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復活

GSエミ 極楽魔法無宿!! 3


投稿者名:ETG
投稿日時:07/ 8/ 6

屋敷の結界を採算度外視で強化した後、疲労したおキヌと冥子以外全員で飛び出す。

「結界が逝くまでにエミの懐に飛び込んで叩きのめすわよ!」


エミも無限に補給できるとなると遠距離で打ち合って令子に勝ち目はない。
何せ相手は遠距離呪術の専門家なのだ。令子の得意なインファイトに持ち込む方が有利だ。
相手の居場所はわかってるのだ。

だいたい令子、横島(ルシオラ)、おキヌ、冥子、シロ、タマモである程度遠距離戦ができるのはルシオラのみ。
もちろんエミもその辺は読み切っている。


「タイガー、ミラー、そろそろ来るわ」
「いっぺん移動しますかノー」
「冥子におキヌちゃんが居るのよ。逃げるのは時間の無駄なワケ。予定通り腰据えて叩くわよ」
「了解しましたー」

ミラーが返答と共に打ち合わせ通りエミの側に寄ってくる。タイガーはエミの後ろ。

エミが辺りを見渡す。ここなら何をしてもさほどの迷惑はどこにもかからない。
丘の上は多少広くなっているが、周りにあるものは雑木のみ。

「フフフッ ここには電線なんて一本も無いワケ」

左手の玉を改めてみる。
「そしてこっちにはこれ」

勝てる・・・・・、これであのもてないイケイケ電気女に勝てる

「ふっふふふっ! ミラーとあわせりゃ、令子なんかこれでペペペのぺーよ!!
 煩悩魔とクソ女は一掃しておキヌちゃんを引っこ抜けば名実共に小笠原オフィスは業界No1!」


ホーホッホッホッ!! エミが哄笑し踊り狂う。

「令子、早く来なさい!」
「お望み通り来てやったわよ!」

声が終わるや、空中から令子が現れるや全力の光る鞭。
姿を消したルシオラからの低空空挺。


ぶうん!   パシン。


ミラーがサッとエミの前に出て令子の鞭をあっさりと受け止める。


「なにっ」


一応直前で手加減はした。エミならともかく面識のない、しかも女性。
令子といえども本気で殴れない。


令子が慌てて引き戻し、目標をミラーに変更して今度は全力で横殴り。
今度は全くの手加減なし。以前、キャメランと相対した程度の威力はある。

念を押して1億の破魔札も叩きつける。
それに対しまたもやあっさり受け止めただけではなく、今度は鞭を掴もうとまでした。


「アイテテテ。さすが美神さんですね。お噂通り」
手を振りながら、
「今度は捕まえようと思ったんですけど。ちょっとムリ」


「なめるなァ!!」
その小馬鹿にした(令子主観)物言いに柳眉を逆立てて数度叩きつけるが結果は同じ。


こいつが召喚した魔族!?


援軍として次に空挺降下してきた横島とシロのハンドオブグローリーが前後から交叉するがこれもミラーが簡単にはじく。
というよりも霊波刀は彼女の体に触れたとたんに散らされてしまう。

「横島さんに人狼の犬塚さんですね」
あらかじめ美神事務所のメンツと能力を教えられていたミラーが確認。

「嘘でござる!」
シロも驚愕と共に思いっきり後ろへ飛び退く。

せっかく霊波を刀だけではなく様々な形にできるようになって実戦で確かめられるとうきうきしていたシロ。
出会い頭一発で能力を封じられたショックが隠せない。
つうかこれで技の数がほとんど無い自分は事実上の戦力外通知を受けたに等しい。


