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GS冥子?

学校へ行こう


投稿者名:案山子師
投稿日時:07/ 7/ 4

 久しぶりに学校へ来てみれば・・・・・・
 「横島お前まだ学校辞めてなかったのかッ」
 「変な宗教に引っかかってインドに漂流してたって本当?」
 「いや、下着泥が発覚して軍艦島に連行されたって」
 「お前ら本人の前であることないことウワサしてんじゃねぇッ!」
 デマもいいところの噂が、あれよ、これよと出回っているのだった。
 確かに最近いろいろ忙しかったが、俺って普段どういう風に見られているのかよく分かる日だったよ。
 何でこんなウワサが流れてるのか――――――あまりに悔しかったので、お金持ちの美人お嬢様と一緒に悪霊退治して、巨額の富を稼ぐ仕事だと言ってやるが、こいつらぜんぜん信用していないし・・・。
 まあ、中学三年までの俺を知っているやつならそれを信じられんのも無理はないが、俺だってクラスの宗方にそんなこと言われたら絶対信じないし。
 「くぅ・・・今に見ていろ。いつか見返してやる」
 「横島〜何泣いてるんだ。授業始まるぞ」
 (ううっ・・・いつか、いつか必ず・・・・・・)
 久々の横島の学校生活は、こんな感じで幕を開けたのであった。



 始業ベルの音と共に、廊下にたむろって居た者達も教室の中へ集まっていく。
 「あれ? 何で俺の机だけこんなに古いんだ?」
 「本当だ、これって『イジメ』って言うんじゃないの」
 「一体どこから持ってきたんだ」
 普段横島が使っているはずの机が、すでにどこの学校でも使われていないような木造の古い机に置き代わっていたのだ。
 一体どこから仕入れてきたのか、とりあえず机に触れて調べて見るが、
 「!? なッ、何じゃこりゃ〜〜〜〜〜〜ッ!!」
 机の中を覗き込むと、目玉が二つ・・・ギョロリとしたそれと目が合ってしまった。
机から離れようとするが、それよりも早く伸びてきた長い舌に巻き取られてそのまま机の中へ、
『ゲップッ!・・・』
 叫び声をあげる暇も無く、横島は机に食べられたのであった・・・・・・




 それから数分後、六道除霊事務所。

 「めっ、めっ、冥子殿〜〜〜〜ッ!!! 横島殿が妖に食べられたとは本当ですか〜〜〜〜〜ッ!!?」
 「え〜〜と〜〜〜。そうなんだけど〜〜〜、蝉丸ちゃんどこでそれを聞いたの〜〜〜? さっき電話をもらってからまだ五分も経ってないけど〜〜〜」
 「本当なんでござるね〜〜〜ッ!!」
 どこから話を聞いてきたのか分からないが、ものすごいあせり様だ。
 そして、普段動くことの無いほどの高速で冥子の首が上下に揺さぶられる。
 蝉丸は『本当よ〜〜〜』と今にも消え入りそうな返事を聞くと、やっと冥子の肩を放して、
 「横島殿〜〜〜〜ッ!! すみません。すみません。拙者が一緒に学校に行っていれば〜〜〜ッ!! この詫びは拙者の命を持って償いをッ!!!」
 どこから取り出したのか、『滅』と書かれた文珠を取り出して自分の腹に当てそうになるが、それが触れるよりも早くに、蝉丸の頭部に軽快な音が鳴り響いた。
 「やかましいわッ!?」
 グボッ! そんなような音が響いて、蝉丸の持っていた文珠が床に転がる。
 「貴重な文珠をそんな無駄なことに使うんじゃないッ!」
 床に落ちていた文珠をすばやく取り上げた者の姿を見上げると、そこには黄金の髪を揺らしながら仁王立ちするテレサの姿があった。
 「何をするでござるか、テレサ殿ッ!?」
 「だから言ってるでしょ。あんたのくだらないことのために貴重な文珠を無駄にするなって言ってるんだよッ!」
 「くだらないとは聞き捨てなりませぬッ! 拙者この身体を横島殿のためにささげた身。主君を二度も守れぬ侍に、いかほどの価値がありましょうかッ!」
 テレサの言葉に怒りの表情を見せる蝉丸だが、テレサはため息をついて言葉を返した。
 「だから、あんたの忠誠心とかそんなことはどうでもいいんだけど。横島はまだ死んだわけじゃないの、それをあんたがどう解釈したのか知らないけど、助けに行こうっていう前に、あんた一人居なくなってどうするのかってわけ」
 「と、いうことは・・・横島殿は生きていると?」
 「だからさっきからそういっているでしょ」
 なぜか歪曲して自体を把握していた蝉丸の頭の中で、事態が急速に整理されていく・・・。
 「さあ。御二方急いで横島殿を救出に出向きましょう」
 「・・・だから、さっきからその準備をしてるんだって」
 張り切る蝉丸の後ろで、テレサが小さく突っ込んだ。
 その足元では冥子が目をぐるぐるに回して倒れていた。
 「うにゅ〜〜〜〜〜―――――――」




