――手紙の差出人はベスパかも知れない。
パピリオとの会話でそう思いついた横島は、ロ○コンを疑われながら妙神山を降りる。
やっとの思いで人界へ戻った横島だったが、ここでひとつの問題に気付いてしまう。
(どうやって会えばいいんだ?)
確か彼女は魔族の軍隊に入隊したはず。
そのベスパと人間界の街中ですれ違う可能性と言えば、
(まずあり得ない)
のである。
かといっていまさら妙神山に戻ってベスパとの連絡方法を尋ねるわけにもいかず、横島は自分の迂闊さに頭を抱えてへたり込んでいた。
ところが。そう、ところがである。
ふと顔を上げた横島は、車道を挟んだ向かいの歩道に信じられない物を見た。
「……あれ?」
人間と同じ服を着たベスパが、人混みに紛れて歩いていたのである。
もちろん人間の服を着て、周囲に溶け込んではいるが。
横島は目を凝らして、もう一度彼女の姿を確かめる。
(やっぱりベスパだ)
横島の脳内データバンクに保存されたベスパのスリーサイズと、視界にロックオンされたベスパのサイズは寸分違わず一致する。他人のそら似などではなく、本人に間違いない。
(な、なんちゅー幸運だ。これは運命が俺に味方しているんじゃないのか? ていうかそうに違いない! となれば――)
尾行あるのみと、横島はベスパの後を付いていく。
それからしばらくベスパの行動を観察していたが、彼女は特にどこかへ向かうでもなく、ただ散歩しているだけのようである。これなら多少話が長引いても大丈夫だと踏んだ横島は、思いきってベスパに近付き声を掛けた。
「よう、久しぶり」
手を上げながら近付いてくる横島にベスパは目を見開いて、
「よ、横島……? どうして――」
(ここにいるんだ、って顔してるな)
ベスパの表情の変化に注意しつつ、横島は慎重に次の言葉を選ぶ。
「そりゃこっちのセリフだろ。魔族のお前がどうして人間界にいるんだ? しかも人間と同じ格好してさ」
「そ、それは」
痛いところを突かれたのか、ベスパは視線を外してそわそわしている。
――どうも怪しい。
横島は例の質問で、さらに探りを入れてみることにした。
「なーベスパ、アレのことなんだけど……」
「あ、アレって何の話さ?」
「だからアレだよアレ。その、手紙とか」
「――!?」
その時、明らかにベスパが動揺したのを横島は見逃さない。
――この態度、このリアクション。俺のカンが脈ありと告げているッ!
全身で喜びを表現する横島が聞いたのは、意外な返事だった。
「な、なんでその事を知ってるんだよ!」
「なんでってそりゃあ」
「あ、あたしは何も知らない……知らないよ」
ベスパはあからさまに狼狽し、背を向けて走り去ってしまう。
「えっ、あれ? 待っ――」
ぽつねんと残された横島の右手は、虚しく宙を掻くばかり。
慌てて後を追いかけたものの、ついにベスパの姿を見つけることは出来なかった。
「うーん、一体どうなってるんだ?」
仕方なくアパートに戻った頃には、日が暮れ始めていた。
横島は布団の上に胡座をかいて、一人考え込む。
ベスパのリアクションから見ても、手紙の送り主が彼女だという可能性は高い。ところが肝心のベスパは恥ずかしがって――というよりもむしろ取り乱していたと言う方が正しいが――何の進展も無いまま走り去ってしまった。
(意外と照れ屋だったのか? しかし――)
横島の記憶にあるベスパは恥ずかしさで逃げるようなタイプには思えなかったし、そもそも手紙を出しておいて「知らない」とはどういう事なのだろうか。
(あーもー、まったくわからん)
いくら考えてみても、答えは謎のまま。
