何もない黒い黒い闇の中、ボクは歩いていた。
すると目の前にあの人が見えて、「化け物!」と叫ぶ。
とても辛くて悲しくて、目をあけることができない。
悲しい、悲しい、悲しい。
切なく、悲しい、切ない……。
黒い闇の中、ただ歩いていた。
わかる。これはゆめだと。
警告するシグナル。
わかっている。これはゆめだと。
でもボクはゆめから覚めることができない。
……永遠の黒い闇。
でも……聞こえてくる音。
そう音だ。
『おきろボケ! この若作り爺!』という声。
ボクはそっと目を開けてみる。
すると目の前に……。
「いつまで寝てるんだ! しかもボクのベッドで、いつきたんだ!」
そういえば……そうだった。
皆本クンをからかおうとして、彼のマンションまできたけど、女王たちもだれもいなくて。
ついうとうとしてしまったんだっけ、しかも敵のベッドで……。
目の前に皆本クンが見える。
彼は怒りで顔を真っ赤にしていた。
「いやあ、いい寝心地だったよ」
「……うなされてたぞ?」
「え?」
「とりあえず……寝たいなら寝ればいいけど、うなされるなんていやな夢でもみてたのか?」
「別に」
ボクは苦笑する。それを見て、いやなゆめなら僕も見る。とぼそっと皆本クンがつぶやく。
「え?」
「……とりあえず、用事がないのなら、まあいい……」
ボクを捕まえようともせず、彼はため息をつく。
なにやらいつもと勝手が違う。
ボクがぼんやりと彼を見てると、早く寝たいなら寝ろよ。と彼は捲り上げた布団を元に戻した。
「じゃあもう少しだけ」
「……寝たらでていけよ」
「……はいはい」
ふうとため息をつく皆本クンをボクはからかうように見て笑った。
ゆめの中であの人は化けものという。
でもこれからのゆめはそんなゆめじゃない。
多分違う。
そう違うんだ。