椎名作品二次創作小説投稿広場


復元されてゆく世界

第十一話 美神令子の悪運


投稿者名:あらすじキミヒコ
投稿日時:07/12/27

  
「おおーっと雪之丞選手、いきなり魔装術!!
 霊波のヨロイを物質化したーっ!!」
「ボウズも、すでにタテを出しているあるね!!」

 試合開始とともに、雪之丞も横島も霊力を全開にしていた。



    第十一話 美神令子の悪運



「間合いをつめて連続攻撃してやる!!
 全部よけきれるか、横島!!」

 雪之丞が横島へと向かっていく。
 彼は、これまでの横島の試合を観察していた。特に三回戦で出現した霊気の盾、それに対して対策を立てていたのだ。
 雪之丞が叫ぶ。

「『防御は最大の攻撃なり』っていうが、
 そんなこたあねえ!!
 よけきれなきゃ、おしまいだ!!」

 応援席では、

「『防御は最大の攻撃なり』?
 ・・・逆なんじゃない?」

 とツッコミを入れている者もいるが、戦っている二人の耳には届かない。

「おまえの言うとおりだ、
 防御は最大の攻撃になるぜ!!
 くらえっ!!」

 横島が攻撃に出た。
 向かってくる雪之丞が、いまだ間合いを詰め切れないうちに。
 霊気の盾、サイキック・ソーサーを投擲したのだ。

「う・・・!!」

 見事に直撃する。

「伊達選手、モロにくらってしまいましたー!!
 そのまま床に激突ー!!
 決まったかー!?」

 実況も、まるで勝負がついたかのような口ぶりだ。
 この喜びを伝えようと、横島は周りを見渡して美神を探すのだが、見つからない。この時彼女は、まだ通路にいて、こちらへ向かっている途中だった。

『気を抜くな!! 後ろ・・・』
「へ・・・」

 バンダナに言われるがまま、横島は飛び退ける。その跡へ霊波砲が炸裂した。一瞬でも遅れていたら、直撃していたであろう。
 その様を、恨みをこめた目でにらむ者がいた。
 
「・・・の・・・やろう・・・!!」

 雪之丞である。
 いまだ健在ではあるものの、左肩より先の魔装術は完全に消滅している。雪之丞自身の左腕は、血だらけで、だらしなく垂れていた。
 
「うおおおおっ!!」

 しかし、彼が霊力をこめると、魔装術の左腕部も回復した。ただし、外見は元に戻っても、ダメージそのものが回復したわけではない。

「貴様にもそれだけ攻撃力があるというなら・・・。
 間合いをつめるまでもない。
 くらえ!!
 俺の連続霊波砲!!」

 今度は不用意に距離を詰めることもなく、そのままの位置から連続攻撃をしかける雪之丞。
 
「うわーっ!!」

 ほんの僅かな時間差で迫り来る霊波を、横島は、右手の盾だけで弾き続けた。モグラたたきゲームの要領だ。

「額からの怪光線はどうした?
 防御に集中している状態では、使えないのか?」

 連続攻撃の最中、雪之丞が不適に笑う。
 このタイミングで、

「絶体絶命ね・・・」
『横島さん・・・!!』

 美神とおキヌが、試合場の近くまでやってきた。

(とにかく今は、ねばるしかないわ!!
 雪之丞だっていつまでも霊力は続かない・・・!)

 冷静に観察し、美神は心の中で応援する。
 しかし、横島の対応は、美神の想定を超えていた。

「怪光線か・・・」

 右手は忙しく動かしながらも、雪之丞の言葉に対してニヤリと笑ってみせる。

「あんなもの、いらないのさ。
 いっけー!!」

 突然、横島の左手に、右手と全く同じ霊気の盾が浮かんだのだ。

「何!?」

 そして、それを雪之丞に投げつける!!
 意表をつかれた雪之丞は、攻撃に専念していたこともあって、回避出来なかった。

 バキッ!!