 「・・・というわけで、机を食われた横島はお宅の関係者でもあることですし、ここは一つ救助を依頼しようと思いまして・・・」
 「お任せください〜〜〜、横島君は必ず私が助けます〜〜〜」
 横島が机に食われてすぐに、六道事務所に連絡が来て駆けつけて来た冥子達で在った。
 冥子はいつになくやる気満々だったが、初対面の人間にその違いは、いまいち分かりにくかったらしい。
(どう見ても世間知らずのお嬢様にしか見えないけど、本当に大丈夫なんだろうか・・・)
 と、校長に失礼なことを考えられていた。
 「それでは早速―――」
 「ちょっとお待ちください。その前に依頼料のお話を・・・」
 「しかし横島が・・・救出するなら早くしたほうが」
 「そうよテレサちゃん〜〜」
 うんうんとうなずく蝉丸を横目で見ながら、テレサは一呼吸置いた後に言った。
 「いいえ。仕事に私情を挟むと良くないと日向も言っていました。それに・・・横島なら、ちょっとやそっとの事では死にません」
 きっぱりと言い切ったテレサの言葉に、なぜか三人はあっさりと納得した。
 
 
 
 机の中で。
 「はっ!? 俺は一体何を・・・」
 「横島君ホームルームの途中よ」
 いつの間にか机に突っ伏して眠っていた横島は、目が覚めると同時に立ち上がった。
 「そうだ〜〜ッ! 俺はこの妖怪の中に食われて〜〜〜ッ!?」
 「横島君何をやってるの? そんな変な踊り踊ってないで、意見があるときは手を上げて言ってね」
 黒板の前で、ホームルームを仕切っているのはこの学校に32年間とらわれているらしい、学級委員長の愛子だ。
 妖怪に飲み込まれた横島が最初に見たのは、誰も居ない寂れた教室と、窓の外に広がる砂漠のような光景だった。
 そこにいきなり現れたのが愛子と、この学校に囚われているほかの学生たちであった。
 なぜか彼らと会話していると、自分が妖怪の腹の中に居るという概念がどんどん忘れ去られていって、いつの間にか、普通にこの環境に溶け込んでしまっていたのであった。
 「なっ、なんだ・・・何かおかしいぞ。まさかこの妖怪の支配が始まっているのか・・・」
 「横島君どうしたの。熱でもあるの・・・」
 「えっ!? どぁああああああああああああああああああああああああああ」
 いつの間にか目の前に現れた愛子の顔のアップにびっくりして、椅子と机を盛大にひっくり返して床に盛大にこける。
 「えっ、いやっ、別に何も・・・」
 普段ではありえない状況にパニックに陥った横島は、引きつった笑顔で必死に答えるが、愛子の手がすっと伸びてきて横島の額に当たる。
 「熱は・・・無いみたいねぇ。でも、本当につらかったら言ってね。私横島君にあったら・・・」
 なぜか青春ドラマのワンシーンのようなセリフを吐く愛子に横島は、
 「あっ・・・愛子〜〜〜ッ!? お前の気持ちはよく分かったッ! 今から青い青春の1ページをここに深く刻もうじゃないか〜〜〜〜〜ッ!」
 「えっ!? きゃぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
 さっきまで考えていた脱出方法なんて、頭の片隅にも残らず愛子に向かって飛び掛るが、周囲から飛んできた拳骨の嵐に、愛子に着艦する前に迎撃され、墜落するのであった。
 「貴様〜〜〜ッ!? クラスのアイドルの愛子さんに向かって何をするかッ!」
 「そうだっ!? てめぇ〜〜。新入りの癖に生意気だッ」
 「袋だ、袋にしちまえっ」
 「横島君ッ! 不潔よッ!!」
 「お前ら〜〜。や〜め〜ろ〜〜〜〜〜〜ッ!?」
 クラスの男子からたこ殴りに会う横島だった。
 
