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ラブレター フロム ・・・・・・(リレー)

第5話 / ひとつ屋根の下!!


投稿者名:B-1
投稿日時:09/ 4/26



 「ここは一旦基本に戻って、落ち着いて考えてみるか……」


 さて、今俺がどこに向かっているのかというと、他でもない美神除霊事務所だ。
 今まで結局ドタバタ移動してばっかだったからな。
 ここらでいっちょ腰を落ち着けて、冷静に考えてみようってわけだ。


 




 第5話 / ひとつ屋根の下!!








 ちーっす。


 『こんにちは、横島さん。』


 おいっす、人工幽霊一号。……ってありゃ?中に誰もいないのか?


 ――どうも人工幽霊一号以外に反応が無いと思ったら、事務所内はもぬけのからだ。
   ここに来る途中でタマモに会ったわけだから、まだ帰ってきてないのは予想通りだったけど。
   美神さんとおキヌちゃんにシロまでいないとは。


 『美神オーナーは仕事の関係でお出かけに、おキヌさんは買い物に出ておられます。
  タマモさんは遊びに出かけたようですね。どこに行くかまではおっしゃってませんでしたが。 
  シロさんは「先生と散歩に行く」と言って出て行かれたのですが、途中で会いませんでしたか?』

 「いや、会ってないな。多分行き違いになったのかな」

 
 ――危ねぇ危ねぇ。
   やっぱりシロのヤツ、俺のアパートに向かってたか。 
   しかし誰もいないってのはちょっと意外だったな。
   いや、でも逆に考え事するにゃ絶好のチャンスか。


 んじゃ人工幽霊一号、俺向こうの部屋で休んでるから。
 もしかしたら寝入っちゃうかもしれないから、誰か来たようだったら声かけてくれ。


 『珍しいですね、横島さんがそんなこと言うなんて』


 ああ実はな……

 ――いや待てよ?ここで人工幽霊一号に言ったら美神さんにバレる確率が高くなるじゃねーか!

 ここに来るまでにちょっと移動が続いた上に、久々に母さんと電話越しにやりあってな……と言うわけでよろしく頼むわ。


 『了解しました。体調にはお気をつけくださいね』





 さて、っと――
 とりあえず1つ1つ整理していくか。

 まず分かっている事は


 ・アパートに投函されていた手紙と、妙神山から恐らく事務所宛にきた手紙、少なくとも2つの手紙が存在する


 う〜ん、妙神山から事務所宛に来ていた手紙の方は現物を見ていないからなんとも言えないな。
 とりあえず自分のアパートに来ていた手紙の方だけを考えてみるか。


 ・アパートに投函されていた方は、雨に濡れてほとんど文面が読めないが、

 【大好きです。来てくれるまでずっと待っています・・・・・・○月○日、pm■■■■ ■■■■にいます】

  という文面だけはどうにか読み取れた
 ・差出人は判別出来ない
 ・普通に郵便として配達されたのか、それとも直接アパートの郵便受けに投函して行ったのかは不明
 ・どちらにせよ差出人は俺のアパートの場所または住所を知っている
 ・その手紙にはハチミツのようなものが付着していた


 こんなところか?現段階で分かっているのは。
 これだけの情報から差出人を推測していくしかないわけだが……俺に出来るのか?これ。
 まぁ、ダメもとでやってみるしかないか。


 一番重要……と言うか興味あるのは差出人だよなぁ。
 俺がこんな手紙を貰える日がやってくるなんて想像だにしなかったけど。
 しかし、ホントに心当たりが無いんだよなぁ。
 誰なんだろ?


 親父の悪ふざけってセンも無いようだし……。
 やっぱ可能性として一番高そうなのは俺が今まで関わった女性陣の中の誰か、ってのが妥当なトコだろうなぁ。
 と言うより一目惚れだとか、名前も分からないような女性からっていう可能性まで考えてたらキリないしな。

 ……ところでコレ、実は男からの手紙でしたーってオチじゃないよな?

 実は死んでなかった勘九郎からでしたーとか、
 雪之丞からの

 【(決闘が)大好きです。来てくれるまでずっと待っています(佐々木小次郎のように)○月○日、pm■■■■ ■■■■にいます】

 なんていう果たし状だったりとか?