 正面に直撃する。

「きっ、貴様・・・」

 胸を押さえて立つ雪之丞は、苦しそうだ。
 一方、両手にサイキック・ソーサーを構えて立つ横島は、堂々たる風格をただよわせていた。

「なんと横島選手!!
 霊気のタテを二つ、同時に両手に出して見せました!!」
「煩悩エネルギーを一点ではなく二点に集中させたあるよ!!
 なんて器用な・・・!!」

 実況席も興奮している。
 横島は、彼らに向かって、

「両手に花!!」

 と叫んでみせた。

「どういうことでしょう?
 あのタテの名前でしょうか?」
「ボウズの考えてることは、わからないある」

 実況席は横島の言葉を理解できなかったが、美神にはピンときた。

「あのバカ・・・!!
 煩悩があいつの霊力を生んでるということは・・・」

 横島が何かよからぬ妄想をしているのだろうと見当がついたのだ。
 美神の想像は当たっていた。
 横島は、今、二人の女性を思い浮かべているのである。

(右手に美神さんのイメージ!!)

   エプロン姿の美神がフライパンを握っている。

  「夕食の支度は
   交代でやろうって約束だったのにさ、
   結局いつも私がやるんだから・・・!」
  
   すねたような表情を横島に向ける。

  「あ・・・あの、美神さん・・・」

   オドオドした横島の声に対し、

  「『美神さん』・・・!?
   なーに今さら!
   結婚して2年にもなるってのに?」

   小さくプッと吹き出す美神。

  「もしかして、怒ってるって思った?
   バカね。
   別に怒ってやしないわよ。
   今じゃあなたも一流のGSですもの、
   時間に遅れるくらいしかたないわ」

   そして横島のネクタイに手をかけ、

  「これでも一応
   ちゃんと理解してあげてるんだぞ」

   自分の方へグイッと引き寄せる。

  「姉さん女房もいいもんでしょ?」

   そう言って、唇と唇をあわせる・・・。

(左手におキヌちゃんのイメージ!!
 それも、なぜか幽霊じゃなくて人間バージョン!!)

  「あ・な・た」
  
   おキヌの笑顔が、寝起きの横島の目に飛び込む。

  「そろそろお食事とって出かけないと
   遅刻しちゃうわよ」

   朝食をのせたトレーを手にしたおキヌが、
   ベッドに腰をおろす。

  「お・・・、
   おキヌちゃん・・・!」

   寝ぼけマナコをこする横島の声に対し、

  「『おキヌちゃん』・・・!?
   もう、そんな昔の呼び方!!
   まだ夢の中なんですか?」

   小さくプッと吹き出すおキヌ。

  「お仕事大変でしょうけど、
   あと少しで一戸建ての頭金が貯まるんだから、
   がんばって!」

   そう言って、おキヌが横島の頬にキスをする・・・。

 こんな二つの妄想を一度にしてしまうのだから、さすが横島である。
 そもそも、この技は、エミとの特訓中おキヌがやってきたことで閃いたのであった。その際は、エミとおキヌを妄想したのだが、やはり横島としては美神のほうがよかった。

『ね、凄いでしょう?
 これが特訓の成果なんですよ、美神さん!!』

 横島の思い描いている内容を知らないおキヌは、満面の笑みで美神に問いかける。

「・・・まあね」

 半ば呆れたような口調で、美神はおキヌに同意した。そして、

(横島クン、もうひと息よ!)

 心の中で声援を送る。
 一方、雪之丞は、苦痛に顔を歪めながらも、

(さすがあのヘビ女が見込んだ奴だ・・・!!)
「ゾクゾクする・・・!
 貴様のようなやり手を
 引き裂いてやれると思うとな・・・!!」

 バトルマニアの血をたぎらせて、悦びにふるえていた。
 だが、残念ながら、そろそろ魔装術も限界だった。

「ケッ・・・!
 まあいい、こういう事態も想定はしていた!!」

 雪之丞は自ら魔装術を解いた。
 そして、

「どうだ!!」

 右手を前に突き出し、横島と同じ霊気の盾を展開したのだ。

「げ!!」
 
 驚く横島だったが、

「三回戦で貴様がこれを出したのを見ていたからな。
 こっそり練習してみたのさ、俺も」

 雪之丞は平然と言ってのけた。さらに、

「試したことはないが・・・」

 と呟きながら、左手も前に突き出し、右手同様の盾を出してみせた。

「ぶっつけ本番だったが、案外うまくいくもんだな。
 貴様を倒すには、これしかなかろう・・・!!」

 魔装術が使えるくらいだ。雪之丞は、霊気を物質化するコントロールには長けているのだ。
 だが、これを見て横島は勘違いした。自分と同じように妄想しているのだと思ってしまったのだ。

