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復活

ただいま修行中!(下)


投稿者名:ETG
投稿日時:07/ 7/16

かなり離れたところで冥子がぺたんと座り込んで横島を睨んでいる。
もはや服は戻っているが両手で胸元を隠し、その周りを式神が取り囲んでいる。


しばらく放置プレイにあった横島。まだ結界の中。

ショウトラが一応なめてヒーリングしてくれているが、

がぶっ。

「かんにんや〜〜、しかたなかったんや〜〜〜! はじめてやったんや〜〜〜〜」

時たま、いや結構かみつかれている。
かまれるたびにこれでもかという言うようーな情けない声で泣きが入る。
が、同情を買うのには全く成功していなさそうだ。



「勝負は一応横島クンの勝ちだけど、あれでは引き分けよね」
「そ〜〜ね〜〜〜」
理事長も頷いている。冥子を横島に渡すのは時期尚早と見たのだろう。

「令子ちゃんも大変ね〜〜〜〜」
天才的才能はあるが出来の悪い弟子をかかえる令子と自分が重なったのか思わずつぶいやいている。

「あう゛っ〜〜〜」

ハーレムがチャラになった横島がうなだれる。

シロとおキヌは横でほーっとしている。
理事長が本来の目的である、横島に式神の扱い方のレクチャーを開始。

「横島クンの悪いところは大体わかったから〜〜〜。霊波が荒くて出し過ぎなの〜〜〜〜。
 ルシオラさんだから〜〜〜普段はそれでいいけど、戦闘時はダメ〜〜〜〜〜」


理事長が冥子から式神を借り、例を示す。演じるのはバサラとビカラのユニゾン。

まるっこい巨体がくるくる、そっくり同じ動きで踊るのはユーモラスだ。
冥子にこの操作はまずできないだろう。


霊波を外から見やすいようにしながら操る。
霊波を丁寧に出すと両者ぴったり同じ動きをしているが、荒くなると、式神の同調運動が不整になる。
また、コントロール用霊圧はかなり絞っても式神のパワーその他は変わらない。

「ルシオラさんが異例の完全な自我のある全自動式神だから表に出なかったのよ〜〜〜〜。
 霊力が勿体ないし、普通なら自分の式神に襲われたりするわよ〜〜〜〜」

そこで、突然後ろを振りむき、大声で呼びかける。
「ね〜〜〜正樹クン?」

障子がからりと開き、和装の美形、鬼道正樹が頭を掻きながら出てくる。

「無茶いわはる。六道の奥義やないですか」
「そういう正樹クンはできた〜〜〜? 二度と生徒を危ない目に会わせないでね〜〜〜〜」

普通の式神使いはこれが出来ないため、霊力限界のかなり手前で式神使役をあきらめる。
万が一暴走させれば自分も巻き込まれ、負け確定だからだ。
式神の使役は結構デリケートでいきなり予定外の強力な式神の負荷が割り込めば、鬼道でもそれがケント紙式神ですら制御不能になる。

理事長に言われておキヌの顔を見て苦笑する。
「氷室、前はスマンかった。二度とせえへんから。自分のケント紙式神に襲われるなんて恥もええとこや」
「無意識に出来るようになれば、暴走しても自分が襲われたり同士討ちはしないから、限界まで安心して式神を使えるわ〜〜〜〜」

つまり、この奥義は限界まで式神を使い切れる、非常に重要な奥義なんだが、

冥子が‘安心して’暴走できるための奥義なのでもある。
(((なんちゅうハタ迷惑な奥義だ!!)))

それに気が付いて呆れる一同を尻目に理事長は鬼道も結界内にはいるように促す。


自分も入り、ルシオラも入ってくる。
「夜叉丸出して〜〜〜。どのくらい出来たか見てあげる〜〜〜」

夜叉丸と鬼道を交互に見ながら指摘してゆく。
横島も式神ケント紙あたりにルシオラが襲われてはたまらんので横で結構真剣に聞いている。

続けて、横島−ルシオラも指摘し、具体的に操り方を実演する。
「大体こんなもんよ〜〜〜。後は何回も意識して練習してね〜〜〜〜」
「結構しんどいっすね」
しばらくの試行錯誤の後、理事長にOKもらって横島が顔をしかめる。


「寝てる間もルシオラさん出せてるからすぐ慣れるわよ〜〜〜。本来これの後の奥義よ〜〜〜?」
「冥子はまだ出来ないの〜〜〜」
冥子が恥ずかしげもなくのたまったのに理事長が切れる。