空振りに終わって悶々としたこの気持ちを鎮める方法はただひとつ。
「エッチなビデオでも見るか……」
と、帰り道にレンタルしてきた大人向けビデオを再生した瞬間、
「ごきげんよう横島さん!」
画面いっぱいに見覚えのある顔が映し出され、横島はひっくり返って後頭部を打った。
ベレー帽を被り、血色の悪い肌の色に端整な顔立ちの若者。
かつて妙神山で修行した魔族の仲間、ジークである。
「ジークじゃねーかッ!」
頭をさすりながら飛び起きると、ジークはテレビ画面から抜け出し、ぴんと背筋を伸ばして敬礼していた。
「相変わらず散らかっていますね、この部屋は」
「その前に言うことがあるだろーがコラァ!」
横島が投げつけたティッシュの箱を片手で受け止め、ジークは苦笑する。
「お久しぶりです。相変わらずお元気そうで」
「おかげさまでギンギンだよバカヤロー。つーか、頼むからこの現れ方はやめてくれ。色々とデリケートな年頃なんだよ俺は」
「申し訳ありません。しかし事は急を要しまして」
「何かあったのか?」
「実は――」
ジークの話によると数日前からベスパが無断で軍を抜け出し、連絡が付かなくなってしまったという。ジークは彼女の残留霊波を辿って人間界まで後を追ってきたが、人が多すぎて彼女の霊波を見失ってしまったため、横島に助力を求めに来たわけだ。
「……ちょっと待ってくれ」
「何でしょうか」
「なんで俺にそんな話をするんだ? 人捜しだったら別に俺に頼まなくても」
「軍の内情に属する事なので詳しくお話しできませんが、デリケートな問題でして。出来れば表沙汰にせず処理したいのですよ」
「ふーん……」
「横島さんは一時的とはいえ彼女と行動を共にしたことがありますし、何か心当たりがあるのではないかと」
「なるほどなー。だから慌てて逃げたのか」
「ベスパに会ったのですか!?」
「ああ、偶然バッタリな。手紙のこと聞いたらいきなり逃げられちまってさ」
「手紙?」
「あ、いや、それはこっちの話で」
「それで彼女はどこへ」
「さあな。俺も見失っちまったんだ」
「……そうですか」
しばしの沈黙の後、ジークは魔界の通信機(通信鬼)と、一匹のスズメバチを出して横島に手渡した。
「私の方でも引き続きベスパの行方を追ってみます。何か分かったらこの通信鬼で連絡を」
「この蜂は?」
「彼女の使い魔です。ベスパの霊波を辿るのに役に立つでしょう」
スズメバチは横島の周りをくるりと飛び回り、肩に止まって、
「あっしはハッチ・Bと申しやす。お見知りおきを」
と、やや時代がかったような口調で喋った。
「では、よろしく頼みましたよ横島さん」
ジークは敬礼し、部屋の窓から飛んで行ってしまった。
残された横島は目を伏せ腕を組んで会話の流れを思い出し、
「……まだ協力するとは言ってないんだが」
ポツリと呟いたが、ベスパには自分も用がある。手紙のことをちゃんと確かめておかなければ、気になって夜も眠れない。
「仕方ない。ここはお互い様って事で、俺もベスパを探すか。便利な道具ももらったしな」
「その意気ですよご隠居! よっ、日本一!」
スズメバチのハッチはやんややんやと騒ぎながら飛び回る。
「ご隠居って何なんだよ」
「おっと、こりゃうっかり」
「お前、ハッチってそういう――」
「さあさあ、早いトコ姐御を捜しに行きやしょうぜ!」
ハッチに促され、横島はもう一度ベスパに会うべくアパートを後にした。
太陽は西の空に沈み、街は夜の帳に包まれ始めていた。
「ハァハァ、匂う、匂いますぜッ。姐御のフェロモンと霊波の混じり合った濃厚なフレグランスがッッ!」