「くそう・・・、
 貴様にもネーチャンが二人いるというのか!!
 女のいる奴は敵だ!!
 二人もいる奴は人類の敵だー!!」

 横島が絶叫する。
 自分も二人妄想しているというのに、しかもそれは妄想でしかないというのに、微妙に矛盾した発言をする横島。
 そして、怒りをぶつけるかのように、雪之丞に向かって突撃する。

『馬鹿者!!
 何をするつもりだ!?』

 バンダナの声も、横島の勢いを止めることはできない。

「ちっ!!」

 右手を突き出してきた横島に対して、雪之丞も右手で応じた。
 霊気の盾と盾とがぶつかり合う。
 両者のエネルギーがバチバチと火花を散らす。

(もらった!!)

 飛び散るエネルギーを隠れ蓑にして、横島の左手が、サイキック・ソーサーを展開させたまま、雪之丞を襲った。
 心の中で、横島が嘲笑する。

(バカめ!! 右半身がガラ空きだ!!)

 右手がぶつかり合っている以上、雪之丞の右側、つまり横島から見て左手側をガードするものは何もなかった。横島は、左手を大きく回りこませて、雪之丞の右側頭部に叩き付ける!!
 しかし、このとき、横島は失念していた。両者の右手を支点として、二人の体勢は全く点対称な位置関係にあったのだ。つまり、横島の右半身も、雪之丞から見たらガラ空き。雪之丞の左手にとって格好の標的だったのだ。

 (何ー!!)

 横島の左手が霊気の盾ごと雪之丞の右側頭部に叩きつけられた瞬間、雪之丞の左手の霊気も、横島の右側頭部に叩きつけられていた。

 ズゴォオォンッ!!

 壮絶な衝撃の音が会場に響き渡った。

「救護班!!
 救護班急げーっ!!」

 横島も雪之丞も、立ったまま気絶していたのだ。

「ああーっ!!
 審判が救護班を呼んでます・・・!!
 これは珍しい!! 両者KOです!!」

 四回戦、横島忠夫対伊達雪之丞。
 この試合は、引き分けという形で幕を閉じた。


___________


「はっ!!
 ・・・ここは!?」

 救護室のベッドで、横島は目を覚ました。

『頑張りましたね、横島さん』

 傍らには、慈愛の表情を浮かべたおキヌが浮かんでいた。

「あっ、おキヌちゃん。
 ・・・え?」

 横島がとまどうのも無理はない。
 おキヌが、ゆっくりと横島の胸に飛び込んできたのだ。
 ケガに触らぬよう、やさしく横島を抱きしめるおキヌ。その目には、涙の跡があった。

「・・・えっと、他のみんなは?」

 その部屋には、横島とおキヌしかいなかった。
 横島の問いかけに対しても、おキヌは何も答えない。
 黙って両腕を横島の背中に回していた。
 しばらくの静寂。

「・・・ありがとう」

 それを破る横島の言葉。
 同時に、おキヌは体を離した。
 だが、すぐに、その顔を横島に近づける。

「え?」

 困惑する横島には構わず、おキヌは、横島の頬にキスをした。
 計画的な行動ではなかった。
 今日の横島が輝いていたから。ただ、それだけだったのかもしれない。あるいは、以前に見た小竜姫がキスする姿、それも刺激になっていたのかもしれない。

『へへへ・・・。
 頑張ったごほうびです』

 自分のキスなんて、たいそうなものではないとおキヌにも分かっている。だが、照れ隠しから、そう言ってしまった。
 一方、

「あっ!!」

 おキヌのこの行動は、横島を大きく慌てさせた。
 おキヌが優しく横島の頬にキス。
 それは、まさに、試合中に妄想していた二つの光景の一つ、そのものだったのだから。
 二人とも顔を赤らめてしまい、再び、救護室は無音となる。

