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ニューシネマパラダイス

ハンター×ハンター


投稿者名:UG
投稿日時:07/ 7/29

 ザックリと裾を落とした洗いざらしのジーンズ。
 そこから伸びた少女特有のすらりとした足が力強く地面を踏みしめていく。
 歩くのが楽しくって仕方がないとばかりに左右に揺れる尻尾と、だいぶ底のすり減ったスニーカーが持ち主である少女の活動的な性格を物語っていた。

 「ちょっとシロ! もう少しゆっくり歩きなさいよ!!」

 かなりのハイペースで歩く少女に、付き合いらしい少女が非難めいた声をかける。
 シロと呼ばれた少女は一向にペースを落とす素振りは見せず、にこやかに後ろを振り返った。

 「タマモは嬉しくないのでござるか! 今夜は久しぶりのすき焼き!! 拙者はもう・・・」

 天にも昇るような表情を浮かべたシロに苦笑しつつ、タマモは手に持った袋の中身を確認する。
 袋の中には先程購入した焼き豆腐が、しらたきに守られるように鎮座していた。

 「そうね・・・前に食べたのは一年以上前かしら?」

 タマモは半年以上、謎の失踪をしたヨゴレSS書きを非難するような台詞をさらりと口にする。
 ネギ、豆腐、しらたきなどの購入をすませ、これから贔屓にしている肉屋へと向かう道すがら、暴走気味に先を急ぐシロのペースにタマモはついていくのがやっととなっていた。
 身体能力が劣るという訳ではない。問題は二人の出で立ちの差だった。
 ジーンズ姿のシロとは異なり、ミニスカートで大股闊歩するほどのサービス精神はタマモにはない。
 珍しく買い物に付き合ったのは、肉屋の主人からおまけで貰えるコロッケ目当ての行動だった。
 揚げたてのソレを、ソースなしで歩きながら囓る不思議なおいしさを彼女は気に入っていた。
 その美味しさの秘訣が、友人との買い食いというシチュエーションにあることにタマモはまだ気付いていない。
 タマモはペースを落とし前を向き直ったシロの後ろを付いていく。
 翻っていたスカートに不躾な視線を向けていた通行人に、若干の醒めた視線を向けながら。
 目当ての肉屋は次の角を曲がってすぐの所にあった。

 「あれ? 道を間違えて・・・」

 本来曲がるはずの曲がり角。
 そこを曲がらずに通過したしたシロに、タマモは声をかけようとする。
 最後まで口にしなかったのは、シロの尻尾の揺れから彼女の緊張を感じ取ったからだ。
 先程自分を振り返った時、シロは何かの異変を感じ取ったらしい。
 周囲に感覚を広げてみたが異変の原因もこちらの変化を感じ取ったのか、タマモにはその存在を感じる事はできなかった。
 シロはそのまま無言で細い私道を含む複雑な道程を辿り、たまに散歩の途中にたちよる空き地にたどり着く。
 枯山水のように配置された土管と廃材―――見事なまでの空き地だった。

 「拙者達に何か用でござるか?」

 油断無く周囲に気を巡らしたシロに、タマモは驚きの感情を苦労して隠す。
 シロは相手の存在を完全に掴んだ訳ではないらしい。
 森の狩猟者たるオオカミの感覚に、存在を感知されない何者かが周囲にいるというのか?
 霊波刀を出現させ、僅かに踵を浮かし全身を脱力させるシロ。
 全方位への咄嗟の移動を可能にする肉食獣特有の立ち姿だった。

 「よく気付いたね・・・」

 ボソリともらした声に、シロとタマモは驚きを隠せない様子で振り返る。
 先程まで誰もいなかった筈の土管の上に、痩せぎすの中年男がちょこんと腰掛けていた。
 ぱっと見の印象は窓際に追いやられたサラリーマン。
 しかし、油断無く光る切れ長の目と、手に持った物の異質さが彼がただ者で無いことを窺わせた。

 「さっきは、コレを見られてはいない筈だけど・・・」

 男は杖のように足下についていたソレを僅かに持ち上げる。
 黒塗りの鞘が夕日にきらめき、内に隠された日本刀の刀身を容易く想像させた。

 「その目、その目を見なければ拙者も誤魔化されていた。獲物を狙うハンターの目・・・オオカミを狙うとはいい度胸でござるな」

 収束力を上げたシロの霊波刀が一層輝きを増す。
 男は真っ向から吹き付けられるシロの闘気を軽く受け流すと凄まじい笑みを浮かべた。

 「流石、美神事務所の居候・・・いいモノを持っている」

 男は立ち上がると、すらりと刀を引き抜き青眼に構える。
 刀身に男の姿が隠れた様な気がし、タマモは二三度、目をしばたいた。

 「一手、手合わせ願う」

 「タマモ・・・」

 油断無く視線を男に向けたままシロが呟く。
 その言葉を最後まで聞かず、タマモは呆れたような声でシロの呼びかけに答えた。

 「手出し無用でしょ・・・分かってるわよ」

 タマモは見てしまったのだ。
 男と同様にシロの口元に浮かんだ凄まじい笑みを。
 二人の邪魔にならないよう空き地の隅に移動すると、通行人に邪魔されないよう幻術で周囲を封鎖する。
 それを切っ掛けとするように、シロの霊気が一層密度を増していった。