「自慢になりますか〜〜〜〜っ!! 教えた方がまだ出来ないなんて!!」
「ああっ!! おかあさま許して〜〜〜」

ひとしきり冥子にべしべしと式神で‘教育的指導’をした理事長が井桁を貼り付けたまま横島に戻る。


「次は、これはやる前からわかってたんだけど〜〜〜〜操作用霊波は、もっと絞って緊密にするの〜〜〜〜
 緊密にすればするほど式神を盗られにくくなるのよ〜〜〜〜〜」

いうなり、夜叉丸をとりあげ、笑いながら夜叉丸で鬼道ほっぺたをむに〜〜とつまみ上げる。

「あむっむにっ!! そろそろ来るやろと思て気いつけてたのに!!」
「影への出し入れが一番隙ができやすいけど、普段でも油断してるとこうよ〜〜〜。
 術者が近くにいるときは気をつけるのよ〜〜〜」

あわてふためく鬼道と、妙技に目を見張る令子とおキヌ。
いかに自分が隙だらけだったか知って震え上がる横島。

鬼道は必死に取り返そうとするが敵わない。
「おキヌちゃん〜〜〜〜、心眼出しなさい〜〜〜〜」

思いがけず、声をかけられ、へっ? 私? と少し惚ける。

「奪うのと護るのは一体だから〜〜〜、霊波の動きよくみときなさい〜〜〜〜」
「!! ハイッ」
おキヌが納得して勢いよく頷く。
「式神、使い魔、眷属、キョンシー、原理は同じだから〜〜〜〜」

しばらく、またもや鬼道をダシに説明してゆく。

「正樹クン、後はお願い〜〜〜、おばさん疲れちゃった〜〜〜」
しばらく説明した後、言うなり夜叉丸を返してひょいと外へ出てしまう。


鬼道も聞いていたのであろう、不審がらずに後を引き受ける。

「じゃ、実践や。氷室は夜叉丸を奪ってみるんや。俺はそれを防衛しながらルシオラさんと組み手や」

夜叉丸とルシオラが組み、力は押さえているが、動きは真剣な模擬戦状態になる。

鬼道は横島の後ろに張り付いて霊波の動きを直接指導する。
横島も美形の男に張り付かれても文句の一つも言わない。

「ちゃう!! もっと一体にならなあかん!」
「こ、こうか?」

「氷室、それは隙とちゃう。フェイントや。実戦やったらたぐられて逆襲されるぞ」
軽く攻勢霊波を打ち返す。

おキヌが怯んだ隙に今度はルシオラの操作霊波を妨害する。

「コントロールと力は意識して別の霊波にせい!
 おはんら普通の式神以上に一体やろ。もっと相手を信用するんや!
 操作は必要最低限。 力はもっと密に流すんや! それでかなり防げる」

横島もこくこくと頷いて脂汗を垂らしながら鬼道の霊波をまねる。

しばらく続けた後、
「よしっ、こんなもんか。後は氷室と横島で練習するんや」
とOKを出す。

「こ、これをルシオラ出してる間ずっとっスか?」

横島が切れ切れな声を出す。
格闘技での爪先立ち、腰を落とした構えをずっとしているようなものであろうか?

「こればっかりは慣れやな。普通は一日中、式神出しっぱなしにはせえへんしなぁ」
鬼道が肩をすくめて首を振る。
ちなみに横島はルシオラの復活を少しでも早めるために常にルシオラを出しっぱなしにしている。


「あう゛う゛う゛う゛〜〜〜〜〜」
聞いたとたんにがっくりと膝をつき地面に座り込む。

(あふぅっ。ヨコシマに抱きしめられてるみたい? いや、ふわっと抱えられている?
 それでいて、力強くて暖かい・・・)

「ヨコシマ、ずっとでなくていいのよ?」

すっと近寄ってきたルシオラが耳元にささやくと、のびて大の字に転ってしまう。
それでもふるふると首を横に振ってやめない。

霊波でお姫様だっこをされ続けているような感覚。

ルシオラがマスターの首元に無言ですがりつく。



そんな様子をしばらく見ていた理事長が、もういいと見たのか、
ハンガーに掛かった服と靴など女性用服飾一式を影から出す。

「横島クンもがんばったし〜〜〜、すごい物見せて貰ったし〜〜〜、ルシオラさんにこれご褒美〜〜〜」
横島にではない。娘への仕打ちを見た後では当たり前であろう。

「普通の服を影に出し入れするにはかなりな修行が必要よ〜〜〜〜。さしあたりはこれの方が便利よ〜〜〜〜」
いつの間にやら用意されたホワイトボードに特徴が書いてある。

1,フリーサイズ、フリー形状でいかなる式神でも着れます。
2,質感や、色などももちろん自由に変更可能です。
3,破損、汚れは、術者の霊力で自動回復します。
4,気休め程度の防御力があります。
5,維持用霊力はほとんどかかりません。

