椎名作品二次創作小説投稿広場


ラブレター フロム ・・・・・・(リレー)

プロローグ


投稿者名:UG
投稿日時:08/ 8/11

横島のアパート
ドア横にぽつねんと佇む、ひしゃげた郵便受け。
人類の裏切り者としてアパートに落書きや悪戯を受けた際、強かにへこまされたそれには時折雨が吹き込むようになっている。
しかし、家主である横島は別段不便を感じず、そのままひしゃげた郵便受けを使っていた。

「あーあ、また吹き込みやがったか・・・・・・」

雨上がりの朝の空気を感じながら、横島はめんどくさそうに郵便受けの中から雨に濡れたチラシ類を指先でつまみ出す。
昨日の夜半から降った豪雨は、強風を伴い窓ガラスを激しく叩いていた。
その時に郵便受けに雨が吹き込むことは予想が付いていたのだが、眠さとめんどくささが先に立ち現在に至る。
新聞もとらず、親しい友人からの連絡はほぼ全て携帯という彼にとって、郵便受けは世間との接点ではなかった。

「ったく、めんどくせーなー・・・・・・」

つまみ出すのはピザや寿司などのチラシ、怪しい勧誘、水道やガスの検針結果。
濡れたそれらを無造作にコンビニ袋に放り込んでいく横島。
その指先が見慣れない封筒をつまみ出す。
明るいピンクの封筒が雨に濡れ、差出人の判別が不可能な程文字を滲ませていた。

「ん? なんじゃこりゃ??」

しっとりと湿った封筒を開き、滲んで判別しづらくなった文面に目を通していく。
何とか読めるところを拾い読みしていった横島の手が小刻みに震えだした。

「・・・・・・大好きです。来てくれるまでずっと待っています・・・・・・○月○日、pm■■■■ ■■■■にいます・・・・・・・・・・・・こっ、これは!!」

文面から察するに自分宛のラブレター。
予想もしていなかった手紙に横島は差出人を再度確認する。

「クソッ! 雨で滲んで誰の字かも分かりゃしない! 待ち合わせは今週末だって言うのにっ! 相手は誰で、何処に、何時までに行けばいいんだ俺はっ!!」

横島は身支度を調えると美神事務所に走り出す。
タイムリミットまで残された時間を無駄には出来ない。
とりあえずそれらしい人物に片っ端から聞いてみようと思っていた。


―――ちょっとまてよ、俺!


走り出した彼の脳裏に様々なイメージが去来する。
もし声をかけた人物が本命だった場合、相手によっては手紙を汚したことを責められるかも知れない。
鞭で折檻してくる美神を思い横島は軽く身震いした。


―――それに、複数人いる場所でこれを聞くのは危険だ!


手紙の主かと聞きビンゴだったとしても、周囲の面子によっては確実に逢瀬を邪魔しに来る。
それだけではない。うまく二人っきりの時に確認したとしても、聞いたのが手紙の主でないのならどこで話が漏れるか分からない。
インターネットもかくやと言う速度で伝播した手紙に関する情報は、やがて妨害を企てる者の耳にも入るだろう。
気をつけなくてはならない最右翼は、自称ラブリーな愛弟子シロ。
鋭すぎる嗅覚と最近身につけ始めた女の感で、シロはたちどころに降って湧いた秘め事を白日の下に晒し、そしてフラグを消滅させる。


―――ゲ、もうすぐアイツが散歩に誘いに来る時間じゃねーかっ!!


横島はアパートを飛び出すと共に、手紙への対応の為に脳をフル回転させる。
シロには手紙の存在を気付かれてはならない。そしてフラグを消すことなく、また、邪魔をされずに手紙の送り主との逢瀬を実現するには、それらしい女性に対してこちらからは核心に触れずに相手から情報を聞き出すしかない。

「ねー○○さん(ちゃん)、アレのことなんだけど・・・・・・」

正に完璧な作戦。
横島は一人ほくそ笑みながら全力で走り出す。
それが一連の騒動を巻き起こすとも知らずに・・・・・・・・・


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