「・・・えっと、他のみんなは?」

 とってつけたように、横島が、さきほどの質問を繰り返した。
 今度は、おキヌも素直に答える。

『美神さんの試合を見に行ってます』
「え?」
『横島さんが寝てる間に、
 試合は決勝まで進んでるんです』

 横島は、かなり長い間、意識を失っていたのだ。
 もし雪之丞との戦いによるダメージだけならば、もっと早く回復していたであろう。しかし、横島の体には、エミとの特訓や、『神宮ラン』ことグーラーとの試合による疲労も蓄積していたのだ。

「あ・・・!!
 雪之丞、あいつは!?」
『引き分けでしたから、やっぱり救護室へ・・・』
「じゃあ、俺が・・・」

 横島は、ガバッと起き上がる。
 美神に言われていたことを思い出したのだ。
 横島のシャドウでメドーサの幻を作り、それを白龍会の奴らと対話させる。その会話の中で彼らの口から、証拠となる発言を引き出す。
 それが美神の計画だったはずだ。

『あ、大丈夫ですから。
 それも、もう終わりました』
「え?」

 おキヌが説明する。
 横島が意識を取り戻さなかったので、シャドウで幻を見せる代わりに、冥子の式神を使ったのだ。冥子には、変身能力をもつマコラという式神がいる。それを腹話術の人形のように使い、ドアの影からエミが喋ったのだった。

「そうか、美神さんに迷惑かけちゃったかな」

 計画変更を気にして、横島は呟いたのだが、

『むしろ、ずいぶん心配してましたよ。
 ふふふ・・・』

 おキヌは面白そうに笑った。
 横島が気絶している間、美神は、本気で取り乱していたのだ。周りで見守る誰にとっても、見たことがないような美神の姿であった。

「大丈夫〜〜。
 治療は終わったから。
 ただ疲れて眠ってるだけよ〜〜。
 それより〜〜、令子ちゃん、試合行かなきゃ〜〜」

 冥子に言われて、ようやく、美神自身の試合へ向かったくらいだった。
 そこまで詳しい事情をおキヌは説明しなかったが、おキヌの笑顔を見て、横島も安心した。

「まあ、エミさんと冥子ちゃんが
 上手くやってくれたんだったら、
 それでいいか」
『・・・ええ。
 バレちゃいましたけどね』

 雪之丞は、部屋に設置してあったビデオカメラに気づいたらしい。
 途中からはカメラ目線になっていた。だが、それでもペラペラと白状したのだ。
 白龍会の三人がメドーサの配下であることや、首尾よく資格をとったら必要に応じて妖怪たちに手心を加える計画だったことなど。

「え? どうして・・・!?」
『ピートさんとの試合の後で、
 仲間とケンカしちゃってたらしいですよ』
「そうか・・・」

 横島にとって、雪之丞は、自分が死闘を繰り広げた相手である。勝つためには手段を選ばぬ卑怯者であるよりも、悪には加担していても不正を好まぬ者であったというほうが、なんだか嬉しかった。

『あ、そうだ。
 横島さんに伝言がありました』

 おキヌは、ゴソゴソとメモをとりだし、横島に見せた。
 そこには、

『メドーサも一目おいてた横島と引き分けたんだ。
 俺にしちゃあ、上出来だ。
 だが、あんなものが実力じゃないだろ?
 おまえには幻を作る能力があるって聞いてたが、
 どうやら試合では使えなかったらしいな。
 今度はフルパワーでやろうぜ!!
 あばよ、横島。
 次は必ず叩きのめしてやるぜ!』

 と書かれていた。

「ええっと・・・、これって?」
『はい、言われたことを書き留めたものです』
「いや、そうじゃなくてさ。
 『次は必ず』ってどういうこと?
 あいつ、捕まってるんじゃないの?」

 当然の疑問であったが、

『いいえ、それだけ言い残して、
 逃げちゃいましたよ?』

 おキヌはあっけらかんと答えた。

(次は殺されちゃうかもしんない・・・)

