椎名作品二次創作小説投稿広場


BACK TO THE PAST!

過去美神が来たりハーピーが来るハナシ


投稿者名:核砂糖
投稿日時:08/ 2/ 5



ザ――――…ザ――――…


今日は、耳の奥に響くようなノイズが止まらない日。つまり雨である。朝方はしとしととアスファルトを潤す程度であった雨足も、いつの間にか数メートル先も見通せないほどの大降りになっていた。
てな訳で、安物ホテル暮らしのヨーコは、傘を持っていなかったが為に、ザンザンと降り注ぐ雨の下を一人疾走していた。

「あ〜クソ〜、家が欲しいぜ…。つーかブーツ以外の靴買わないとなぁ。雨降ったら蒸れてしょーがない…」

「どうせ結構儲かってるんだから高いホテル泊まるなり、せめて傘買えよ」と言うこと無かれ。ヨーコには、かつての清く(←違)、貧しく、美しき(←違?)生活により、骨の髄まで貧乏性が染み付いているのだ。一度馴染んだ生活習慣を一変させるのは難しいもので、頭では解っていても、どーも上手く変えられない。



――――はてさて、ここん所は主だったイベントも無しに過ごしてきたんだが…。そろそろ何か重要イベントが有ったよーな気がするんだが…。



約十年の月日が経過した記憶は曖昧で、イマイチハッキリしなかった。元々あまりモノを覚えるのは苦手なヨーコである訳で、首をかしげて脳ミソの中身を引っ掻き回すも、一向にお目当ての記憶は出てこない。
ここ数日で、ピートが忠夫のクラスに転入してきた。転入早々ピート・忠夫・タイガー・愛子による除委員会が発足し、学校妖怪メゾピアノとのピアノ対決が勃発し、とあるバンパイアハーフがその才能を惜しみなく発揮した。そしてその様子を見に来ていたヨーコに大爆笑されそのバンパイアハーフが転入早々不登校になりかけたり、
更にはヨーコを含む事務所メンバーによるスライム狩りが行われ、過去に痛い思いをしたヨーコの徹底的な駆除のお陰で無事成功を収めていた。気を利かせたホテルオーナーの計らいにより、事務所メンバーはバイキング料理を振舞われたりしたのだが、高級料理を目の前にしたヨーコの暴走でホテルは大赤字を出す羽目になり、美神所霊事務所は思いっきり恩をあだで返すと言う結果を残していた。


とか何とか考えている内に、事務所が見えてきた。
「これ以上濡れちゃタマラン」とばかりにラストスパートをかけるヨーコ。と、その時…



ざわりとした危険の到来を、ヨーコの第六感が告げた。



――――ドガシャァァン!



「なっ…!!」

急ブレーキで感性を殺した、その目前にて突然空を切り裂き大地をえぐる閃光。


――――落雷!?危なッ!!!…ああ、なるほどね。もうそんな時期ですか。


経験上こーゆー状況には適応できるヨーコは、冷静にそんな事を考えながら…爆風で舞い上がった大量の土砂と共にその場から吹っ飛ばされ、地面を転がってゆくのだった…。

(体が劣化してるから頭で解っても反応できないぃぃぃぃっっ!!!…いだっ!いだだだっ!!アスファルト痛ぇっ!摩り下ろされるっ!!)

――――ご〜りご〜り…。






「タイムポーテーションだわ…!それしか考えられない…!」

「時間移動…!?」


少し間をおいて、美神所霊事務所オフィスには、ソファーに寝かされた女の子を囲むメンバー達の姿があった。何とこの女の子、先ほどの落雷と共に現れ落雷と共に去っていった人物、美神令子の母親から預けられた、美神令子の幼年期の姿なのだという、。
そして繰り広げられるは美神さん、忠夫くんによるお決まりの説明シーンである。続いて美神の母親に関する過去が明かされ、おキヌちゃんのフォーローが入り、事務所内はしんみりとした空気に包まれた。

そしてその空気を破ったのは全身泥まみれになったが為にシャワールームの使用を許可されたヨーコであった。

「ふお〜さっぱりした〜。それにしても肘のトコかなり擦り剥けてた〜。もーシャワーとか沁みるったらありゃしないよまったく…」

長い髪の湿り気を白いタオルでふき取りつつジーンズにTシャツというラフな格好で現れるヨーコ。当然のようにアタックを試みる忠夫。そしてあくまでも自然に地面に叩き付けられる忠夫。

