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復活

宴の始まり(4)


投稿者名:ETG
投稿日時:07/11/ 6

「ヒャクメ! ヒャクメ! 地脈はどうなっておる?」
「私ではどうにもならないですね〜〜!」

猿神がメドーサを撃退し石化小竜姫を抱えて妙神山に戻るなり地脈の要を祭る祭壇にゆく。

祭壇ではヒャクメが地脈の要にケーブルを繋いで全身の目から涙を吹き出させている。
ものすごい勢いでキーボードを叩きまくるも地面の揺れが収まる気配はない。
このままでは富士をはじめとした火山の噴火や大地震が関東だけではなく列島全体を襲うに違いない。

「えい、情けない。小竜姫の診察でもしておれ」

猿神は石化した小竜姫を放り出し如意棒を地脈の要に突き立てる。

「むん!」

その昔海を鎮めていた逸物と流し込まれた猿神の神通力。
あっという間に地脈が安定する。


「まずはこれで大丈夫か。チト力を入れすぎたかのう」
首を傾げた猿神にヒャクメが中庭からのたまう。

「気にすること無いのね〜〜〜〜〜〜」

手にした瑠璃瓶に刺した柳の小枝で石化した龍をひと撫で。
柳から甘露水がぱらぱらとかかるや石が生気を取り戻し ぽむ とか言う間抜けな音を立て女の子が現れる。

石化が解けた小竜姫がしばらくきょときょと辺りを見回した後にあわてて平伏。
もちろんヒャクメにである。
それを当然のように気にもせずに猿神に歩み寄って未だ地脈に突き刺された如意棒に手を触れる。


「神族の存在意義は地上界を守ることなのね〜〜。メドーサを気づかずに野放しにてしまった負い目もあるし、この程度の影響なら魔界も何も言っては来ないのね」

ヒャクメが膨大な神通力を如意棒に更に流し込む。

「そ、そんなに流し込まれては!!」
猿神が慌てて止めようとするがヒャクメは気にした風もない。

「せいぜい地脈を通じてメドーサやバトルジャンキー天使どもの被害者が助かる確率が大幅アップする程度なのね〜。
 大慈大悲をモットーにする私はこのくらいはしたいのねー」

「ご冗談を言われる」

猿神にはそんなレベルではない霊力が注ぎ込まれたのがよくわかった。
きっかけがあれば被害そのものがなくなりかねない――――つまり奇跡が起きかねない量である。
ジークもあきれ呆然とし、あわてて魔界に報告している。しかしヒャクメはそれを止めるどころか気にしても居ない。

猿神が知りうる限り、明らかにデタントの協定に反するはずだが、こんなところで堂々とやる以上は問題は起きないと言うことであろう。


その横で驚きながらも平伏する小竜姫の横に救急箱をもってヒャクメが走ってくる。

「早く小竜姫を元に戻さないと〜〜〜! でも私の手に負えるのかしら〜〜〜!
 って! なんで小竜姫が元に戻ってしかも平伏してるのね!」

その方向に如意棒に手を触れたヒャクメを認識するなり慌てて平伏。

「センメ様!! 何時お出ましに!」
「遅れてごめんなさいなのね〜〜。みんなを説得するのが手間取ってしまったのね〜」

平伏するヒャクメの頭を撫でる。アルカイックスマイルなヒャクメいやセンメ様。

「小竜姫もヒャクメもがんばったのねー」

ヒャクメはセンメ様に撫でられて感極まって涙を流している。
お次に小竜姫も撫でられるがこちらはそのことよりも自身のふがいなさを責めてるのか顔色がさえない。

「気にしなくてもあんなメドーサに勝てるはずがないですねー」

小竜姫とヒャクメをいい子いい子するセンメ様に猿神が冷ややかに問いかける。

「観音様。いかなる事態なのですかのう。ご自身が人間界にお出ましになり、しかもこんなことをされるとは」
「あいかわらず、石猿はそんな他人行儀な呼び方なのね。センメと言って欲しいのね〜」