 「一人の女子をクラス中の男子が取り合うなんて・・・はぁ。これって青春だわ」



 横島がクラス中から袋にされているころ、外では横島を救出しようと、妖怪が出現したクラスへと、三人は校長と、横島の担任教師に連れられてやってきていた。
 「それで〜〜、横島君が食べられた机っていうのはどれですか〜〜〜?」
 教室を開けてみると、そこには散乱した机が置いてあるだけで、妖怪の姿などどこにも見当たらなかった。
 「そんなッ、さっきまではここに確かに」
 この教室の担任教師も驚きを隠せずにあたりを見回す。
 だが、彼らの必死さにもかかわらず、お構いなしの者たちが居た。

 「あれが、横島の・・・」
 「嘘だッ! 嘘だッ! 嘘だッ! 嘘だッ! 横島に限ってそんなッ!」
 「しかし、横島でいいなら俺だって」

 そう、横島と同じく女に餓えたけだものが、ほかにも残っていたのだった。
 
 「お姉さま〜〜〜ッ! 犬と呼んでください」
 「お傍で使ってくださいッ」
 「こき使ってくださいぃッ」

 向かって来る学ランの大群に気付いた冥子が悲鳴を上げて十二神将を暴走させようとする危険に、いち早くそれに察知したのは、

 「貴様ッ「それ以上リーダーに近づくんじゃないッ!!」・・・」
 刀を振りかざそうとした蝉丸の言葉を遮って、テレサの鋭い声が響き渡る。向かって来る学生に向けて、右腕に仕込まれた銃器の安全装置を解除し、学生が向かって来る数歩先の床に向かって発砲した。
 激しい銃撃音と共に、床に無数の穴が開き、硝煙が上がる―――それを見た男子学生諸君は、全員凍りついたかのようにその場に固まる。
 「まったくこの学校は横島みたいなのを量産しているの・・・ッ!? 危ないッ! 上だッ!」
 学生たちの暴走によって注意が散漫している瞬間を狙っていたのか、テレサは今まで反応していなかったレーダの警告に、瞬時に反応した。が、それでも妖怪の方がかなりの優位を持っていた。
 いつの間にか天井に張り付いていた机妖怪は、一瞬にして教室に降り立つと、冥子の眼前に現れて引き出しから長い舌を伸ばす。
 蝉丸、テレサ共に急いで冥子をかばおうとするが、間に合わない。
「いやぁぁあ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ」

