「・・・作業を完了しました。ドクター・カオス!」
アンドロイド少女のマリアが、主である老人に声をかけた。
この老人、ドクター・カオスは、有名な錬金術師である。古代の秘術で不死の体になり、千年以上の時を生きているらしい。
最近、魂を交換して他人の肉体と能力を奪うという秘法を完成。
その対象として、強力な霊能力を持つ人間を捜していたところで、たまたま六道冥子と遭遇。
冥子から美神の存在を知り、その体を乗っ取ろうと考えたのだが・・・。
その企ては失敗。返り討ちにあったのである。
「うむ! なかなか良い出来だぞ、マリア!
すぐに包装して美神令子の事務所へ届けたまえ!」
美神を逆恨みしたカオスは、今、この世から美神を消滅させてしまおうと考えていた。
暗殺用魔法薬『時空消滅内服液』を使って・・・。
第四話 開かれた封印
「よかった・・・!
今日の仕事は久々に良かった・・・!」
仕事から事務所に戻った直後、横島は、あらためて今日の出来事に感激していた。
それは、除霊中のアクシデント。床が崩れて、美神とともに階下へ落ちて行く際、美神の唇が横島の頬にブチュッと触れたのである。
意図せずして起こった『ホッペにキッス』であった。
(ぺちょんと柔らかく、あくまでソフトに・・・。
そして、かすかに感じる呼吸の流れ・・・。
ああっ、思い出すだけでとろけそー!)
「・・・なんなの、なんたはさっきから。
脳ミソにヒビでも入ったの?」
回想に耽ったまま現実に戻れない横島を、美神は呆れながら見ている。そんな二人のところへ、
『お茶がはいりましたー!』
おキヌが、紅茶とケーキを運んできた。
「おいしそう。どうしたの、これ?」
『え? 美神さんが買っといたんじゃ・・・?』
「!
香料に混じって、かすかに何か匂うわ!
これは・・・。
呪術に使う魔法植物と薬品の匂いだわ!」
『あの・・・。私は、てっきり・・・』
「食べないで捨てた方がよさそうね」
ケーキに関して二人がそんな話をしている横で、まだ惚けていた横島は、自分の分のケーキを食べてしまっていた。
『よ、横島さん!』
「ん? どしたの、おキヌちゃん?」
その時、横島の体がドクンと震えた。
___________
呪術の効き目を遅らせる薬を飲ませ、時間を稼ぐ美神たち。
その間に、残りのケーキを分析して、何が含まれていたのかを突き止めた。
『時空消滅内服液』である。
恐ろしい薬だ。
この薬には、この世と人間との縁を断ち切る効果があると言われている。
つまり、その人物が初めから生まれて来なかったことにしてしまうのだ。
「は、早く解毒剤を・・・」
美神の説明を受けて、当然のように解毒剤を求める横島だが、返ってきた答えは非情だった。
「・・・そんなもの、この世にないわ」
ただし、助かる方法がないわけでもない、と補足もする。
「さっき飲んだ中和剤で効き目はかなり弱まっているはずよ!
じわじわと効いてくるから、その間に手を打つの!」
「じわじわって・・・?」
「ゆっくり時間を逆行していくことになると思うわ」
説明しながら、美神は、『時間を逆行』という言葉に、妙な引っ掛かりを感じた。もちろん、それにこだわっている場合では無かったのだが、ここでおキヌが口を挟んだ。
『横島さんが過去へ行くということは、
今の横島さんと過去の横島さんと、
二人で協力して何かするってことですか?』
わかりにくい質問だったが、急いで頭を回転させて対応する。
「違うのよ、おキヌちゃん。
おキヌちゃんが言ってるのは時間移動ね。
時間逆行は、それとは別物よ。
例えば、十五歳の時点へ逆行するというのは、
十五歳の自分になっちゃうってことなの」
『十五歳の自分そのもの?
十五歳以降の現在までの記憶も経験も全部なくなっちゃうんですか?』
「じゃあ、何をしたら良いのか、覚えておけないじゃないっスか!」
おキヌと横島、二人が美神の言葉に反応した。それを聞いて、美神の中で、違和感が大きくなっていく。
(おかしいわ・・・。
時間逆行とか、それに伴う記憶の保持云々とか、以前にも、
この三人で同じような議論をしたことがあるような気がするわ。
そんなはず無いんだけど・・・)
だが、今は、そんな違和感の原因を追及している場合では無い。
軽く頭を振って、美神は答えた。
「大丈夫。
心も体も昔の自分に戻っても、今の記憶は残っているわ。
・・・逆行に関して、私の知識が間違ってなければ」
「ちょっとー!」
そこまで会話が進んだとき、横島の体が透け始めた。
『横島さん!』
「う・・・、うわっ?」
「薬が効き出したのよ!
