「出て行けっ!」
治療室に横島の怒号が響く。
「横島…クン?」
「出て行ってくれっ!なんで、死なせてくれなかったっ!?
どうして俺をあのままにしてくれなかった!どうして…っ!」
「横島クン、君はっ!」
狂乱した横島に西条が怒鳴りながら詰め寄ろうとする。
「どうして、俺をっ…俺は生きてはいけなかったんだっ!
俺は死ななくちゃいけなかったんだっ…!
俺がっ………」
突然、横島の言葉が途切れる。
「いかんっ!」
「ドクター?」
「だから私は反対したんだっ!彼の意識はあること事態が異常だった!
治療の邪魔になる!出てってくれっ!」
患者の治療優先ということで、西条たちは何も言えずに追い出されてしまった。
「西条クンにはわかってたみたいね…?」
美智恵が呟く。
「………。ええ…。
今の彼には彼女がすべてですからね…」
「その想いが強ければ強いほど正気を失っていると?」
「そうだと思います。今の彼には令子ちゃんやおキヌちゃんの声も届かないでしょう…」
「そうね」
「しかし…」
こうなると、横島だけではなく周りも心配になるな、と西条は思った。
「あれが…横島さん…?」
小鳩がおびえた様子で口を開いた。
「あんなの…」
「痛みで正気を失っていただけ…だと思うわ」
令子が半信半疑で話す。
「だけど…横島さんじゃない…あんなの、横島さんじゃないっ!」
小鳩が叫んだ。
「気持ちはわかるが…」
「痛みが治まれば、正気に戻るとは思うけど…」
「令子は本気でそう思ってるの?」
「ママ…?」
「アナタは本気でそう思ってるの?」
「え…どういう事…?」
令子が怪訝な表情で聞き返す。
「まぁ、いいわ…。アナタがそう思い込みたいのは判るけどね…」
「ワタシが…?」
「自分で考えてみることね…」
「あの…。横島さんは元に戻れますか?」
黙っていたキヌが口を開いた。
「失ってはいけないものを失ったとき、人は変わらざるをえんのだろうが…」
「神父?」
「以前の彼に戻ることは………」
「そんな…」
神父の言葉と続く沈黙に絶望を感じたのかキヌと小鳩はその場で泣き崩れてしまった。
西条と美智恵が離れたところで何事か話し合っている。
「魂か…(やはり以前とは少し違うわね…)」
「先生?」
「あ、いや、なんでもないわ」
「令子ちゃんなら、心配ないと思いますが…?」
「そうだといいけどね。
それよりも…わかってるわね?」
「マスコミ対策と、彼の監視ですね?」
「そうよ」
核ジャック事件・大霊障とも呼ばれた事件は解決はした。
解決はしたことになってはいるが、アシュタロスの真意、神魔の最高神の存在、宇宙処理装置の存在、東京地下の霊的設備などの存在、
魔族ながら神の滅亡など、多くの事実が機密扱いだった。
特に日本では、過去に宗教団体が毒ガスを都市部で散布した事件が記憶に残っており、今回の事件をそれと結びつける動きもあった為に
情報統制はやむをえないと上層部が判断したためであったが。
西条には事件解決に大きな役割を果たした横島の入院をメディアが知ればどういったことになるか見当もつかなかった。
「マスコミ対策は当分は大丈夫でしょう」
「そう?」
「ええ。ノストラダムスの予言にあったとか、北の新兵器の実験だとか騒いでいる有様ですからね」
「その程度で済んでいるうちはいいけどね」
「それはわかっています」
「頼むわよ」
「はい」
そう答えながらも西条は、簡単にはいかないだろうなと感じていた。
「彼の監視は?」
「昼夜交代で。それと、暴れて霊波刀を振り回されないように封印ロープで固定しておきます」
「それでいいわ。令子達には聞かせられないわね」
「そうですね」
彼女達が今の会話を聞けば激怒するだろうな、と二人は思った。
その日から横島は昏睡した。
今月中に次回投稿できるようにがんばります^^; (Kreutzer)
ルシオラ復活のために横島が自殺を計るというのは珍しい筋立てと思いますし、横島の娘としてのルシオラ復活というのは嘘だったと美神が認めるのも珍しいと思います。
横島の壊れようも深刻ですが。