 横島は、頭を抱えることしかできなかった。


___________


 その頃、試合場は大混乱に陥っていた。

「試合はそこまでだ!!
 鎌田選手、術を解きたまえ!
 君をGS規約の重大違反のカドで失格とする!!」

 証拠を手に入れたことで、GS協会のものが決勝戦を止めに入ったのだが、

『証拠・・・?
 それがどうしたっていうの?』

 勘九郎は、それを意に介さず、

『人間ごときが・・・、
 下等な虫ケラがこのあたしに
 さしずすんじゃないよ!』

 大暴れを始めたのだ。

「とりおさえろー!!」

 GS協会の関係者ならびに、その場の霊能者たちが大勢で飛びかかっても、

「わああっ!!」

 全く歯が立たない。

「もう遠慮は無用ね!
 このGS美神令子が・・・
 極楽に行かせてあげるわっ!!」

 美神は変装を脱ぎ捨て神通棍を構え、

「おたくにばっかりおいしいとこ
 もってかせないわよ、令子!!」

 エミはブーメランに霊力をこめ、

「ビカラちゃん〜〜!!
 あいつをおさえつけて〜〜!!」

 冥子は式神をけしかける。
 しかし、彼ら一流GS達の攻撃さえも、勘九郎ははねのけてしまった。

「ゲ!?
 な・・・なに!?
 こいつの霊力強すぎない!?」

 エミの焦りに対して、

「気をつけて!
 私たちとはまるで力の質が違うわ!
 普通のGSは妖怪や悪霊と
 戦うための力を使うけど・・・。
 こいつの力は霊力を使う人間に
 最も効果的に作用するわ!」

 美神が警告を発する。決勝戦から戦い続けた彼女なだけに、いち早く勘九郎の特徴にも気がついたのだ。
 しかし、美神としても、有効な手段はない。冥子の式神暴走を考えてはみたが、すでに冥子は最初の攻撃で気絶してしまっていた。

「ど・・・、どうなってるんですか!?」
『何ですか、あれは!?』

 横島とおキヌがその場に現れたのは、そんなタイミングだった。


___________


 二人の声を聞きつけて、美神とエミが振り返る。

「横島クン!! おキヌちゃん!!」
「ようやく気がついたワケ!?」

 詳しく説明している暇もなく、それぞれ、

「勘九郎が暴れてるの!!」
「あれが勘九郎の魔装術なワケ!!」

 と、一言で終わらせた。

「いっ!? あれが魔装術!?
 ほとんどバケモンじゃないですか!!」
『前の二人とはずいぶん違いますね。
 でも、どっかで見たような雰囲気・・・』
「ああ!! あれってシャドウじゃないっスか!?」

 横島の言葉に、美神は頷く。

「そうよ。
 陰念や雪之丞の術は不完全だったみたい。
 霊力を物質化してヨロイに変える魔装術ですもの、
 100%変換すればシャドウに似るのは当然ね」
「令子!!
 悠長に説明してる場合じゃないでしょう!!」
「そうだった!!
 横島クン!!
 小竜姫さまのところへ行って!! 
 あんたのシャドウがこっちの切り札なの!!」

 横島のシャドウで幻惑する。いよいよの場合は、麻酔能力で意識を失わせる。小竜姫すら眠らせた横島のシャドウである、勘九郎にも十分通用するだろう。小竜姫の目前であの麻酔能力を使いたくはないのだが、背に腹は代えられない。
 それが美神の最終プランだった。しかし、

『美神さん、あそこ!!』

 おキヌの指し示した場所を見て、

(しまった!! 遅かったわ!!)

 すでに自分の策も使えないと悟った。 
 おキヌが示したのは、二階の応援席の奥。
 そこでは、小竜姫とメドーサが、それぞれ神剣と刺又を手に向かい合っていた。その傍らで、グーラーが唐巣神父の首に手をかけている。

(先生が人質にとられてる!!
 これでは小竜姫は何もできないわ!!)