「分かったからその変態的なコメントはどうにかならんのか」
「チッチッチ、分かってないッスね兄さん。姐御はあっし達にとって心のオアシスでござんす。あのボン、キュッ、ボンな身体に強気でイケイケな性格! そして時々見せる憂いた表情がますますあっしのツボにグッとッ! ハァハァ、も、萌えぇぇぇぇ!」
「……お前の発言は一部共感できるが、やはり変態と言わせてくれ」
やたら興奮するハッチに案内されながら、横島は設備見直しのため解体が決定した古い工場の前まで訪れていた。すでに閉鎖されている区域のため、当然人の姿は見あたらない。電気も遮断されているようで、明かりもない工場の敷地を眺めて横島は呟く。
「おい、こんな所にベスパがいるのか?」
「あっしの嗅覚は本物でござんす。間違いなく姐御はここにいやすぜ」
暗闇の中にあるのは、自分の足音だけ。静けさに不安を感じつつ進んでいくと、ふいに物音がした。
(音が大きい……気のせいじゃないぞ)
横島は物音がした建物の方へ向かい、入り口からそっと中を覗き込む。割れた窓から差し込む月明かりに照らされ、何者かのシルエットがぼんやりと浮かび上がっている。もっとよく見ようと踏み出した瞬間、足元に落ちていた鉄くずを蹴飛ばしてしまい、シルエットは素早く横島の方に振り向いた。
「お前……横島?」
紛れもない、ベスパの声。
「そう。来たんだ」
ゆっくりと。そう、ゆっくりと近付いてくるベスパの声と姿は、横島が知っている彼女とまるで違う――ゾッとするような冷たさを纏う幽鬼のようであった。
「あ、あのさ。手紙のことなんだけど」
「――!」
手紙という言葉を聞いた途端、ベスパの表情が強張る。
「いいんだよ。もう終わったから」
「終わった……って、え?」
「もしかしたら来るんじゃないかって思ってた」
スッと腕を伸ばし、ベスパは横島の首に腕を絡めて囁く。
サバサバしたいつのも彼女とは思えない、絡み付くような吐息混じりの声。
――何か変だ。
そう思った横島がベスパの背後に視線を向けた時、妙な物が目に映った。
積み上げられた木箱の下に、二本の棒がはみ出している。
(違う……あれは)
棒ではなく、人の両脚だ。
コートを着込んだ男が、箱にもたれ掛かって座っているのだ。
男は動かない。いや、それどころか呼吸をしている気配がない。
胸元にはどす黒い染みが広がっており、生臭い血の匂いが横島の鼻を突く。
(死んでる……!?)
よく見れば、それは一人だけではない。
奥の方に一人、二人――数人の男がいて、全員が地面に倒れ伏している。
彼らもまた、死んでいた。
「ベスパ、これは――!?」
「終わったって言ったろ。それよりさ、頼みがあるんだ」
「た、頼み?」
「私と一緒に……逃げてくれない?」
スローモーションで動く、ベスパの唇。
首に回されたベスパの両腕と、押し当てられる胸の感触。
思いもよらぬ急接近に頭が真っ白になりかけた横島に、
「一緒に来てくれたら、あんたがしたいこと……なんでもしてあげるよ」
「なっ、なんでもッ!?」
「だから何も聞かず一緒に来て」
状況がまったく飲み込めない横島であるが、ベスパの言葉につい惑わされてしまう。
疑問と誘惑の板挟み――ベスパが何かを隠しているということは分かっているが、目の前の誘惑を振りほどけるほど横島は長く生きてもいない。
若さゆえの煩悩と好奇心が、正常な判断力を容赦なく奪っていく。
(これはおいしい……はっきり言っておいしすぎるっ。何かワケありっぽいけど、ここで頷けば何をしてもフリーダムとはッ。何を躊躇うのだ横島忠夫! 汚れたシャツを脱ぎ捨てるビッグチャンスなんだぞっ!)
