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GS美神異聞録

GS美神異聞録 Report 4


投稿者名:Kreutzer
投稿日時:08/10/ 9

治療室前

西条に連れられて小鳩がやってくる。
横島が治療を受けている施設は、公的には存在していない事になっている。
一般人である小鳩は、西条の同行がなければ立ち入ることはできなかった。

「小鳩ちゃんがどうして此処に…?」
「ああ。最初に彼女が連絡をしてくれたんだよ」
「そう…」

「ところで…。彼の御両親の件だが、すぐに帰国するそうだ」
「いろいろありがとう、西条さん…」
「ん…。それより、横島クンは?」
「まだ意識が戻らないそうです…」
「そうか…」

美神達の表情は暗く沈んだままだった。

「あ、あの…どうして、横島さんが…?」
小鳩が尋ねる。

「私のせいよ…」
「え…?」
「令子ちゃんっ!」
「美神さんっ!」

キヌと西条が制止したが、美神は続けた。

「ルシオラが復活できなくなったのも、横島君が自殺しようとしたのも、私のせい…。
私だけが助かって、彼女は助からなかった…」
「美神さん?」
「みんな、私のせいなのよ…」
「令子ちゃん…自分を責めるな」
「だって…」
「横島クンは君を責めたかい?」
「えっ…」
「彼は自分の意思で行動した筈だよ…。だから君を…いや、誰も責めたりしなかった筈だ」
「でも…」
「とにかく…自分を責めるのはよくないよ」
「………うん…ありがとう…」



「そんなことがあったんですね…」
核ジャック事件・大霊障とも呼ばれた事件での横島の活躍と犠牲…。
真相を初めて知った小鳩にはどう答えるべきか判らなかった。


「すまない。隠しておくつもりはなかったんだが…彼のことを考えてね…」
「私…横島さんに信用されてなかったんですね…。
横島さんにとって、ただのお隣さんでしかなかったんですね…」
泣きながら小鳩が話す。

「いや、違うと思うよ。」
「え…?」

「僕の先生が言っていたが、横島クンは優しすぎるんだな…。だから全部、自分の中に閉じ込めていたんだ。
君達に余計な心配をかけたくなかったんだろう…」
「でも、私は…(横島さんの力になりたかった…!)」
「それに…」
「え?」
「おキヌちゃんと、君がいたから、彼は助かったんだよ」

これは事実である。
西条に連絡したのは小鳩であり、発見と連絡、到着した西条の適切な指示、
一つでもかけていれば、横島は死んでいたというのが医者の見解であった。



西条から連絡を受けて、唐巣神父と美智恵も病院に駆けつけた。



「そうか。横島君がね…」
「かろうじて生きてはいますが…」
「横島クンは分かってたのね?」
美智恵が令子に問う。

「うん…そうだと思うわ…」
「どういうことかね?」
唐巣が令子に問いただす。

「ルシオラの転生が、横島君が生きている限りは絶対にできないこと…」
「横島君の子供になら、転生できる可能性がある筈ではなかったのかね?」
「それはウソよ…」
「ウソ…?」

「だってそうでしょ…。私はメフィストの転生だけどママの転生じゃないわ…。
横島君の魂だって、前世の転生だけど、お父さんの転生じゃない…」

「横島君の子供は…。
確かに、ルシオラの容姿や霊的性質を遺伝するかもしれない…。
でも、本当に望むのは…」
「………。ルシオラさんの復活ですね…」
キヌが沈痛な表情で横島の望みを答える。

「ええ、でも…」
「でも…?」
「長い時間の間に、ルシオラの魂は横島君の魂と密接に結びつくわ…。
彼が生きている限り彼女の魂だけが、都合よく抜け出るなんてことはありえないわ…」
「生きている限り、叶わない願い、か…(魂の牢獄…皮肉なものだな…)」
唐巣は、アシュタロスと横島の数奇な運命を思い、神に祈りをささげるのであった。



「そんな…」
「嘘をついたのよ…。そういえば横島君が気力を取り戻してくれると思って…。でも…」
「それに気がついてしまったのか…」
「ええ…」
「だから、か…。彼女の魂を開放しようと、自分の魂を吹き飛ばそうとしたというのか?」
「たぶん、そうよ…」
「しかし…。今の彼の霊波刀では、吹き飛ばすですまんぞ。
間違いなく魂ごと消滅させてしまう…彼はその事は?」
「知らないと思うわ…でも…」
「それでも彼女の為に、か…」

ルシオラの横島への命をかけた想い。
横島の彼女への想い。
皆、横島の行動の愚かさと、それでもそこにいたる心情を慮って心が沈むばかりだった。

「優しさは脆さの裏返し…」
不意に美智恵が呟く、横島の優しさと脆さを知り、利用しただけに…



沈黙を破るかのように、病室から医師が出てくる。

「ドクター?」
医師の表情に疑念を抱いた西条が尋ねる。

「信じられん…。信じられんが、患者が目を覚ました」
「本当ですか!?」
「あ、ああ…。だが…」
「面会は…?」
「可能だとは思う…。だが…」
「会わせてっ!」

美神が詰め寄る。

「あまり、勧めんが…」
「僕もドクターに同感だ。君達はよしたほうが…」
何かを察したのか西条も反対する。

「いいから、会わせてっ!」
「お願いしますっ!」
美神とキヌが詰め寄る。

「わかりました…。ただし、少しだけです」
「それでいいわ…」


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