現場である御殿場に跳ぶ。そこは天下の霊峰富士の御山の裾野だ。
現場は一見アパートが立ちそうな立地に見えないが、御殿場第二ICのアクセスが良いらしい。
一応、社長が言うには都内から車で2時間程度の通勤圏内らしいが、確実に高速料金が必要だ。

そんな未来予想図とは裏腹に、指定された場所は鬱蒼と茂る林の中の敷地。
暗がりの中で横島くんは、凛々しくも逞しく次々と怨霊を薙ぎ払っている。



「ほい、96匹目、あと半分ちょっとぐらいかねえ。がんばんな横島。」

「すばしっこい!痛い!こんなの美神さんだって素手じゃやらんぞー!」



林の中で構える横島の周りには、無数の犬。その目には狂気がありありと浮かぶ。
さらにその犬の頭上には人魂も浮かんでいる。どうやら犬に霊が憑依してる様だ。
そして横島少年の足元には、口から泡を吹いて痙攣する犬が大量に転がっている。



「あたしは犬を殺してもいいと思うけどねえ?いい加減めんどくさくないかい?」

「自殺する馬鹿が悪いんじゃ!野良犬にだって幸せになる権利はあるんじゃー!」

「おっけ、その気持ちが有るんならマダマダ頑張れそうだね。ほれ、次きたよ。」



横島の手から延びる光の棒が犬の後頭部をかすめる。犬に憑依していた霊が消滅する。
犬はその呪縛を解かれ気を失う。ただし、間違って棒を直撃させれば犬は恐らく死ぬ。
その単調で、かつ加減の非常に微妙な作業を、延々と横島少年は繰り返し続けていた。
ある程度お年を召された読者なら『電流イライラ棒』的なものと言えば判るだろうか。



「にひゃくじゅういち!……これで終わりか?へっ、ざまーみさらせ!やりきったぜえ!」

「あーはいはい。ちょっと効率が悪いけどイイ訓練になったみたいだから良しとするか。」



最後の犬を昏倒させた瞬間に彼もまた膝をつき、そして両手もついて倒れこんでしまう。
ぐったりした横島を肩に担いで、メドーサは少しだけ口角を上げると、その目を閉じる。
先にメドーサに体が、やがて二人の体が光が帯び、その数秒後、光の尾を曳き姿を消す。
その光の尾の先は、もちろん池袋に向かっていた。瞬間移動で帰宅したのだ。





そして四畳半。
布団でイビキをかく少年の傍らで、メドーサは小さなスタンドライトをつけ、ノートを取り出した。
『横島ノート』と表題された帳面。そして小さな眼鏡をつけ、髪を後ろで大雑把に縛ってまとめる。
そして何に気遣うのか、大きな音を立てないように、ゆっくりゆっくりと鉛筆を進めていった。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

○月○日
起床:0400
朝食:白米(タイ)キャベツと人参と鶏肉の炒め物、味噌汁(インスタント)。
依頼:新大塚不動産からの除霊依頼
場所:神田○丁目○番地
状況:浮遊霊の不法占拠。約50〜70程度
報酬:75万
付記:霊力の噴き上がりがまだ遅い。トップに入るまで現在1分22秒。右側に死角あり。古傷?
吹き上がり途中に弱音が多い。しかし、一旦トップに入ると身が軽くなり動きがシャープになる。
噴き上がりまでの時間短縮とメンタルが課題。

昼食:新大塚不動産から差し入れ弁当(豚の生姜焼き弁当)
依頼:新大塚不動産からの依頼。菱井友友商事保養所の幽霊野犬駆除
場所:静岡県御殿場市深沢○○○
状況:野犬に憑依した自殺霊の不法占拠。約220程度
報酬:125万
付記:犬を殺すべきだったが拒否。しかし虐殺癖は冷静な判断を妨げるのが定説なので強制せず。
ただ犬を殺さないという比較的テクニカルな作業に対し今度の吹き上がりは31秒。心理効果か。
メンタルが課題なのは変わらないが上手くコントロールする事が出来れば役に立つ性分なのかも。

夜食:白米(タイ)秋刀魚の塩焼き、大根下ろし、小松菜の煮浸し。
就寝:2000

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


この他、簡単な棒人間を描き、その動きの癖や隙の角度と得意な角度などを記入している。
更に、そこに筋肉の付き具合や霊波動の噴出し具合等まで記入し、今後の指導目標を書く。
やがて窓の外が薄っすらと白み始めたのに気付き、音を立てずにライトの紐をそっと引く。
そのまま足音を忍ばせ流しに向かい、濡らしてあったタオルを絞り、全裸になり体を拭く。
体の水分が乾く迄の間に、料理用の前掛けだけを身につけ、朝食の支度を手早く済ませる。
その後身体の状態を確認し、着替える。

