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BACK TO THE PAST!

貧乳派は病状が悪化しすぎると逆に巨乳に目覚める


投稿者名:核砂糖
投稿日時:09/ 1/ 7

幼少の頃の美神令子は、事情により父親と接点が少なかった分、母親とのつながりが強かった。
彼女の母親は、後学の為、そして自分を守る術を学ばせる為にしばしば自分の仕事風景を見学させていた。
そんな生活を送ってきた彼女にとって、母親という存在は絶対的であり、
母親の傍こそが、もっとも安全で安心できる居場所だった。

よってその時、身の危険を感じた彼女が、事務所を抜け出して母の元に行こうとするのは、もはや必然だ。
実際それは概ね正しい。世界最高峰のゴーストスイーパーたる美神美知恵の加護にある娘を傷つけることなど、神にも悪魔にもできはしない。

…だが、今回ばかりは話が違う。彼女の母、美神美知恵はこの時、地球上のどこにもいない。
そして今、彼女を守れるのは…

「そっちに行ったゼ!」

「ギャァァァッ!アカン、見つかったァーッ?!」

「任せるっちゃ。フェザーブレッド!」

「ヨコチマ、あぶない!」

「ちょっ、急に髪を引っ張らんと…ヒィッ!かすった?!今かすったよね?!おキヌちゃん!!」

「あっクソ。また逃げられたゼ!ちゃんと狙うだゼ下手糞!!」



あまりに…頼りないと言わざるを得なかった。




アスファルトを粉砕しながら、子供連れの連中を追っかけまわす鳥人間が現れようと、この町の人間はあまり気にしない。外国製オープンカーを颯爽と乗りこなし、マシンガン片手に悪霊やヤクザとやりあう美女が、町を破壊するのが日常茶飯事の町である。そしてそんな奴にかかわると、ロクな事にならないことも、この町の常識の一つである。よってこの日も町の人たちは「ああ、今日も派手にやってるなぁ」と心の中で感嘆しつつ、巻き込まれない内に退散を決め込んでいた。
一方こちらは街中を命がけで駆け抜ける忠夫一行。
助けが見込めないのは知っているので、周りに危険が及ばないように人気の無い方に逃げていく所に、雇い主とは違った心構えがうかがえた。
何度目になるかも解らないハーピー達の攻撃をしのぎ、路地裏に逃げ込んだ忠夫は、黒ずんだポリバケツの隙間に身を隠し、息も絶え絶えにへたり込む。

「じ、じぬぅぅぅ。もぉだめだぁぁぁ…」

「情けないぞ主殿。GS試験の時、雪之丞殿から見事勝ちを得た主殿は、その程度でへこたれる男ではなかったぞ」

「ママがねー こんじょうがない おとこは やめときなさいって いってたわよー」

「おめぇらはさっきから走ってねぇだろうがよぉぉぉぉっ!!」

脂汗と涙で「ヨコチマきちゃなーい」ことになりながら魂の叫びを上げる忠夫。しかし気持ちは解らなくもない。
ダメ出し全開のバンダナは忠夫の額、れーこちゃんに至ってはちゃっかり忠夫の背中の上である。そのうえおキヌちゃんは幽霊だ。

「あ、あの。私、形だけでも一緒に走ってみた方がいいんでしょーか…?」

「イヤ、いいよ…」

そぉゆうことじゃねぇんだよ…と言いたい気持ちを抑え込み、おキヌちゃんの天然ボケをスルーする忠夫。

「しかしこれからどうすりゃいいんだ?逃げるばかりじゃどうにもならないし…。かといって闘うのもコワイ」

「情けなや…。とはいったものの、奴らは強い。今のお主ではゴミクズのように殺されるだけだろうな」

「お前、仮にも相棒に対してそれはないだろう」

目の上のタンコブ…もといバンダナからの辛口コメントに、どっと疲れを感じる忠夫。しかしバンダナの言うことにも一理ある。というか真実以外の何物でもない。
GS試験に合格したばかり忠夫が、大空を駆け回りコンクリートをブチ抜く奴らを3体も同時に相手するなど不可能だ。