ウインクするセンメ様いや千眼千手観世音菩薩の要請を無視し、いやじろりと睨んで椅子に座り込む。

「メドーサが野放しとか天使どもとか色々ご存じなようですな。説明してくださらんか」
「それはともかく妙神山をちびっと増強するのね〜」

猿神の言はさらっと流して曼荼羅を描き、手の楊柳でぱらぱら甘露水をふりかけてゆく。
みるみるうちにさっき注ぎ込んだ霊力が地脈に充実し平静になってゆく。
結果として妙神山の霊格が多少上昇。

猿神の質問はとりあえず華麗にスルーするつもりらしい。
少なくともヒャクメや小竜姫、ましてやジークの居るところでは言えないと言うことであろう。

「今帰ったとこなのですがのう」
納得しつつもため息をついた猿はどっかと椅子に座り込む。

しかし、休ませる気はないようだ。ブツブツ口の中で不平を言う猿神を指して霊波を流し込む。
霊光と共に人民服から中華風の四海龍王の甲冑に身を固めた姿に変わる。

「とりあえず石猿は月に帰り着くまで月神族の護衛してほしいのね〜」
「まだFF ]]の封を切ってないのじゃがな」

文句を垂れながらも再び立ち上がり霊雲を喚ぶ。

「ひさしぶりにお釈迦様公認で暴れられるのね〜〜。留守の間の花果山や崑崙山は私がみとくのね」

月神族の件で猿神が独断で暴れてもデタントの協定違反にはならぬ、少なくとも上からの叱責はないことをはっきり教唆する。
言外に無許可で暴れたことも不問に付すと言うことだろう。

センメ様はヒャクメ姿ではなく人にもよく知られた蓮台上の千眼千手楊柳観音の御姿でお見送り。

「とりあえず月神族が帰るまではこれで何とかなるのね」

その時、通信鬼が鳴る。スイッチを入れると顛末である。

『脱走戦艦ミラーとダインは太平洋南海上14367の地点で撃破された。
 霊破片は再生不能な程度に破壊された。
 彼女らの力から見て同位のものが蘇る可能性が極めて高いと思われる。
 各神界魔界各所のみならず人界駐留者も以下の霊的特徴を持つものを重点的に報告すること。詳細は……』

詳細な霊波パターンと予想される似顔絵、出現が予想される地点などが出力されてきている。
それをヒャクメに記憶するように命じる。

「ヒャクメ、このデータをとりまとめて後ほど人界に知らせるのね。
 人界で再生したら霊力不足で動けないから拘束する絶好のチャンスねー」

そこでセンメ様が小竜姫の方にふり向いてまたもや驚きの情報を二人に伝える。

「あと、まもなくヤクシが来るのね――」

小竜姫もヒャクメも聞いたとたんに飛び上がる。
センメ様こと観音菩薩はここの直属の上司であるが、大医王薬師瑠璃光如来は同じ仏族系とはいえ全く指揮系列が違う。
竜族でもその眷属でもない。

「この上に薬師如来様がですか?」
「お釈迦様を除くと最強の薬師様がなぜに?」

センメ様は頷いて表の理由を述べる。

「ヤクシが出張ってくれないとメドーサに石化された生類がうまく元に戻れないですね。
 十万単位でいる石化生類全員をまさか神界で治療できないね――」





一方こちらは横島の高校。

一応、メドーサは退却、黙示録の8天使は通りすぎたが誰も彼もが満身創痍で疲れ果てていた。

「通り過ぎただけで〜〜〜〜〜地脈がぐちゃぐちゃよ〜〜〜〜〜〜」

冥子があたりをクビラで見回して呆然としている。

「あれが神族魔族の本気の力ってワケ……」
「昔の人が懼れ敬ったのがよくわかるわね」

エミの自慢の豊かな黒髪もきな臭さが漂い泥まみれである。
美智恵の制服も所々破れている。

結界を浸透してきた黙示録の8天使の霊的衝撃波の威力。
先ほどまで猛威を振るっていたメドーサの行為が児戯に等しいほどの。

攻撃されたわけでもないのにこの有様だ。
幸いなことに関東全域に構築した結界をギリギリで起動することができこの程度で済んだ。



エミの肩にちょこんと座ったSDベスパ。

「黙示録の8天使は特別だよ。決戦兵鬼だからね。
 ありゃ正真正銘のばけもんだよ。旧式の究極の魔体と考えたらいい」

「そうでちゅよ メドーサのおばちゃんもドーピングかなんかしてたんでちゅ。人界であんな力を連続で振るうなんてありえまちぇん」

パピリオとその眷属も瓦礫の下からけが人を救い出したりしてくれている。

校庭一杯に横たわっている中には、迦具夜を守って石化された神楽や桔梗、朝顔などの月警官。
月警官の何人かが神楽にとりついて泣きすがり、副官の夕顔が生き残り――結構みな満身創痍だが――を纏めて石化された同族を亜空間に運び込む準備をしている。迦具夜までが自ら運んだりヒーリングしたりしている。