 小竜姫の様子に目が行き、少しの間勘九郎から意識をそらしてしまった美神であったが、

『美神さん、危ないっ!!』
「きゃーっ!!」

 おキヌに注意されて、慌てて跳び逃げた。
 勘九郎の攻撃が、美神たちのいたところへ炸裂したのだ。

『来たわね、横島忠夫・・・』

 勘九郎が、横島に視線を向ける。

「ひえーっ!!」
「あいつのねらいは、横島クンのようね」
「じゃあ横島から離れたら安全なワケ!?」

 怯える横島から、少し距離をとろうとする美神とエミ。
 だが、それを許す勘九郎ではなかった。

『あんた達も殺してあげるわ。
 死ねエエエーッ!!』

 美神に向かって、再び、勘九郎の刀が振り下ろされる。
 その時、

『美神どの!!』

 横島のバンダナが開眼し、エネルギーが発射された。
 勘九郎に向かったのかと思いきや、

『バカめ!!
 どこを狙ってるの!?』

 よけるまでもなく、勘九郎にはかすりもしなかった。
 それでも美神は、バンダナに礼を言う。

「でも助かったわ、サンキュー!!」

 勘九郎の攻撃を一瞬牽制するには十分だったからだ。

『それだけではないぞ』
「あっ!!
 もしかして、あれを狙ったワケ!?」

 意味深なバンダナの呟きに、エミが反応する。
 今のエネルギー波は、二階席奥の通路へ直撃していたのだ。
 その爆煙が晴れた後には・・・。
 グーラーの手から逃れた唐巣神父と、メドーサの首に神剣を突きつけた小竜姫の姿があった。