「美神さん離れて下さい!」


その声と同時に横島が文珠の『爆』を発動。

続けて『縛』。

しかし、やはり完全にノーダメージで普通に立っている。


「嘘だろう! メドーサでも縛れたのに!」


焦って思わず次に『滅』を叩き込もうとして美人のねーちゃんだったので止める。
男だったら迷わず叩き込まれていただろう。


それを見た令子がエミチームの前面を鞭でえぐって砂塵をとばす。
一瞬3人が目を覆った隙にブロックサイン。

あっという間に3人の姿が消える。

「ルシオラしゃんとタマモちゃんの幻術ジャノー。エミさんこっちもやりますかノ?」
「打ち合わせ通り無駄だからいいわ」

それを聞くやいなやタイガーが即座に予定行動を起こす。
タイガーも一応念を押しているだけだ。

持っていたお手玉のような物が入った籠をぶちまける。

ぼん、ぼんっぼぼん。


多数の玉がはぜると共に強烈な臭気が鋭敏な犬神達の鼻を襲う。

「「ギャイン!!」」
「ちょっとかわいそうだけどお二人には戦力からはずれて貰うワケ」

鼻を押さえ目を回して本性を出したシロタマはとっととタイガーに呪縛檻に。

「すみませんノー」

もちろん知った女の子(今はケモノ)だけあってそっと、変なところに触れないように。


タイガーが檻を閉める頃には霊波の籠もった煙が漂い出す。
ルシオラ、タマモ双方の幻術が無効化され、令子や横島の姿も露わになる。



「美神さん、ありゃなんですかっ」

ハンドオブグローリーを一瞬でかき消され、文珠まで無効化された横島がわめく。

ミラーのことだろう。
「霊波防御の使い手よ。イージス結界の一種。六女の子が使ってたのより遙かに強力よ!」

「あらゆる霊的攻撃を触れた瞬間に無効化するようね」
ルシオラも付け加えてくれる。
「おまけに打たれ強いわよ! 美神さんの神通棍を喰ってさほどのダメージがないんだから」

霊力を消されても鞭としての物理的威力はもちろん変わらない。
この辺も六女の生徒とは一味も二味も違う。

「あとどんな手を隠してるかわからないから慎重目にいくわよ」
「それって、打つ手がないってことっスか?」


3人が攻めあぐねているとエミが、

「あら、もう攻撃しないワケ? ならこっちから行くわよ」

エミが玉を抱えていない方の右人差し指一本で頭上空中に魔法陣を描く。
直径1mちょいか。緑の蛍光を放つ半透明の美しい魔法陣。

(なんで空中に?)

なんのタメも呪文の詠唱もなかった。


ヒュィッ ヒュィッ ヒュン 

空中で垂直に色鮮やかに描かれた魔法陣の内陣と外陣が別々の速度と向きでくるくると回り出すや中央から強力なビーム砲のごと

き霊波砲。
令子と横島はよけるべく飛び退くが、かすかな音と共に色鮮やかな軌跡を描きながら目標に突進してゆく。

「魔砲!」

初めて見た令子が思わず声を上げる。

そう。戦国時代の戦闘巫女菜ノ葉や笛人が用いたという伝説が残っている魔砲である。

強力な術者になるといくつもの魔法陣を同時に展開しまさに機関砲のように連射でき、そして百発百中であったという。
ただし連射には当たり前だが莫大な霊力が必要で人間の術者では事実上不可能。
菜ノ葉や笛人も純粋の人間ではなかったか悪魔そのものであったとされている―――――