時間がないわ! よく聞いて!!」
最後になってしまったが、美神は、一番重要なことを横島に伝えた。
「元に戻るには、この世との結びつき・・・、つまり縁を強めるしかないわ。
二十四時間以内で強烈に印象に残っていること、
それを過去の世界で再現しなさい!
そうすれば・・・」
そこまで聞いたところで、横島は意識を失った。
___________
意識を取り戻した横島の前には、おキヌ一人が居た。
『大丈夫ですか? 私ったらドジで・・・』
「・・・あれ、おキヌちゃん」
『え?』
驚きながらも、横島を見つめるおキヌ。
(そういえば、私、この人に会ったことがあるような気もする・・・)
『・・・忠夫さん?』
「・・・?
どうしちゃったの、おキヌちゃん」
いつもと違う呼び名を使われ、不思議に思う横島。その目の前で、
(この人を殺すことは出来ない・・・)
おキヌちゃんはスーッと消えていった。
一人取り残された横島は、周囲を見回し、場所が変わっていることに気付いた。
「ここは確か・・・。
今年の春、仕事で来た温泉か?
ほ・・・、本当に過去に戻っちまったのか?」
それならば、やるべきことは一つ。
二十四時間以内で強烈に印象に残っていること、の再現。
つまり、美神さんから、頬にキスしてもらうしかない。
横島は、美神の宿泊するホテルへ、一目散に駆けて行った。
___________
横島は、今、頭から血を流して倒れていた。
美神を見つけて、喜んで飛びついた結果、シバキ倒されたのである。
『時空消滅内服液』の件を説明しても、信じてもらえなかった。
「私があんたにキスしたなんて話・・・。
信じられると思うの?」
と、再びシバキ倒された。
「どうせ私の本棚の魔法の本でも読んで思いついたんでしょうが!
タチが悪いわね!」
と、三たびシバキ倒された。
そして、そのまま、美神からの暴力とは別の意味で、横島は意識を失った。
___________
次に意識を取り戻した時、横島は教室の中にいた。
「こ・・・、ここは?」
「どうした、横島? 顔色が変だぞ?」
授業中に突然立ち上がった横島に、クラスメートが声をかけた。
「・・・中学の教室か?
この顔ぶれは中一の・・・。
今度は四年近くも逆行を?」
「横島!
ふざけるのもたいがいにして、まじめに授業を・・・」
教師も声をかけたが、横島は、それを振り切って教室を飛び出した。
美神の事務所へ向かって走りながら、
「冗談じゃねえぞ!
戻るためには、早く美神さん見つけて・・・」
そこまで口にしたとき、横島は、わからなくなった。
(戻るって、どこへ?)
ケーキを食べて、時空消滅内服液にやられた日へ。
(そう、そこから来たはずなんだ。
だから、そこへ戻るべきなんだ。
・・・じゃあ、なんで、戻った時点以降の記憶があるんだ?)