 ごっくん・・・。
 
 そして一人を飲み込んだ机妖怪は、混乱状態になった生徒の間をすり抜けて、学校の中へ逃走を開始した。
 



 場面は、再び妖怪の内部へと移り変わる。

 「・・・横島君大丈夫?」

 全身ぼろぼろの状態の横島に、さすがに全員の動きが止まり、愛子が心配そうに横島に声をかける。
 「うう・・・できれば愛子の膝枕で・・・介抱を・・・・・・」
 「貴様、まだ言うかっ」
 再びこぶしを握り締めた生徒が、動き出そうとしたが、それは思わぬ来訪者によって遮られた。
 「ぎゃっ、ふん――――――」
 何にも無いはずの天井から落ちてきな何かに横島が踏み潰される。
 あまりの突然の出来事に、愛子も含めた全員があっけに取られる中、最初に動いたのは、このクラスで二番目の古株の高松であった。
 「君もこの妖怪の飲まれたのかい。でも、大丈夫だ。僕らは、君と同じだ。何も怖がることは無い」
 落ちてきたのは、黒のポニーテールをして、セーラ服に身体を包んだ少女であった。
 その手を伸ばそうとおずおずと手を伸ばそうとすると、尻の下で何かが動くのが分かった。
 「うう・・・う〜〜〜」
 下を見ると、少女の下敷きになった横島がもぞもぞと動こうとしているのが分かる。
 それをみた黒いポニーテールの少女は、何を思ったのか、急いで横島の上から立ち上がると、倒れている横島に向かって・・・抱きつたッ!
 「「「「「「「「「なっ!? なに〜〜〜〜〜〜ッ!!」」」」」」」」」 ×全員
 いきなり現れた美人の生徒が、手を差し伸べた高松を無視して、下敷きになった横島に抱きついたのだ、これを機会に、横島への嫉妬はさらに熾烈をを極めていくのだ・・・学園ドラマであったのならばの話だが。
 横島に抱きついた少女が涙を流しながら横島にすがり付いて泣き続ける。
 その少女の感触に横島の煩悩は盛大な反応を示して、急速に彼の霊力が高まっていき、たった今まで重症であったからだの傷がたちどころに治っていく。
 「セーラー服の姉ちゃんやぁ〜〜〜〜〜〜ッ!!」
 復活した横島は、すがりつくセーラ服の少女にしっかりと抱きつた。

 ぶにょ・・・? ぷにょ、ぷにょ?

 抱き心地は悪くなかった、だがこの違和感を覚える感触は何だろう。 
 「・・・お前、もしかして?」
 横島はそうつぶやくと、周囲で固まった生徒を見渡した。
 目の前では、手を差し出した格好のまま固まった高松の姿、だがそんなもの軽く無視して、愛子に声をかける。
 愛子もあっけに取られたまま一言も発しない。
 少女を抱きしめたまま近づいてもう一度愛子に呼びかける。
 「愛子どうした?」
 と声をかけると、愛子はなぜかこわばった表情で背後に飛びのく。だがすぐにさっきまでの明る表情に戻って答えた。
 「あっ、うん。なあに横島君」
 「この子、ちょっと調子が悪いみたいなんだ。保健室に連れて行ってもいいか?」
 「えっ、ええ。いいわよ。でも、それなら私が」
 「連れて行くわ」と言おうとしたが、横島はそれを断ると、少女を伴って足早に教室から退場した。
 後に残された生徒達も、すぐに戻ってくるだろうと思って、各自自分の机に向かう。
 

 
 (しまった・・・まさか、こんなことに)


 再び動き出した教室の中で、誰かがそうつぶやいた。だが、次の瞬間にはすぐに11026回目のホームルームが始まった。
 まるで、今出ていった横島と少女の存在など無かったかのように。
 教室の扉が開いて、一人の生徒が廊下へと向かう。
 だが、そのことを気にかける生徒は一人も居ない。
 黒板の前では、高松がホームルームの司会を務めている。
 その光景は、どこの町にある教室の風景のように見えた・・・窓から見える、寂れた砂漠の姿をのぞいて・・・・・・



 そして、外の世界でも事態は少しずつ・・・いや、かなりのスピードで動いていた。
 「サンチラちゃん〜〜〜ッ! シンダラちゃん〜〜ッ! やっておしまい」
 サンチラの雷撃が廊下を焦がしながら机妖怪に向かっていく。
 それを交わした妖怪に向かって、衝撃波をまとったシンダラが、窓を破壊しながら一直線に向かっていく。
 妖怪は、それを紙一重で交わすが、崩した体勢を狙って更なる追撃を受ける。
 「これでもくらいなッ!」
 「横島殿を吐き出せッ!」
 テレサのロケットアームと、蝉丸の剣技が波状攻撃を仕掛ける。
 しかし妖怪は必死に壁や天井に張り付いて逃げまどう。
 この猛攻を全部避けきっているのは、妖怪の執念か? それとも中に居るはずの横島を気遣って全員が全力を出し切れていないからだろうか? できるならば後者と思いたいところである。
 だが、妖怪が逃げ回れば、逃げ回るほど、別のところにその煽りがやってきている。
 