「となると何とかして美神さん達と合流しなきゃなぁ」

「でもどーやって?」

「唯一の救いは美神さんもこっちを探しているってことなんだが…」

うんうん唸りだす事務所メンバー。雲雪の怪しくなってきたのを感じ、れーこちゃんが居心地悪そうに俯いた。様子に気付いた忠夫が慌てて笑顔を取り繕うが

「だ、大丈夫だってれーこちゃん。君のことは絶対助けるって!」

「…!ちがうの、そうじゃなくて」


―――――――わたしがよけいなことをしなければ。


「れーこちゃん…」

生意気なことを口走っていたように見えたが、実は気にしていたらしい。
忠夫の首に回された腕が、少し震えていた。

「大丈夫さ。俺はGSだぜ!これくらいどーってことないさ!むぁーかせなさい!!…まぁまだ、見習いだけど…ね」

心配するな。とばかりに背中の女の子を背負いなおし、けらけらと笑う忠夫。れーこちゃんとバンダナとおキヌちゃんの中の忠夫の株が右上がりになった。
性的魅力に惑わされていなければ、それなりにいい男、横島忠夫であった。

「…という訳でちょっと危険だが賭けに出る。それでもいいか?」

株価上昇中にこんなことを言われては、うんとうなずくのが乙女だろう(若干一名乙女というか布だが)。

「で、具体的にどうするのだ?」

相棒がカッコ良くなったもんだから、うれしさで目を輝かせるバンダナに、

「…このままでは死んでも死にきれないから、何とかしてあの乳を揉みしだいてから死ぬ」

真面目な顔で答える忠夫。

「横島さん…」

「サイテー…」

「え、いや。冗談だって。本当に作戦あるんだって。ただちょっと場を和まそうと…」

氷点下の目線で睨みつけられ。忠夫株は大暴落し、ゴミクズ同然となった。
ネタが大スベリしてしどろもどろになる忠夫に、バンダナが追い打ちをかける。

「…でもチャンスがあったら揉みたいのだろう?」

「…そりゃあもちろん。ってああっ!!見んといて!そんな目でワイを見んといてぇぇぇっ!!」

こんなあからさまなネタフリをされれば、反応しなくちゃ大阪出身の名が折れる。わかっちゃいるけど、わかっちゃぁいるけどボケるしかない横島忠夫は、絶対零度の目線にさらされて、体に流れる芸人の血を呪った。

「わかった!わかったからっ!もうふざけないから!だから話を聞いてくれ!れーこちゃん首締めないでくれ!!おキヌちゃん壁抜けで逃げないで!バンダナ、てめー頭を締め付けんじゃねーっ!頭蓋が歪む!」

ギリギリと、万力のような力で頭を締め付けられ這いつくばる姿は、まるで三蔵法師から体罰を受ける孫悟空である。もっとも、孫悟空ならば幼子に首を絞められることなどありえないだろうが。
首から上がチアノーゼ状態になりかかり、さすがにこれはヤバいとおキヌちゃんが止めに入ろうとした、ちょうどその時、



「あの、れーこちゃんにバンダナさん、そろそろ…『あ、見つけたゼ!』…とかやってるうちにキター!!!」


まねかねざる客御一行が到着した。

「こんな所にいやがったジャン」

「これだけ騒いでればすぐ見つかるに決まってるっちゃ!」

「…ですよねー」

ハーピーの突っ込みに対し切り返しを行う忠夫。案外まだ余裕があるようだ。

「また逃げられないように今度は囲んでから攻撃っちゃ!」

「わ、わかったジャン」

「もう逃がさないんだゼ!!」

なんだか元気がない〜ジャン口調のパーピーが気になるが、その程度の要素で切り抜けられる状況ではない。気づけばあっという間に絶体絶命の危機である。

「みんな、俺の後ろに隠れろっ!…ってもう隠れてんのか」

こんな時に命を張らずにいつ張るか。横島忠夫はややへっぴり腰のであるものの、見事な漢を見せたが、このメンバーで唯一後ろに隠す必要がある存在は最初から背中の上である。(おキヌちゃんは壁抜け出OK)

