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恋と殺意とメドーサと

序章 『フラグ』


投稿者名:アルデンテ
投稿日時:11/ 1/12

「再生怪人は弱いってのが、お約束なんだよ、メドーサ!!」
 ちくしょう……
「ま……またこいつに……!?」
 消えていく。
 あたしという存在が。
 何故だ?
 何故いつもあんな男に……
 よこ……しま……
 よこしま……
 横島・・・・・・・







「横島ぁぁぁぁ!!」
 反響する叫び。
 まるで周りから呼びかけられたかのようにソレが耳に響く。
「っつぅ……何が・・・・・・?」
 暗い。
 それに、とても寒い。
「どうやら、あの世とやらじゃなさそうだね……」
 既に一度足を運んだ死の世界。
 そことはとても似ても似つかない薄暗い場所。
「トンネル……か?」
 鉛のように重い体を起こし、周囲を見渡す。
 何が起こった?
 何故あたしは生きている?
「ハッ!」
 刺叉を出す。それを二、三度振る。
 痛みはあるが、動けないほどじゃない。
 ということは……
「どうやら、仕留めそこなったらしいねぇ……横島ぁ」
 ニヤリと笑みがこぼれるのが分かる。
 どうやって生き延びたのかは知らないが、これは幸運だ。
 それに、外ではもうアシュ様が世界を改変し終わっている筈。
「あーあ、横島の奴は私がこの手で仕留めたかったよ」
 だがあたしとてプロだ。
 過ぎたことはもういい。
「さて、日の光を浴びに行くとするかねぇ」
 この先には魔族の世界がある。
 もうドブネズミのようにこそこそ隠れながら生きる必要が無いんだ。
 早鐘のように高鳴る胸を押さえ、トンネルを抜ける。


「なんだ……これは?」
 トンネルを抜けた先に広がる、何の変哲も無い人間界。
 普通に歩く人間。
 行き交う車。
「まさか……アシュ様がしくじった?」
 馬鹿な。
 神・魔界とのチャンネルが閉ざれた状態で人間達がアシュ様を止めた?
 ありえない。そんなことできるわけがない・・・・・・
「じゃあ、誰が……」
 その時、あたしの頭の中を一人の男の姿がよぎった。

『れれれのれ〜』

 ああ、なるほど。
「よ・こ・し・まぁぁぁぁあ!!!!」
 アイツだ。
 美神じゃない!
 他のGSでもない!
 そうあたしの直感が告げている。

 方法は分からない。
 だが確実に、アイツが……横島がアシュ様を倒したに違いない。

「ふ、ふふふ……やってくれるねぇ……」

 もはや、自分の命のことはどうでもいい。
 どうせあたしが生きていることが神・魔界にバレれば処分される。
 でもその前に、せめて……

「あんただけは道連れにしないとねぇ・・・・・・横島!」

 自嘲するかのように、笑うとあたしはその場から離れる。
 目指す場所は唯一つ。

「横島……二度もあたしを破った男か・・・・・・」
 何故だろうか、あの男のことを考えると体が熱い。
 それになんだか頬が緩む。
 こんな高揚感はいつ以来だろうか。

 ああ…・・・横島、横島、横島、横島、横島、横島、横島、横島、
横島、横島、横島、横島、横島、横島、横島、横島、横島、横島、
横島、横島、横島、横島、横島、横島、横島、横島、横島、横島、
横島、横島、横島、横島、横島、横島、横島、横島、横島、横島、
横島、横島、横島、横島、横島、横島、横島、横島、横島、横島、
横島、横島、横島、横島、横島、横島、横島、横島、横島、横島、
横島、横島、横島、横島、横島、横島、横島、横島、横島、横島、
横島、横島、横島、横島、横島、横島、横島、横島、横島、横島、
横島、横島、横島、横島、横島、横島、横島、横島、横島、横島、
横島、横島、横島、横島、横島、横島、横島、横島、横島、横島、
横島、横島、横島、横島、横島、横島、横島、横島、横島、横島、
横島、横島、横島、横島、横島、横島、横島、横島、横島、横島、
横島、横島、横島、横島、横島、横島、横島、横島、横島、横島、
横島、横島、横島、横島、横島、横島、横島、横島、横島、横島、
横島、横島、横島、横島、横島、横島、横島、横島、横島、横島、
横島、横島、横島、横島、横島、横島、横島、横島、横島、横島、
横島、横島、横島、横島、横島、横島、横島、横島、横島、横島、
横島、横島、横島、横島、横島、横島、横島、横島、横島、横島!

 殺したい。
 早くこの手で奴を引き裂きたい。
「こんなに想われて、さぞ嬉しいだろうねぇ横島ぁ」



 十数分くらい経っただろうか、あたしには永遠のようにも感じ取れた時間。
 ついにたどり着いた、憎き美神除霊事務所。
「さて、中の様子はどうかねぇ」
 大小異なる霊気が一、二、三。
 さらに妙なことに妖気が二つ。
 妖気の方の正体はよく分からないが、どうせあたしの敵じゃない。
 霊気の方は、中途半端な大きさがむかつく美神令子。
 一番小さいのが、あのトロそうな巫女かねぇ。
「そして、この一際大きな霊気・・・・・・」
 いつの間にあの美神令子を超えたのかは知らないが、あたしには分かる。

「横島ぁ、みぃぃつけたぁ♪」

 湧き上がる興奮を必死に押さえつける。
 さて、どう料理してやろうか?
 事務所ごと吹き飛ばすのつまらない。
 出てくるのを待つべきか? 

 しばらく思案していると、中に動きがあった。
「先生!一緒に散歩に行くでござるよ!」
「だぁもう!朝からソレばっかりだな!」
「ま、まぁまぁ横島さん…・・・」
 どうやら何か揉めているようだ。
「わーった!行けばいいんだろ!」
「さすが先生でござる!拙者感激でござるぅ!」
「ふん、早く行きなさいよ馬鹿犬」
「拙者は狼でござるぅ!」
「ほらほら。置いてくぞシロ」
 横島と思しき霊気と妖気の一つがこちらへと向かってくる。
 どうやら外出するようだ。
「さて、それじゃあ出会いがしらに挨拶しないとね」
 少しずつ近づいてくる横島。
 高まる興奮。
 もう、あたしは誰にも止められない。
「さあ!このメドーサ、最後の大勝負だよ、覚悟しな!」


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