「これが前回の霊力発生と、今回の状況の比較じゃ」
六道家社長室。
カオスが差し出したのは、先日タマモが転生した時のデータと、以前のブラドー島で発生したデータの比較。
霊力の発生から、その後の霊体への影響などを細かにまとめたレポートだった。
「御主らから依頼された調査じゃが、まず間違いない。あれは、ただの式神じゃないな」
「やっぱりそうですか。でも、どうしてそんなものが……。初代様はなんと?」
カオスの言葉に考える素振りを見せた六道婦人は、黙って書類に目を通していた日向に問いかける。
「覚えていないそうです。本当に忘れているのか、意図的にその部分の記憶を削除した可能性もあります。もしかすれば……、いえ、これはないでしょう」
何か思いついた様子だが、日向はすぐにその考えを拒絶した。
「あの式神に対する情報は、まったく存在しないわぁ。六道家に伝わっている式神は十二神将だけのはず。それなのに、六道家の式神と同等以上の式神が」
「あれは、十二神将とは別のプロセスで作られておる。なんの目的か、分からんが、ワシの予想が正しければ、いずれ小僧の手に負えんようになるじゃろう」
険しい表情のカオスに六道婦人は、
「しばらく様子を見ましょう。タマモちゃんのこともあるし、いま薮蛇になるのは避けたいわ。早々にどうにかなるわけじゃないんでしょ?」
「無論じゃ。テレサからのタマモ譲ちゃんの更なる情報が送られてくれば、具体的な数値も出るじゃろう。それと、新しいルーチンが出来上がったんじゃが、今度の相手ならば、おそらくテレサのものよりも役に立つはずじゃ。よければ、マリアに組み込んだシステムを実践でテストをしてみたいんじゃが?」
「いいわよ。テレサちゃんが動けない間。出来ればマリアちゃんにヘルプしてもらいたいと思っていたの。しばらくは、マリアちゃんにも冥子の手助けをお願いすると思うからそのつもりでね」
カオスはその言葉にうなずくと、新たなデータ解析の為に、マリアを連れて退出した。
「じゃぁ、私達は待ちましょうか。タマモちゃんも人間に特別な敵意は持ってないみたいだし。出来ればこのまま全てが上手くいけばいいのだけど」
「はい。そうですね、社長」
「では、九兵衛を追う前にこれを着けてください」
「なんだそりゃぁ?」
「腕輪ぁ?」
九兵衛が差し出したのは、凡字が彫られた金色の環が二つ。それぞれを横島と冥子に渡すと、それを足首にはめるように促す。
「それは、偉駄天の防具の一つ。私がここ数日にためた霊力が入っています。偉駄天は神界で最速の神。いくら霊能力者といえども人間である以上、本気になった偉駄天と張り合うのは到底不可能。しかし、これを付ければ、一時的に人間でも、偉駄天と互角とはいかずとも、近い速度で動くことが出来ます」
「へぇ、これがねぇ」
横島が足に環を通すと、自然にそれが足首の太さに変化する。
「ただし、あまり長い時間は使えません。速く動けば動くほど、環の霊力は失われていくので使うときだけ環に霊力を送り込んでください。それでは、JRとやらに出かけるとしましょうか」
「そうね。マリアちゃんも今日はよろしくねぇ」
静かに話を聞き入っていたマリアに冥子が、屈託のない笑顔を向ける。
「イエス。気象情報の入力を完了。戦闘区域予想範囲の地形情報入力完了。戦闘参加者の情報を再度確認。CPUの稼働率のリミットの制限を解除。再起動まで3秒……。『Laplace’s system』起動します」
マリアの瞳が工学の光を放ち、明滅する。
「それじゃあみんな、がんばりましょうねぇ」
横島たち一同は、JRに送られてきた挑戦状に指定された新幹線に乗り込んでいた。
もうすぐ、指定された時間になる。
「巨大な霊力を確認。目標のデータとの照合確率93%です」
マリアの言葉に、全員の気が引き締まる。
「はっ、はっ、はっ。やはり、俺が最強だッ! 遅い奴は死ねッ」
