神様なんて信じない。
だから神様なんて存在しない。
神様なんて大嫌いで。
闇の中できっと私は泣き続ける。
「……兵部、信じるということができないのか?」
「……信じて裏切られるのはいやだからね、坊や」
愛してるって言葉さえも遠い昔の追憶。
揺らぐ心はまるで漣。
ゆれてゆれてゆれてゆれ続ける。
多分私はあの時からずっと揺れている。
「……不二子は、信じてる」
「僕はパンドラのみんなは信じてる。不二子さんも信じてる。でもバベルのやつらは信じることなんてできやしないさ」
皆本クンの言葉も京介の心を引き戻せない。
あの時ずっとずっとずっとずっと一緒だと思ってて。
ずっと一緒にいられると信じていた。
でも未来は変えられる。
「……大好きよ。だから信じてほしいの私が信じてるものを」
「……裏切られるのは間違いないさ」
人は裏切る。それは間違いない。でも信じないって思ってると前に進めない。
「パンドラの子たちもいい子よ。それはわかってる」
「そうだね」
「私はパンドラの子たちのことをどうにかするわ。きっとあの子たちもバベルにくればうまくやっていけるわ。だって皆本クンのことをあの子たちは大好きなんだもの」
……京介が笑った。その言葉を聞いた途端。
それは絶望を笑いという形にしたようなそんな感じの表情。
「……バベルなんて消えてしまえばいいさ」
不二子さん、利用されているだけだ。と彼はとてもさびしげな表情で言う。
そんなことはないと私は逆らう。
いつもこの繰り返し。
「ねえ、バベルがいやなら、不二子とどこか遠くへと行きましょう。すべてがすんだら、ね? 誰も私たちを知らない遠くへといくの。そこで一緒に暮らすのよ。
バベルもパンドラもない世界へと。バベルのいくのがいやっていうのなら、不二子がパンドラの子たちをなんとかしてみせる。ノーマルとエスパーは共存できるもの。不二子は信じてる」
「……それができたらどんなにいいか」
夢物語は夢で終わる。と京介が笑う。
絶望が形になる。そんな微笑がみたいわけじゃないの。
でもそんな微笑だった。
絶望が焦燥となる。
焦燥が悲しみとなる。
そして怨嗟が連鎖される。
どうしてもどうしてもどうしてもそれはメビウスのリングのように。
裏も表もないもの。
神様はとても残酷だ。
とても優しいものだとあの人が昔いっていたけどそれは嘘だ。
神様は世界をみてない。
こんな悲しみに満ちた世界を。