椎名作品二次創作小説投稿広場


メメントメリ(GS エミ×ピート)

死を思え6


投稿者名:ルカ
投稿日時:09/ 1/ 2

 壊れたオルゴールが鳴っていて。
 泣く声が聞こえる。
 おとうさん、おかあさん……。
 昔お父さんが買ってくれたあのオルゴール。
 壊してしまったの。
「……あれもトロイメライだったわね」
 流れるメロディ、狂ったように頭に響く。
 扉から流れてくる音。
 エミは両手で頭を抱えた。
 思い出したくない。
 思い出すな。
 思い出したくない。
 ぽんぽん、と流れてくるメロディは。
 狂って壊れた音の乱舞。
 昔落として壊したトロイメライ。
 トロイメライの曲をつたない手でオルガンでひいてみると、笑顔で返してくれた両親はもういない。
「……記憶をよんだワケ?」
 私の記憶をよんで、攻撃をしかけるなんてとんだ悪魔なワケ。と嘲笑するエミ。
 彼女はベッドから飛び起きて、そして扉を開け放した。
 すると……廊下にぽつんとあったのは壊れた一つのオルゴール。
 薄汚れ、壊れているオルゴール。
 木のオルゴールは、落とされたのか、ひび割れて傷ついていた。
 ぽんぽん、と流れてくるメロディ。
「……これは私のもらったオルゴール?」
 昔もらったオルゴール。
 落として壊したオルゴール。
 鳴っている音に耳をエミは澄ませた。
 そうだ、これは私が失くしたものだ。と彼女は確信する。
 彼女が落として壊した傷が、全く同じだったから。
 廊下を歩いていく。そして身をかがめて、オルゴールを拾おうとする。
 すると、曲がやんで……。
 オルゴールが砂のように空気に溶けて消えた。
 呆然とエミはそれをみている。
 さらさらという音とともにすべてが消えていく。
「……何の攻撃ってワケ?」
「……昔の記憶をよむんですよ。多分ここは……」
 目の前にピートがたっている。
 そして彼は複雑な顔で、エミを見ていた。
 まるで泣き笑いのような……顔にエミはそれは見えた。


今までの評価: コメント:

この作品はどうですか?(A〜Eの5段階評価で) A B C D E 評価不能 保留(コメントのみ)

この作品にコメントがありましたらどうぞ:
(投稿者によるコメント投稿はこちら

トップに戻る | サブタイトル一覧へ
Copyright(c) by 溶解ほたりぃHG
saturnus@kcn.ne.jp