窓の外から響く声に身体を乗り出してみると、新幹線を追い抜いた九兵衛が、霊力波をこちらに向けて放とうとしている所だった。
「九兵衛めッ! 何処まで堕ちるつもりだッ」
真っ先に飛び出していくのは、やはり八兵衛だった。
それに続くように冥子が、シンダラを影から召喚して飛び出し、ほとんど同時にマリアがそれに続く。
「あっ、ちょっと待って、ぇ、えッ!!」
それを追いかけようとする横島だが。ヤタを召喚しようとした瞬間、足に填めた環が光を放って、身体は勝手に窓の外へと飛び出していった。
「速いぃいいいいいいいいい」
「よく来たな八兵衛。わざわざ天界からお前が来るとは、よっぽど暇なんだなッ」
不敵に笑いながら九兵衛は、並走する新幹線に向けて霊力波を放つ。
八兵衛ごと狙った妖しい閃光だが、それは放たれると同時に遅れてやってきた冥子と式神達によって打ち落とされた。
「アジラちゃんお願いッ」
苦々しく口を歪める九兵衛は、そんな三人をにらみつけるが、その視線の奥には、どこか余裕のようなものが見え隠れしている。
「ちっ、わざわざ人間如きをつれてくるとは、そんなに俺が怖いの……、ぎょっ!?」
「どけぇっ!」
九兵衛の顔面に飛び込んできたのは、新幹線の窓から空中をぐるぐると回転する横島の姿だった。
不意に付かれた九兵衛の動きが止まる。
そしてそのまま、九兵衛に直撃した横島は、そのまま空中を乱数的に回転しながら、三回転半捻りを決めた後に、新幹線の上へ無様に墜落した。
「よっ、横島クン張り切ってるのねぇ」
顔面が新幹線に埋もれながらピクリとも動かない横島を冥子達が覗き込む。
生えたような足首を掴んでマリアがそれを引き上げる。
「横島サン。お怪我はありませんか?」
「死ぬかと思った……」
とりあえず命に別状はなさそうな様子に安心する一同だが、八兵衛が叫ぶ。
「追いついてきたッ! 皆さん気を付けてください」
まさか、一度引き離された新幹線に追いついてくるとは思っていなかった冥子は驚きを隠せない。
徐々に大きくなる九兵衛の姿が、一瞬にして消える。
「いかんッ!!」
何かに気が付いた八兵衛が叫ぶと同時に姿が消える。
「目標の出現位置を予測。待避します」
此処に居ては危ないと判断したマリアは、横島を引きずり後方へ。若干遅れて、シンダラが冥子を乗せて空へと駆け登る。
冥子とマリサが逃げた直後、空間を割いたようにして、九兵衛と八兵衛の姿が浮かび上がる。
九兵衛が滑空するようにして放った蹴りを、八兵衛が腕を交差させて防いでいた。
突然の出来事に驚いた冥子達だが、最もこの現象に驚いていたのは、八兵衛だった。
「九兵衛、その技はッ」
勝ち誇った笑みを浮かべて、八兵衛から距離を保った九兵衛は、
「そう。これぞ偉駄天の中でも限られた天才にしか使えない、最高の秘術『超加速』。天界でぬくぬくとやっていた割には、お前も使えたとはなぁ。俺より少し速いくらいで威張りやがって、今日からは俺が最速だッ」
人間如きいつでも殺すことが出来るというつもりだろうか、離れて見る冥子とマリアを無視して八兵衛に襲い掛かる。
それを見越していたかのように若干早くに、八兵衛が加速状態に入った。
「(私の方が早くに加速状態に入った。これで、)」
もはや悠長なことをしている暇などないと、一瞬で決めるつもりで詰め寄る八兵衛だが、その顔面に、九兵衛の拳が放たれる。
「遅いッ!」
同じ加速状態であっても、九兵衛の動きが僅かに鋭く速い。まさかの展開に、吹き飛ばされる八兵衛を狙い、九兵衛がさらに蹴りを放つ。
「しまったッ」と、思った時には九兵衛の足が目の前に迫ってきていた。
「これで、俺が最速だ」
次に来る衝撃を予想しながら、全身の霊力を防御に回す。
「待ちなさいッ!」
驚く九兵衛。自分達が加速状態にあるにもかかわらずに、予想だにしない背後からの声に反応して、蹴りの威力が数段劣った。
