吸血鬼とは人間の天敵である。
そして吸血鬼とは人に害するものである。
まあ人間の認識とはそれだけのものだ。とエミは思う。
即席で令子が作った資料を手にして、彼女は今はある船の上にいた。
人はどうしても自分と違うものを恐れる。それは確かだ。と彼女は思う。
「令子、まあこれだけの資料を作ったのはほめてあげるワケ……」
しかしこの船はいただけない。と彼女は思う。
いわゆるまあ……ぼろ船?
漁師が使うのでも最低のランクにあたる釣り船?
まあそんなところだろう、どうやって走ってるんだ? とエミは思う。
とりあえずこれを運転してるのがピートなだけ、一応気を使ってはくれたんだな。とは思う。
ざっとで資料に目を通す。
「エミさん、島が見えてきましたよ!」
「ありがとう、ピート♪」
最上級の微笑みとともにエミはお礼の言葉を返した。
しかしまあ、閉ざされた島、そこで行われた惨劇。
ちなみになんというか……ありえない話ではないけど、悪魔とやらがこの島に潜んでるって伝説はなんだ? と思う。
海風にあたりながら、彼女は遠くに見えてきた島へと目を向けた。
そして惨劇とやらを……頭の中で思い描いてみた。
「悪魔がその島には存在しました」
昔昔悪魔がその島には封印されていました。
それを封印したエクソシストの子孫が、その島に今も住んでいるのです。
悪魔は血を啜る吸血鬼でありました。
吸血鬼は島の人すべての血を啜り、そして……島の人たちを仲間にしようとたくらんでいたのです。
エクソシストがその退治のために島に渡りました。
そしてそのエクソシストが島について一番初めにみたのが……見たのが。
「血にまみれた胎児の死体だったのです……って、しゃれにならないワケ……これ」
島にようやく着いた二人が見たのは……見たのは。
船から下りた二人が見たのは……血まみれの。
そう血にまみれた……伝説どおりの。
それは胎児ではなく、人の死体だった。
累々と延々と続く人の……死体だった。
しかし一瞬、一瞬その残像が歪む、歪んだ後には血の一滴も落ちていない。
船着場で彼女たちはでも確かに見た。
血にまみれた数十、いや数百ともいえる人の死体を。
ピートがエミをかばうように前に立つ。
「大丈夫ですか?」
その言葉に「平気」と答えるエミ、しかし……このハジマリはこれから始まる事件のなんらかの悲劇性を語っているように今の彼女たちには見えた。
その点はすいません・・・。 (ルカ)