「…ヨーコ殿。どうせこうなるのは解っておるだろう?そんなラフな格好で来ないでくれ」

「…悪かったバンダナ。以後気をつける」

方や相手の足の下の人物のヒタイの上、方や相手を踏みつけながらの奇妙な会話。すると幽霊少女のおキヌちゃんが、そんな彼らの様子に苦笑いを浮かべながら何かを差し出した。

「あの、ヨーコさんコレ、まだあんまり乾いてないんですけどどうぞ」

「お、サンキューおキヌちゃん。乾かしておいてくれたのか〜やっぱりおキヌちゃんは気が利くなー」

「えへへ…そんなことないですよー」

ヨーコは忠夫を地面に縫い付けている足を退け、おキヌちゃんに預けておいたジャケット(生乾き)を身に纏った。おキヌちゃんは、何かと可愛がってくれるオネーサン的存在であるヨーコに懐いてきたらしく、楽しげにヨーコの周りを漂っている。

いつの間にか暗い雰囲気は何処にも見当たらなくなっていた。

「懲りないわねあんたらも…。兎に角、ママにあんな能力があったとは私も初耳だわ。詳しい話を聞きたかったけど…」

…最近私の立場が失われつつあるんじゃね?いや、そんなはずは…と、何となーく危機感を感じ始めている美神がにっちもさっちも行かない現状を打破するべく、話を進める。
しかしながら、それとほぼ同時に、今まで眠っていた美神(小)が目を覚ましてしまった。

コレで幾つになるのは解らないが、どう見てもまだ母親が必要なお年頃である訳で、それなのに目を覚ましたら母親がいない上に、何か見知らぬ人たちがたくさん居る訳でして、その結果…



「うわぁぁぁぁぁん!ママッ!?ママーーーーッ!ママどこなのーーーー!!」




彼女が泣き叫ぶのを誰が攻められようか。











――――次の日


「あい、おとうさん。ごはんれすよ」

「か、かあさんや。そんなもの何処から持ってきたんだい?」

「すききらいはめーなのよ。あかちゃんも見てゆんだから!」

「ばーぶー」

「ほら食え、よこちま!ヤモリはかやだにいーのよ!!」

「ひー!ヤモリとタマネギは嫌いッスーーー!!」

「…ちわーす三河屋でーす」

「(寂しい…)」



美神(大)が大学の父親とコンタクトをとりに出かけてしまい、その上今回の事は魔族絡みの事件の可能性があるとの事で、残された美神(小)は事務所の中に缶詰状態であった。
そして当然の事ながらお子様(それも美神令子)が大人しく現状を受け入れるはずも無く、ぐずり始め、結果始まったおままごと。

なにやらカオスな内容になってきたおままごとは、美神(小)が忠夫の口の中に何処からか持ち出してきたヤモリの黒焼きを押し込む事によって感動のフィナーレを迎えた。(キャストはパパ:忠夫、ママ:美神(小)、赤ん坊:おキヌちゃん、三河屋:ヨーコである。因みにバンダナはギョロリとした一つ目と言うアレな外見な為美神(小)に怖がられてしまい、先ほどから引っ込んでいる)