よりにもよってエミが再現したらしい。
これでエミは遠距離から近距離までカバーする超強力なGSとなったことを意味する。


「美神さん!! 追っかけてくるっスよ!!」
「くそっ」


エミももう一枚魔砲陣を追加したので、ふたり連携をとるどころか自分の身を守るのに精一杯である。

魔法陣そのものも結構な速度で横島・令子・横島,と変幻自在に追尾しながら新たな霊波砲をバルカン砲のように連射。

その素早い動きと発射速度にもかかわらず、今までのエミの近接攻撃の霊体貫通波と同じくらいの威力。
それを雪之丞のごとき手数で撃ってくるので始末が悪い。

ルシオラにぶら下げられて空中へ逃げた横島はサイキックソーサ2枚出しでなんとか防ぎ、
令子も鞭だけではなくお札まで出してではじく。

「大赤字よっー!! もう10億上乗せしとくんだったわ!!」
「ほーほっほっ!! もっと赤字を出して苦しむのね!! こっちはまだまだ黒字なワケ!!」


お札を無駄遣いしながらキーキーわめく令子を満足そうに眺めて悦に入っていたエミが次のアクション。


「まずは煩悩魔から排除ね」


言うなり新たな魔法陣を頭上に描く。
一瞬でできあがるやいなや前の物に倍する威力と数の霊波砲。

魔砲魔法陣にエミの真上に追い込まれいて、いきなり下から猛射を浴びたルシオラにぶら下げられた横島。

「なんだって!?! ぐぇ!!」
「きゃっ!」
「くそ!! まだ出せるのか!!」

空中にいて、全く予想していなかった下側から猛射を受け、
何発か避け損ねてルシオラもおもわず手を離してしまう。



「ハイ、おーらい」
ひゅーん。がっし。



ルシオラから落ちてきた横島はがっちりミラーが。

横島「を」お姫様だっこ。
「横島さん、つーかまーえた」

ミラーが自分の胸元の横島の顔ににっこぉと微笑みかける

「初めましてー。終わったらサイン下さいね」
「ハイ?」

場違いな台詞を聞いて思わずほうけるが美人のねーチャンに抱きかかえらている現実を


「お嬢さん!! ありがとうございます!! ボク横島。おかげで怪我せずにすみました!!」

一瞬で認識したようだ。


セりフを言うまにも胸にだき抱えられているのを良いことにミラーの胸に顔を埋めて、背中に手を回してぎゅーっと抱きしめてい

る。
しっかも、ミラーがそのことをぜんっぜん気にしていないようなのだ!


「どーいたしましてぇ。鏡っていいます、ミラーって呼んでください」
「お礼に今度、一緒にご飯でもどうッスか?」
「え、いいんですかぁ? アシュタロス戦の英雄の文珠使いの横島さんと食事できるなんて光栄です!!」
「はっはっはっ。魔神殺しの横島とは私のことですよ」
「お食事の時、ぜひ聞かせてくださいね!」

細かい傷はいつの間にやら消え、目に十字星を宿らせてサムズアップする横島。
ぱっと目を輝かせてますます抱える手に力を入れるミラー。
美人に抱きかかえられてイチャイチャ(ふるっ)する横島に当然ながら沸騰するのがいるわけで。


「「よ〜コ〜し〜マ〜ァ〜〜〜!!!!!」」


ハモる人形と夜叉よりも目の前の美人の方がいいのか、
横島は鼻を伸ばしてミラーとのデートの打ち合わせを始めた。

「イタリアンがいい? それともフレンチ?」
「ご一緒できるならどこでもいいですー!! お任せしまーす」

それを聞いた横島が行ったこともない高級店をずらずらと並べ始めた。
ミラーもそれに調子よく合わせるだけではなく、携帯の電話まで教えて居るではないか!


「横島ァ!! ええかげんにせんかい!!」
怒髪天をついた令子にエミが揶揄する.

「オーホッホッホッホッ!! 悔しかったミラーから取り返してみなさい!」

いうなりさらなる魔砲の乱射.

「エミ様は寛大だから、ここに来て土下座1000回するならミラーに返すように言ってあげてもいいワケ!」

多少の霊波砲よりもエミの無駄口が令子の精神を逆なでする。

「な、なんですってぇ〜〜〜!! ぐぎぎぎっ!! あれは私の丁稚よ!!
 エミやぽっと出のイージス結界使い如きに渡すもんか!!」

なにげに自らコクってるのは全く自覚ないらしい.

調子に乗りまくったエミが自分の足下を指し示しながら、土下座するならここまで来なさい、
ああっ、これ、この快感たまらないわーっ とかのたまいながら踊り狂っている.


「よこしまぁっ!! さっさとそこから出てこい!! さもないと!!!」
「むりッス〜〜!! ミラーちゃん力強くて、それにおっぱいの感触がぁ〜〜〜」


はーんとかいって一応ミラーの腕の中でもがくが、伸びきった鼻の下から見ても積極的に抜け出すつもりは全くなさそう。

「さもないとどうするワケー?」

エミが調子に乗って揶揄すると反論は上空から来た.

「こうするのよ!!」

そういってまっすぐ高空から垂直にでっかい石を抱えてマッハ2の最高速度で飛び込んできたのは、こちらも怒髪天をついたルシ

オラ。

「ヨコシマッ!! 覚悟ォッ!!」

その石を急降下爆撃!!
後ろから魔砲を乱射されているがこっちは全っ然気にしていないようだ.