好きな男の自殺未遂という事態に、最もショックを受けるはずの美神とおキヌの心情を、もっと突っ込んで描写すると(とくに美神)、さらに味わい深い物語になるかと思います。
なんとか横島の心が救済されるような結末になることを祈りながら、次の更新を楽しみにしています。 (夏みかん)
作品の基本コンセプトにもあるとおり、魂が横島の中にあるのに娘とはいえ転生が
できるって美神の解釈がおかしいと思う。
多少の影響があるって事くらいなら理解出来なくもないけど、
仮に娘が生まれたとして、娘に転生した魂はどこからくるんだと問いつめたい。 (がーちゃん)
連載時にGS本編を読んだ際にも、ルシオラ転生の下りはすぐ理解できなかったのを思い出しました。
仮に転生可能だとして、体にルシオラの魂(欠けた霊破片)を入れたら、元からあった魂がどうなってしまうのだろうかといつも思っていました。
(ルシオラの魂と共存する。影響しあう。あるいはどちらかが潰されてしまうなど)
その点、最初から娘に転生できない、というのは納得がいく話でした。
GS世界の登場人物は各々が不幸を背負っています。
美神は幼い頃に母親が死んだことにされた事、おキヌは人柱となって三百年も孤独だった事、シロは父親を殺された事、タマモは人間の敵として追われた事。
ただその中でも横島のみが最後に決断したという責任を自身が負い、自身で解決しなければいけません。
その中で自身の死によってルシオラの魂が転生できるとしたら、それを選択するのは起こり得る話です。
この後、この話がどの様な展開を迎えるのかとても楽しみにしています。 (ありゃりゃ)
自殺行為で本当に死んでたらどうしようとか思ってたのですが…
霊波刀で死んでいたらルシオラ復活はできないだろうなぁ…というところから着想しました
本来ならますますもって救われない展開で2.3話で終わるところでした
Re;がーちゃん さん
実子転生の場合
1)横島の身体からルシオラの魂がなくなるわけだから、横島に大きなダメージがある
横島を救いたいと思って行動したルシオラなのに、それはどうだろうというのが…
2)遺伝と転生は無関係
文中(Report 4)に書いたとおりですが、自分的には無関係じゃないかと
3)実子転生が可能の場合
平安京でメフィストは高島の魂を開放しなくても、自分の子供(921年生まれのとある陰陽師)として転生させることができることに…
その場合、恋愛対象うんぬんでメフィストが悩むことになるわけですが。
知らなかった、もしくは対等な恋愛対象としていたかったから開放したという解釈も成り立つわけですが…
4)魂は何処から来るのか…
永遠の謎ですねぇ…^^;
前世・来世は実在するという考え方をするとなると、一番最初の時点のものがあったりするんだろうなぁとか、本当の終わりはいつなんだろうとか考えてみたりしますが、なかなか答えが出ません。
さて…
美神が実子転生可能といったのは、横島が少しでも前向きに考えるようになってくれればいいかなと思ったからで、R-4で本人も嘘だと認めてます。
その嘘も自分のことを考えての優しさから出たのだとわかっているから、彼も悩んだのだと思います。
Re;ありゃりゃ さん
本来の魂の存在
実子転生を考える上で一番の問題かもしれませんね
ルシオラという魂によって上書きされて消されてしまうのでしょうけど、それを考えるとルシオラにとって大切な存在である横島の子供を"潰す"訳で…
この場合、大切な存在は"横島"であって"横島の子供"ではないという考えのもとにやるという可能性もあるわけですが、それはないだろうと思いました。
決断に伴う責任
横島以外のメンバーは受動的に不幸を背負わされたのに対して、横島の場合は、選択して自分で選んだ事で逃げることのできない事に…
しかも、それは一時的で時間がたてば薄らぐという類ではないというのが…
・・・
ここまで書いて思ったこと…書きはじめから書き終わりまでで、本文書き上げることができるくらい時間かかってる^^; (Kreutzer)