 「犬塚シロ・・・」

 極限まで張りつめた気をまとわりつかせ、シロが己の名を口にする。
 対する男も凄まじい笑みを浮かべたままその呼びかけに応えた。

 「俺の名は紅華・・・GH―――ゴースト・ハンター紅華! 参るッ!!」

 ゴースト・ハンターとは一体!?
 男の名乗りを聞き、一瞬乱れたシロの集中。
 その機を逃さず切り込んだ紅華の一撃をかわせたのは、躰に染み込んだ日々の修行の成果だった。
 ほんの一瞬の間に数合打ち合った二人は位置を変え再び青眼に向かい合う。
 シロの額に浮かんだ汗は、男の剣技が浮き上がらせたものか。

 「新陰流・・・」

 「ほう、たった数合で見抜いたか」

 シロの呟きに紅華は感心したような表情を浮かべる。

 新陰流
 戦国時代の兵法家、上泉伊勢守秀綱が興した新陰流は、修行に袋竹刀を使用する点で現代剣道のルーツとも言える流派である。
 木刀による寸止めの型稽古が主流だった当時の流派の中にあって、怪我をしにくい袋竹刀を用いた打ち合いによ る修行は、スピードに対する動体視力や状況の変化に対する駆け引きの向上に画期的な飛躍をもたらす。
 また、古流の型が想定する重い鎧を着た上での身体運用ではなく、軽装時における身体運用を基本とした術理は当時の剣術界にあって革命的とも言えるものだった。
 当時、畿内随一と評判の剣豪武将であった柳生宗厳が、上泉伊勢守秀綱の弟子である疋田文五郎と立ち会い手も足も出なかったというエピソードは、この時期に起こった剣術の新旧交代劇を如実に窺わせる。
 柳生宗厳はすぐさま上泉伊勢守秀綱に弟子入りし新陰流を継承、その後、彼の修めた新陰流は柳生新陰流として広く後生に知られていく。
 そして印可を授けるにあたり、上泉伊勢守秀綱が彼に課した課題は柳生新陰流の奥義となっている。
 その奥義とは―――

 「ならば、柳生の技を使うに値すると認めよう」

 呟きとともに紅華がとった行動に、タマモの目が驚きに見開かれる。
 紅華は青眼の構えを解き、刀身を鞘に収めると足下に放り出したのだった。
 彼と対峙しているシロの気に若干の怒りが混ざった。

 「無刀取り・・・拙者の太刀筋をみてなお、それを行おうと?」

 「舐めているのではないよ。君が奥義を使うのに相応しい相手と認めたまで・・・」

 霊波刀を構えるシロに対し、紅華は完全に無手となっている。
 しかし、これこそが上泉伊勢守秀綱が柳生宗厳に与えた課題だった。
 刀を用いずに、斬りかかってくる相手を圧倒し無力化する。
 この課題をクリアした柳生宗厳は、このことにより新陰流の印可状を与えられていた。

 「最初の予定では、君は美神令子をおびき寄せるエサに過ぎなかったのだから。命までは取らない・・・安心してかかって来るがいい」

 「舐めるなッ!!」

 裂帛の気合いを込め、シロが紅華に斬りかかっていく。
 凄まじいまでの霊力の放出の後に訪れる静寂。








 「そ、そんな馬鹿な・・・」

 数秒後
 静まりかえる空き地に、タマモの呆然とした呟きが響く。
 勝負は一瞬でついていた。








 ――――― ハンター×ハンター ―――――






 訪れようとする危機を美神事務所に知らせたのは一本の電話だった。
 すき焼き用の割り下を作っているおキヌや、コンロの準備をしている横島に代わり、帳簿の整理を一段落させた美神が受話器に手を伸ばす。
 食材が届くタイミングをみはからって仕事を終わらせたのだったが、いつも以上に時間がかかるシロタマのお使いに、美神は若干の手持ちぶさたを味わっていた。

 「はい、美神除霊事務所」

 「レ〜コちゃん、お元気〜」

 受話器の向こうから聞こえてくる間延びした声に、美神の胃が僅かに収縮する。
 声の主は、現六道家当主・・・つまり冥子の母親だった。

 「・・・・・・・・・ええ、お陰様で。おばさまも相変わらずお元気そうで」

 シクシク痛み出した胃を手で庇いつつ、美神は愛想の良い返事を返す。
 返事を返すまでの数秒、八割方本気で留守電のメッセージを演じようとしたことは内緒だった。
 六道の血族との会話は酷く美神を疲弊させる。

