「あけましておめでとう、皆本、お年玉くれ!」
開口一番それかい、と皆本は頭を抱える。
薫はにこにこと笑い両手を差し出している。
「……あのなあ、薫」
「うちもうちも! お年玉ほしい、皆本はん!」
「私も……ほしいわ」
お前らもやめてくれよ。と後の二人を見てまたまた頭を皆本を抱えた。
結構給料もらってるんだからさいいだろ、と薫がにやにや笑いながら皆本を見上げた。
『……皆本、あたしね……』
大人っぽくなった顔、少しだけ年があけて彼女も大人になったように見える。
それはあるビジョンと重なる。
あたしね、あたしね、あたしね……。
皆本は頭を抱える。
いつかいつかいつか、僕はこの子を? と。
どうしたんや皆本はん? と尋ねる葵。
心配そうに見上げる紫穂。
大丈夫だ。と笑顔で返すが……しかし未来を見つめることは不安と紙一重だということを皆本は自覚した。
『……いつかキミは彼女たちを裏切る』
そういったのは白い髪の少年。
僕は裏切らない。そういいきったが……泣き笑いの顔で自分を見上げる薫の未来のビジョンが皆本を惑わせる。
『キミはいつか彼女たちを裏切る……』
頭の中で声が響く。
皆本はやつか、と頭痛を感じて頭を抱えた。
心配そうに見る子供達。
「……僕は裏切らない」
『裏切るんだ』
「絶対に裏切らない」
『それはないな』
いつかいつかいつか未来、薫が泣くことがないように。
皆が泣くことがないように。
皆本は聞こえる声に抵抗する。
『キミはいつか絶対に裏切るよ』
リフレインする声。
でもそれを皆本は否定する。
「大丈夫だ。大丈夫」
惑わす声は、どこか悲しみのひびきがあり。
悲しいひびきは絶望のひびきがあり。
絶望は悲しみを引き寄せる。
でも絶対に僕は裏切らない。と皆本は誓う。
惑わせる声が……皆本を戸惑わせる。
悲しみの声が、響く。
「京介がきてるの?」
「……なんでわかる薫?」
「皆本はん、あいつがきてるんか?」
「……どうして……」
大丈夫だ。と大丈夫だ……と皆本は心配そうに見上げる子供達の頭をなでた。
悲しみの声は絶望を呼び寄せる。
「女王たち、多分……もうすぐ破滅がやってくるよ」
「京介、新年そうそうなんだ!」
「あんた、うちらにお年玉くれるんでここまできたんか?」
「何間の抜けたこといってるのよ。葵ちゃん」
あはははは、と笑う声がベランダから聞こえる。
窓硝子が、声とともにがらりとあいた。
白髪の少年は、大丈夫だよ。いつかキミ達はこちらにやってくるんだ。と柔らかい笑みを返した。
「帰れ、変態ロリコン爺!」
いやあやっぱりキミをからかうと面白い。とぱちぱちと少年は手を叩く。
愉快げに笑う。
「……お年玉はあげられないけど、そうだね……」
楽しそうだから、お年玉のかわりにこれをあげよう。と何かを彼はチルドレンたちに向かって投げた。
「アケマシテオメデトウ、薫」
「おおおおお、桃太郎!」
「きゃああああ、かわいい」
「ひさしぶりやんか!」
いやあこれで遊んでくれ。と投げつけたのは、モモンガの桃太郎。
もうまた厄介なものをもってきてくれた。と皆本は頭を抱える。
「……いつか……」
「いつかはない!」
いつまでたっても平行線。
パンドラとバベルは似てるようで違う。
桃太郎と戯れる子供達を見る兵部の目はとても優しいけれど。
絶望がそこにはある。
「お前は諦めてるのか?」
「いやまだ諦めてはいない」
大丈夫、僕は裏切らない。
いや絶対に裏切る。と唇の形で兵部は答える。
どこまでたっても平行線で。
重なることがない意思。
でもいつか重なることがあるかもしれない。と皆本名子供達を見て思う。
「あけましておめでとう」
「どうしたんだい?」
「これくらいは敵だとしてもいっておかないとな」
「ま。あけましておめでとう」
飄々と兵部は笑う。桃太郎は子供達に撫で回されている。
いつか重なることがあるかもしれない未来。
きっといつか……。
そんなことを想いながら皆本は子供達を見た。
物語性よりもワンシーンを切り取った感性重視の芸風ですので、一つ一つにはコメントを付けづらくまとめてつけさせていただきます。
頻繁な投稿に、ルカさんの絶チルキャラクターに対する愛情がうかがえます。
いつ終わっても、どこで終わっても構わない形式の短編集ですが、ルカさんの原作に対しての愛情を示すバロメーターにも思えるので、この短編集が出来るだけ長く続くことを祈っております。
頑張って下さいね(。・ω・)ノ゙
(UG)