おままごとに満足した美神(小)がお絵かき遊びを始めた事で、やっとこさ皆の肩の力が抜けた。


「やれやれ、これでやっと会話に参加できるな…」

「ごめんなさいね、バンダナさん。ずっとお相手できなくて…」

美神(小)の注意がそれたので、姿を現すバンダナに、おキヌちゃんがねぎらいの言葉をかけた。

「さすがに疲れた…。子供のエネルギーてハンパじゃねぇなぁ…」

さらに忠夫が倒れこむ。続いてヨーコもそれに習った。

「ああ…。でもだからって体力って問題じゃないんだよな。なんつーかこう…子供独自の気力エネルギーみたいなモノがこう…」

年の功を生かして、かっこよく纏めようとして、何か上手くいかなかったヨーコ。

「…まぁなんだ?兎に角子供はすごいんだよ。色んな意味で」

グダグダである。

「それにしてもヨーコさん。思っていたよりずっと子供の相手をするのが上手なんですね」

そんなヨーコにフォーローを入れるが如く、話題を振るおキヌちゃん。「…ええ娘や」と心の中で呟きつつヨーコは口を開く。

「あ〜ヒトの面倒見るのは割と好きなほうでさ。昔、手がかかってしょうがない、何時まで経っても子供みたいな奴が居てさ。そいつと一緒に居るうちに、なんとなく、ね」

その口調が、何気ないようで、やっぱり寂しげで、それなのに懐かしそうなモノだから、事務所の中に、なんとなくセピアな雰囲気が流れた。おキヌちゃんは「やべ、地雷か?」的な表情を浮かべ、美神(小)は漂ってきた大人なカホリに手を休め、ヨーコ本人も「やべ、俺KYだった?」と後悔し始め、我らが忠夫君はいたって真面目な顔になり…




「…奴ってどいつッスかーーーーッ!?男ですか!!昔の男なんスかーーーッ!?…チクショー!!この体は既に誰かのモノになっていたと言うのか!?それならば今からでも俺色に染めて…「触んな変態!!」…ぎゃうっ!」




見事にしんみり空間を打ち破ってくれやがりました。

「全く我が主は凄いのか凄くないのか…」

バンダナの一言が妙にシュールだった。




…そうして美神(小)が馬鹿な男の扱い方を学習していると、



――――コツコツ



「あれ、小鳥だあ…!」

窓を小突く音に気が付いて目をやればそこには可愛らしい小鳥が二羽。興味を持った皆が近づくが、

「逃げないぞ…?」

「かわいい…!れーこちゃんも来てごらん!」

しかし、おキヌちゃんが言ったとたんに飛び立ってしまう小鳥達。はて、と小鳥の行く先に目をやると、

ちょうど事務所の目の前に、20代ほどの女性がたたずんでいた。


「美人!!!」


そういって彼女を確認するや否や目にも留まらぬスピードで出迎えに行く忠夫。

「こら!置いて行くな!!」

邪魔者のバンダナを置いていく辺りに余裕すら感じる。

「よ、横島さんったら…」

電光石火の勢いで強引に口説き始める忠夫を見て、苦い顔をするおキヌちゃん。しかしヨーコはそれ以上に苦い表情をしていた。

「…ヨーコ殿。気づいておられるか」

その様子に気づいたバンダナが小声で話しかける。

「ああ、AAクラスの美人だ。だが忠夫もまだまだだな。あのタイプの女性は強引な手段では落とせまい」

「ヨーコ殿!?」

自らの主の悪い菌でも移ったか。と小さい悲鳴を上げるバンダナ。すぐさま「冗談だよ」と言われたお陰で落ち着いたバンダナだったが、ヨーコが菌に侵されているかといえば、もうとっくに侵されている訳であり、既に手遅れとも言えるので、バンダナの心配は的中していなくも無かった。

「うまーく魔力を隠してる…。でもありゃあ魔族の気配だな。ベビーシッターねぇ…。あの美神さんが見ず知らずの人に自分の過去を預けるかよ」

「…やはり気づいておられたか。しかしどうやって気づかれた?『心眼』として生まれ、霊力を見る事に長けたこの私の力でも、ヨーコ殿に確認を取ってそこで確信できたというのに…」

「なんつーかな…慣れ?…兎に角今は敵の正体を掴むのが先決だ。下手に動かないほうがいいかもな」

「…私はヨーコ殿の正体のほうが気になるが」

「そう怖い顔するなよ。…相手がお前だからこそ詳しくは言わん。むしろ言えん。だけど…そう悪いもんじゃねーかららよ」

ニヤッと笑ってみせるヨーコに、バンダナはしぶしぶといった感じで納得する。
ヨーコは床に張り付いているバンダナを掴むと

「おキヌちゃん、忠夫があの調子だから、ちょっと俺が応対してくるわ」

と言い残し事務所の外へと出て行った。










バンダナを握り締め、少し握り締めすぎて文句を言われつつ、事務所の扉をくぐると、
そこでは案の定過去の俺が、美女に化けたハーピーに欲情していた。


「あんた本当に…


美人やぁぁぁ!!
コーヒー一杯だけ!!何もしないから!!ね!!ね!!ね!!」

「しつこいわねっ!!とっとと中からガキを……!!」


その余りのしつこさに、…おいおい地が出てるぞハーピーさんよ。これでバレて無いって思ってるからスゴイ。そしてこれで見破れない過去の俺もっとスゴイ。

どんだけ女好きなんだよ忠夫。……ええ死ぬほど好きでしたよ。


「その辺にしておけ忠夫」

「げ、ヨーコさん…」


後ろから声をかけてやると、何時ものパターンからして殴られるとでも思ったのか、身を縮める過去の俺。んでハーピーの方はやっと話の解りそうな奴が来た…とでも思ったのかほっとした顔を見せる。