ガツッ!! 「ぐぇっ!!」
見事、横島の脳天に直撃。

自分の拳のグーではり倒してやりたいところだが近づけばミラーのイージス結界でやられる。
実体のない式神のこと、霊力を消されれば紙切れに戻ってしまう。

「ルシオラ!! なにすんだ!!」
「手元が狂ったのよ!!」
「よこしま覚悟とか言ってなかったか?! おい!」

自分の式神に攻撃された横島が猛抗議を始めるが意に介した風はない。
更に血まみれの頭を抱えた横島にもう一発投げつける。

くわーん。

物の見事にわめく横島の口にヒット。

「ごめんねっ!!! また手元が狂ったわ!」
「おもふぃりへらっとるひゃなひは(おもっきり狙っとるじゃないか!)」


「その手があったか!! 人工幽霊一号!!」
令子がルシオラが石を投げつけたのを見て何か思いついたらしい。

『はい』
「コブラに積んである多目的地対地誘導弾発射!! 目標、エミ、それに横島!!」
『了解しました』

人工幽霊一号は、横島、にはさすがに引っかかったのだが
(オーナーのことだし何かあるんでしょう)
と素直にコブラのトランクの光ファイバーケーブル誘導のミサイルを2発発射した。

ちなみにこの最新ミサイルは最新鋭の重戦車や装甲舟艇すら一撃で爆砕できる強力な物だ。
念を押すと撃破、ではなく、爆砕である。粉々にできるのだ。

しかもミサイルの目のCCDは光ファイバーを通じて誘導者にリアルタイムでつながり、低空なら戦闘ヘリの機動にも追随できる

誘導性能を持つ。
射程は10km+。

「エミも横島も思い知るがいいわ!!」

いくら霊力無効化したってGS試験じゃないんだから攻撃の方法はいくらでもあるんだから!!
1000年想い続けて浮気をされたからか過激さではルシオラの100倍は上を行く令子であった。



コブラからのぼひゅんぼひゅんという発射音の後に
ぐぉ〜っというロケット噴射音を聞いたのは屋敷に残っていたおキヌと冥子。

エミからの攻撃が無くなって、そろそろ令子と合流するか、と思っていたところにこれである。
おキヌはそのミサイルが超強力なのはよく知っていた.

「エミさんとの喧嘩で美神さんがぶち切れちゃったみたい!」
「え〜〜〜、喧嘩は〜〜〜〜よくないわ〜〜〜〜〜、止めにいかない〜〜〜〜?」

冥子が出したのはメキラ。
「シンダラちゃんじゃ〜〜〜〜間に合わないから〜〜〜〜」

なにげに冥子もパワーアップしているため数キロなら瞬間移動可能らしい。




戦の最中に抱き合って恋人のごとく談笑する横島とミラー(令子・ルシオラ視点)。

「横島さん、血だらけですよー」
「ほれはひひゅもほほふらいひゃくたいひさひぇへふふの!(俺はいっつもこのぐらい虐待されてんの!)」
「ちょっとじっとしてて下さいね」

言った横島の頭のてっぺんの傷に聖水らしき物でなにやら描くと

ちゅ。と唇を付けて印を括る。

括り終えると印が軽く輝き,光が収まったときには傷も痛み血もない。

「き、き、きすっ!?」
「自慢なんですよ。結構強力でしょ」

うれしそうに横島に自慢して今度は口にヒーリング陣を描く。
驚いて飛びかかることもできない横島の口にゆっくり桜色の唇を近づけてゆく。

「ちょ、ちょ?!!?」

ミラーの頭が横島の顔にかぶさってくる。



ひゅ〜〜ん


メキラ到着。
「美神さん「令子ちゃん喧嘩は〜〜〜え―――――っ!!!!!!!」」

瞬間移動してきた冥子、おキヌ二人の目に飛び込んできたのは横島、ミラーのディープキス(に見えた)。

「な、なななな!!!!!」
「ひどい〜〜〜!!!!!」

おキヌは‘がーん’という効果音を背負って凍り付き、
冥子は目に涙をあふれさせる。

「冥子にはおでこにしかしてくれなかったのに〜〜〜〜」
「冥子さん!! 落ち着いて!!」

おキヌは存分に凍り付く暇もなく確実にミサイル以上の攻撃力のある爆弾の導火線を消そうと。
最終手段、とばかりにネクロマンサーの笛を取り出したがそこまでだった。

ぷつん。
どっご〜〜〜ん!!