前回の逆行と今回の逆行とには、大きく異なる点があった。
高校二年生の横島には有って、中学一年生の横島には無いもの。
美神と出会った後の横島が持っていて、出会う前の横島が持っていないもの。
・・・それは、『記憶封印』という枷。
今の横島の中に、記憶を封印するものは、何も無かった。
そして、『戻った時点以降』を考えてしまったことで、膨大な記憶が溢れ返る。
横島の精神はオーバーフローを起こし・・・。
そこで横島は倒れた。
目まぐるしく変わる記憶の映像の中で、倒れる直前の瞬間、横島の頭に浮かんでいた一場面。
それは・・・。
「でも、いっぺんに八個も文珠を使うなんて、
ちょっと制御できる自信無いっスよ」
「大丈夫、私たちも手伝うから。
・・・三人で行くのよ」
「これがホントの『三人寄ればモンジュの知恵』ですね」
「おキヌちゃん、この場合、意味としては『三本の矢』だと思うんだけど」
美神とおキヌとの、三人での会話だった。
___________
そして、横島は、次の逆行が始まる前に立ち上がった。
横島が倒れていたのは、決して短い時間ではない。既に、太陽も大きく西へ傾いている。
精神のオーバーフローは完全には収まっておらず、まだ朦朧としている。それでも、脚を引きずるようにして、目指す場所へと歩いて行く。
もはや、横島の頭の中で、美神から頬にキスされた印象など、完全に消え去っていた。
それどころか、時空消滅内服液のことすら、記憶の片隅に押しやられていた。
それでも歩みを止めないのは、嵐のように渦巻く記憶の中で、その地での記憶だけが、何度もリフレインされていたからだ。
(行かなきゃ・・・。
あそこへ・・・。
あそこで・・・)
横島は進む。
___________
横島は辿り着いた。
東京タワー展望台の上に。
そこに座って、夕焼けを眺める。
「昼と夜の一瞬のすきま・・・。
短時間しか見れないから、よけい美しい・・・」
未だ朦朧とした意識の中で、横島は呟いた。
誰に聞かせるわけでも無い、何しろ、ここには横島一人しか居ないのだから。
しかし、横島は、左に誰かが座っているように感じた。
・・・それは幻。
もしかすると、それは、文珠による『幻』だったのかもしれない。
横島は、中学生時代の微かな霊力から、無意識のうちに何とか一つだけ練り上げて、やはり無意識のうちに使ったのかもしれない。
もしかすると、それは、魔力による幻術だったのかもしれない。
霊力による逆行の際に、記憶とともに霊体も僅かに引きずられてきており、そこに含まれる特殊な霊気構造の力が、無意識のうちに発揮されたのかもしれない。
あるいは、それは、白日夢が見せた、文字通りの幻なのかもしれない。
あるいは、それは、奇跡と言われる類いの力で描かれた、理屈を超越した幻なのかもしれない。
理由も正体も誰にもハッキリしない。
しかし、そこに、女性の幻が存在していることは確かだった。
それは幻であるが故に、具体的な姿を確定させることは無かった。
大切な女性達の一人であるかのように見えれば、その直後、別の女性であるかのようにも見える。
「ねえ、横島さん! 美神さんのこと、どう思っ・・・!」
「きゃーっ!?」
「急にそんなんじゃ、びっくりするじゃないですか!」
「もう・・・。いやなわけないですよ。全然」
「ねえ、横島クン! ルシオラのこと、どう思っ・・・!」
「きゃーっ!?」
「急にそんなんじゃ、びっくりするでしょ!」
「ばっかね・・・。いやなわけないでしょ! ぜんぜん」
「ねえ、ヨコシマは彼女のこと、どう思っ・・・!」
「きゃーっ!?」
「急にそんなんじゃ、びっくりするでしょ!」
「ばっかね・・・。いやなわけないでしょ、ぜんぜん」
・・・そして、再び、横島は意識を失った。
___________
この世との結びつき、つまり縁を強める。
それが、時空消滅内服液の効果を打ち消す、唯一の方法だ。
縁を強めるための手段は、
「二十四時間以内で強烈に印象に残っていることを、過去の世界で再現すること」
だと言われているが、他の手段で縁を強めることは無理なのだろうか?
また、なぜ『二十四時間以内』なのだろうか?
例えば・・・。
もしも、二十四時間以内に強烈な印象が何も無く、二十五時間前に強烈な印象があった場合。
それを再現しても、縁は強くならないのだろうか?
もしも、二十四時間以内に強烈な印象が何も無く、一年前に強烈な印象があった場合。
それを再現しても、縁は強くならないのだろうか?
もしも、二十四時間以内の強烈な印象よりも、それ以前の強烈な印象の方が勝った場合。
それを再現しても、縁は強くならないのだろうか?
そして、ここに、未来の記憶を持つという特殊な男がいた。しかも、その未来の記憶の中にこそ、強烈な印象が残っているという特殊なケース・・・。
___________
次に意識を取り戻した時、横島は美神の事務所にいた。
「・・・再現しなさい!
そうすれば・・・」
美神が、時空消滅内服液への対応策を説明している。
「も・・・、元の事務所だ・・・!
戻ってきたのか!?
助かったあーっ!!」
「・・・?
あっそうか、もう行って戻ってきたのね?」
「会いたかったー!!」
いつものセクハラとは違う意味で美神に飛びかかる横島だったが、美神の反応は同じである。
いつも通りにシバかれた横島は、頭から血を流したまま、
「ところで、なんで俺助かったんだろ?