「へぇー? いいじゃない。ルシオラ良かったわね」
「あー、冥子も欲しい〜〜〜〜〜」

令子は理事長の粋な計らいに素直に感心し(自分の腹も痛まんし)、
冥子は服はおろか人間でも出し入れできるくせに物欲しそうに指をくわえている。

「ルシオラさんいらっしゃい〜〜〜、着せてあげるわ」
床几に座った理事長が手招きする。
「ん〜〜〜、せっかくだし〜〜〜、きれいにしなきゃね〜〜〜〜」

理事長がどんなものにしようか迷っている。
「せっかくだし、秋物がいいわよね〜〜〜〜。しばらく横島クンはきちんと操れないからおばさんが整えてあげる〜〜〜〜」
服がハンガーに掛かったまま、色々と変形してゆく。
「ルシオラさんどれがいい〜〜〜?」


理事長の前でルシオラが迷っているの見ていたおキヌが、しばらくして口を挟む。
「差し出がましいんですけど・・・・・、まず、ウェディングドレスなんかどうでしょう?」

令子もそれいいわねと賛同する。
「女の子は一度は着ないとね。どうせ、今の話だとアイツはそんなに複雑な物しばらく出せないわよ」

ルシオラ、思いがけない言葉に声もない。しばらく二人の顔と結界中の横島の顔を見比べる。

「なーに気にしてんのよ! 後生までついていくんでしょ? あんたらしくもない」
「そうですよ。理事長さんにやってもらえるから今ならきれいにできますよ」
「そうそう、あのバカが女の子の服をまともにイメージできるはずないじゃない」
そうそう下着ならともかく。

「おキヌちゃん、美神さん・・・・・・」
やっと言葉が出る。

「感謝すんなら、せいぜいパワーアップしてよ?」


令子がくるりと背を向け、しかし、さら、と宣言する。

「どーせアンタはずーっと私のモンなんだからね」



それを聞いた冥子がいつもののんびりはどこへやら。
「ダメ〜〜〜〜!! ルーちゃんは令子ちゃんだけのじゃない〜〜〜〜」

そのそばでおキヌがごく、のどをならし、しばらくためらった後、やはり口に出す。
「ルシオラさん?・・・・・・ 私もずっといいですよね?」

声が少し震え、令子のようにさらり、とはいかない。



「・・・・・・シロ、いいの?」
タマモが正面を見たままぼそっと口に出す

「何が、でござる?」
シロが無邪気に聞き返す。
「美神どのの冗談を?」

「バカ犬。わかんなきゃいいわよ」

シロが狼でござる!!とタマモに噛みついている前で令子が肩をすくめる。

「ハイハイ。わかったわかったって。二人ともムキにならないでよ」

タマモも「そーね」と肩をすくめる。


ルシオラはそれを聞きながら黙って俯いている。
横島は・・・・・未だに結界中でのびていた。



そんなやりとりも知らぬげに理事長が念を込めている。物が複雑だけに時間がかかる。
しばらくすると、真っ白な幾重にもレースやフリルのついたものに変わる。
上品な艶、繊細な手触り。どう見てもシルク。

