会いたくて、ただ会いたくて、会いたくて。
でも会えない。
すれ違う心が揺れていた。
「不二子さん」
「……」
目の前に現れたその姿を見るだけで抱きつきたくなった。
でも私は強い瞳で京介をにらみつける。
「兵部京介、貴方はどうして彼女たちを信じてあげないの?」
「……そこにいる坊やが信じられないから」
信じたい、信じたい。信じられない。
それは私にもいえること。
信じる心が力になるのに。
でも揺らぐ心がそれを妨げる。
京介が目の前に現れる。漣が耳元で囁いている。
皆本クンはじっとだまって私達を見ていた。
「……不二子さん、僕はキミを」
「言わないでその言葉は」
唇に残っている感触はまだ消えない。
唇にだけ優しさを残して、貴方は消えてしまった。
最後のキスは悲しみの味だった。
それは覚えている。
柔らかく優しく笑う京介。
「……不二子は、貴方を信じたいの。あの子達も信じたいの。ノーマルとエスパーは共存できるわ」
「いつか坊やも彼女たちを裏切る。それは間違いないさ」
「そんなことはないわ!」
揺らぐ漣の音、あの時の優しい唇の感触を思い出すたびに私は愛しさを再確認していた。
あいしてる。と唇でだけ囁く貴方。
心が締め付けられそうなほど痛い。
「言わないで……」
心が揺らぐ、駄目だと呼ぶ心がある。
「パンドラの子たちは、ノーマルに捨てられた子ばかりだ」
「……そんなノーマルの人たちばかりじゃないの。不二子は信じてる。そんな人たちばかりじゃない。ノーマルとエスパーは共存できるわ」
いつもいつもいつも平行線。
交わることのない二つの線。
黙って私たちを皆本クンをは見ていた。
どこか寂しそうな目で。
それは多分未来の……チルドレンたちと自分を見ている気持ちだからかもしれない。