お約束で発動される冥子の暴走。


アンチラが刀耳を振り回しサンチラが電撃。アジラが火を噴き
ビカラとバサラの巨体が辺り構わず体当たりと吸い込み。
マコラやショウトラといった攻撃力がないはずの式神までが破壊神と化す。

おキヌは間一髪ルシオラに救助されて無傷。


そこに突入してくる超強力ミサイル。

ひゅ〜〜〜ん!! どっこーん!!どっこーん!!
ぱらぱらぱら・・・・・・

爆炎・土煙それに衝撃波を避けて令子はとっくに飛び退いている。


「チッ。予定外だったけど冥子の暴走にミサイル2発。これでエミも横島もくたばったでしょう」

令子が爆炎を眺めながらつぶやいている。
その横顔と亜麻色の髪に炎が映えてまさに金色夜叉。

「シロちゃんやタマモちゃんは大丈夫かしら」
ルシオラが今更のようにつぶやくがそれに答えたのは令子ならずエミ。

「傷一つ付いてないわ。安心するワケ」

爆炎が収まった後には目を回した冥子と、傷一つないエミ、タイガーそれにミラー(に抱かれた横島)。
にんまりと笑ったエミにも陣取る魔法陣にも毛ほどの傷も付いていない。

「つきあい長いんだからアンタの反則技ぐらい想像付くわ。冥子の暴走は想定外だったけどね」


ニヤリと令子に一瞥してタイガーに命じる。

「冥子も目を回してる内に霊力封じてしまいなさい」

額に霊力封じの札を貼られた冥子を真っ赤な顔で抱えてゆくタイガーを横目で見ながら、
再度令子に促す。
ちなみに冥子が目を回しているのは、ミサイルがビカラとバサラに命中したからだ。
ミサイルを通して冥子の暴走を見て気を利かせたのは人工幽霊。

「エミ様に土下座する気はまだない?」

勝ち誇ったエミはもはや魔砲用魔法陣を休止させてしまっている。
もちろんすぐ打てるように魔砲陣そのものは消えていない。

「ぐぎぎぎっ!!」

そんな余裕綽々な態度のエミを悪魔も裸足で逃げ出しそうな視線で睨む。
この時、令子の奥歯にかかる圧力は10tを超えたであろう。

「そう!! その目よ!! ぞくぞくするわ〜〜!!」

大はしゃぎのエミは猫が鼠をいたぶるような表情で追加命令を出す。

「あーら、まだ土下座する気はなさそうね。じゃ、ミラー」
「ハーイ。横島さん。じゃあ」
「へ?」

ミラーが横島の額に霊力封じのお札を3枚ほどまとめて貼り付ける。
今の今まで、次の日曜はどこに行こうかとか、何が趣味とか話していたので、
ミラーにあっさり脈絡無く(横島視点)でお札を貼り付けられてしまう。

「きゃ」

次の瞬間にルシオラが消滅。

「これであとおキヌちゃんだけなワケ。さっさと降伏するのが吉よ」


しばらく令子はエミを睨んでいたが、ふっと表情をゆるめる。

「完敗よエミ。1000マイト振り回せるようになって奢りすぎたようね」

神通棍もしまって腰のホルダーにしまう。

「後学になぜ冥子の暴走やミサイルを浴びても無傷だったのか教えてくれない?」
「聞いても破れないわよ? でもまぁ長いつきあいだから教えたげるわ」

勝ち誇ってそこまで言ったところでエミが うっ? とつまる。
それを見た令子は内心ニヤと嗤うがおくびにも出さずに説明を促す。

「どうやったの?」

エミも特に気にした風もなく続ける。

「そこのミラーの能力よ。物理的・霊的攻撃をほぼ無効化するワケ。もちろん限界はあるけどね」
攻撃力は皆無とミラーから聞いているけどそこまでは教えることはないわ。

「その能力をこの魔法陣を通して周りに展開してるのよ」
「ってことは今もその魔法陣に魔力を流してるのね」

ここが一番知りたいところだった。OK。
令子がまだ攻撃力を失っていない以上不意打ちには当然備えているだろう。

「その通り。でもこの玉の魔力は無限よ。令子の電気みたいに場所を選ばないワケ」
エミが勝ち誇って令子に玉を見せつけながら令子を見下す。

「だから霊力切れなんて期待しても無駄よ」

そんな物は別に期待してないわ。もう一押しか。

「じゃ、エミが契約した魔族てのは誰なの」
「それは秘密ね。そういう契約になってるのよ。だから言えないわ」

さっきの胸だけだった不快感が腹にまで広がってきたエミが多少じれてぶっきらぼうに言い返す。

「メドーサ? ダミアン? それともヌル? まさかパイパー?」
令子が自分に恨みがありそうな魔族を並べる。

「ヌル? ご想像に任せるわ」

胸の痛みから腹にかけての鈍痛が酷くなってきたエミが隠そうと虚勢を張るが冷や汗が流れ出す。
耐えられなくなりこっそりイージス結界を維持する魔力を止める。

なぜ、こんな時に?