皆が注視する中、
ルシオラが手に取ると、ふわ、と全身を覆う。


女性の憧れ。


「ルシオラさん、きれー!!」
「良かったわねー!」
「ルーちゃんかわいい〜〜〜〜」

みな集まって、口々に祝福してくれる。


「ん?」

黄色い歓声に起きあがった横島、ようやく気づいて近寄ろうとしたところ、

「じゃ、渡すわね〜〜〜〜〜」
と理事長が霊波を横島に断りもせずに切り替える。


その瞬間、「ぐえっ!!」 後ろの結界内で横島がつぶれる。

「よ、ヨコシマ! ヨコシマ!? どうしたの!!」
いち早く気づいたウェディングドレスのルシオラがすっ飛んできて揺さぶる。

ルシオラの絹手袋の手でほほを叩かれるも,横島は 「しろい〜〜〜 白なん〜〜〜〜や〜〜〜」
等という意味不明のうわごとをつぶやくのみ。

ルシオラがサイコダイブで様子を見ようとしたところで、理事長、床几に座ったままポンと手を叩く。
「複数式神の扱いになれてなかったらキツイかも〜〜〜〜〜」

いまさら気が付いたように言う。娘の親としての仕返しであろう。
横島が支配を解除できないように外から押さえ込んでいるようだ。

「あ、なーる。その服、一種の式神なんだ」
ちょっと慌てた令子も説明を聞いて納得する。

「そう〜〜〜。動きはしないけど〜〜〜〜。
 パーツごとの別式神なの〜〜〜。靴2つでしょ、上下に下着、手袋に髪飾り・・・・」
理事長が指折り、説明してゆく。

それを聞いたおキヌが一瞬笛を吹く。
「慣れるまで私が持っててあげますね?」
「あらー、おキヌちゃん飲み込みが早いわね〜〜〜〜」

どうやら六道理事長の念波をかいくぐって服のみを奪ったらしい。
護身用の使い捨て式神や使い魔の操作はおキヌのようなタイプでは重要。
そのため六女で必須科目なのだ。
動くわけでもなく霊力消費もないに等しいこんな式神は少々数が増えてもどうってことはない。



それでも、試合と練習のダメージからか、横島の意識は回復せず、シロに大喜びで背負われて帰る羽目になった。

「役得でござる〜〜。役得〜〜!!」

横島がルシオラのウェディング姿を見るのはとうぶんおあずけだろう。


補習と試験はあきらめるしかなかろう。






皆が帰った日の深夜、六道家に訪問客。

「先生、いかがでした?」
客は理事長の部屋に通されるなり、挨拶抜きで話しかける。

「いろいろ面白かったわ〜〜〜。4文珠制御とか令子ちゃんのぶきっちょな宣言とか〜〜〜〜」
「へぇ?」
思わず先に聞きたくなるが、それは些細なことだ。

「そのへんは後でお伺いするとして、肝心のアレはいかがでした?」
「美智恵ちゃんの思った通りね〜〜〜〜」

視ていた大型ディスプレイの立体グラフを指さす。

「これが4文字文珠発動時の霊圧ピークね〜〜〜〜」
短時間だが人間では考えられないような値が出ている。
「これもすごいんだけど〜〜〜、こっちが本命ね〜〜〜〜〜」

理事長がレンジを切り替えて、少し後の時間軸をも表示する。
比べ物にならない巨大なピークが――4文字文珠のものがかわいく見えるほど――ほんのごく一瞬だけ出ている。

「これがそうよ〜〜〜〜、結界が壊れなくて良かったわ〜〜〜」
「やはり、ルシオラさんですか」

服を渡したごくごく一瞬の隙に、理事長はルシオラを横島の魂から切り離したのだ。
それで、横島の魂は一年以上にも及ぶ過負荷から解放され霊圧が跳ね上がった。

「おかげで、もう少しで倒れる所よ〜〜〜〜、美智恵ちゃんも年寄りを労らなきゃ〜〜〜〜」
「言いだしっぺは先生ですよ? それに私は六道の式神奥義なんて」

六道式神奥義、魂魄斬。魂の連結をも切り離して分身タイプの眷属や使い魔でも奪い取る。
その後つなぎ直し、相手にも気づかせずに眷属の持つ情報をもぎ取ることもできる技である。

正に門外不出、冥子ですら存在を知らず、美智恵にもこういうことが出来る、としか言っていない。

十二神将はまあ言えば訓練用式神なのだ。これを完璧に操れると永い子供時代を抜ける。
そして六道家当主となり、子を産み次代に渡すのだ。その時伝授される、秘奥義の一つ。

「魂込みのルシオラさんの霊力負荷は200や300じゃなかったのよ〜〜〜〜、
 慌てて返したけど死ぬかと思ったわ〜〜〜〜」
しばらく床几から立つことも出来なかった。

「人間て少しずつ負荷をかければすごいところまで行くんですね?」
自分も雷の変換訓練で経験したことながら改めて感心している。



その時、美智恵の携帯が鳴る。
『ママ、どうだった? 今はマンションで一人よ』
お互い確かめて特注の512ビット暗号モードに切り替える。

「ほぼ予想どうりよ。たぶんルシオラさんは横島クンの訓練兼制御装置よ」
『で?』

「六道理事長が切り離した時、事実上暴走してるわ。うっかり切り離されないようにしてね」
『なるほどね。横島クン寝込んじゃったのよ。4人には慣れないことしたからだろうって誤魔化しといた。
 ルシオラも不審がってなかったから大丈夫だと思う』