「いいかー少年。こーゆー押して駄目なタイプの女性は一度引く事も肝心なんだぜ」

「へ…?…な、なるほど確かにそーだ!!でも俺にそんな器用なマネできるかー!」


思っていた展開とのギャップに、一瞬と惑うも、すぐに何時もの調子を取り戻す忠夫。一方ハーピーさんは一見まともに見えた俺のニヤリ笑いを見て盛大にずっこける。

なんか可愛いなぁ…コイツ。


「ともかく、今の貴様にゃこの女性は扱えん。ここは俺に任せたまえ」

「え、何を…」


忠夫の襟首を引っつかんで事務所の中に放り込む。すり抜けざまに忠夫の顔めがけてバンダナを押し付けたので状況は伝わるだろう。

「むがががががががっ!?」

一度すり抜けられた恨みからか、今度は逃がすまいと、忠夫の顔面にビッチリと張り付くバンダナ。その様子はなんだかエイリアンの幼生を連想させるものがあった。

…だがな、バンダナ。それじゃ気管もふさいでるぜ?

と言おうと思ったが、どうせ大丈夫だろうと判断して止めておく。だって俺だし。

さてと、この辺でギャグパート顔から仕事顔に切り替えて…


「さてお嬢さん。ベビーシッターって話らしいけど、本当ですか?」

「え、ええ。美神さんに頼まれまして、すぐに預かるようにと…」


こちらがまともに応対し始めた事に、何とか笑顔を浮かべるハーピー。
しかしどうしたものか。この場でいきなりぶっ飛ばすと言うのも一つの手だが、仕留めそこなったら大変だ。たしかコイツは目的のために一般人を巻き込む事もためらわない奴だったよーな気がするし、何より今後のために実力はなるべく出さないほうがいい。

ここは時間を稼いで美神さんの到着を待って、数で勝るのを待つべきか…。
てゆーか人工幽霊一号は何やってんだ?…ああ、こいつが魔族だって気づいていないのか。確か一般市民の前ではあんまり表立つなって言われてたっけ。だが対魔結界は作動してるよな…ああなるほどね。だからハーピーの奴は中に入れないのか。よし…


「まぁ兎も角立ち話もなんですし、中でお話を伺いつつ引き渡すと言う事で…」

「いえ…少し急いでいるので連れて来て頂けるとうれしいのですが…」

「いやいや、こうして足を運んで頂いたのですから、こちらもお茶の一杯でもお出しするのが礼儀と言うものです」

「いえいえお構いなく…」


どこぞやにいそうなウザッてぇマダムのような調子でしきりに事務所内へ誘い込もうとする俺に、だんだんと苛立ちを隠せなくなるハーピー。付き合いたくは無いけど、付き合わざるを得ないという状況に、相当フラストレーションが溜まっているらしい。

―――――そろそろブチ切れそうになってきたし、この辺りが潮時か…

辺りに被害が出ても困るので、この辺でネタバラシとでもいきますか。


「…どうしても事務所の中には入りたくないんですね?」

「だから何度も行っていますが、急いでいるんです!いい加減に…!!」

「入りたくないんじゃなくて、入れないんじゃないですか?」

「…っ!?」

「ウチのオーナーともあろう人が、面識の無いベビーシッターなんかに大事な子を預ける訳無いだろう!正体を見せろ、バレバレなんだよ!!」


と、俺が言い放つや否や、目の前の女性の全身から羽が生え、上空へと飛び立った。ハーピーが正体を現したのだ。

「くそっ何故ばれたんジャン!?それなら結界ごと…フェザーブレット!!」



ガキィッ!!

―――――えっ何?何なんですか!?