鈍痛を努めて顔に出さないようにして令子を睨む。

「で、土下座はどうするワケ? しなきゃ次はおキヌちゃん、いいぇ令子、オタク自身を無力化するわよ」
「するわきゃないでしょ!! エミ!!アンタはもはや魔力なんて全く使えないはずよ!!」

腰の神通棍を抜き放ち一気に鞭状にしてシロタマの閉じこめられている箱を一撃でぶちこわす。

「タマモ!! 横島の額の札をはずすのよ! シロ!!タイガーを叩いて!!」

それを見たタイガーが予備の煙玉・匂い玉をばらまこうするが、もちろん素早い犬神に二度同じ手が使えるわけもない。

「タイガーどの! 今度はそっちに眠って貰うでござる!!」
伸びたハンズオブグローリーが一気にタイガーの巨大なガタイを一気に引きずり倒し煙玉・匂い玉を奪い取る。
その後、軽く峰打ち。

ほぼ同時にタマモが横島の顔に特大の狐火をお見舞いする。
遠慮なんて物は全くない。

「グアチャチャチャ!!」

直前までミラーと楽しくお話していた横島が盛大に悲鳴をあげるとと共に額の札が焼け落ちる。

横島の首から上が黒こげだがそんなことは誰も気にしない。
ちなみに当たり前だがミラーは全く無事だ。

同時にルシオラが影から出現。

それを見た、いや見る前からエミが魔砲と防御結界の魔法陣に魔力を流そうとするが、
痛みのせいで反応が遅れ気味。だが用意完了。

が、
「うぐっ!!」
魔力を流そうとしたとたんにエミが胸を押さえてうずくまる。

「その様子じゃ3日は寝込むわね」

勝ち誇った令子が膝をついたエミを上から見下ろしている。

「土下座するのはどっちかしらね!!」
「な、なぜ!? こっちの体調が予想できたワケ!!」

今となっては令子の質問がただの時間引き延ばしだと理解できる。

「4000マイトの火角結界ぶち破って、お次は魔砲に物理攻撃まで無効化するような巨大なイージス結界?
 人間がそんなことやりゃそうなるわよ!!」

令子ですらこんな無茶はやっていない。はじめは数百マイトからだ。それでも悲惨な目にあった。
いきなり数千マイト相当の力を連続でふるえば必然的に幽体痛は酷いことになる。

「逆に令子はなんで平気なのよ!」
「血もにじむような修行の成果よ! 幽体鍛えもせずにいきなりじゃねぇ?」

(え〜やっぱり美神どのや隊長どのは・・・・)
(・・・・人外なのね)

などと言う感想を外野の一部は持ったようだが、もちろん令子はそんなことはかけらも思わない。

「魔族の魔力なんて他力本願なことした報いよ!」

本気で神通棍に霊力を込め始めたのをみておキヌが思わず叫ぶ。

「美神さんもう決着ついたからやめて下さい! せめて手加減して下さい!!」


しかし、さんざんおちょくられて怒り心頭に来た令子は事務所の良心の懇願も耳に入ってない。
びゅうんと鞭を振り上げ手加減抜きで振りおろす.