吹き飛ばされた八兵衛から、視線を逸らして背後を振り返ると、九兵衛に向かって雷と炎の渦が一直線に飛来してきていた。
声を上げる暇もなく攻撃を受けた九兵衛だが、そのとき確かに見た。
冥子の足元から放たれるよく知る光。偉駄天ならば、誰もが持っている防具の存在を。
爆音と衝撃に包まれる九兵衛をすり抜けるようにして、吹き飛ばされた八兵衛の元へたどり着く。
運転席の天上付近に倒れていた八兵衛の為に、冥子が治療のための式神を召喚する。
「ショウトラちゃんお願い」
「まさか、偉駄天の防具を使いながらとはいえ超加速を行うとは……」
九兵衛と同じように八兵衛も驚きを隠せない様子。
そんな驚きにもまったく気にしない様子で、冥子が八兵衛の無事に安堵する。
「くっ、くっ、くっ。八兵衛の奴、まさか人間如きに防具を与えていたとはな」
身に付けていた布はボロボロに、肌や髪も焼け焦げていたが、しっかりと二本の足で立ち上がった九兵衛が、怒りをあらわにした瞳で二人をにらみつける。
「わわわっ。もしかしてぇ、怒ってるぅ?」
一変した殺気に、冥子の足が半歩下がる。
「なるほどなぁ。その女も俺と同じ天才だったというわけか。だがなぁ、偉駄天の防具を使ったところで、人間がいつまで俺の速度についてこれるかな」
先ほどの勢いはどうしたのか、すっかり及び腰の冥子。その横では八兵衛が、おぼつかない足取りで何とか立ち上がる。
「待てッ、九兵衛。お前の相手は私が」
冥子をかばうように前に出るが、九兵衛の興味はすでに八兵衛から冥子へと移っていた。
「半死のお前なんぞに、興味はない」
九兵衛は霊力を逆立たせながら、冥子を指差す。
「女。まさか人間でありながら、俺についてきた才能は中々のもの。人間にしとくのはもったいない。もし生まれ変われたら偉駄天になるがいい」
顔を引きつらせながら、さらに一歩二歩と下がっていく。だが、これ以上下がることは出来ない。さすがに、新幹線の真正面に墜落すれば、どれだけの霊力があろうが、人間の肉体では、一瞬で挽肉になることは間違いない。
恐怖し、怯える冥子の前に八兵衛と式神が立ちふさがる。
だが、此処に来て冥子の表情から恐怖が消え去り、笑顔が戻っていく。
その意味は八兵衛と式神達にも理解できていた。
「『蝉のように瞬息を翔ける“変異抜刀蝉時雨“』」
危機を察知した九兵衛が振り返ると、鞘から抜き放たれた日本刀が九兵衛の身体を切り裂く。
霊刀状態で横島の身体を操る蝉丸と、偉駄天の環を必死に制御する横島が九兵衛に向かっていたのだ。
偉駄天の速度を持った、蝉丸の剣技だが、九兵衛も必死に刃から逃れようと上体をそらす。
「『浅いッ!』」
皮膚に刃が食い込んだが、致命傷には僅かに至らない。
『横島殿っ、加速のタイミングがずれてましたぞ』
「すまん、だけどこれ中々扱いにくいぞ」
横島の足元輝いていた偉駄天の防具から光が消える。
蝉丸を再び鞘に収めて、九兵衛をにらみつけるが、九兵衛の姿がすぐに消える。
それまで九兵衛がたっていた場所に、マリアが銃弾を放つ。
再び姿を現した九兵衛を狙って、今度は左腕のロケットアームを伸ばして掴みかかる。
「左辺上空、距離200mに目標を予測」
マリアが言った通りの場所に九兵衛の姿が現れる。
九兵衛は、右足首を捕らえられて新幹線の上へと叩きつけられた。
「ぐはっ! くそっ……」
苦々しげに起き上がるが、すでにマリアの銃砲と、蝉丸が、九兵衛の逃げ場を奪っていた。
「僅かでも霊圧の上昇を確認すれば、射殺します。超加速は使わないでください」
無常に告げるマリアに、九兵衛はおとなしく座り込む。だが、その目はいまだに諦めていない。隙を見せればすぐに飛び出せるようにと、マリアと横島の二人を観察している。
「ちっ。だがな、八兵衛よ。これで俺に勝ったつもりか?」
完全に逃げ場をなくしながら、いまだに強気の九兵衛。まさか、超加速以外にも切り札があるのかと思い、全員に緊張が走る。