「形勢逆転ってやつね・・・!!
 勝手なマネもここまでよ、メドーサ!!」

 小竜姫の声は、美神たちのところにまで届いていた。
 その様子を見て、

『メドーサさま!!』

 勘九郎の動きも止まった。


___________


『バンダナさん、凄い・・・!!』

 おキヌが小さく呟く。

『うむ。
 おキヌどののおかげで、
 こやつのエネルギーも満タンだったからな』

 バンダナは冷静に答えたのだが、

『えっ・・・、あっ!?』
「おまえ、ずっと起きてたのか!?」
『さよう。
 ただ、口をはさむべき時かどうか、
 ちゃんとわきまえておるだけだ』

 おキヌと横島は、救護室での様子を思い出して、少し顔を赤らめてしまった。

『もう!!』

 おキヌなど、バンダナをポカリと叩いてしまい、

「痛っ!!
 おキヌちゃん、それ、俺の頭・・・」
『あああ!!
 ごめんなさい、横島さん・・・』

 謝りながら横島の頭を撫でている。

「おたくたち・・・。
 なにやったワケ!?」
「まあ、それは後でゆっくり
 聞かせてもらうとして・・・」

 美神は、こめかみをピクピクさせながらも、ジト目を二人に送った。そして、表情を真剣なものに戻してから、勘九郎へ向き直る。

「終わりよ、勘九郎!!
 メドーサの命が惜しければ、おとなしくなさい!!」


___________


「・・・私を人質にするつもりかい?
 エリートさんの小竜姫も、なかなかやるねえ」

 神剣を喉元に突きつけられながらも、余裕のある態度をとるメドーサ。

「いや、あれは美神さんが勝手に言ってるだけで・・・」
「まあ、美神くんだからなあ」

 小竜姫は苦笑し、唐巣神父も少し呆れている。
 ここでグーラーが提案した。

「オネエサン、そろそろ引きあげようよ」
「・・・たしかにここまでのようだね」

 賛同したメドーサは、

「勘九郎!! 引きあげるわよ!!」

 と試合場へ声を飛ばした。

『・・・わかりました』

 了解した勘九郎の手に魔力が集まる。

「みんなここから離れて!!
 早く!!」

 美神が叫ぶが、間に合わなかった。
 勘九郎が大きくジャンプすると同時に、試合場を囲むように大きな黒い板が出現した。

「か・・・!
 火角結界!!
 それもでかい・・・!!」
「閉じこめられた!?」

 慌てる美神たちに、上空から、魔装術を解いた勘九郎が声をかける。

「決着つけられなくて残念だわ!
 美神令子、あんたの名前も覚えたわよ。
 生きてそこを出ることができたら
 また会いましょう・・・!」

 しかし、それに相手している場合ではなかった。

「だーっ!!
 カウントダウンしはじめたーっ!!」

 横島が叫ぶ。

「あと30秒で爆発っスよーっ!!
 30秒でやれることをー!!」
「おのれは進歩とゆーものをせんのかあっ!!」
『横島さんったら・・・、もう!!』

 お約束で横島が美神に飛びかかっている間に、

「いかん!!
 あの結界は簡単には破れんぞっ・・・!!」

 唐巣神父も二階席からとんできた。

「全員で霊波をぶつけるんだ!!
 霊圧をかけてカウントダウンを遅らせる!!」

 唐巣の指示に皆が従う。
 美神、エミ、横島。そして、いつのまにか気絶から回復していた冥子、忘れられがちだが奮闘していたタイガー。さらにGS協会の霊能者たちや他の受験者たち。
 だが、あまり効果はない。人間の霊力では、とても足りないのだ。
 二階席の小竜姫にも、それは理解出来た。
 メドーサに、

「どーする、小竜姫?
 今日は引き分けにした方がいいんじゃなくて?」

 と言われて、剣をおさめる。

「今回はほんのお遊びだったけど、
 次は本気で来るわ。
 楽しみにしてることね・・・!!」

 捨て台詞を残し、メドーサが勘九郎とグーラーを連れて去っていく。
 憎々しげに見送った小竜姫は、急いで試合場へ飛び込み、火角結界に霊波をぶつけた。

「大丈夫!!
 私の霊波ならしばらく
 カウントダウンを止めていられるわ!!」

 すでにカウントは『一』となっていた。

「美神さん、右側の結界板の中央に
 神通棍でフルパワーの攻撃を・・・!!
 急いで!!」
「こ・・・、こう!?」

 小竜姫に言われるがまま、強力な一撃をぶつける美神。

「穴があいた・・・!?」
「そいつは結界の霊的構造の内部よ!!
 分解してるヒマはないけど活動を止める
 チャンスはあります!!」

 小竜姫は、右側の美神に指図を飛ばす。
 正面の結界板に霊波を放射しつつ、首だけを右へ向けているのだ。

「中に二本、管があるでしょう!?」
「あるわ!
 赤いのと黒いの!
 でも・・・」
「どちらかが解除用、どちらかが起爆用です。
 切断すれば事は終わるわ!
 選んで!!」

 必死の表情で説明する小竜姫だったが、答えた美神の口調は、どこかノンビリしていた。

「それって、まちがえると爆発するとゆー・・・。
 TVや映画でよくあるやつよね・・・?」
「そうです!
 調べる方法はありません!
 確率は二分の一よ!
 早く決めて!!」
「決めるも何も・・・。
 すでに黒いのは断線してるんだけど・・・!?」
「え・・・!?」

 美神の言葉の意味を理解し、小竜姫が、ギギギッと顔を正面に戻した。
 目の前では、結界板の表示が『停止』に変わっていた。

「どうやら、さっきの攻撃が内部にまで届いちゃってたみたい。
 ははは・・・」

 乾いた笑い声を立てる美神に対して、

「美神さんのパワーが
 私の想像以上だったようですね」
『でも、もし赤い方が切れていたら・・・』
「令子ちゃん〜〜、危ないわ〜〜」
「令子の悪運に助けられたってワケ!?」
「わっしもそう思いますケンノー」
「美神くんの悪運の強さは筋金入りだな」
「『地球が滅んでも自分だけ生き残る』
 って言ってるくらいっスから」

 冷や汗を流しながらも、呆れる一同であった。



(第十二話「遅れてきたヒーロー」に続く)
 


今までの評価: コメント:

この作品はどうですか?(A〜Eの5段階評価で) A B C D E 評価不能 保留(コメントのみ)

この作品にコメントがありましたらどうぞ:
(投稿者によるコメント投稿はこちら

トップに戻る | サブタイトル一覧へ
Copyright(c) by 溶解ほたりぃHG
saturnus@kcn.ne.jp