「極楽へ行かせてあげるわ!!」


スカッ


「あれ、なんで?」



まったく予想していない空振りに間抜け顔で手元を見ると神通棍は鞭どころか伸びてさえいない。

令子も霊力を使い果たしていたらしい。
電気で補充する癖がついていたのでついつい使いすぎてしまう。

「えーっと」

慌てて周りを見渡すも電柱なんか一本も無いところをエミは戦場に選んでるわけで。

それに、非常用霊力タンクの横島はまだミラーに捕まったまま・・・・・
冥子ならともかくシロタマおキヌでは全部かき集めても足らない。


しばらく気まずい沈黙が流れる。


「あのー。双方親分が力使い果たしたので引き分けってことでいかがでしょうかー」

ミラーが笑うしかないから笑ってるって顔で提案してくる。
ちなみに横島を抑えたままだ。

「あなたは闘わないの?」

コイツがまだ残っていたわねと令子がお札を出して警戒する。
そんな令子を見て苦笑しながらミラーが付け加える。

「私は防御とヒーリングしかできないんで、誰か攻撃担当がいないとどうしようもないんですよー」

「ならしようがないですね。じゃ、横島さんを離して下さい」

多少ふくれたおキヌの提案にミラーが素直に横島を抱えた手を離す。

「ハイ。横島さん。では名残惜しいですけど」

その台詞を聞いて事務所の面々(タマモ除く)がジト目になる。
しかも、当然ながら横島は手を離されてもミラーの胸に顔を埋めたまま。
やーらかいなーあったかいなーなどとつぶやいている。

「もうおしまいよっ!!」

それを額に井桁を貼り付けたルシオラが一発ぶん殴って引きずり出す。


「あ、そうだ」

それを見ていたミラーが再び寄ってきて
ルシオラの一撃で目を回した横島のほっぺたににちょん、と口を付ける。

「「!!!!!っ」」

「最後に焼かれた分のヒーリング忘れてました」

一瞬光りがまとわりついて横島のアフロヘアとルシオラにやられたたんこぶが元に戻る。

おキヌが自分の物とは比べものにならない強力なヒーリングに思わず嫉妬心を忘れて目を見張る。

「ヒーリング? じゃさっきのキスは」
「ハイ。戦闘時に怪我されてたんで」

思わず聞いてしまったおキヌにミラーが付け加える。
「もうひとかた、たぶん六道冥子さんだと思うんですけど勘違いされたみたいなんで、よろしくお願いしますー」

その一言で事務所の面々の表情がゆるむが、ヒールが終わると同時に目を覚ました横島がミラーにかけよってくる。

「ミラーちゃん! じゃこれ住所と電話番号!」
「ええ! ホントにご飯ご一緒していいんですか」

サインどころか住所と電話番号まで貰えたミラーが躍り上がって喜んでいる。

「もちろん!」
「じゃ来週の日曜日の夜、楽しみにしてます〜」

横島に抱きついてキスの雨を降らせる。
こんどは間違いなくヒーリングではなくキスだ。

「「「ちょ、ちょっとっ!!!」」」

シロキヌ令子が思わず叫ぶ。
トンビにあぶらげをさらわれるとはまさにこのことだ。

「皆さん一緒に来て下さいね! アシュタロス戦の英雄の皆さんに犬神に九尾狐の方々とご一緒できるなんて!!
 エミさんとタイガーさんも是非一緒に!!」

「「「え゜そういういみ?」」」」
一同が一瞬にして腰砕けになる。

横島に至っては顎を落として燃え尽きている。

「もてた、もてたと思ったのに〜〜〜!!」


そうこうしているうちにミラーはエミやタイガーの方に駆け寄ってヒーリング。
エミ、タイガーも一瞬で復活。


「令子!! 今回は引き分けにしといてあげるわ! 次こそ覚悟するワケ!!」

エミが捨て台詞を言い捨てるなりワゴン車を発車させる。


「約束ですよー」

ワゴンの窓からミラーがぶんぶん手を振って去ってゆく。


「ホラ、あんなに楽しみにしてるわよ。アシュ様殺しの英雄ヨコシマとしては約束守らないとね」
「だいぶ、お金が余裕あるみたいだから今月のお小遣いは増やさなくていいですよね」
「せんせー、拙者500gはあるサーロインの最高級肉のボーンステーキが一度食べてみたかったでござる」
「私は以前お父様に奢ってもらったクリュグが良いわね。せっかくの横島クンの奢りだし5本は飲むわよ」
「私はオアゲ。最高級のお揚げ三昧。一番安上がりだから1ヶ月毎日行かない」
「冥子はたしか喜兆が好きだったから、店は喜兆の本店に変更しよっか」




「かんにんしてくれ――――っ」



「「「「「ダメ!」」」」」

凄絶な笑顔の5人に囲まれて喜兆を約束させられた横島だった。



to be continued


エミが召喚した魔族そのものの登場はもうちょっと後ろです。期待した人申し訳ありません。
それとクロスではないので魔砲はちょっと違う?。


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