 ……この方向に深く考えるのは止そう。なんだか心が折れそうだ。



 とりあえずタマモとパピリオはないだろうな。
 2人とも、もし自分で手紙を出したんだとしたら俺と会って何の反応も無いのは不自然だし。
 人前だから誤魔化したって事も考えられるけど……俺と2人きりだった時間もあったんだし、可能性は低そうだ。
 後は……ベスパも結局違ったみたいだな。

 となると――まずはこの事務所内から考えていくか。

 タマモは抜かすとして、美神さんとおキヌちゃんとシロだな。
 この3人に共通して言える事は俺のアパートの場所を知ってるって事だ。
 つまり、差出人の条件の1つはみんな満たしてる。
 でもハチミツが引っかかるんだよなぁ。
 美神さんやシロはそもそも滅多にハチミツ触らないしなあ。
 おキヌちゃんは料理に使うだろうから触る機会もあるだろうけど、手紙に付けて気付かないまま出すようにも思えないし。
 そもそもこの3人に関して言えば、わざわざ俺のアパートに来て郵便受けに入れるより、事務所で一緒にいる時にこっそり渡すって方が自然な気もする。


 
 他にこの近くにいる女性の知り合いと言えばエミさん、魔鈴さん、冥子ちゃんか。
 エミさんは無いだろう、完全にピート一筋だしな。「あのシリは私のもの」なんて堂々と言ってた人が急に俺になびくとは思えん。
 魔鈴さんは……ハチミツも調理で使うだろうし、俺のアパートも知ってるだろう。
 ただ、俺に対してあんな手紙書くかって言われると……とりあえず保留、かな。
 冥子ちゃんは……どうかなぁ?イマイチよくわからん。嫌われてはいないと思うんだが。


 
 小鳩ちゃんと愛子はどうだろう?
 愛子はやろうと思えば出来るんじゃねえかな。
 ハチミツがついたのは調理実習後あたりにあれを書いたからか、家庭科室で書いたからか……。
 でも愛子なら学校で直接渡す気がするんだよなぁ。しょっちゅう一緒にいるんだから渡す機会なんていくらもあるんだしさ。
 小鳩ちゃんも似たような感じか。隣に住んでるんだから渡す機会は愛子よりもっとあったはず。
 ネックはハチミツ……貧あたりが新しい商売用に仕入れたって可能性もあるか。


 
 他に俺に好意持ってそうな人とか交流ある人か……。
 小竜姫様にワルキューレにヒャクメ、グーラーに月神族の皆……。
 ダメだ、距離がありすぎる。特に月神族。
 手紙出して後日会うなんて二度手間するくらいなら、直接会いに来てそのまま告白するだろ。
 グーラーの方も行方知らずだから何とも言えんけど、ガルーダの子供育ててるのならそこまで余裕があるとも思えんし。
 妙神山にいる小竜姫様とよく遊びに来るヒャクメなら……出来ないこともないか。
 遠いっちゃ遠いけど、俺らでも一日で行ける範囲だしな。
 ハチミツも妙神山なら置いてあるだろう。自炊してたみたいだし。
 あ、でもワルキューレは軍人だからそうそうこっちには来れないか?
  
 うーん、他になんか情報は載ってないか……。
 にしてもホントに随分文面が読み取りづらいな。
       ・
       ・
       ・
       ・
       ・
       ・ 
       ・
       ・
 あれ?もしかしてコレ雨で濡れただけじゃなくて、元から字が下手だったか、もしくは殴り書きみたいな状態だったかしたのか?
 となると、相手は日本人じゃない可能性や何らかの事情で切羽詰った状態で書いて投函した可能性まで考慮せにゃならんのか。
 もう俺の手には負えないんじゃ――




 「ただいま〜」

 『おかえりなさいませ鈴女さん。成果の方はどうでしたか?』

 「それがさー、聞いてよ〜――」






 ――あ、やべぇ。普通に鈴女の事忘れてた。
 つってもあいつ確か女にしか興味ないみたいだし、まぁ問題ないか。
 美神さんとおキヌちゃんにしか興味示してなかったもんなぁ。
 それにしてもいつの間に人工幽霊一号と仲良くなったんだ?鈴女のヤツ。
  

 『あ、横島さん。鈴女さんがお帰りになられました』

 「ああ、さっきから聞こえてるよ。話聞いてるぶんにゃ随分仲良いみたいだけど、2人とも一体いつの間に仲良くなったんだ?」


 鈴女が来たばっかりの頃は2人が喋ってるところなんてほとんど見なかったと思うんだけどな。


 『それはですね、しばらく前に全世界を巻き込んだ核ジャック事件があったでしょう?横島さんたちも深く関わった』


 アシュタロス達と戦った時の事か?
 そういやあの時は皆して出ずっぱりだったからほとんど事務所空けっぱなしだったけど、大丈夫だったのか?


