「パピリオー! パピリオー!」
人里から遠く離れた異境の地に、一人の女性の声が響く。
だが、いつまで経ってもその声に返答が返ってくる気配は無かった。
「全く、今日も修行をサボる気ね。帰ったらお仕置きだわ!」
その女性が地団駄を踏んでいるところに、忍ぶようにゆっくりと人影が近づいていく。
「!? パピリオ!」
その気配に気付いた女性がすかさず剣を抜いて飛び掛かる・・・・が、謎の人影はその剣をあっさりとかわして、逆にその女性の額にデコピンを炸裂させる。
「ひゃっ! いったぁい・・・・」
「わしとパピリオの気配の違いが分からぬとは・・・・修行が足りないのはお主の方かのう?小竜姫」
はっとして我に返った小竜姫と呼ばれた女性が額をさすりながら、その痛みの原因である人物に向かって頭を下げる。どうやらこの人影の正体はかなりの大物なのであろう。
「申し訳ありません老師様。 パピリオを捜すのに夢中で・・・・」
それを聞いて老師(猿神)は、しばらく小竜姫の顔を見つめていたが、やがて笑い出した。
「ホッホッホッ、まさかお主、あの貼紙を見ておらぬか?」
「貼紙・・・・・ですか?」
小竜姫は素っ頓狂な顔で猿神に尋ねる。 どうやらパピリオという子の失踪とその貼紙が何か関係しているらしい。
「あれじゃよ、あれ」
猿神が指差す先には一本の立て札に一枚の紙が貼り付けてある、江戸時代を彷彿させるような代物があった。本来これは世界中の霊的拠点から様々な人、神、魔族の元に緊急の連絡をするための連絡版なのだが、ここ二百年ほど使われていなかったので小竜姫もすっかり忘れていたのだった。
「緊急の連絡なんて来てたんですか? 内容は・・・・・・・!?」
小竜姫は連絡版の貼紙を見た直後、慌てて母屋に超加速(時間の流れを遅くして限界以上に速く動ける韋駄天の技)を使って飛び込み、数秒もしないうちに大きな荷物をまとめて、猿神の元に戻って来た。
「老師様! しばらくお暇を頂きます!」
その一言を言い終えると同時に、小竜姫の姿は猿神の視界からは完全に見えないほどの距離にまで消えていた。 あの様子なら地上まで数分もかからないだろう。
「小竜姫もやる気になったようじゃのう・・・、これからが楽しみじゃ」
猿神は不適な笑みを浮かべて、連絡版に貼ってあった貼り紙を剥がして丸めるとポケットの中に大事そうにしまった。
「小僧、たっぷりと見させてもらうぞ、お主の生き様をな。ホッホッホッホッホ」
気になるその丸められた紙だが、その内容は以下の通りだった。
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『横島君のハートをGetするのはだ〜れだ大会 inバレンタインデー』
今年の人、神、魔族の親睦レクレーションは毎年恒例の異種格闘技戦を予定していましたが、反対の意見が多数出たので、今人気の横島忠夫さんに一役買ってもらうことにして、勝手に決めさせてもらいました。
ルール
T この企画をターゲットである横島忠雄に知られてはならない。
なお、気付かせた選手はその場で失格になります。(万が一バレた場合は記憶処理班が責任をもって企画に関する記憶をターゲットから抹消します)
U 企画内での戦闘は自由です。
デタントを気にする必要はありません。死なない程度にやってください。
V 勝者はターゲットにチョコを食べさせ、その後キスをした者とする。
自分からキスをするのも状況により可(ただし、あまりにも目に余る行為は、当実行委員会からストップがかかります)
W 制限時間は二月十日から二月十五日までの五日間とする。
しかし、キスの権利があるのは十四日以降。
賞品
この大会で見事に勝利を収めた者には賞品としてターゲットである横島忠夫と副賞として、人、神、魔界のどこの式場でもすぐに結婚式を挙げられる、結婚式ギフト券をプレゼント。
それでは皆さんの参加を心からお待ちしております。 (一応男性も参加できます) 人、神、魔族親睦レクレーション実行委員会
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こうして、このとんでもなくアホらしいレクレーションによって、人間界にかつてない激震が走ることになるのであった。
えっ? そんな企画に参加者がいるのかって?
・・・・・それはお楽しみということで。(既に小竜姫がやる気満々のような・・・・・)
今回が初投稿でかなり緊張しております。
ですが皆さんには遠慮せずに批判してもらいたいと思います。分かりにくい点や意味不明なところがあればなんでも聞いてください。
余談ですが、自分は打つのが遅いために更新が遅くなるやもしれません。
なるべく急ぐのでお許しください。 (329)
がんばって続けてください。 (D.東郷)
ご期待に添えられるようにこれからも頑張って持続的に更新していきたいと思います。 (329)