 「そうでもないのよ〜。頭が痛い問題が起きちゃってね〜おばさん困っちゃってるの〜。レーコちゃん、GH―――ゴースト・ハンター協会って知ってる〜?」

 「GH?」

 耳慣れない言葉に美神は怪訝な声を出す。
 いつもの調子外れな頼み事ではなさそうな話題に、胃の痛みが若干治まりつつあった。

 「うーん、冥子が生まれる少し前のことだから知らなくても無理ないか〜。紅華クンって言う当時名を上げていたGSが立ち上げた団体でね〜、基本的に依頼者からの依頼を受けて除霊を行うGSと違って、自分の利益になるゴーストを自ら進んでハントするっていう団体なのよ〜」

 「他人のモメ事に進んで首を突っ込むとは・・・それも、当事者の了解無しに」

 美神は信じられないという表情を浮かべた。
 霊障の多くは死者と生者、両者の情念が複雑に絡み合って生じる。
 自分のように問答無用の力業で除霊するGSでさえ、その情念の渦に極力巻き込まれないよう第三者の立場を崩すことは先ず無い。
 これが一般的なGSのスタンスと言えた。

 「そんなんじゃ、かなりの軋轢を生んだんじゃないかしら? それにしては全く評判を聞きませんけど・・・」

 「それは紅華クンの能力によるところが大きかったのよ〜」

 「能力?」

 どこか歯切れの悪い説明に、美神の声がほんの少し大きくなった。
 先程感じた胃の不快感はすっかり陰をひそめている。

 「紅華クンは相手の能力を奪えたのよ〜。その能力の正体は誰にも分からなかったけど、彼が一度だけ口にしたことがあったわ〜。柳生の奥義―――と、彼は新陰流の達人だったから・・・」

 「ははっ、信じられませんね。そんな便利な能力があるなんて・・・もしそれが本当だとしても、それじゃなぜその男は未だに無名なんです?」

 美神は冥子母の説明を一笑に付そうとする。
 しかし、いつもの茫洋とした口調とは異なる冥子母の言葉に、美神の表情から笑いが消えていった。

 「つい先日まで行方不明だったからね〜。協会を立ち上げてまもなく、紅華クンは辺境に妖蟻をハントしにいったまま姿を消した。当時、紅華クンを脅威に感じていたGS達は密かに胸をなで下ろしつつ、彼の帰還を恐れ続けていたのよ〜。半年後に姿を現すのではないか? 一年後は? 5年後、そして10年・・・」

 「で、とうとう20年以上経って姿を現したという訳ですね」

 「流石レーコちゃん。3日前、GS協会に挑戦状が届いてね〜、紅華クンは自分が一番優れた霊能力者であることを証明したいらしいのよ〜。もちろん協会はその申し出を無視したわ〜」

 ようやく本題に入りそうな話の流れに、受話器を握る美神の手が微かに緊張する。

 「そして昨日、紅華クンと同期だったベテランのGSが襲われた・・・彼は霊力とGS業界に関する知識を奪われていたの〜。GS協会も本腰を入れて対策に乗り出そうとしてるんだけどね〜」

 「次はウチの番。おばさまはそう考えてるんですね?」

 「一応、めぼしい所全部に知らせるつもりだけどね〜。個人事務所にしては人材が揃いすぎているのよ。レーコちゃんの所は〜」

 出る杭が打たれるのは人の世の常である。
 若い身空で事務所を立ち上げ、精力的に仕事をこなしていけばそれなりの軋轢は否が応でも生じる。
 それが顕在化しないのは、自分の苛烈な性格に伴う風評と美神の名、それと何かにつけて目をかけてくれる六道の存在が大きかった。
 それによって、時に多大な迷惑を被るのは否定できないのだが・・・

 「もう少し事務所を大きくする気はないの〜? レーコちゃんがその気なら、ウチの部門を一つ任せてもいいんだけど〜」

 「ありがとうございます。でも、このまま個人事務所でやっていく方が性に合っているもので・・・」

 美神は視線をずらし、すき焼きの準備に勤しむおキヌと横島の姿を見る。
 この光景がいつまでも続くとは美神自身思ってはいない。
 しかし、出来るだけこのままでいたいと思うのも紛れもない本心だった。