凄く苦しくなって、どこか高い所へ上ったことは覚えてるんだが。
なんか大事なことを忘れているような・・・」
と、自問する。
『現在』の横島へと戻ってきたが故に、記憶封印という枷が復活したのである。
「忘れているくらいなら、大事じゃないのよ。
ホントに大事なら、そのうち、ちゃんと思い出すでしょ」
『きっと魔法の毒より横島さんの『縁』の方が強かったんですよ』
おキヌの言葉に、妙に納得する三人であった。
(第五話「きずな」に続く)
謎だらけの開始でしたが、謎が解けつつありますね。
この封印された未来の記憶がどのように影響していくのかわかりませんが、
完結までがんばってください。
楽しみにしております。 (如月)
>謎だらけの開始でしたが、謎が解けつつありますね。
はい、これである程度の部分(『設定』程度のもの)は示すことが出来たと思っています。
もちろん『真相』とでも言うべき内容は、まだ書くことは出来ませんが、さらに隠れた内容が存在している、ということ(その存在自体)は、仄めかせていくつもりです。
>この封印された未来の記憶がどのように影響していくのかわかりませんが
それに関しては、書いている僕自身も分からなくて楽しみにしている部分でもあります(笑)。
というのも、物語全体の構成や終盤の展開は既に考えてはいても、まだ各小話の細部は決まっていない部分が多いからです。
いざ各小話のプロットを練る際に、原作中の相当するエピソードをもう一度読み返し、
「彼らが『封印された未来の記憶』を持っている場合、ここで、彼らは原作通りの行動をとるだろうか。それとも、影響されて、何か違う行動をとるだろうか」
と、いちいち考えて、思いついた『何か違う行動』の可能性の中から、面白そうなものをピックアップして書いていっています。
例えば、この第四話。
あらかじめ
『時空消滅内服液により記憶が回復すること』
は考えてはいても、
「じゃあ、どうやって現代に戻ってくるか」
という部分に関しては、あまり考えていませんでした。
膨大な未来の記憶、大変な出来事の記憶を思い出して、倒れてしまう、というところまでは簡単に思い至ったのですが、最初に考えていたのは、
「たとえ気絶したままでも、原作通り逆行していったら、最後には赤ちゃんになって美神にキスされるから、まあ戻ってくることは出来るわな」
という程度。でも、これじゃ面白くありません。
それでもう一度考え直して、
「そう言えば、別の場面だけど原作で『記憶のオーバーフロー』っていうのがあったな?
その際に横島の頭に浮かんでいたのは、東京タワーの場面。
ただし、お相手はルシオラじゃなくて美神に代わっていて・・・。
そうか、未来の記憶を持った横島の記憶がオーバーフローしたら、横島の頭の中は、そうなるのか」
と思い至ったので、ここに書いたような展開になりました。
『ルシオラじゃなくて美神に代わっていて』に関しては、そもそも原作を読んだ際に自分なりに思うところもあったので、今回、その一端を表現する良い機会になりました(ただし、『自分なりに思うところ』とは別の解釈も出来るような、そんな曖昧な描写を敢えて使ってみました)。
>完結までがんばってください。
>楽しみにしております。
ありがとうございます。
なかなか平日は時間が作れないのですが、それでも一週間に一話以上は進められるよう、頑張ってみます。
長々と失礼しました。今後もよろしくお願いします。 (あらすじキミヒコ)
>謎が多いですが面白かったです。
ありがとうございます。
>完結自体が少ないのがSSですので頑張ってください。
SSって、それぞれに原作とは違う設定がありますよね。
読む側としては、更新の間隔が空いてしまうと、その作品の設定を忘れてしまうこともあります。
それだけでなく、書き手側がせっかく含ませておいた伏線も、時間が経つと忘れ去られる可能性が高くなる。
そうした心配があるので、早く完結出来るよう、頑張っていきます。
今後もよろしくお願いします。 (あらすじキミヒコ)
過去で未来の出来事を再現するのはタイムパラドックスが起こらないのか、その辺りがもう少し詳しく知りたいです。
後、オチが原作と同じ様に何で現在に戻れたかわからないと言うのがひまひとつでした。 (白川正)
>時空消滅内服液の考察、とても面白かったです。
今読み返してみると、その部分だけ浮いてしまっていて、
「もうちょっと『小説』として内包できなかったかな?」
と反省しています。
ですが、それでも楽しんでもらえたようで、幸いです。
>過去で未来の出来事を再現するのはタイムパラドックスが起こらないのか、その辺りがもう少し詳しく知りたいです。