 
 「きゃぁ〜〜〜〜〜〜」
 「いやぁあああああああ」
 「学校が〜〜〜ッ! 私の学校がッ〜〜〜!」

 冥子達の妖怪をはずした攻撃を必死によけながら逃げまどう生徒と、自分の学校が破壊されていくさまを見ながら涙を流す校長の姿。校長の残り少ない髪がなくなるのはすぐ傍まで来ているかもしれない・・・・・・。



 机妖怪の中、保健室。
 「待ってたぜ・・・愛子――――――」
 保健室の中で待っていたのは、横島と変身を解き元の姿に戻った式神、マコラの姿だった。
 彼は、冥子が机に飲まれる瞬間影の中から飛び出して、変わりに机の中に飲まれていたのだ。しかし、元の姿では危険と感じたので、本能的に学校にもっとも適した姿に変身していたのであった。
 そして、今に至る。
 横島と愛子の間には短い沈黙続く。それを先に破ったのは愛子であった。
 「どうして私だと分かったの?」
 うつむいているために表情は読めない。
 「お前の性格なら一番にこいつが落ちてきたのに反応して、声をかけそうなのに、それをしなかったことが一つ。そして、こいつが近づいたとき、お前無意識にこいつのことを避けただろう? それは、お前がこいつを飲み込んだときにコイツの正体を知っていたからだろう。俺はこれでもGSの助手をやっているんだ。ただの学生じゃないんだよ」
 横島の問いに対して、愛子は答えようとしない。
 女子生徒の姿から、宇宙人のグレイのような姿に戻ったマコラが、横島の隣で事の成り行きを見守っている。
 「それじゃあ。正体が分かったところで早速俺たちを元の世界に」
 「もう、終わりだわ・・・」
 「えっ!?」
 ポツリともらした愛子の言葉に横島にあせりの色が浮かぶ。
 「私はただ、楽しい学校を作ろうと思っただけなのに、邪魔すなんて許せないッ!?」
 「ちょっ、ちょっと待て〜〜〜ッ!?」
 愛子の怒りの声と共に、身近に在った薬品瓶から、ドロッっとしたゲル状のものが流れ出る。壁からも、天井からも、それに続くように横島たちに向かって迫ってくる。愛子はその向こう側で、天井に張り付くと、壁とどうかするように中に吸い込まれていく。
 「いやや〜〜〜〜〜〜ッ!?」
 さすがに嫌悪感を覚えるゲル上の物体にマコラと横島は、保健室から逃げ出そうと扉に手をかけるが、
 「あっ、開かねぇ〜〜〜ッ!?」
 必死に扉と格闘する横島だが、天井から顔だけ出した愛子がそれを見て叫ぶ。
 「ここは私の学校よ、その扉も私の一部。逃がさないわよ〜〜〜〜ッ」
 「くそ〜〜。あんまり手荒な事はしたくなかったけど仕方ないッ! 飛べッ! ヤタガラスッ!」
 影の中から飛び出した式神が高速の回転を持って天井と融合していく愛子に向かって飛び掛る。
 「いやぁああああああああああああああああああああああああああああ」
 愛子の悲鳴が聞こえ・・・
 「なんて、言うと思った?」
 にやりと笑みを浮かべた愛子の前に突如黒い空間が現れてヤタガラスがその中へと消え去る。
 「ばいばい。カラスちゃん」
 にっこりと笑う愛子と、その光景に言葉を失った様子の横島は、呆然とヤタガラスが消えた空間を見つめていた。
 「ここは私の中だって言ったでしょ。出ることも入ることも私の自由。だからあの子には外に出て行ってもらっちゃった。外じゃ今頃大変なことになっているかもねぇ」
 愛子が言った通り、ヤタガラスの攻撃姿勢のまま外に放り出された。もちろん、異空間の中から外にいる式神を遠隔操作することなど不可能なので、


