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GS美神異聞録

GS美神異聞録 Report 5


投稿者名:Kreutzer
投稿日時:08/10/22

「出て行けっ!」
治療室に横島の怒号が響く。

「横島…クン?」
「出て行ってくれっ!なんで、死なせてくれなかったっ!?
どうして俺をあのままにしてくれなかった!どうして…っ!」
「横島クン、君はっ!」

狂乱した横島に西条が怒鳴りながら詰め寄ろうとする。

「どうして、俺をっ…俺は生きてはいけなかったんだっ!
俺は死ななくちゃいけなかったんだっ…!
俺がっ………」

突然、横島の言葉が途切れる。

「いかんっ!」
「ドクター?」
「だから私は反対したんだっ!彼の意識はあること事態が異常だった!
治療の邪魔になる!出てってくれっ!」

患者の治療優先ということで、西条たちは何も言えずに追い出されてしまった。



「西条クンにはわかってたみたいね…?」
美智恵が呟く。

「………。ええ…。
今の彼には彼女がすべてですからね…」
「その想いが強ければ強いほど正気を失っていると?」
「そうだと思います。今の彼には令子ちゃんやおキヌちゃんの声も届かないでしょう…」
「そうね」
「しかし…」
こうなると、横島だけではなく周りも心配になるな、と西条は思った。


「あれが…横島さん…?」
小鳩がおびえた様子で口を開いた。

「あんなの…」
「痛みで正気を失っていただけ…だと思うわ」
令子が半信半疑で話す。
「だけど…横島さんじゃない…あんなの、横島さんじゃないっ!」
小鳩が叫んだ。

「気持ちはわかるが…」
「痛みが治まれば、正気に戻るとは思うけど…」
「令子は本気でそう思ってるの?」
「ママ…?」
「アナタは本気でそう思ってるの?」
「え…どういう事…?」
令子が怪訝な表情で聞き返す。

「まぁ、いいわ…。アナタがそう思い込みたいのは判るけどね…」
「ワタシが…?」
「自分で考えてみることね…」
「あの…。横島さんは元に戻れますか?」
黙っていたキヌが口を開いた。

「失ってはいけないものを失ったとき、人は変わらざるをえんのだろうが…」
「神父?」
「以前の彼に戻ることは………」
「そんな…」

神父の言葉と続く沈黙に絶望を感じたのかキヌと小鳩はその場で泣き崩れてしまった。



西条と美智恵が離れたところで何事か話し合っている。

「魂か…(やはり以前とは少し違うわね…)」
「先生?」
「あ、いや、なんでもないわ」
「令子ちゃんなら、心配ないと思いますが…?」
「そうだといいけどね。
それよりも…わかってるわね?」
「マスコミ対策と、彼の監視ですね?」
「そうよ」

核ジャック事件・大霊障とも呼ばれた事件は解決はした。
解決はしたことになってはいるが、アシュタロスの真意、神魔の最高神の存在、宇宙処理装置の存在、東京地下の霊的設備などの存在、
魔族ながら神の滅亡など、多くの事実が機密扱いだった。

特に日本では、過去に宗教団体が毒ガスを都市部で散布した事件が記憶に残っており、今回の事件をそれと結びつける動きもあった為に
情報統制はやむをえないと上層部が判断したためであったが。

西条には事件解決に大きな役割を果たした横島の入院をメディアが知ればどういったことになるか見当もつかなかった。

「マスコミ対策は当分は大丈夫でしょう」
「そう?」
「ええ。ノストラダムスの予言にあったとか、北の新兵器の実験だとか騒いでいる有様ですからね」
「その程度で済んでいるうちはいいけどね」
「それはわかっています」
「頼むわよ」
「はい」

そう答えながらも西条は、簡単にはいかないだろうなと感じていた。

「彼の監視は?」
「昼夜交代で。それと、暴れて霊波刀を振り回されないように封印ロープで固定しておきます」
「それでいいわ。令子達には聞かせられないわね」
「そうですね」

彼女達が今の会話を聞けば激怒するだろうな、と二人は思った。




その日から横島は昏睡した。


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