あちらではどてっぱらに穴を開けられて未だ起きあがれない横島、全身火傷とい骨折で立ち上がれないシロタマ。
それに無茶が祟って再びダウンした令子など美神事務所の面々。
ルシオラは少しでも負担を減らそうともはや自発的に横島の影に戻っている。

もちろん陸自の霊戦部隊やオカルトGメンの戦闘員、それに逃げ遅れた一般人も数知れず、石像やけが人として混ざっている。

外傷のない冥子もおキヌも膨大なビッグイーターとの戦闘の後の連続ヒーリングでもはや動けなくなっていた所に衝撃波である。
今は放心して座り込んでいる。おキヌはしばらくして事務所の壊滅とエスコート続行不能を美智恵に報告に来た。

強力なイージス結界のおかげで、なんとか動けているミラーがヒーリングを続けてくれているが動けなくなるのは時間の問題だろう。


美智恵がおキヌが去った後、あたりを見渡して眉をひそめる。

「日本の霊能戦力はたった2時間で壊滅したわね。西条クン」

西条も溜息をついて同意する。
こっちも自慢のきざったらしい長髪もアルマーニの背広もぐしゃぐしゃ。

「アシュタロスの時もここまで酷くはなかったんですが…
 それにさきほど雪之丞くんと唐巣神父の生存が確認されました」
「生存確認、ね。無事じゃないということね」

頷いて続ける。

「六道理事長は無事です」
「あの人はこのくらいじゃ平気よ。伊達に六道当主やってないから」
「付け加えると六道邸も無傷のようです」
「あっそ」

軽く頭痛がするが、次の報告も衝撃的であった。

「ドクターカオスとマリアも無事なようです」
「なんでなのよ」

最も霊障が大きかったところでの怪奇現象を頭から振り払って美智恵が目を向けた先には弓や一文字が包帯を巻いて座り込んでいる。
その他にも六女の制服を着た女の子が何人もへたり込んだり寝かせられたりしている。

西条は次にさりげなく東京都庁も無事であったことを付け加える。
口には出さないものの美智恵の顔が緩む。
東京都庁の公務員用託児所が無事だったと言うことだ。

「先ほどの米軍および空自の管制レーダーの情報を解析したところ、ビッグイーターの数は関東全域に渡ってのべ5千6百7十万匹に及んだようです」

西条が端末を見て報告を続ける。が、この辺の大まかなことは美智恵も承知なのはもちろん知っている。
声に出して報告せずには居られないのだ。

「それとの戦闘で、本日関東に全兵力が集中していたにもかかわらず在日米軍および陸自の霊戦部隊も壊滅。
 その後ベスパ、パピリオの眷属および本人達により一掃されました」

「結局私たちは悪魔や神様の手の上で踊ってたってこと?」
「そういう結論になりますか……。みなよくやったと思うのですが」

憮然とした表情でつぶやいたところで感じ覚えのある巨大な神気に上を見上げる。
猿神が到着したのだ。



「すまなんだ。この後の迦具夜の護衛はワシが引き受ける」

先ほどと違い甲冑に身を固めた猿神、闘戦勝仏の姿である。

「美智恵殿、問題ないかな?」
「喜んで。もはや美神令子除霊事務所もオカルトGメンも壊滅状態で戦力がありません」

美智恵も溜息をついて同意する。

「書類上の手続きもなるべく早く済ませ……」
「なればこれを貸そう。これで書類上もいじらずにすむじゃろう」

胸の毛をひと束抜いて美智恵に渡す。見る間に令子や横島それにオカルトGメンの姿をとる。

「申し訳ありません。なにからなにまでありがとうございます」
「ワシらも助けられた。娘御に礼を言ってくれ」

首を傾げた美智恵にメドーサが逃げた顛末を簡単に説明する。一瞬かつルシオラがハッキングして封じていたので美智恵も知らなかった。

「あの爆発はそうでしたか。あの子が」

一矢を報いてくれたことは嬉しかったが人間の力はまだまだだと言うことだ。

(しかしこれで意見は通しやすくなるわね)

