絶望が京介をおおっていく。
皆本クンが言葉をつむぐ。
私は泣き続ける。それを見て悲しげな京介が私を見る。
「……兵部、一度裏切られたことがあったといって人を信じないというのは間違ってる」
「キミは裏切られたことがないからそういえる」
「管理官はお前を裏切ったことはないだろう?」
「不二子さんは裏切ったことはないけどね」
裏切るとか裏切らないとかじゃない、不二子さんはまっすぐすぎるだけだ。と京介が私を見て言う。
そして手を差し出す。
「一緒に行こう、不二子さん」
「それはできないわ」
「……不二子さん」
「あの子たちにもそういって手を差し出すのでしょう? 京介、不二子はパンドラのためになんて動けない。どうしてわかってくれないの?」
これは嫉妬だと思う。
あの子達のことは大好きよ。
でも京介があの子達のことを言うたびに胸が締め付けられる。
「……不二子は京介のこと信じてる。でもパンドラという組織は信じることができないの。だってノーマルの人たちのことも不二子は大好きだから」
私は言葉をつむぐ。これはある意味嫉妬でしかないとは思うけど。
「不二子は、あの時の二人にもどりたいだけなの!」
昔にもどれはしないのはわかってる。
わかってる、わかってる、わかってる。
でも感情がわかってくれないの。
頭ではわかっていても。
私はただ泣き続ける。
そして京介に向かって大声で怒鳴りつけた。
「どうしてわかってくれないの? 私は京介がすきなの。でもみんなも大好きなの! 好きの種類が違うだけなの! どちらも私は裏切れないの! でも心が叫ぶ、京介が好きだと。どうしてわかってくれないの?」
もう支離滅裂だ。と思う。
でも風が流れるように、水が流れるように、揺らぐ心はとめられない。
「だからお願い……あの時の二人に戻りましょう?」
「……それはできない。不二子さんのことは好きだけど」
ノーマルを信じろというのはもうできない。と京介は言う。
差し出した手をおろすことはなく。寂しげに笑うのだ。
「お願いだから、一緒に行こう。パンドラへと」
「不二子はいけない!」
無理やりにでも連れて行けばいいのかな? と京介が囁く。
……どうしてわかりあえないんだろう。
どうして世界はこんなに残酷なんだろう?
私はただ泣き続けることしかできなかった。