そして、彼女の大事なバディの頭を蹴り、起床を促す。





こうして一日が終わり、このような感じで毎日が過ぎていった。
















そして3週間ほどがたったある日………











「ふあぁぁぁ。起きた。え?お、俺。自分で起きてる?……よっしゃあああ!」



布団から起き上がり、おもむろに周囲を見渡す。いつもと違い室内灯も無く薄暗い。
かろうじて光源として、窓から太陽が昇る前の暗い朱色が広がっているに過ぎない。
彼はこの室内で唯一起床しているのは自分なのだと確信した。



「うはははは!めどーさ!早く起きろよコノ寝ぼすけやろう!なんちゃって!」



薄暗い部屋から返答は帰ってこない。
流し台の辺りに気配を感じた少年は、
唯一の照明である裸電球に灯を点す。



「え?な、何で裸に!?てか、何で倒れてるんだよ!おい!」



なぜか全裸のメドーサが流し台の前で手ぬぐいを掴み、うつぶせになって倒れている。
皆様はどのタイミングで倒れたのかはお判りになるだろうが、横島くんには判らない。
理解不能のままウロウロと裸体の周りを回っているだけで、1分程度が過ぎてしまう。



「そ、そうだ、息は……あ、ちょっとだけしてる。……熱は………つ、つめてえっ!!」



彼女のおでこに手のひらを当てた横島は、その冷たさに思わず手を上げる。
熱さを想像していた彼はそのギャップに驚く。まるで冷蔵庫の蒟蒻だった。
息こそしているし、顔色も全く悪くないが、確実に異常事態だと判断した。



「と、とりあえず布団に入れてと。そんでもって……あ、あっためないと……ぐびび。」


 
原作七不思議のひとつ、口で言う喉鳴りである。この表現はおそらく国内随一だろう。
そして、横島くんの喉鳴りは、だいたいの場合が不埒な妄想を行っているときが多い。
青少年の妄想は無罪なのであるが、彼は妄想から現実に飛び出してしまう事が問題だ。



『ギュゲゲゲゲ!寝首を掻こうとは命が惜しくない様だな!超断罪!今ここでジエンド!』

「ま、まてバンダナ!違うって!俺はメドーサ助けたいだけだってばよ!ホントホント!」

『ギュゲゲゲゲゲ!監視条項第1条第24項!メドーサ様就寝時に手を出したら即死刑!』

「ああもう!くそ、どうしたらいいんじゃー!とは言え俺も死にたくはない!うむむむ!」



筆者は横島くんの主人公たる所以というものをよく思考する。
特殊能力を次々と手に入れる所か。人並み外れた回復力か。無類の助平か。
出した結論は、土壇場の発想である。横島くんは切羽詰った時のリカバリーが上手いのだ。



「そ、そうだ!」



横島は安普請のアパートの床を鳴らしながら、ベニヤ製の薄い扉を開けて屋外に飛び出す。
扉から外に出て、すぐに右手に折れ、2mほど先の同じような扉の前でその足が止まった。
つまりお隣のお部屋。そしてここに、今後のGSメドヨコにとって重要人物が住んでいる。



「こ、小鳩ちゃん!ごめん!すぐ起きてもらえるかな!」

「ふあ……はーい、今開けますね。」



花戸小鳩。以前横島と結婚式も挙げた少女である。
ただ何故か入籍には至らず、今も苗字を花戸姓としている。
薄い原色系の寝巻きに、所々ほつれたピンクの半纏を羽織った姿で玄関先に現れる。



「………おはようございます横島さん。そういえば学校辞めたって噂は……」

「そんなの後々!ちょっと来て!ちょっと頼みたいことがあるんだってば!」

「いいですけど……その、着替えてから行きますから待ってもらえますか?」

「ああもう、裸でいいから!どうせ脱がすし!はやく!今すぐ!ほらほら!」



か細いその腕を引き、横島は、眠そうに目を擦っている小鳩を部屋から強引に連れ出した。
部屋の中で、眠そうに目を擦っているその母と、おじさん風の何かが布団から身を起こす。
二人が見た光景は、隣の少年に手を引かれて嬉しそうな表情で部屋を出る小鳩の姿だった。