「四対一で、一人を追い詰めるとは、それが正義のすることかッ。まぁ、八兵衛は俺よりも遅いんじゃ仕方ないだろうな。俺より遅いから、仕方なく、4人で追い詰めて、しかも自分は大して役に立てないんじゃぁ仕方がないよなぁ。俺が、ちょっと早くなってしまったせいで」
遅いと連呼されて、さらに正義に反するなどと言いたい放題の九兵衛に、さすがの八兵衛も怒りをあらわにする。
「貴様ッ! 何が言いたい」
「少しでも、偉駄天の誇りがあるならば俺とお前で決着を付けようじゃないか。それとも、俺より遅くて、適わないことを認めてこのまま俺を天界に連行するかぁ?」
「決着も何も、すでにお前負けてるじゃないか?」
横島が当たり前のことを告げるが、頭に血が上った八兵衛に、その助言は届かない。
「いいだろう。みなさん、こいつとの決着を一対一で付けさせてください。手出しは無用です」
「いや、だからもう決着はついているだろう? 何をこれ以上戦うって」
「俺は別にいいんだぜ。八兵衛が俺より“遅い”、“のろま”なんじゃあ仕方が無いからなぁ」
「……いいだろう。貴様には私が引導を渡してやる」
「ちょっ、冥子さんも止めてくださいよ」
「八兵衛さんどうしても戦いたいの?」
「最速こそ偉駄天。此処までコケにされては、私にだってプライドはあります。やらせてください」
二人の言葉に、悩む素振りを見せる冥子だが、最終的に八兵衛の意見を認めることにした。
「いいんじゃない。きっと大丈夫よ八兵衛さんなら」
「大丈夫って何処にそんな根拠がッ?」
「う〜〜ん。なんとなくかなぁ。それに、誰にも譲れないものってあると思うから」
「それじゃあアンタもそいつをどけてくれるか」
無言で銃口を向けるマリア、一瞬の沈黙の後に銃口を納めた。
「へへっ、ありがとよ。それじゃあ八兵衛いくぜッ!!」
九兵衛の声に応じるように、二人の姿が掻き消えた。加速状態に入り、通常の時間の流れに在る三人からは認識できない。
風がぶつかるような音が数回響き、突然マリアが動いた。
冥子の前に立ちふさがるように、そしてそのまま吹き飛ばされる。
「残念。狙いはこっちだ」
マリアの行動についていけず、おろおろする冥子の前に九兵衛の姿が現れる。
冥子をあざ笑うような九兵衛は、右手から霊力を放出して、足にはめていた偉駄天の防具を破壊する。
悲鳴を上げて新幹線から落下する冥子に向かって横島が走る。
「こんなところから落ちたら、マジで死んじまうだろう」
新幹線から飛び出す横島だが、冥子と同じように右足に衝撃が走った。防具を破壊されたようだ。
それでも横島は、痛みを堪えて冥子向かって手を伸ばす。伸ばした腕で冥子の身体を抱きしめると、同じく準備していた文珠を地面に向かって投げつける。
『軟』と浮かび上がった文珠は、二人が落下する直前に効力を発揮し、二人の身体に与えられる衝撃を吸収した。
「貴様ッ、卑怯だぞ」
背後から殴りかかった八兵衛の拳を振り返りざまに受け止めると、八兵衛の腹にめがけて蹴りを放つ。
「馬鹿か。修羅と化した俺がそう簡単に諦める訳ないだろう。お前が俺より遅いのが悪いんだよッ。さて、先に面倒なものから片付けさせてもらう」
再び加速状態に入った九兵衛は、止めを刺すために落下した冥子たちへと向かうが、
「なっ、そんなはずはない。加速状態に入る前に動いていただけだ」
影の中から、飛び出そうとしていたシンダラの目が、一瞬ではあるが九兵衛をにらみつけたように見えた。
今まさに動いたように見えたのは錯覚だと思い、右手に霊力を集めていく。
そして次の瞬間、躊躇なく飛び出していく九兵衛の目の前で、横島の影からヤタが飛び出した。加速した空間の中で翼を確かに羽ばたかせて、九兵衛を狙う。
「なんなんだッ。お前達本当に人間なのかッ」
嘴を軸に回転を加えて一気に九兵衛に飛来するヤタ。
九兵衛は飛来するヤタを叩き落すために拳を振り下ろす……
スカッ!