 「ご忠告感謝します。おばさま」

 「いいのよ〜。レーコちゃんには夏休み明け頃、冥子と正樹ちゃんの件で頼み事するかも知れないし〜」

 突然出た冥子の名に、治まっていた胃の痛みが復活する。

 「それでは早速対策にかかりますので・・・」

 美神は半ば強引に会話を終わらせると、静かに受話器を置く。
 なかなか帰らないシロタマが気になるのは本当の事だった。

 『オーナー、大変です!』

 適当な理由をつけてシロとタマモを探しに行こうとした美神に、人工幽霊が慌てたように声をかける。
 確信めいた悪い予感にすぐさま窓辺へ近寄ると、くたびれたサラリーマン風の中年男が事務所を見上げていた。
 その男の足下に転がったシロとタマモの姿に、美神は固く唇を噛みしめる。
 二人は獣形態のままぐったりと倒れ込んでいた。

 「貴様ッ! 二人に何をしたッ!!」

 美神の様子を訝しみ、近寄ってきた横島が怒号を放つ。
 おキヌは小さな悲鳴をあげていた。

 「安心しろ、命までは取っていない・・・しかし」

 男の手から現れた霊波刀に横島は絶句する。
 それはシロの霊波刀と同じ輝きを有していた。

 「素晴らしい輝きだ。ここまで霊力を収束するのにどれ程の修行を己に課したのか・・・しかし、もうそれも俺のモノ」

 シロの能力を奪われたことを悟り、横島は怒りのあまり窓から身を躍らせようとする。
 しかし、その動きは彼の裾を掴んだ美神の動きに止められていた。

 「用件を聞こうかしら・・・」

 努めて冷静さを保とうとする美神に、横島は己を見失いそうになった自分を恥じる。
 今すべきことは状況を見極め最善の行動をとることだった。

 「噂通り胆が座っているな。人狼と妖弧を居候として抱え込んでいるのも肯ける・・・俺との勝負を受けるのならこの場でこの二人は解放しよう」

 人質を必要としないのは己への自信故か。
 紅華は美神の凍てつくような視線を受け流し、不敵な笑みを浮かべた。

 「そして君が俺に勝てば、この二人の能力は元に戻る」

 「分かったわ、だけど勝負と言うからには五分の条件で戦りましょう。そうね・・・時刻は二時間後、場所は・・・」

 美神は横島のポケットから携帯を引き抜くと紅華に向かって投擲する。
 使用法が分からないのか、怪訝な表情を浮かべた紅華の手の中で着信音が鳴り響く。
 液晶に表示されたのはアドレスの最初に登録されている番号―――美神の携帯だった。

 「二時間後、お互いがいる場所の中間地点が決戦の場。これならば双方、不意打ちや罠を仕掛けられる心配はないでしょ」

 「了解した。20年以上も経つと決闘の流儀も変わるらしい」

 なんとか着信ボタンの存在が分かったのか、美神の携帯から紅華の声が響く。
 夕闇に溶け込むように紅華が姿を消すと、美神たちは飛び出すように事務所の外へと向かった。






 「酷い・・・霊力が根こそぎ奪われている」

 タマモを抱きかかえ、ヒーリングをはじめたおキヌはその反応の無さに絶句する。
 通常のヒーリング時に感じられる、霊力を注ぐ際の反作用のような感覚をおキヌは感じることが出来なかった。

 「いや、霊力というよりかそれを入れる器ごと奪われているって感じだ」

 文珠を使用し、シロの意識を回復しようとした横島も焦りの表情を浮かべていた。
 注ぐべき器がないのでは霊力の補充も意味を成さない。
 人よりも霊体の占める割合の多い人狼、妖弧にとって、霊力を奪われるのは致命的ともいえる損失だった。

 「とにかく二人を部屋へ・・・」

 美神に促され、おキヌと横島は二人を抱えたまま屋根裏部屋へ移動する。
 その途中、横島が先程の男についての質問を口にした。

 「美神さん、さっきのオッサンは何者なんスか? いやにアッサリ挑戦を受けましたが・・・」

 「GH・紅華・・・自分が一番優れた霊能力者であると証明する為に、GS協会に喧嘩を売ってきた大馬鹿野郎よ」

 「そんな下らない事の為にシロとタマモは・・・」

 屋根裏部屋のベッドにシロを横たえると、横島はその頭を慈しむように撫でる。
 シロは何の反応も示さない。赤い前髪の柔らかな手触りが堪らなく悲しかった。
 タマモをベッドに寝かしつけたおキヌも、悲痛な表情を隠せないでいる。

 「クッ、美神さん! その紅華っていうオッサンをぶちのめせば二人は元に戻るんですよね!?それならば・・・」

 「そうね・・・頼りにしてるわよ横島クン」

 戦う意志を示そうとした横島に一瞬だけ複雑な表情を浮かべると、美神と横島は戦支度をするために事務所へ移動をはじめる。
 その背には戦いに赴く決意が浮かんでいた。

 「美神さん、私も戦います!!」

 急いで部屋から持ってきたのだろう。
 事務所で装備の点検を始めた美神と横島の背後に、ネクロマンサーの笛を手にしたおキヌが立っていた。
 笛を握る手が白んでいるのは戦いに赴く覚悟の表れ。
 美神はそんなおキヌを窘めるように見つめる。