「………小鳩、いったいどこにいったんでしょう?」

「銭では買えん、幸福って奴を取り行くんやろな。」

「そーですか。じゃ、もうちょっと寝ときますね。」



母親風の女性とメキシコ帽をかぶった小さなおじさんは、起こした身を元に戻す。
そして、小鳩は手を引かれ横島の部屋に連れ込まれていった。
二人が部屋に入ると、横島は後手に鍵を閉める。



「こ、小鳩ちゃん!ごめん!お願いできる義理じゃないんだけどさ……そのさ……」

「あ、あの、横島さん、その、私に、裸になれとか、その、本気……なんですか?」

「冗談じゃ頼めない事なんだって!なんなら終わった後に俺を好きにしてもいい!」



入室一番、土下座で小鳩を拝み続ける横島。
状況が上手くつかめない小鳩はその光景と横島のセリフを頭で何度も何度も噛み砕く。
全裸でいいから、すぐ来て欲しい、横島の部屋、そして鍵がかけられた部屋、土下座。
そして、横島が土下座をしてまで何を懇願しているのか、小鳩は小鳩なりに理解した。



「え、あの、わかりました。小鳩は……横島さんの事を信じます!」

「ありがとう!頼れるのは小鳩ちゃんだけなんだよ!助かったぜ!」



意を決した様に表情を引き締めた小鳩は、半纏を、パジャマの上下を、下着を脱ぐ。
一切のためらいが無い、まるで入浴でもするかのような速度で全裸になっていった。
その頬は赤く染まり何度も身を捩っているが、小鳩はどこも隠そうとはしていない。



「その、これからどうすればいいのかは、あの、私あまり詳しくないんで……」

「おお!おっぱいでk―――ちっがーう!こいつの事あっためてやってくれ!」



横島が足元の布団を剥ぐと、長身の女性が全裸で横たわっていた。
大きな、しかし仰向けになりながらも形をほとんど崩さない乳房。
無理の無いギリギリのところの、くびれのはっきりした細いウェスト。
そして日本人とは明らかに違う、腰まわりから足に至るまでのライン。



「あ、あのー、この人、誰なんですかね?」

「メドーサ。」

「はあ。メドーサさんですか。なるほど。」



こばとはこんらんしている。
横島に頼まれ部屋に来てみれば土下座。そして自分が裸になってみれば布団の中から裸の女。
しかも暖めてやれという。いったい何がどうなってこの状況になっているのか理解できない。



「そ、その、別にやらないっていう訳じゃないんですけど、横島さんじゃあ駄目なんですか?」

『ギュゲゲゲゲゲ!ヨコシマは現在メドーサに触れると即・絶・命☆首から上は消し飛ぶぜ!』

「――――というわけなんだ!ごめん!だから俺には小鳩ちゃんしかいないんだ!たのむよ!」



小鳩には一種の判断基準がある。
横島は決して悪ではない。そして、いい人。そして、信じていい。
かなり危険な価値観なのであるが、彼女はその価値観を曲げない。
その盲目的な信頼は、小鳩と横島の出会いの瞬間から続いている。



「わ、わかりました!その、あの、よ、横島さんを信じます!」

「ありがとおお!小鳩ちゃん大好き!愛してる!ちゅっちゅ!」



無防備な笑顔と感謝の言葉と共に、小鳩ちゃんを抱きしめる横島。
自分の判断を信じて、小鳩は横たわるメドーサにそっと抱きつく。
横島はそれを確かめると、そっと2人を覆うように布団をかけた。



「つ、冷たい!氷みたいです!横島さん、あの、これ、救急車呼んだほうがいいんじゃ!?」

「そーしたいのはヤマヤマなんだがメドーサってワケアリでさ、医者が呼べないんだよね。」

「わ、ワケアリさんですか?じゃあ、その、横島さんの、その、恋人さんって訳じゃあ……」

「いやいや、そーいうんじゃないって!メドーサは俺の仲間?だかそーゆーのなんだって!」



安堵する小鳩。しかし、それも束の間、今度は奥歯が小さく音を鳴らし始める。
体温が急速に奪われ始めている。接している胸元、胴体から足や腕に至るまで。
いつもは決して弱音は言わない性質の彼女も、流石に堪らない程になってくる。