「だいぶ手間を取らせてくれたっちゃね。もう遊んでる暇はないし、一撃で決めてやるっっちゃ!」

徐々に狭まる包囲網がついに完成し、必殺の一撃が放たれようとしていた。
忠夫の額を流れる脂汗をダイレクトに感じるバンダナは、慌てて声を上げる。

「おい、主。さっき策があると言っておったろう!!あるなら早くせんか!!」

「いや待て、もう少しだ。いいかバンダナ、あいつが攻撃しようとした瞬間、今まで溜まってた分の霊力、全部ビームにして撃ってくれ」

「ダメだ!私の技量では空を駆ける奴らに霊波砲を叩き込むのは無理だ。それにお主の霊力では当たっても大したダメージは期待できん!」

「じゃぁ思いっきり拡散させてくれ!」

「なんだと…?それなら確かに当たるだろうが…。だがただでさえ効かぬというのに」

ここで、ぼそぼそと相談する忠夫たちに、ハーピーが気づいた。

「おやおや、何の相談っちゃ?」

「今更あがいたって無駄だゼ!くらえ、フェザー…!!」

最後の一撃を繰り出そうとした瞬間、忠夫は叫んだ。

「今だッ!」

「ええいどうなっても知らんぞっ!!」

『ヨコシマ・ブィィィィィムッ(拡散ver)!!』

わざわざ技名を叫ぶのが、横島らしいというかなんというか。が、案外バンダナも、ノリノリで叫んでいた。



−−−−−−−−−カッ!!



拡散型の名にふさわしく、そのビームは青白い輝きで路地中を明るく照らした。ハーピー達の眼をくらませるのに十分なぐらいに。

「く、くそ!これを狙ってやがったのか!やられたゼ!」

「な、何も見えないジャン!!」

「また逃げられるっちゃ!」

閃光で役に立たなくなった目の回復を待ち、ゆっくりとまぶたを開くハーピー達。そしてもぬけの殻になったであろう裏路地を苦々しげに睨みつけ、

「…何でまだいるジャン?」

「いやぁそろそろ逃げるのも限界でして…」

さっきと変らない位置で、へらへらと笑う忠夫。

「キャ、キャハハハ!こいつ馬鹿だゼ!!もしかした逃げ切れるかもしれなかったのに、チャンスを無駄にしやがったゼ!」

「キャハハハハ!何言ってるっちゃ!私たちが獲物を逃がすわけないっちゃ!むしろこいつら無駄な努力をしなだけ頭いいっちゃ」

もはや相手が完全に戦意喪失したと思い込み、大地に降り立つハーピー達。

「あんた、なかなか見込みがあるっちゃねー。どう?私たちにそのガキ渡してくれたら特別に手下にして生かしてやってもいいっちゃよ?」

にやりと妖艶に笑うハーピーに、一瞬傾きそうになる忠夫。(主に胸のあたりに)
だがしかし、男たるもの時には、目前のおっぱいよりも、背中で震える女の子を優先すべき時があるのだ。

「ひじょーに魅力的なお誘いですが、お断りしますわ。そんなことしたらうちの上司に死より恐ろしい目に遭わされかねないんで」

「…ほぉ。そんなに死にたいのかい」

ぎりりと牙をむく妖怪に、忠夫の足は竦んでいたが、

「それにですねー。見逃すはずがないんですよ。過去の自分という最大の弱点を血眼で捜しているその上司が」



−−−−−−−−−−−−−街中でぶっぱなされた広域に広がる霊波砲を



最後まであきらめないのが美神除霊事務所の心得である。


「まさか、さっきのは…」

驚愕で目を見開き、呟いた瞬間、〜っちゃ口調ハーピーは忠夫の視界から消えた。そして気がついた時目の前には、流れるような黒髪が風になびいていた。

「よくやった忠夫」

その声を聞いた時にもう足の震えはおさまっていた。



「あとは俺に任せろ」



横島忠夫にとっての絶対的な存在と言ったら、美神令子一筋である。
しかし何故だろうか。その時のヨーコ・シマタダはそれ以上だった。



「ま、まさかのヒロイン交代か!?」

彼が思わずそう漏らすと、ヨーコと、その後から来た令子にドつかれた。


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