 「ダメよ! おキヌちゃんはここに残って・・・」

 横島と二人決戦に挑もうとする美神に、おキヌはつい声を荒げてしまった。

 「どうしてですかっ! 私もこの事務所の一員ですっ!! みんなと一緒に・・・」

 「ちょっ! 分かった、分かったからおキヌちゃん、こんな所で巫女装束に着替えないでっ!! 横島に見られちゃうわよっ!!」

 「!? 何を言ってるんですか美神さ・・・」

 突然訳の分からない発言をした美神に、おキヌは大いに慌てた。
 おキヌは服に手をかける素振りすら見せていない。
 その発言を信じたのか、いままでリュックの中身を確認していた横島が、もの凄い反応速度でおキヌの方を振り返った。


 ―――好きよ。アンタのそういう分かりやすさが・・・


 「え?」

 騙されたのを理解した刹那、横島の首筋に神通棍のグリップが音もなく吸い込まれる。
 糸の切れた人形のように横島はその場に崩れ落ちた。

 「美神さん! 一体、どういうつもりなんですかっ!!」

 横島を気絶させた行動を責めるおキヌの声を無視し、美神は横島の体を呪縛ロープで拘束するとソファの上へと移動させる。
 その扱いがどこか乱暴なのは、神通棍の攻撃に容赦が無かったのと同じ理由―――おキヌの着替えというエサへの反応故のことだった。

 「おキヌちゃんも見たでしょ。今回の敵は相手の能力を奪う・・・横島クンの能力を自分の力を誇示したい男が手に入れたらどうなると思う? それに、おキヌちゃんの能力もね・・・」

 美神の言いたいことをおキヌは即座に理解する。
 文珠生成能力を相手に奪われた場合、戦いは圧倒的に不利となるだろう。
 美神は今回の戦いを自分一人で行うつもりだった。

 「文珠はコイツみたいな馬鹿じゃないと危なっかしくって持たせてられないわ・・・ドラえもんの道具を悪用しても、せいぜいしずかちゃんのお風呂を覗くくらいの悪さしかしない馬鹿じゃないとね、それに―――」

 美神は続く言葉を飲み込む。
 横島を見つめる美神の目は不思議と柔らかかった。

 「いい、おキヌちゃん! 横島が目を覚ましても絶対ほどいちゃだめよ。今回の敵は私独りでカタをつけるから・・・人工幽霊!」

 『結界の出力を最大にですね。オーナー』

 「そう、それにコイツが抜け出さないように見張っておいて! 絶対にね!!」

 人工幽霊とおキヌの返事を待たず、美神は装備一式を手に事務所を後にする。
 その装備の重みに、美神は先程飲み込んだ言葉を胸の中で反芻する。

 ―――それに、これから私がやることはアナタたちに見せたくないの。

 美神は今回の火の粉を振り払うのに手段を選ぶ気は無かった。













 時計の針は7時丁度を指していた。
 美神は左手に巻いた腕時計から視線を外すと、コブラの助手席に置いたノートパソコンに視線を落とす。
 ソコに表示された地図上には光点が二つ。
 赤い点は美神の、青い点は横島の携帯の存在を表していた。

 「着信ボタンに気づくまで何秒もかかるアナクロオヤジじゃ、GPSなんて知らないでしょうね・・・」

 ノートパソコンに表示されているのは携帯のGPS機能を使用した位置確認システムだった。
 横島とおキヌへの携帯支給に伴い、密かに導入した管理システムはようやく本来の役割を果たそうとしている。
 美神は5分の条件で勝負するために携帯を渡した訳ではないらしい。

 「約束の時間まであと1時間・・・悪いけどそんなに待ってられないのよ」

 尾行への警戒では気づかれない距離で美神は紅華を追跡していた。
 そして、襲撃に適した場所に紅華がさしかかるのを我慢強く待つ。
 コブラの助手席に積み込んだバッグには、人混みでの使用をはばかられる銃器が多数積み込まれていた。
 徒歩で事務所から遠ざかりつつある紅華は、池袋駅からさほど離れていない椎名町で建設中の幹線道路下に足を踏み入れようとする。
 それを好機と見た美神はコブラの運転席を後にすると、助手席に置いた肩掛けバッグを担ぎ徒歩での追跡に切り替えた。
 紅華の大まかな現在位置は20m以内の誤差で入手していた。