 ヤタガラスが放りされた直後の外の様子。


 「これでもくらいなッ」
 突如動きの止まった妖怪に好機と思ったテレサは、そいつに向けて両手のロケットアームを発射する。
 (捕らえたッ)
 そう確信した瞬間、机の中から何かが飛来してきた。
 「えっ!? んなぁああ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
 机の中から飛び出してきたのは、彼らが毎日見慣れていた存在。
 「「「ヤタ」殿」ちゃん〜〜」
 腕を伸ばした状態なので回避行動が間に合わずに、ヤタガラスの攻撃をまともに食らってしまう。
 テレサは学校の天井を2,3突き抜けて吹き飛ばされる。
 蝉丸、冥子もその様子に呆然として、人の形にくり貫かれた天井を見つめていた・・・打ち上げ花火のような風きり音がして、天井からテレサが降ってきて、地面に激突する、
 派手に床に墜落したテレサに二人は、ゆっくりと近づいていく。
 「テレサ〜・・・チャン〜〜〜・・・・・・」
 恐る恐る声をかけた冥子の言葉に、反応したのかどうか分からないが、むくりとテレサが起き上がった。そして、
 「リーダー・・・・・・あいつ殺します――――」
 重く、低い声でテレサが告げる。その目は完全に据わっていて、ぶつぶつと何かを繰り返し呟いていた。
 「め・・・よこし・・・・横島ッ! 間抜けなことしやがってッ!!! 無事出てきた暁には貴様のッ! 貴様のッ! 妖怪も横島も全員ぶっ飛ばすッ!!」
 「テレサちゃん落ち着いて〜〜〜」
 「そっ、そうです気を確かに」
 だが、等のテレサはその言葉がまったく耳に入っていない。ゆっくりとした動作で机妖怪の前に立ちはだかると、
 「銃器の安全装置オール解除・・・戦闘モード、バーサーカーに設定します。再起動まで4秒、3、2、1、システム起動しました」
 一瞬テレサの目が怪しく光った。
 「往生せいいやぁああああああああああああああああああああああああ」
真正面から妖怪に突っ込んでいく。
 最短の距離を進んで相手に向かって拳を突き出す。
 今までとの雰囲気の違いに妖怪は背を向けて逃げ出そうとするが、
 「逃がさないっ」
 避けたはずの右手が急に伸びてきて、妖怪の足をかすめる。
 「はずしたかぁ・・・しかしッ! これで終わりとおもうなぁッ! エルボー・バズーガッ!! レーザービーマー最大電圧!! フインガー・マグナム・セミオートッ!! チッ! これもよけるのかぁあああ!! 命中精度が悪い、親父さては安い銃器使いやがったな。リーダーッ! こうなったらフルバーストで一気にけりをッ!!」

 すでに、学校の5割が破壊されていた・・・。
 この日、冥子は暴走(プッツン)の危険性を、身をもって学んだと後日語ったらしい・・・。
 
 

 そのころ机の中の横島は、壁を突き破ってきたバスケットゴールに襲われている最中だった。
 「なんだ、これは〜〜〜ッ!?」
 ドロドロと、バクバクの二重攻撃に追い詰められた横島とマコラの頭に、同時に同じ考えが浮かび上がる。
 一時的マコラの使役、一時的横島との契約。
 互いに顔を見合すと、同時にうなずき、霊力が重なる。
 「こうなったらッ! マコラやってしまえ〜〜〜ッ!!」
 マコラのコントロールを得た横島がマコラに命じる。マコラの手がバスケットゴールを横からたたきつける。
 「馬鹿やろうッ!! こんなことしたって楽しい学校なんて作れるわけ無いだろう」
 そう告げると同時にバスケットゴールの姿が消えて、愛子の人間の姿が現れた。