「よ、横島さん!この人冷たすぎます!冷たい人って言っても、その、悪い意味の方じゃなくって………」

「駄目か!しょ、しょうがねえ、バンダナ!首が欲しけりゃくれてやる!俺がやっぱり暖めるしかねえ!」

「ま、待ってください!……その、横島さんが私を暖めてくれれば、その、問題ないんじゃないかと……」

「そ、その手があったかああああああああ!さっすが小鳩ちゃん!冴えてるぜえええええええええええ!」



わずか0.2秒で全裸になり小鳩の後ろに密着する横島。
意外と筋肉質の胸板や腹筋が小鳩の背中に密着する。その強い刺激に小鳩の体温も上昇する。
そしてそれは我らが横島くんにとっても同様。成り行きとは言え同級生の裸身を抱いている。
きめの細かい柔肌に触れて、目の前の少女の女めいた部分を嫌が応にも意識してしまうのだ。



「あ、あの、横島さん、お尻に何か熱くて固いものが当たってるんですけど………」

「え?あ、ああ!そ、それは焼き芋!焼き芋だよ小鳩ちゃん!気にしたら負けだ!」



もちろん小鳩ちゃんは清く正しい女の子なので、決してその焼き芋を頬張りたいとは言わない。
ただ、口に出して言えない分、彼女の中で、あらぬ想像が駆け巡ったのもまた事実なのである。
清く正しい彼女とて、やはりそれなりに思春期ではあるのだ。



「あ、ちょ、ちょっとこの人暖かくなってきたかもしれません……」

「いいぞ!その調子だってばよ小鳩ちゃん!もっとぎゅっとするんだ!」

「よ、横島さんもお願いします。その、もっとあったかくしてくれないと……」

「うおおおおおおおお!まかしとけえええええええええええええええええええええ!」



後ろから軋むほど抱きしめられる小鳩。心地よい息苦しさの中、ふと目の前の女性の身体を手で追う。
大きさはさほど変わらないながら弾力の強い胸、鍛え抜かれた腹筋、大臀筋。この人は普通じゃない。
誰なんだろう、横島さんとどんな関係なんだろう、そんな思考が脳内を駆け巡る。

後ろから軋むほど抱きしめている横島。生きた心地のしない中、ふと目の前の女性の身体を手で追う。
とにかく乳がでかい。手に余るとはこの事だ。しかもあまり嫌がってない。この状況は普通じゃない。
いいんだろーか、後で本気で殺されたらどうしよ、そんな思考が脳内を駆け巡る。

二人の火照るほどの興奮状態でいつしか布団の中は幾分と温まり、やがて心地よい温度になる。
小鳩は目の前の不思議な女性の体温がいつの間にか自分と同じほどになっていることに安堵し、
そして横島も目の前のお隣さんの緊張が解けたのを感じ取り、いつしか共にまどろんでいった。





そんな早朝の異常事態が静寂に戻ろうとしていく中、再び、なにやら物音が発せられる。
心配されていた女でも、心配していた少年でも、頼られた少女でもない、他の誰かの音。
それは鍵穴に金属製のなにかが擦れる音。そして発条が外れる音。ロック摘みが回る音。
施錠されたはずの入り口からの侵入者だった。



「あ、お、おはよー、横島クン?あの、聞いたわよ。GS始めたんだって?ちょっと入るわね。」



薄暗い部屋から望む返答は帰ってこない。
大きく持ち上がった布団の前で赤い髪の不法侵入者は、もじもじしながら、ちょこんと膝をつく。
頭を掻きながら、何かを言おうと口を開けては閉じ、やがて意を決したのか、半身を乗り出した。



「そういう相談なら先にして欲しかった気もするけど、ま、今更どうこう言うつもりもないわ。」



ばつの悪そうにそっぽを向きながら、ごにょごにょと布団に向けて話しかける侵入者。
しかし、布団は何も答えない。もちろん布団の中からも全く返答は返ってこなかった。




「でね、うちも結構忙しくて人手が足りてないのよ。……でさ、思ったんだけど、手伝っ―――」



その時うつ伏せになろうと寝返りを打ったメドーサが、上の布団を大きく剥いでしまう。
長い髪の強烈なプロポーションの全裸の女性と、豊満な全裸の少女、そして全裸の横島。
三人があたかも幸せそうに絡み合いながら、静かに寝息を立てていた。



「―――ってくれるアシスタントの求人出せばいいのよね。じゃ。」



無表情のまま布団を三人に掛け、出口に向かい、扉を閉め部屋を後にする以前の雇用者。
今回も正体を確認できずじまい。プロのGSという意味で現場勘に欠けると言えなくも無い。
とはいえ彼女も処女である。事後にか見えない現場を前に冷静を求めるのは酷というものだろう。