 ―――いたわ

 美神は慎重に物陰から顔を覗かせると紅華の姿を目視する。
 夜になり工事関係者も引き上げたのか周囲に人影はなく、昼間の工事関係者を当て込んだ清涼飲料水の自販機が暗闇の中でその存在を誇示していた。
 周囲に紅華が罠を仕掛けた様子もない。
 素早くバッグからRPGをとりだし狙いを定める。
 気むずかしい表情で飲料水を選んでいる紅華を照準に捕らえると、美神は少しの躊躇いも見せず引き金を引いた。
 轟音と共に噴出する高温の炎。
 それによって得た推進力でロケット弾は紅華へと突き進んでいく。
 着弾による爆発が自販機を破壊し、飲料水の缶が中身を飛び散らせながら周囲に散乱した。
 美神はすぐさま神通棍に気を巡らし着弾地点へと走り込む。
 これで紅華が倒せるとは美神自身思っていない、今のは開戦の狼煙に過ぎなかった。







 その少し前
 美神所霊事務所

 『おキヌさん・・・』

 何かに気付いたように人工幽霊がおキヌに呼びかける。
 未だ意識を取り戻さない横島の側らで、おキヌは祈るような気持ちで美神の帰りを待ち望んでいた。

 『おキヌさん!』

 「え、あ、なんですか?」

 なかなか呼びかけに気づかないおキヌに人工幽霊の声が大きくなる。
 ようやく気づいたおキヌは、少し驚いたようにその呼びかけに応えた。

 「シロさんとタマモさんの生命反応が弱まりつつあります。霊体を奪われた今、実体の活性を下げるのは危険です」

 「じゃあどうすれば・・・」

 一瞬狼狽の表情を浮かべたものの、美神に留守を任された責任に気を奮い立たせる。
 人工幽霊はおキヌに対し、生命力の維持に必要な情報を説明しはじめた。

 「お二方は現在、生まれたての赤ん坊のような状態にあります。栄養補給と体温維持がしっかり行われればあるいは・・・」

 「分かりました!」

 おキヌはすぐさま、ひのめ用のミルクを用意し屋根裏部屋へと駆け上がっていく。
 そして保温用の毛布で二人を包むと、まるで母親が子にするようにほ乳瓶を含ませた。

 ―――お願い飲んで!!

 ぐったりと目を閉じ、何の反応も示さない二人の体をおキヌはしっかりと抱きかかえる。
 少しでも二人の体が生命力を維持できるように。

 チュッ

 最初に反応を示したのはシロだった。
 ほんの僅かではあるが、口に含んだそれを吸い嚥下していく。
 それに続くようにタマモの口も動きを見せ始める。
 徐々にだが確実に嚥下されるほ乳瓶の中身。
 必死に生きながらえようとする二人の姿に、おキヌの目には涙が浮かんでいた。

 「飲んでくれました! 二人はきっと大丈夫・・・」

 人工幽霊に喜びの報告をしようとしたおキヌは、その時耳にしたポルシェの排気音に絶句する。
 慌てて階下に降りるとソファの上に横島の姿はなく、ほどかれた呪縛ロープが空しくその場に放置されていた。

 「なんで止めてくれなかったんです!!」

 おキヌは天井に向かい声高に叫ぶ。
 考えたくはないが、人工幽霊は自分に邪魔させないよう屋根裏部屋に意識を向けさせたのではないか?
 そう思えるタイミングで横島は姿を消していた。

 「シロさん、タマモさんが衰弱していたのは事実です。ですが、横島さんを起こし、オーナーの行動を教えたのは私の意志・・・」

 「そんな、どうしてです!? 美神さんの言いつけでは・・・」

 「オーナーには後でいくらでもお叱りを受けます!!」

 人工幽霊には珍しく強い口調だった。
 おキヌは気圧されたように口を噤む。
 人工幽霊の行動が、さんざん悩んだ上での行動であることは彼の口調から容易く感じ取れた。

 「すみません、騙したみたいで・・・でも、私はオーナーを独りで行かせたくは無かった。それに―――」

 人工幽霊は続く言葉を無理に飲み込む。

 ―――どうしても確かめたいことがあったんです

 このことは少なくとも美神とおキヌに知られるわけにはいかなかった。







 「うーっ、首がまだ痛い」

 失踪するポルシェ
 無免許運転ではあるが、中々のハンドルさばきを見せつつ横島が首筋に手を当てる。
 美神に殴られた箇所は未だに鈍い疼きを発していたが、文珠節約のため霊力放射による気休め程度のヒーリングで我慢する。
 自分で自分に霊力を注ぐのだから効き目があるか自信はないが、とりあえず気休めにはなった。

 『すみません、乗り移っていれば運転を代われるのですが』

 カーラジオから聞こえてきた人工幽霊の声に、横島は首筋から手を離すと何でもないという風に笑顔を浮かべた。

 「結界を張る以上事務所から離れられないよな。声だけで充分! ナビも出来るんだから気にすんなって!」

 自分を起こし、縛めを解いてくれただけで充分だった。
 気絶している間に美神に万一のことがあったら悔やんでも悔やみきれない。
 かといって、事務所を離れている間におキヌ達に危害を加えられるのも心配である。
 そういう意味に於いて、今回人工幽霊がとった行動は自分にとってベストなものと言えた。