 「ごめんなさい〜〜!! 私・・・私・・・本当は誰かにしかってほしかったんです!!」
 あっけなく泣きじゃくる愛子の様子に横島は、
 (もしかして、これは・・・・・・)
 「私は、机が変化した妖怪で、学校にあこがれていたんですぅ〜〜。ただちょっと青春を味わってみたくって・・・ごめんなさい〜〜〜!! 所詮妖怪がそんなものあじわえるわけないのに・・・!!」
 「そんなことないさ。愛子、今お前が味わっているものそれが青春さ。青春とは、夢おい、夢に傷つき、そして終わったとき、それが夢だったと気づくもの・・・」
 「横島君」
 と、感動の涙を流す愛子に横島は、
 (いけるッ!)
 確信した。
 「というわけだから愛子、早く俺達をここから出してくれ」
 「ダメよ」
 「なんでだよ〜〜〜ッ!」
 いけると確信した直後に愛子にあっさり否定されてなみだ目になる横島に、愛子は深刻そうに外の様子を告げた。
 「外で、怖い人達が私を狙ってるの・・・もう私、逃げ切れないは・・・・・・だから横島君」
 「なんだ・・・?」
 地震? だがここは愛子の中のはずそんなものが存在するはずが無い・・・ならば、いやな予感が横島に走る。
 「ついに来るときが来たのね・・・横島君、私と一緒に死んで・・・・・・」
 「待てッ、待てッ、待てッ、ヤンデレはあかんって。どうせなら、ツンデレ方が・・・って違うんや〜〜〜ッ!! いいか愛子、俺を早く外に出してくれ、今ならまだ説得できる(はず)。お前だってこのまま死ぬより、俺たちと一緒に本当の授業うけたいだろう? 俺が受けれるように頼んでやるからッ! 大丈夫、ウチの学校のやつ結構馬鹿なやつばっかりだから誰も気にしないしッ! 頼むッ! 愛子、俺を信じてくれッ!」
 このままここに居たら本当に、愛子と一緒に心中させられそうなので、横島も必死であった。
 外の連中を当てにするのは危険だ。もしかしたら、外に出た瞬間に冥子さんのプッツンが待っているかもしれないが、ここに居るよりは、まだ、助かる可能性がある。
 横島の口からは、嘘と本気と本音と冗談が入り混じった言葉が次々に飛び出していく。
 「・・・信じていいの? 横島君」
 「ああ信じていい。信じていい。お前くらい俺が一生養ってやるか。何でもいいから早く外に出してくれ」
 すでに関西大震災並みのゆれが襲ってきている。もう横島も自分で何を言っているのか分かっていなかった。
 「分かったわ・・・」
 なぜか顔を赤らめ、視線を逸らした愛子がそう呟くと、チャイムの音が響き渡り周囲の景色が揺らいでいく。


 ついに廊下の隅に追い詰められた妖怪に、テレサと冥子が攻撃を放つ。
 「シルバーブレッド・・・フルバーストッ!」
 「横島君とマコラを吐き出すのよ〜〜ッ! サンチラちゃんやっておしまい〜〜〜ッ!」
 ブラドーを一撃でしとめた銀の雨と、サンチラの雷が、逃げ場を失った机妖怪に向かっていく。
 「冥子さん、ちょっと待ってッ・・・て、ぎゃぁああああああああああああああああああああ」
 二人の攻撃が直撃する瞬間、二人は横島の姿を見た気がした。
 それでもここまで迫った攻撃を止めることはできない。校舎の一角を吹き飛ばすほどの破壊力が、光を伴って爆発を起した・・・。
 「ねっ・・・ねえ〜〜、テレサちゃん〜、あれ横島クンじゃ〜〜〜・・・」
 机妖怪の盾になるように黒い消し炭の塊が一つ。
 「横島殿〜〜〜〜ッ!!?」
 駆け出したのは侍の幽霊が最初、それに続くようにテレサ、冥子が駆け寄る。
 冥子の影から飛び出した式神ショウトラが急いでヒーリングを行う。


 こうして一様の事態は収拾されたのであった。
 ショウトラと、『滅』から『治』に変えた文珠のおかげで、横島の怪我は何とかその場で回復するこことができた。
 回復した横島が説得を行った結果、愛子は学校にあっさり受け入れられる事になった。
 だが、学校の被害は甚大で、この日横島の文珠のストックは、久々に底をついたらしい。
 
 そして、無事戻ってきた横島の首に抱きついて、なきながら喜ぶ冥子の姿を見て、クラスの男子が嫉妬の炎に包まれたそうな。
 



 おまけ。


 「GSと妖怪の禁断の恋も青春よねぇ〜〜〜」
と、言う妖怪が居たとか、居なかったとか。


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