目の前にぶら下げられたエサは実に魅力的だ。
だが仮にも霊能者の端くれとしていくつもの事件に関わってきた横島の予感が、飲み込まれそうな横島の精神を辛うじて繋ぎ止めていた。
「もう、煮え切らないね。私が信用できない?」
「い、いや、そーゆーわけでは」
「それとも……姉さんじゃないから? 姉さんなら良くて、私じゃ駄目なのか?」
「――!?」
ベスパの視線が、凍りつきそうに冷たい物へと変わる。
首に回された腕は万力のように硬く、びくともしない。
首筋にあてがわれた爪が、鋭い針のように食い込む。
「ベ、ベスパ!?」
「ノコノコとこんな所に来るから」
「おい、冗談だろ?」
「お前が……悪いんだよ」
薄皮を裂く鋭い痛み。
ベスパの目は本気だった。
身動きの取れぬ横島が出来ることと言えば、目を閉じてただ祈ること。
その思いが通じたのか分からないが――ベスパの指先は、それ以上力を込めては来なかった。
「これがあんたのやり方かい」
不意にベスパは呟く。
横島が恐る恐る目を開けると、いつの間にか現れたジークが拳銃を彼女に向けていた。
「仕方ないだろう。顔を見ただけで逃げ出すお前と話をするには」
「……で、脱走者の私に何を言いに来たわけ?」
「そう警戒するな。元より脱走者などいないさ」
「どういう意味?」
「今回の作戦は潜伏している魔族テロリスト殲滅を目的とする潜入捜査で、情報漏洩を防ぐため味方にも任務の内容は極秘だった。どこか間違っている所はあるかベスパ?」
「……!」
ジークの問いに答える代わりに、ベスパは横島の首に回していた腕を解く。離れ際に見た彼女は、冷たさが消えたいつも通りの顔をしていた。
「では改めて聴こう。作戦の遂行状況を報告せよ、ベスパ」
「……任務完了。これより帰還します」
ベスパは踵を揃えて敬礼し、ジークもまた敬礼する。
呆然と二人の様子を見つめる横島に、ベスパはフッと笑いながら言う。
「ねえ横島、さっきの話だけどさ……あれ、忘れてくんない?」
「へ?」
「もしかして本気にした?」
「なっ……」
「あはは、戸惑ってるあんた、結構可愛かったよ」
カラカラと笑い、ベスパは背を向け工場の外に出ようとする。いつの間にか使い魔のスズメバチも、ベスパの肩に乗りうつって前足を振っている。
ジークに何事か告げ、一足先に飛び立とうとするベスパを横島は呼び止めた。
「待ってくれベスパ!」
「何だい?」
「からかってただけ……なのか? 手紙のこととか、全部」
ベスパは一瞬だけ立ち止まり、振り向かず肩越しに答える。
「次に会う時は嘘くらい見抜けるようになっときなよ。じゃあね、横島――」
長い髪を夜風になびかせ、ベスパは月が輝く闇の空へと消えていく。
残された横島は、ジークから今回の出来事の真相を説明してもらうのだった。
発端は一通の手紙だった。
ベスパ宛に届けられた、差出人不明の手紙。
送り主は軍の内部情報をリークして欲しいという、アシュタロス派魔族の残党であった。
当然ベスパはその要求を無視したが、相手が報酬として用意した物にベスパの心は揺れる。彼らはアシュタロスの遺影とも言うべき映像記録を保存していたのだ。
その数日後、ベスパは無断で軍を抜け出す。
ジークが廃棄された手紙の痕跡から事実を知ったのは、さらにその後日だった。
――ナンセンスだ!
ベスパは憤っていた。
すでに決着は付いたのである。
滅ぶことが願いだった彼の人を、映像とはいえこの世に残しておけない。
それに自分自身、彼の記録が残っていればいつまでも未練を断ち切れないと思い、あえて彼らの要求を呑むフリをしたのだ。
あまりにも個人的な感情で動く事を、仲間には相談できぬまま。
最悪、裏切り者として追われることになるだろうが、それでも構わない。
アシュタロスに関わる全ての出来事は、自分の手で片付けると決めたのだから。
その後、街中で横島に見つかり手紙のことを聞かれ、しかも魔族残党との合流場所に横島が現れた時、ベスパは因縁めいたものを感じずにはいられなかった。
男と女。人間と魔族。
立場は違えど、愛する者を無くしたのは同じ。
そんな共通点がある一方、大きく違う部分があった。
――横島と姉さんは気持ちが通じ合ってた。互いのために命を投げ出せるほど……でも、私にはいなかった。
想う相手はいても、それはあまりに遠くて。
東京タワーで横島と差し違えた時、互いを想い合う姿を見せつけられたベスパはひどくみじめだった。