 「で、美神さんは今どこに?」

 信号待ちの時間を利用し、横島はバンダナをきつく締め直す。
 厳しい戦いに赴く際の儀式の様なものだった。

 『椎名町近く、道路の建設現場です。把握できる位置情報ではオーナーはつかず離れず紅華を追跡・・・。多分、人通りの無いところで約束の時間を待たずに襲撃するつもりでしょう』

 主人の行動を熟知している人工幽霊に横島は苦笑を浮かべる。

 「そーとー怒ってたからな。あの人」

 『ええ、持っていった武器も強力です』

 「・・・・・・・・・」

 『・・・・・・・・・』

 数秒の沈黙
 横島の頬を冷や汗が流れ落ちた。

 「やっぱ、事務所で待っていようか? そんな美神さんに近づくと命が何個あっても足りないし」

 『ナニ言ってるんです! 横島さんが死ぬワケ無いじゃないですか!!』

 伝統芸とも言える横島の弱気に、人工幽霊も軽口で応える。
 横島は人工幽霊の台詞に若干の違和感を覚えたが、その違和感は戦闘開始を知らせる人工幽霊の声に打ち消される。

 『オーナーが戦闘を始めたようです』

 横島の耳はRPGの爆発音を捉えていた。








 爆発による炎があたりをゆらゆらと照らす。
 美神が油断無くその場に駆け寄ると、飛び散った飲料水の滴をハンカチで拭う紅華の姿があった。
 紅華は自分の刀に視線を飛ばすが、愛用の日本刀はロケット弾の爆発に行方知れずになっている。
 完全にしてやられた状態に紅華は苦笑を浮かべていた。

 「まさかそっちが不意打ちとはね。尾行には気をつけていたつもりなんだが・・・」

 「オッサンはGPSなんて知らないでしょう。ウチの従業員を襲った落とし前をつけてさせてもらうわよ!」

 美神は神通棍を構えると、紅華と対峙するよう青眼に構える。
 対する紅華は最初から無手。つまり無刀取りの体勢となっていた。

 「どうした? 落とし前をつけるのではなかったのか?」

 完全な脱力を体現したまま、紅華はじりじりと美神との間合いを詰める。
 いつどちらへ踏み出すのか? 
 全く予想が使い無い足裁きに美神もじりじりと後退せざるを得なかった。
 紅華の姿は今にも飛び掛かってくるようにも見えたし、また、その場からずっと動かないようにも見えた。

 「それが柳生の奥義―――無刀取りね」

 プレッシャーを押しのけるように美神が不敵な笑みを見せる。
 紅華はなおも無言で美神との間合いを詰めようとしていた。

 「上等ッ! 私の刀、取れるものならとってみなさいッ!!」

 美神は裂帛の気合いを込め紅華の間合いの外から一気に斬り込む。
 体を入れ替え斬撃をやり過ごそうとした紅華の目が驚きに見開かれた。
 美神の神通棍は彼女の手を離れ、自分の遙か後方へと飛び去っていく。
 代わりに美神が握っていたのは腰に隠し持っていた軽マシンガンだった。

 「馬鹿がッ!! 最初からアンタの土俵で戦うワケ無いでしょうッ!!」

 軽快な発射音を立て、紅華の体をなぎ払う高速で射出された弾丸。
 回避行動をとったものの、確実に何発かは紅華の体にめり込んだ・・・筈だった。



 ピコン!

 「悪いがそれも想定のウチでね」

 何かとてつもなく場違いな音が美神の頭頂部で鳴り響いた。
 同時に感じた軽い衝撃に、美神は驚いたように振り返る。
 背後には先程銃撃した筈の紅華が立ち、手に持った武器を美神の頭部に振り下ろしていた。

 「妖弧から奪った幻術を使ってみたんだが、うまく化かせたみたいだね」

 勝ち誇った紅華の台詞は美神の耳に届いていない。
 美神の思考は紅花の手に持った武器によって停止している。
 その手には認めたく程の場違いな武器―――ピコピコハンマーが握られていた。

 ―――柳生、ハンター、べにばな、そしてハンマー・・・ああっ、まさか・・・

 「そのとおり、柳生の奥義とは無刀取りのことではないよ・・・」

 金縛りにあったように動かない美神に凄まじい笑みを浮かべると、紅華は力強くこう宣言した。


 「美神令子の霊能力!」


 チャラララララーチャラン♪

 どこからか軽妙な音楽が聞こえ、美神の霊力が紅華に移っていく。
 今までのシリアスさを台無しにするほどの馬鹿馬鹿しい攻撃だった。

 「あ、あまりの馬鹿馬鹿しさに力が・・・まさかそっちのハンターでくるとは」

 半年間失踪したヨゴレ作家の相変わらずの芸風に美神の腰が砕ける。
 霊力を奪われた以上の脱力感が美神を支配していた。
 元ネタが分からないよい子は、柳生・ハンター・べに花でググってみよう。
 別なハンターネタで、一部分プロットのまま投稿しようとしたのは君とボクだけの秘密だ!