おキヌにシロ、それに冥子という美少女3人にスキンシップでヒールされているのだ。
これだけでも横島としては元が取れているかもしれない。

「それはなにより。で、ルシオラさんの成長データは?」
『今から送るわ』
横島のつけていた‘ルシオラ日記’の成長記録部分を送信。

それを、六道家の計算機に入力再計算させる。アクセス音と共に耐え難い数秒間の沈黙。
しばらくすると横島の霊力パターン等と共に無機的なアラビア数字が画面に並ぶ。

それをかいつまんで美智恵が事務的な声で令子に伝える。

「横島クン、現在推定9697.92マイト。ルシオラさんの成長と密接にリンクしていると仮定すると、
 日当たり1.3%で成長中。つまり現在92.74マイト/dayね。まあどっちも誤差が割の単位でありそうな推定だけどね」

予想していたとはいえ人間離れしたその数値に思わず叫び、慌てて二重窓が閉まっていることを確認する。

『しょ、小数点の位置間違えてんじゃない? 小竜姫ぐらい?!
 それに日当たり1.3%ぁっ?、週でも月でも年あたりでもなくうっ?
 トイチ以上? 来月には一万五千で来年には百万マイトぉ!?』

ちなみに再来年には一億マイト、10年後には・・・・・・10の20乗マイト。
アシュタロスより10桁も高い。ありえん。最高指導者が束になっても敵わない。


私の財産もそのくらいの勢いで増えればいいのに。
そこまで考えて令子もちょっと落ち着く。あくまで計算上・・・だったわね。

「・・・・令子らしいわね。複利計算が一瞬で出来るなんて」
『そんなことはどうでもいいじゃない!!』

「あくまで、霊力のピーク値の推定よ? 倍でも半分でもおかしくはないし、持続時間なんてわからないわ。
 成長率なんてわかった部分の辻褄合わせ程度よ。それに霊力だけよ?
 ヒャクメ様でも霊力だけなら小竜姫様とそう変わらないわよ? あなたヒャクメ様と戦って負ける気?」

『なんで目だけに栄養いってるヒャクメが出てくるの!! 横島クンは文珠も使えるのよ!!
 半分の5000でも勝てるわよ! それに倍って!!』

「もしかするとそっから過負荷解放→強敵と戦闘で大化けするのかも?」
『じょ、冗談じゃないわ!! どこぞの竜玉まんがじゃあるまいし!』

「可能性よ。文殊菩薩さまが強制的にルシオラさんを」
『殺して、それで暴れる横島クンを敵にぶつけるってこと!?! そんなの許さないわ!!』

「可能性よ可能性。最悪は頭にとめとかなきゃ。
 ま、あなたも電気変換上限値、日当たり4%ぐらい成長してるみたいじゃない。がんばってるわねー。
 私より若くして始めてるから、もー、神話級の神様の所まで行くかもね。都庁下の電気容量上げてもらっとくから」
『ちょっと!! ママ!! 今はそんなことは・・・』

「アシュタロスの時よりは余裕あるんだし、いつまでも横島クンをしばけるようにしといてね?
 そうすれば神話の英雄か、神様を時給でこき使えるようなもんだからボロもうけじゃない?」
『それもそーね―――って、論点が違う!!』

「この後、六道先生とお話があるからまたね」
『ママ、ママ!!!』


無情にも美智恵が携帯を切る。
「あと、普段この霊力がどこに消えてるのかも気になりますわね? 先生」
「そうね〜〜〜それに、みんなに働きかけて準備しないと〜〜〜〜。なにが起きるのかしら〜〜〜〜?」
「神様も相手かもしれないとするとやっかいですね。貧乏神・死神なんかは退治できないので有名ですし、
 小竜姫様だって別に神話で出てくるような有名どころじゃないですからね」




その頃、ミラーは、新潟の港で電話を置いて、

「ダインもうまくヨーロッパに降りれたようね。ユーラシア大陸全域の霊的拠点に細工しまくるわよ!!」

改めて気合いを入れ直していた。

「しっかし、ラドウも無茶な計画たててくれるわ。ダインも居るとはいえ、
 人間のGSとして活動した上で108カ所の冥界チャンネルすべてに細工しろなんてね」

ひとしきりぼやいた後、ナホトカ行き貨客船に乗り込む。

「ふう、とはいえ、なるべく目立たないように行動、か。空飛ぶのも控えなきゃね。
 向こうに着いたら川沿いに行動すれば何とかなるか」


to be continued


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