「あの子は相変わらずねえ」
相変わらずだけどうまくやっているようだ。と不二子は少し安心する。
敵となってしまった弟だけど心配だったりはするのだ。
「……でも……悲しいわね」
パンドラにいる子はみんな悲しい、と不二子はため息をつく。
どうしたってノーマルはエスパーを恐れるのだ。
彼女は自分の部屋の寝台に座り、また深いため息をついた。
「……バベルをあの子は憎んでる」
私とあの子は敵同士、でも私はあの子を憎んでない。
あの子はでも私を憎んでるかもしれない、と不二子は思う。
でも私のこの思いは譲れないと思う。
絶対に絶対にと。
昔の写真を手に、不二子はまたため息をついた。
皆が幸せだと信じていた昔、そして裏切られたあの日のことを彼女は思い出す。
「京介っていじっぱりなんだから……」
離れてしまっても、志が違っても、でも自分はあの子を嫌いじゃないし、憎めない、と不二子は思う。
だってかわいい弟なのだからと。