何が起こったのか理解できずに、空ぶった拳の先を見つめ。周囲を見渡す、そして理解した。
拳が当たるよりも僅かに遠くの空間で、ヤタの時間が通常の中に戻っていた。
加速した時間の中での出来事が、嘘だったかのように、ヤタの動きは止まっているようにその場所から動こうとはしない。
「脅かしやがって。だが、これでおわりだッ」
「それは貴様だ。外道焼身霊波光線ッ!」
二人に気を取られていた九兵衛の背後から八兵衛の霊力波が叩きつけられた。
「しま――っ!?」
激しい閃光の後に、今度こそ完全に黒焦げになった九兵衛がその場所に転がる。
八兵衛は九兵衛が動かないのを確認すると、加速状態を解いていく。
「これで、おわ「シンダラちゃんッ!」「ヤタッ!」えっ!?」
通常の時間の流れに戻った八兵衛に、シンダラとヤタが捨て身で向かってきた。
「ちょっ、戦いはもうおわぁああああああああああああああああああああああああ」
……同じように、地面に転がる偉駄天二人。
偉駄天の騒動を巡る争いに終止符が打たれた。多くの犠牲を残した上で……、
「すっ、すまん。八兵衛ッ」
あわてる横島の横で、冥子が頬を赤くしていた。
「横島クン、もう大丈夫だから放してくれても大丈夫よ……」
顔を胸に押し付けられるように抱きしめられる冥子は、身体を揺り動かして横島から離れようとする。
「すみません。すぐに離れます(ああ、でもすぐに離れるのはもったいない)」
さわ。
横島の右手が冥子の何処かに触れた。
「え……っ!!? いぁあああああああああああああああああああああああああ」
泥のように軟化した地面の中から、残った式神達が、湧き出すように飛び出してきた。
まるで間欠泉が噴出したように、横島の身体は式神達に吹き飛ばされて大空高くに舞い上がる。
その後、散々踏みつけられた三人が、発見されたのは、冥子が正気を取り戻してから30分ほど過ぎたころだった。
「それでは、私は九兵衛天界に連れて戻ります」
冥子の式神、ショウトラによって復活を果たした八兵衛に担がれて、呪縛ロープでぐるぐる巻きにされた九兵衛が悔しそうな表情を浮かべる。
「八兵衛さんこれを」
別れを告げようとする八兵衛にマリアが一枚の紙切れを手渡す。
「……すみません。こいつを置いたらすぐに戻ってきますから」
どうやら、その紙は日向からの伝言が書かれていたらしい。
哀愁漂う偉駄天の背中が見えなくなるのを確認すると、三人もまた帰路へと向かいだした。
「(今日の感触を俺は一生忘れない)」
そして横島は、この日の戦いで得た右手の感触を熱く心に刻み込むのであった。
よろしければ、感想などお聞かせください。お願いします。
それでは、また近いうちにお会いしましょう。 (案山子師)
カオスが解析役として十分に機能してるみたいですね、暮らしの心配はなくなったか。
戦闘も横島はやる時はやるようでかっこいいです。
続きも楽しみにまっています (sora)