そして時間は昼まで進む。
快癒したメドーサ、横島くん、小鳩ちゃんが私服に着替えて、コタツに足を入れていた。
その上には、もち米と小豆を炊いた赤い色使いの料理と、瓶入り胡麻塩が置かれている。
母が用意したものを小鳩が持ちこんだのだ。だが他の二人は料理の意味が判っていない。
恥じる小鳩をよそに、2人は何の感慨もなくその赤飯をバクバクと口に放りこんでいる。



「で、あんたがあたしの事助けてくれたってわけかい。なるほどねえ。」

「そーだぞー?小鳩ちゃんは偉いんだぞ?感謝して敬い奉れメドーサ!」

「あ、あの、いえ、別に私そんなつもりだったんじゃありませんし……」



横島を時々意識してちらちらと見ながら、目の前のお赤飯を箸でもてあそぶ小鳩。
ただ、当の横島は一切気にかけず笑顔で久方ぶりの珍しい料理をパクついている。
その光景を見て、メドーサは目を細く吊り上げ、意地の悪い方向に口角を上げる。



「見たところ貧乏みたいだし、ウチで働くかい?人手が足りなくて困ってるんでねえ。」

「え?!だ、ダメ!小鳩ちゃんは最近やっと学校いけるようになったばっかなんだぞ!」

「あーそうなんだ。そりゃ残念だね。やっぱり横島と二人でずっとヤるしかないのか。」



さも残念そうに右肘を突くメドーサ。半笑いするような笑みを浮かべている。
その隣では最近学校を退学したという噂が本当であった小鳩の想い人がいる。

小鳩は思案していた。思えば貧乏神騒動と小鳩バーガーの一件以来、横島とは縁遠い。
隣同士である以外は学校が唯一の横島との接点だった。しかしもう横島は通学しない。
そして意中の彼は転がり込んできたワケアリ年上美人と同棲し、商売を始めるという。

花戸小鳩が極端な窮乏を押してまでも同じ高校に進学したのは何の為だったのか?
花戸小鳩は高校進学に何を願い何に思いを馳せ何を夢見て苦労を重ねてきたのか?
その答えは決断となって固く結ばれた口を抉じ開け、運命の歯車を捻じり曲げた。



「や、やります!学校だって辞めます!だいたい、横島さんだって学校辞めたんでしょう?」

「あ、あの、うん、そうだけど………でもさ、ほんとにいいの?その、俺は嬉しいけどさ。」

「じゃあ私も嬉しいです。メドーサさん、……横島さん、これからよろしくお願いします。」



大げさに頭を下げて礼をする小鳩。
まったく状況の掴めていない横島。
片肘を突きながら微笑むメドーサ。
こうして花戸小鳩はGSメドヨコに唯一足りなかったサポート要員として加入した。



「小鳩だったっけ?ちょっとこっち来な。」

「は、はい!」

「メドーサ!小鳩ちゃんイジメんなよな!」

「女同士じゃないと出来ない確認があるんでね。あんたは部屋から出な。」



すごすごと部屋を出ていく横島くん。しかし、彼は横島忠夫なのである。
耳をべったりと扉に貼り付け、中の物音をちょっとも逃すまいと構える。
無論メドーサさんはそれも重々承知の上で、小鳩の耳にその唇を寄せる。



「実はね、横島は『モテモテになりたい』ってあたしに願掛けしてるんだよね。」

「も、もてもてですか……横島さんらしいと言うか、なんていえばいいのか……」

「ただ縁結びの神じゃないんでね、モテさせろとか言われてもアテがないのさ。」

「つまり、その、わたしに横島さんの『モテモテ』をやれ、という事ですか……」

「強制はしないよ?手が足りないのは事実だから、やらないでも小鳩は雇うよ。」



小鳩ちゃんはメドーサ嬢を、無遠慮に全身くまなく吟味しはじめる。
上から下まで、非常に絞られているイメージの身体だ。それでいてバストは大きい。
仮に自分が拒否して目前のモデル顔負け美女が自分をモテモテの人身御供にしたら。
小鳩ちゃんの想い人が、この体を好きに出来るとなった時の様子が容易に想像つく。