結局自分の思い人は滅び、哀しい記憶だけが残り。
冷たいすきま風が胸の奥を吹き抜けるような気持ちを、ベスパはずっと抱えていた。
「――だから横島を見てるとあの時のことを思い出して。自分と姉さんと何が違ったのかって」
もしも惚れる相手が違っていたら――なぜか手紙のことを尋ねてきて、魔族達との合流場所に現れた横島に、ベスパは誘惑を仕掛けた。
「けれどもし、あいつがスケベ心だけでホイホイ頷いてたら――」
迷わず首の骨をへし折っていただろう、とベスパは語る。
そして横島が最後まで理性を失わなかった事に、彼女は安堵していた。
――姉さんの気持ちが少しだけ分かった気がする。
後にベスパは、ごく近しい者にそう語ったという。
「――つまり。俺は偶然にもお前らの手紙騒ぎに絡んじまったわけか」
アパートに戻った横島と説明に訪れたジークは、深夜になっても話を続けていた。
「私も最初は驚きました。なぜ横島さんが手紙のことを知っているのかと」
「で、まんまと捜査犬に使われたんだな」
「申し訳ありませんでした。我々軍の関係者が近付いては、彼女を警戒させてしまうと思ったもので」
「まあいいや。お前のおかげで丸く収まったんだろ?」
「ええ、今回の彼女の行動は功績扱いとなるよう計らいました」
「そっか、良かったじゃねーか。あーあ、それにしても残念だなー」
布団に大の字に転がる横島に、ジークはキョトンとして聞く。
「何がですか?」
「ひょっとしたらベスパと上手く行ってたかも知れないのになー、って」
「彼女は気まぐれですからね。女性の考えていることは難しいですよ」
「お、美形のクセに珍しく意見が合いそうな事を」
それからしばらく軽口を交わした後、ジークは魔界へと帰っていった。
翌日。太陽が頭上で輝く頃、ようやく横島は目を覚ます。
横島は寝ころんだまま字の滲んだ手紙を見つめ、ため息をひとつ。
「またハズレかー。くそう、この手紙の差出人はどこなんだー」
考えれば考えるほど、悶々としてしまう。
ついでに寝起きでパンツがテントを張っている。
そういえば例のビデオをまだ見てなかったと思い出した横島は、ティッシュの箱をたぐり寄せて万全の体制を整え、再生ボタンを押した。
「やっ、元気?」
「ぶーーーーっ!?」
画面に現れ気さくな挨拶をするのはベスパだった。
よっこらせ、と画面から抜け出して部屋を見回し、
「汚い部屋だねー。それになんかイカ臭い?」
「だからなんでそこから出てくるんだッ!」
「ああ、ジークが近道知ってるっていうから」
(あ、あの野郎……)
「ちょっと後始末のためにこっちに来たんだ。ところでお前、妙神山で何やらかしたんだい?」
「へっ?」
「パピリオが怒ってたよー。あの子結構根に持つからね、今度ちゃんと謝っておきなよ」
「は、ははは……」
「そ、それでさあ」
ベスパは少し口ごもり、バツが悪そうに目を逸らしながら言う。
「昨日は色々と……悪かったね」
「あ、いや……俺もタイミング悪かったし。お互い水に流そうぜ」
「う、うん。それじゃ、そろそろ行くから」
ホッと胸を撫で下ろしたベスパは、部屋の窓を開けて飛び立つ間際、
(まるっきり嘘でもなかったんだけどね)
と呟いたが、横島にはもちろん聞こえていなかった。
手紙の差出人捜しは、まだまだ続く――
代打を引き受けたものの、なかなか筆が進まず必死に書き上げました。
ベスパはよく書くキャラではありますが、なかなか難しかったです。
リレーという決まったルールの中で書くというのも貴重な体験で。
読んでくださった方が喜んで頂ければ幸いかと存じます。
そしてリレーが無事最後まで続きますようにw (ちくわぶ)
ジークのレンタルビデオからの登場シーンを上手くはさみながら、ベスパの
不可解な行動が解明されていく中で、横島への複雑な想いが明かされていく
のは上手いと思いました。
各話のヒロインは担当者ごとに指定されているわけですから、次の方につな
げられるように書くのはさぞ大変だろうと推察します。
各話の担当者があせらず楽しく執筆されることを祈っております。 (夏みかん)
といった感じですね。 手紙の話で取り乱した理由も理に適ってますし、全体的に楽しく読ませて頂きました。
ただ話の緩急が激し過ぎて読みにくい部分があったように思います。
これからの展開を楽しみにしています。 (サイト)