 『元々それ以前からある程度親しくはあったのですが……。
  あの事件の時、私は全力でこの事務所を守っていたんですが、御存知の通り鈴女さんの巣は屋根裏部屋の軒先にあるでしょう?
  結果として事務所に加えて、鈴女さんを妖怪達から守るような形になっていて…今のように親しくなり始めたのはその時ですね。
  それからは外敵から守ってあげる代わりにと言っては何ですが、鈴女さんに外の世界の事を色々と教えてもらってるのですよ』

 「そっか、お前動けないもんな。」

 『ええ。大きな除霊や事件の無い時はコブラに憑依するわけにもいきませんから、結構ヒマなんですよ』

 「それにしてもあの鈴女が、ねぇ……」
  
 『そうか、横島さんは自宅から通ってるから知らなかったのかもしれませんね。
  今では美神オーナーやおキヌさんはもとより、シロさんやタマモさんとも仲良くやっていますよ』

 「へぇ、成長したもんだな。出会った頃にゃ考えられなかったよ」

 『オーナー達も重宝してるみたいですよ?色んな能力が使えるし、何より食費がほとんどかかりませんから』


 色んな能力……確か“精霊を操る能力”に“姿を消す能力”、“1分間だけ人間大になれる能力”だったな。
 あとは見鬼君以上の探知能力か。
 “ご飯を30粒食べられる能力”なんてことも言ってたが、ありゃ能力とは言わんな。

 「そういやアイツ何食ってんだ?頑張ればご飯30粒食べられる、とか言ってた気がするが」

 『皆さんと同じ食事をつまんでいますね。今日のように出かけるときは、外で花の蜜などを摂取してくる時もあるようですが』


 ―――何だって?
 花の蜜?そういや手紙にもハチミツみたいなのが付いてたな。
 ――いや、まさかなぁ。
 待てよ?
 あの手紙、もし直接郵便受けに投函されたんだとしたら、送り主にしてみれば入れてるところを誰かに見られたくはないはず。
 でも鈴女が送り主だとすれば、妖精の特殊能力で姿を消せるんだからその問題はクリアできるよな……。
 それにあの読み取りにくい字……。
 もし、もしだぞ?
 あの手紙を鈴女が書いたとして、だ。
 人間並みにデカくなってられるのは1分間だけだから、その少ない時間内に手紙書こうとして、焦って字が雑になったって事……か?
 そういや鈴女のヤツ、日本語の会話は出来たけど読み書きしてるのは見た事ないし……。
 いや、まさか!?でも……もしそうだとすると条件もピッタリ当てはまるし、納得がいく……な。
 いや、でもまさかなぁ……あの鈴女が俺に……?


 『どうかしましたか横島さん?急に黙り込んじゃって。具合が悪いなら……』

 「い、いや何でもないんだ人工幽霊一号。それより、鈴女はまだ隣にいるか?
  いるんならちょっと話したいことがあるからこっちに呼んでほしいんだが。
  あとプライバシーにかかわる事なんで、悪いけど内容は聞かないでほしいんだ」

 『はぁ、わかりました。そういうことならこの部屋内のセキュリティを切っておきますね。
  鈴女さーん、横島さんが――』


 正直信じられないけど、確かめておかなくっちゃ、な。














 「なに?横島。話があるんだって?」


 ああ、そうだ。鈴女、実はその、あの事なんだけどさー……。


 「え?あの事って……?」


 アレだよアレ。お前、俺に何か言いたいことがあるんじゃないのか?


 「!!!」


 ――お、動揺してるみたいだ。てことはやっぱり送り主は鈴女で決まり…か?


 「そ、それは……確かにあるけどさ。でもまだ心の準備が……。」


 心の準備が必要なのはわかるよ。
 わかるけどさ、どのみち言うんだったら早いうちにハッキリさせたほうがいいんじゃないか?


 「確かに……そうだけど」


 だろ?
 だからさ、今なら人工幽霊一号以外誰もいないんだし、ちょうどいいチャンスじゃないか。


 「わかった……言うわよ。一度しか言わないから心して聞いてよね」


 ああ、わかってる。
 俺だって真剣に聞くって。


 「あの、私、その……」


 ――まさかホントに俺がこんなシチュエーションに……。
   こりゃ夢か?
   結果が怖くて、確かめる気にはなれんけど。
  

 「あ…」


 ――「あ」!
   「愛してる」の「あ」!
   「好き」じゃなくて「愛してる」ときたか!
   くぅ〜、まさか一足飛びに段階飛ばしてくるとは!
   鈴女も中々どうして情熱的なヤツだったんだな!!