ヤケクソ紛れに事務所目掛けて弾丸のような羽根を打ち出すも、強固な結界には歯も立たない。ただ人工幽霊一号がビックリしただけである。

悔しそうに歯噛みするハーピー。今がチャンスだ。


「出来る事なら美神さんを待ちたかったが…でやあっ!!」

「うわっ!?」


ビョイーンと長く伸ばしたハンドオブグローリーで空中のハーピー目掛けて切りかかる。が、コイツ案外すばやいぞ…。掠っただけで避けられてしまった。


「よくもやってくれたジャン…!貴様のせいで計画丸つぶれジャン!!今後のためにもここで殺してやるジャン!!」

「はっ!おもしれぇ、やってみな!」


おっと、逃げられるかと思って心配したが、さっきの攻撃で上手く挑発できたらしい。
今度は逃がすまいと、空を翔けるハーピーの動きをよく読んで、必殺の一撃を繰り出そうと、右腕のハンドオブグローリーに力をためる。


するとその時…









「おい、こっちガキがいたゼ!!!」






事務所の裏手から新たな声が聞こえた。





「外の戦闘におびえて中の奴ら、裏口から逃げ出そうとしてやがったゼ!」

「本当ジャン!?こっちを片付けたら今すぐ行くジャン!!」


事務所の裏から舞い上がったシルエットは、翼の腕を広げ、空へと舞い上がっていった。


「新手のハーピーだと!?馬鹿なっ!!!つーかあいつらなんで事務所から出たんだよ馬鹿ッ」

「ははははっ!数は力ジャ〜ン?それより自分の心配をしたほうがいいジャン?…フェザーブレット!!」

「…にゃろぉっ!!」


ケタケタと笑いながら、魔力とスピードで凶器と化した羽根を打ち込んでくるハーピー。だが、必殺のはずのその武器を、素手で掴み取られたとあっては、その笑顔も凍りつくだろう。


「なっ!?……う、うそだっ!!人間にそんな真似が出来るはずが無いジャン!!」


再び羽根を打ち出すハーピー。それを今度はサイキックソーサーですべて止めてのける。…流石にさっきのは怒りに任せて無茶をしすぎた。手の平が思いっきり裂けて血が出まくってる。めっちゃ痛いです。


「…今度はこっちから行くぜ」

「ひっ!?」


霊波刀を携えて地をかける俺を目掛けて狂ったように羽根を連射するハーピー。しかし俺には通用しない。
「やっぱコレ打ち続けたらハゲんのかな」なんて馬鹿な事考えながら切りかかる。


が、





「ヨーコさん、気をつけて!そっちにもう一鬼行ったわ!!」

突然聞こえてきた美神さんの声に気づいて目をやれば、







「フェザーブレット!!!」



ドンッ!!!



―――――三鬼目だと…!?



「きゃははははっ!どうしたっちゃ?苦戦しているみたいに見えるっちゃ!」



空中で思うように動けなかったお陰で、何とか防御できたものの攻撃のチャンスを失ってしまった俺は「それもラムちゃん語尾かよ…」と呟きつつ地面に転がる羽目になった。


「ほら、行くっちゃ。ここのデカイ方の美神はなかなか死なないっちゃ。みんなでガキの方の美神を狙うっちゃ」

「わ、解ったジャン…」

「あ、クソッ逃げられたか…」


体勢を立て直す前に、ハーピー達はもはや届かない位置まで飛んで行ってしまった。


「ヨーコさん、乗って!後を追うわ!!」

悔しげに空を見つめていると、何処で手に入るのか全く不明な例のボディーアーマーを身につけた美神さんが、コブラの助手席を空けて叫んだ。

「済みません…。俺が付いていながられーこちゃんを事務所から出しちまいました…!」

「過ぎた事を今悔やんだってしょうがないわ。それよりさっさと追うわよ。もしれーこちゃんが殺されたら取り返しが付かないわよ。なんたって私が消えちゃうんだから!」

「はい…」


乗り込むや否や、コブラは急発進する。「見つけ次第撃ち落しなさい」と手渡された機関銃に懐かしさを感じつつ、急激なGに体を振り回されながら思う。







ハーピー三姉妹ね…冗談きついぜ。
やっぱり歴史がずれている。それもより危険な方向へ…。

原因は恐らく、宇宙意思の時間逆行者に対する排他。つまり…俺だ。


俺がいる限り…常に回りに危険が付きまとうんだ。


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