 「どうだ、美神令子。負けを認めるか?」

 完全に美神を無力化し、紅華は勝ち誇ったように美神を見下ろす。

 「誰がアンタなんかに! イヤ、こんなネタに負けるもんですか」

 脱力した美神は全身に気合いを込めようとするが、体はピクリとも動かない。
 しかし、その眼光は未だ鋭い光を放っていた。

 「ほう、まだ精神が折れんか・・・それならば柳生の究極奥義で終わらせてやろう」

 紅華は手に持ったハンマーに霊力を集中させる。
 ハンマーはみるみるうちに黄金の光を放ちはじめた。

 「抽象的なものを盗むのはそれなりに準備が必要でね・・・」

 紅華は高々と黄金に輝くハンマーを掲げ力強く宣言する。

 「美神令子の一番大切なモノ!!」

 あまりにもアレな、しかし恐ろしい攻撃に美神の目が恐怖に見開かれる。
 ハンマーが美神に振り下ろされるとき、美神の一番大切なモノが奪われてしまうと言うのか?
 それ以前に美神の一番大切なモノとは?
 残念ながら作者は山口百恵を知らない。
 かといって、べに花一番でないことは確実だった。

 「美神さーん!!」

 絶対絶命の美神の耳に横島の声が届く。
 視線を向けると、派手にリアを滑らせ停車したポルシェから横島が飛び降りる所だった。

 「だめ、こっちに来てはッ!!」

 「ふははははっ! もう遅いッ!!」

 ピコン!

 美神の叫びも空しく、駆け寄る横島の目前で美神の頭にハンマーが振り下ろされる。
 力なく崩れ落ちる美神の姿に横島の全身が怒りに震えた。

 「き、貴様ーッ!!」

 横島は紅華に駆け寄るとその胸ぐらを掴む。
 不思議なことに剣術の達人である紅華は為す術もなく横島に組み伏せられていた。
 そして馬乗りになった横島は紅華に信じられない一言を口にする。

 「大好きだーっ!!!」

 紅華は恐怖の叫びを上げることすら出来ない。
 なぜなら彼の唇は横島のソレによって塞がれていた。
 乱暴な、しかしどこか優しい横島の舌の感触。
 必死に抵抗を試みる紅華は横島の顔越しに見てしまう。
 幽鬼のように立ち上がった美神が、恐ろしく冷たい目で自分を見下ろしているのを。
 そして、彼女が手に持った神通棍が大きく振りかぶられたとき、紅華はいろいろな意味で絶望の表情を浮かべた












 「うげーっ、ペッ、ペッ!!」

 美神が霊力を取り戻すのと、横島が正気にもどったのはほぼ同時だった。
 気づけば再起不能となったオッサンとディープキスをしている自分。
 あまりのショックに横島は泣きながら口元を拭い続ける。
 足下に泥水があったのなら躊躇わず口をすすいだことだろう。

 「いったい、何があったんスか、美神さん〜」

 「えーっと、まあ、色々とね」

 涙目で自分を見上げる横島に、美神はコトの顛末を説明することが出来なかった。
 しかし、さすがに可哀想に思ったのか美神は横島に口直しを提案する。
 自分がソレをやってあげるという発想は美神にはまだ無かった。

 「まーでも、アンタが来て助かったことは確かだから、口直しに何でも好きな物奢ってあげるわよ! 夕食もまだなことだしね」

 美神の提案に横島はしばし思案する。

 「口直しスか。それじゃもう一度、美神さんの作ったみそ汁が飲みたいスね。あの素朴な何度でも飲みたくなるヤツが・・・」

 「はぁ? ナニ言ってんのアンタ!? 私、アンタにみそ汁なんて作ったコト無いじゃない!!」

 訳が分からないという様な美神の言葉に、横島は一瞬だけ悲しそうな顔を浮かべた。
 しかし、すぐに笑顔を取り戻すと美神に手を引いて貰いその場に立ち上がる。

 「それじゃ、予定通り帰ってすき焼きにしましょう。まだ、空いているスーパーもあるし、みんなで食った方が美味いスから」

 「そう、アンタがソレでいいっていうのなら」

 横島の機嫌が直ったことを悟り、美神はどこかホッとした表情を浮かべた。
 そんな美神を見て、横島は更に笑顔を深める。

 ―――長いなぁ

 その笑顔にはそんな意味合いが込められていた。


 ―――――― ハンター×ハンター ―――

            終


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