 「あ……」


 ――あー、もう!焦らすなよ。
   その先の言葉はわかってるんだからさっ!
 
 出来れば早く言ってくれよ。
 こっちの覚悟は、出来てるんだから。


 「わかってるわよ、うるさいわね!今言うところだったのに!」

 
 お、おう。悪かったな、ちょっと焦れてきちまって……すまん。


 「まったく……コホン。じゃ、じゃあ改めて今度こそ――」
 






 「ありがとう」







 そうそう、苦節1○年、遂に俺にも愛の……って、へ?


 「え?今何か言わなかった?」


 い、いや何でもない。続けてくれ。
 
 ――いやまさかそう来るとは……流石に想定外だった。


 「そう?ならいいけど…。今まで言えなかったけどね、あんたには結構感謝してんのよ、これでも」


 ……そう、なのか?どーにも初対面の時のインパクトが強くてそうは思えないんだが。
 美神さんやおキヌちゃんと俺とじゃえらく対応が違ったし。
 それにお前は美神さんにゾッコンだったからてっきり……


 「最初に虫扱いしたのはそっちでしょうが!
  あ、あの時はその……イタズラは妖精の本能みたいなものだから。
  そう、あんたが女の子を見れば飛び掛るのと同じ様なものなのよ」


 そらま、そうだが……なんかそう言われると複雑だな。
 しょっちゅう女の子に声かけてるのは事実だから、言い返せないのがなんか悔しいが。


 「い、いいから話を戻すわよ。私はあんたに出会ってなかったら、美神さんにも出会えなかった。
  それにそもそもあんたに保護されてなきゃ、今こうして生きていられなかったかもしれない。
  束縛されるのを嫌って、つい勢いで飛び出してきちゃったけど、妖精ってそんなに強い種族じゃないしね」


 確かにまあ、そう言われりゃそうだが。
 でも、それならもっと早く言えたんじゃないか?
 何も今このタイミングじゃなくても。


 「あの後すぐ核ジャック事件が起こっちゃったでしょう?
  それで慌しくなって、決着がついたと思ったら今度は人狼やら妖狐やら居候が立て続けに増えて、通り魔事件が起こって……。
  かと言ってニューヨーク行きの送別会の時はそういうこと言い出せる雰囲気じゃなかったし……。
  なんだか言うタイミングを逃して、そのままついズルズルと言えないまま今まできちゃったから、言い出しづらかったのよ」
 

 そっか、もうそんなに経つのかぁ。
 おまえがここにきてから。
 なんだか印象深い事ばっかりだから、どれもこれもつい最近の事だとばかり思ってたけど。





 「だから、今改めて言おうと思ったの」









 「“ありがとう”!」







 

 ――ドチクショォォォーー!!
   やっぱりか!やっぱりこういう展開なのか!
   ちょっと自惚れてみることすらイカンと言うのかーー!!
   運命の責任者、というか宇宙意志の野郎出て来い!
 
   クッソーー、今回こそはと思ったのによー……。
 

 「も、もうこれでいいでしょ。じゃ私行くから!」


 あ、おいちょっと待っ……行っちまった。
 …なんだ、鈴女のヤツ、顔真っ赤だったじゃないか。
 あー、でも…俺も今凄く締まりのない顔してんだろうなぁ。
 ハァ……やっぱやり慣れない事するもんじゃねぇって事か…。

 けど……あれ?なんだろう、この感じ。
 思ってたのとは違うけど……なんかいいなこの、感じ。
 鈴女が送り主じゃないと判って、もっとガックリくると思ってたけど、でもそんなに悪い気分じゃないっていうか、むしろそう――
 
 
 ――凄く、嬉しい。
 

 いや、嬉しいって表現で合ってるかどうかわからないけど、こう、じんわりするというかほんわかするというか……
 こういうのなんて言うんだろうな?
 でも、こういう風にストレートに感謝されるのって凄く、いいな。
 考えてみると、今までにこういう風に誰かから面と向かって、ストレートに感謝されるのって無かったかも。
 ああ、もう少しこのままで…。







 「ただいまー」


 『あ、横島さん。誰かお帰りになりましたよ。今階段を登って…もうすぐ入り口に着きますよ。
  話はもう終わりましたか?……横島さん?横島さーん!』








 ――――今まさに扉を開けようとしている人物こそが本当の送り主なのか?

     手紙を巡る横島の奔走はまだまだ続く。


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