「それともう、感知しておるとは思うが地脈は観世音菩薩が修復したのでその点は大丈夫じゃ。
 地上の被害の復興も早かろう。薬師如来も関与すると聞いておるから、けがや石化もおいおい治るはずじゃ。
 詳しくは後にヒャクメが知らせに来るじゃろう」

美智恵と西条は黙って頭を下げる。

一段落した所で美智恵の頭は次に向けて忙しく動き出していた。




一方猿神は頭を下げた美智恵と西条に頷いて向こうにいるパピリオに優しく声をかける。

「ようがんばった。さ、帰るぞ」

しかしパピリオは首を縦にふらなかった。

「パピはここに残りまちゅ。こんなことが次も起こったらルシオラちゃんが心配でちゅ」
「言いにくいが残るとデタント協定違反でお尋ね者になるぞい」
「それでもいいでちゅ」
「それでは残った意味が無かろう。妙神山はすぐそこじゃ。いつでもこれる」
「今日は間に合ったとはとてもいえまちぇん」

猿神が説得を重ねるがカンとして首を縦に振らない。

「心配しなくても今からは私もすぐ側にいるから大丈夫だよ」

エミの肩から降りたベスパも慰めてやる。

「気持ちは私にもよくわかってるよ」

それでも首を縦に振らない。

「……ベスパちゃんが協定違反にならないのになぜパピリオはなりまちゅか?」
なっとくできまちぇんと嫌々する。

「そりゃ私は正式にそこのエミを召喚主として契約してるからさ」
「なら、パピも誰かと契約すればいいんでちゅね」
パッと顔を輝かせて猿神に振り返って聞く。

「そうなるかのう。お前の禁錮と保護観察処分は神魔のバランスがほぼ平衡した今は解けとるでな」

苦笑混じりに答える。仕方ないのうといったところか。
観世音菩薩が降臨してきている今ならパピリオの1人ぐらいはどうにでもなるだろう。
基本的に観音様は人いや仏がよい。

「でも、誰を召喚主にするんだい?」
「もちろん、ポチいやヨコシマでちゅ!」
「バカ!」

ベスパの問いに当然とばかりに勢いよく答えたパピリオはベスパに頭をポカンと殴られる。

「いたいでちゅ」
「ポチは姉さんを回復させるのに一杯一杯なんだよ! そこに割り込めるはず無いだろ」
「〜〜〜う〜〜〜〜なら……」

姉に妙案を否定されあたりを見渡す。
(美神のおばちゃんにこき使われるのはどっちもいやでちゅし、妖怪もなんかいやでちゅ)

しばらくして座り込んで霊力を回復している黒髪の少女が目に入る。
彼女なら一緒に暮らしたこともあるし性格的にも問題なさそうだ。

「おキヌちゃんにたのむでちゅ!」

パピリオはてててっと駈けて行って、座り込んだおキヌにぶんぶん両手を振り回して説明しぺこぺこと頭を下げている。
まもなくおキヌを引っ張ってくる。どうやらOKを貰えたらしい。

そのおキヌを猿神がじーっと見るなり、

「無理じゃな」言下に却下する。
「なぜでちゅか!」
「霊力不足じゃ。とてもおぬしを支えきれんわ」
「基礎霊圧は60マイトはありまちゅよ! 充分でちゅ!」
「それはそうじゃが、キヌよ、おぬしかなり大きな式か眷属を抱えとるのう」

「いえ、そのようなものは…」
おキヌが首を傾げるがすぐに思い当たる。

(ヒャクメ様の心眼!!)