興味深い点を突いていただきました。
個人的な解釈として、
「時間移動で『タイムパラドックス』が起こりえても、時間逆行では、『タイムパラドックス』は起こらない」
と考えています。
作中で美神の言葉を借りて(笑)、時間移動と時間逆行の違いについて述べましたが、あれは、ここで関連しそうな点についてのみ。それ以外にも、
時間移動;移動した先の時空から、その後、元の時空に帰ってくることが可能(かつ、帰ってくるのが一般的)
時間逆行;逆行した先から、元の時空へ戻ってくることはできない(例えば十年前に逆行した場合。確かに、行った先の時空で十年間の時を経過すれば、逆行前の時間と同じになる。ただし、それは、それでも依然として逆行前の『時空』の十年前の『時空』である)。
という違いがあると思います。
タイムパラドックス云々というのは、過去での行動が反映してのものですから、元の時空に戻ってこなければ始まりません。その意味で、時間逆行では『タイムパラドックス』は起こらないと思うわけです。
と、ちょっと長々と書いてしまったのですが・・・。
こうした観点から考えると、時空消滅内服液による逆行は、いわゆる『逆行』とはまた別なのだと気づかされました。あれは『逆行』のくせに、最後に元の時空へ戻ってきますからね。
で、ここでタイムパラドックに関して、再考察。さきほど「時間移動では元の時空へ戻って来るから、『タイムパラドックス』が起こりえる」と書きましたが、『タイムパラドックス』が起こりえるためには、他にも必要条件がありますよね?
それは、元の時空と、行った先の時空がつながっているということ。それが繋がっていなかれば、過去で何をしようが元の時空には影響しないわけで、タイムパラドックスも何もありません(原作でも『ストレンジャー・ザン・パラダイス!!』において、元の時空と行った先の時空がつながっているかどうかを考慮したセリフがありますね)。
では、時空消滅内服液によって逆行した先の時空と、元の時空は繋がっているのか?
私は『繋がっていない』が結論だと思っています。原作において、横島の最初の逆行で、おキヌと美神の出会いは変わってしまいました。ワンゲル幽霊が出づらそうにしている描写があり、彼が出てこないままおキヌが身の上話を始めているので、あのまま美神とワンゲル幽霊は出会わなそうです。そうなると、もう『スリーピング・ビューティー!! 』が成り立ちません。
それが『繋がっていない』と思う根拠です。
(・・・こうして考えてみると、あの時空では、ワンゲル幽霊も出会わず、横島も消えちゃって、ということで無茶苦茶ですね。その時空のその後を考えるだけで、一つのSSになりそうです(笑))。
なお、タイムパラドックスの有無に関して興味があるのであれば、07/12/20に投稿した短編『最後の時間移動』は、いかがでしょうか。その作品中でも一つの解釈を示しています(私自身の解釈というより、作中の登場人物の解釈ですが)。
そちらも読んでいただけたら幸いです。
>オチが原作と同じ様に何で現在に戻れたかわからないと言うのがひまひとつでした。
ここで横島自身が戻った理由を理解してしまうと、それは現代でも記憶の封印が解けたことになってしまうので・・・。
こうする他に仕方ありませんでした。
では、第五話コメントのレスに続きます。 (あらすじキミヒコ)
未来において、記憶封印の文珠を使用したときには、
横島クンの独断ではなく、美神さんやおキヌちゃんも関わってたんですね。
時空消滅内服液の効果を消すのに、「24時間以内の記憶」に縛られず、
それより遙かに強烈な記憶で効果を打ち消すとは、すごくよく練られた設定ですよね。
確かに24時間以内にかかわらず、一番強い記憶により、この世との縁を結びつける方が自然です。
さて、戻ってきたことで封印も復活してしまったので、謎解きはしばらくおあずけかな〜?
いろいろ想像しつつ、次の話を読んでいきます。
毎話ボリュームがあるので、読むのが楽しみです。 (しんくす)
謎解きを小出しにした形になりましたが、こちらが意図したように受けとってもらえて、さいわいです。
また、時空消滅内服液の打ち消しに関して、『すごくよく練られた設定』『自然』と言っていただき、光栄です。
今後もよろしくお願いします。 (あらすじキミヒコ)
先が楽しみになるお話だと私は感じました。 (gdgd)
今回のエピソードは、ここまで謎にしてきた設定の一部を明かす話でもあったので、ここで『先が楽しみになるお話だと私は感じました』と言って頂けるのはありがたいです。
最後までよろしくお願いします。 (あらすじキミヒコ)