「……京介、不二子はね……あなたが大好きよ」
だから泣かないで、と不二子さんは幼いボクを慰めてくれた。
その後いろいろまあ悪戯はされたけどね。
柔らかく優しく笑う不二子さん、そしてあの人、すべてがうまくいっていると思ってた。
「ほらほら京介!」
あのひと夏の思い出は忘れることが出来ない。
不二子さんは笑顔で、そしてボクに海の水をかけて。
伊号のじいさんもいて、みんなで遊んだ。
無理やり不二子さんがボクに水着を着せて、そして海に連れ出してくれた。
でもボクたちは戦いあう間柄になってしまった。
闇の中にボクはずっとたたずんでいる。
あの人と戦うたびに。
バベルにいるあの人とはもう永遠に相容れない。
不二子はね、きっときっとあなたを……。
十三年前に、不二子さんは、ボクに真空の刃をかざしながら、泣きながら言った。
いつかいつかいつか……救ってみせると。
不二子さんが泣いていた。
泣き顔なんてみたくなかったけど。
大好きだったのに。
幸せだったのに。
でも永遠に幸せはもうこない。
ボクは戦い続ける。
優しい姉さんと。
ずっとずっとずっと闇にたたずみ戦い続けるんだ。
それが多分宿命。
……京介、どうしてわかってくれないの?
泣きながらあの人はそういう。
ボクも同じ事を思う。
多分ボクたちは永遠に平行線だろう。
それが今は悲しい。
とてもとても悲しい。
姉と弟(義理)、男と女、戦友、宿敵という複雑な愛憎が垣間見れて、とてもよかったです。
できれば、もう少しストーリー性のあるお話を読んでみたいです。
ありがとうございました。 (小羊)