黙ってガメていたものの存在に気がついたとたん冷や汗がダラダラ流れてくる。
猿神はじっと見つめていたがすぐに破顔する。

「気がついたようじゃの」
「は、ハイッ」
「そやつはかなりなじんでしまっておるの。アヤツのうっかりじゃ気にするな」
「申し訳ありません!!」
「良いことを教えてやろう。その目はな、意識すれば観音様と繋がるはずじゃ。ヒャクメは観音様の直接の眷属じゃからな」

おキヌが平伏し、パピリオにも謝るが、
その横のパピリオはあたりを見回してうなっている。

「ロン毛はポチと仲が悪いからいやでちゅし…なかなかいまちぇんねー。あっ!!」

パピリオの目にとまったのはエミに報告に来た大男。
南極でも見かけたと言うことは相当の腕前であることは間違いない。

「あの大男はベスパちゃんの所の人でちゅか?」
「そうだよ。たしかタイガーってたと思う。ポチの同級生だったはずだよ」
「いぇーいい! ベスパちゃんと一緒なら文句ないでちゅ!」

ポチ命なルシオラの所よりも居心地はいいかもしれない。
パピリオがエミとタイガーの所へすっ飛んでゆく。

「そこな大男。パピリオを召喚するでちゅ」
「ハァ?」

さすがのエミもタイガーもこの混乱時に場違いなことを言われ、目が点になっている。
ベスパもやってきて詳しい説明。
動機も当たり前なことだけもありすぐに納得。

「召喚条件と代償が重要なワケ。おたくはどんな条件で召喚されたいの?」
「ベスパちゃんとだいたい同じでいいでちゅ。ただし肉じゃなくて蜜でいくでちゅ」

パピリオが両手を差し出して契約書を紡ぎ出してみせる。
タイガーはのぞき込んでみるが、複雑な魔法陣と楔形文字で記載されたそれ。

「申し訳ないがさっぱりわからないんジャー」

世にも情けない顔をしたタイガーにエミもどれどれとのぞき込む。見たとたんにまんまるに目が見開かれる。

「タイガー! はっきり言って‘超’がつくほどお買い得なワケ。おたく本当にこんなんでいいの?」
「ルシオラちゃんの近くにいる為のものでちゅから」

パピリオはコクコクと頷く。

「安い代わりに、ベスパちゃんより自由でちゅ。眷属とパピリオが食べられたら文句ないでちゅよ」

「しかし、よく考えてみたらワッシにはニエを払えるだけの経済力がないケンノー」

エミがベスパを召喚したときの莫大なニエを思い出して尻込みする。
格安とはいえ莫大な代償が必要なのは間違いない。
それに見習いのタイガーにもう1人扶養家族を養うのは不可能に近い。

「確かにパピリオサンを使い魔にすればワッシは大幅パワーアップじゃがノー」
残念そうに魔法陣とパピリオを見比べ、エミの顔も伺う。

「蜂蜜とベラドンナの葉だけよ。充分払えるわ」

エミが水晶玉にタイガーでもわかるように映し出してくれた。
改めて条件を見ると確かに量は莫大だが蜂蜜だけと言ってもいい条件だ。

多少の金も条件に入っているが、パピリオが使い魔になれば、タイガーが1人でできる除霊の条件が大幅に緩和される。
つまり小笠原オフィスの除霊受託案件がクッと増え、エミからの成功報酬がググっとアップするのは間違いない。

「確かになんとか払えそうジャー」
「眷属を住まわせる場所ぐらいはオフィスの一部を提供してあげるわ」

自分所の戦力が大幅アップと言うことでエミも上機嫌で提案してくれる。
タダもしくは格安で従業員が増えるのだ。文句のあろうハズはない。

「じゃ決まりでちゅ!!」

パピリオがぴょんぴょん跳びはねて喜んでいる。

「小竜姫とヒャクメには儂からよしなに言っておこう。偶には妙神山にも顔を出せ」

そう言うと猿神は すぅ と姿を消す。おそらく迦具夜の方へ行ったのであろう。


「これでルシオラちゃんともベスパちゃんとも毎日お話しできるでちゅ―――――っ!!」
「姉さんもきっと喜ぶだろうね。ポチもね」
「ワッシと高校に行けばかなりの確率で横島サンとルシオラサンに顔を合わすんケン」
「そりゃ私よりは条件良さそうじゃない。良かったね。パピリオ」
「はいでちゅ!」




to be continued


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