「わ、わかりました!私を横島さんのモテモテとして使って下さい!望む所です!」

「さすが横島の見込んだ小鳩だね。ただ、雇う以上は仕事もしてもらう。いいね?」

「何でも言ってください!小鳩は、その、実力以上でも必ずなんとかしますから!」

「いい返事だね。じゃあさっそくで悪いんだけどさ、打ち合わせを始めるからね。」




電話受付炊事洗濯、そして戦闘以外の横島ノートの記帳が担当する業務。
もう事務員の範疇は超えているが、特に小鳩は嫌な顔一つしてはいない。
むしろ技巧的な作業が少ない分だけ、彼女の表情に安堵が広がっていた。



「これだと、ほとんどこのお部屋に居るのが仕事になりませんか?」

「そういうこと。悪いけど、昼の横島はあたしが担当するからね。」

「じゃ、じゃあ、その、小鳩は、よ、夜の横島さんを担当ですか?」

「その辺はそっちに任せるよ。嫌なら適当に流してもいいからね。」



メドーサは小鳩との分担もやはりメモに取っていた。そのノートを小鳩は覗き込む。
特に女神様は嫌な顔することも無く、書いていたそのノートを小鳩の方向に向ける。
小鳩はその筆致の精巧さに驚く。まるで印刷物のような正確さで文字が書いてある。



「別に字を上手く書けとか言いやしないよ。ある程度は文脈で判断するから。」

「ありがとうございますメドーサさん。……あの、そういえば横島さんは……」

「横島の字は意外と読みやすいよ?なんだろうね、絵みたいな字っていうか。」

「そ、そうじゃなくて、横島さん追い出して、もうかれこれ5時間ですよね?」

「あ。」




昼過ぎから食事を済ませ、まったりした時間の後に追い出された横島くん。
扉に耳を当て、部屋の中の様子を窺っていたのは15時ごろから始まった。
そして日は落ち、1月終わりの寒風吹き荒ぶ中で少年はどうしているのか。



「…………ごばどぢゃん、だいじゃうぶがえ?べどーざにいじべだれだがっだがい?」

「え?あ、はい、その、横島さん、その、横島さんは小鳩にモテモテになりました。」

「ぞ、ぞーだんだ、やっばべどーざずげえ、おでをぼうぼでぼでにじてぐれだどが。」



小鳩はそこで横島の私服の正体を知る。上はTシャツにジーンズのジャケット。
下はジーンズのパンツだけである。部屋の中では靴下すら履いてはいないのだ。
だが、乙女達の秘密の会話が聞けるという欲望が彼に身動ぎ一つ許さなかった。



「ほれ小鳩、この馬鹿を部屋に入れるよ。……どうしたんだい小鳩?急に笑って。」

「あの、私が横島さんの足を持って、メドーサさんが横島さんの頭を持ってます。」

「――?、そ、そうだね。間違っちゃいないけど、それがどうかしたのかい小鳩?」

「だから、これで、女の子二人が持って持って、つまりモテモテ、なんちゃって。」



メドーサ嬢が持っていた横島くんの頭を床に落とす。その高さは約80cm程であった。
そこが三和土であったなら、いかな横島くんであったとしてもダメージを負っただろう。
そして竜神の顔は驚きの表情のまま固まっていた。無論、横島を落とした衝撃ではない。



「あ、そ、そうだね。うん、よ、良かったじゃないかヨコシマ、モテモテだってさ。」

「ちょ、ま、マジで?!モテモテってこれで終わりなの?そりゃないよ小鳩ちゃん!」

「ふふ、終わりかどうかは知りません。でも、横島さんは今からモテモテですから。」



頭を抱えながら体を起こす横島少年。しかし、小鳩ちゃんはまだ足を持っている。
前屈みになり足を持ちながら覗き込む彼女の顔の下には鎖骨が、そして、谷間が。
当然ながら横島くんはその光景にいち早く反応し、これでもかと鼻の下を伸ばす。



「おほ、むむむ、いやこれはこれでモテモテもイイかもしれんな!うはははははは!」

「なるほど、小鳩が地口を好きだったとはねえ。高尚な趣味を持ってるじゃないか。」

「私、昔から韻を踏んだりとかアナグラムとかで遊ぶの好きなんです。変ですかね?」

「別に変じゃあないさ。現に横島は喜んでるみたいだし。いい趣味だと思うけどね。」



呆れながら笑みを浮かべる竜神、想い人をにこやかに見つめる隣人、そして性欲魔人。
2人と1柱それぞれの思惑を抱え、GSメドヨコ除霊事務所はメンバーを揃えたのだ。





つまり、GSメドヨコはいたって順調なのである。







つづく。


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