「……令子、こんな夜遅くどうしたってワケ?」
「……五億の仕事よ。五億!」
五億、という言葉は魅力的だった。私は五億、と繰り返す令子の言葉に一瞬にして反応する。
「五億……?」
「そ、呪いがあんたの専売特許しょ?その呪いを解く仕事よ」
私は電話を手にしばし考える。呪いといっても色々ある。
私の専門にそう呪いなら解くのも簡単だが、それ以外は結構難しい。
つまりまあ日本の呪いであれば「呪いのわら人形」が有名だが、それ系統の日本的呪術の呪い。
それは割りと私の範囲外だから割と手こずる。
「大丈夫、大丈夫、心配しなくても大丈夫、今回は助っ人もいるから」
「助っ人?」
「ピートと、それから……」
その言葉を聞いた途端、「絶対に参加するワケ!」と私は大声で怒鳴る。
ああもうピートがくるなら、絶対来るっていうのはわかっていたけどお、大声はやめて、と令子がため息をつくのが受話器越しでもわかった。
「……どんな仕事なの?」
「割とポピュラーよ、吸血鬼から呪いをかけられたご令嬢なんだけど」
はいはい、と私は令子の話に耳を傾ける。
ああなるほどピートが参加したってのがわかるワケ、と思いながら。