椎名作品二次創作小説投稿広場


蛇と林檎

さがしにいかない


投稿者名:まじょきち
投稿日時:07/ 6/29




メドーサが、キレている。
うん、そりゃあ、あたしとメドーサの付き合いなんて短いもの。
別に彼女の事ならなんだって知ってるって仲じゃないし。
でも、メドーサって、何か、特別な存在だって思ってた。

でも、そこにいるメドーサは別になんて事はない、普通の人間と同じ。

一方のあたしは横島クンが攫われたってのに、何だか別に、実感が湧かない。
うーん、まぁ、奴は助平な高校生ってだけで、ねえ。
だから、こんな抑えられない手の震えも嘘。
カチカチと噛み合わない奥歯も嘘。
引き攣った口元だって嘘。
笑え玲子。


「美神、・・・・美神?あんた、笑ってるのかい?」

「・・・ええ、可笑しいじゃない?出る時にはアンタに大口叩いといてさ、帰ってきてみたらコレだもの。」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・そうだね。ま、油断大敵とは真にこの事かもねえ。」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

「・・・・・・・・・・・・・・・。」


メドーサが、あんなに大きく見えた神様が、なんだかすごくちっちゃい。
くやしそーな顔して、うろうろしてるだけ。

・・・ちょっとだけ、がっかりかも。
ここも、そろそろ潮時なのかな。


「美神、頼まれて欲しいんだけど、聞いてくれるかい?」

「どーしたのよ改まって。」

「電話番、しててくれるかい?もしかしたらヨコシマから電話がくるかもしれないだろ?」

「所長はどうするのよ?」

「情報収集さ。ワルキューレとか、ツテはいくつかあるからねえ。何か判ったら私も電話するよ。」

「いいわ、あたしのほうも一号の方を治せないか、調べてみるし。」

「悪いね。・・・・・美神、アタシがいなくても、無理するんじゃないよ。」

「判ってるわよ。」

「あ、そうそう。電話は壊れてないからね。」

「?・・・・・・そりゃ、壊れた電話の番なんか馬鹿みたいじゃない。当り前でしょ。」


ふーん、怒りに任せて勝手に飛び出すかと思ったけど、けっこー冷静じゃない。
でもなんだろ、メドーサ、妙に優しい顔つきになって。
あたしじゃ無理だわね、ああいう顔。
やっぱり2号さんなのかも。


「いいかい、敵の強さは常に感じる事。自分より強い相手には無理に飛び込むんじゃないよ?」

「ええ。」

「ここがやばいと思ったら、放棄するんだよ。拠点に固執すると敵に策を与えちまうからね?」

「・・・ええ。」

「あと、機転が効くのと無闇に逃げるのは違う。常に二手三手先を読んで、保険をかけること。」

「・・・・・・わかってるわよ。あたしこれでも人間の中じゃトップクラスだったのよ?」

「あはは、そうだったね。すまないね、子ども扱いしてさ。」


メドーサの笑顔って、なんか心地いいのよね。
なんだろ、あたしにとっても所長は、仲間って感じなのかな。
ちょっと、気持ちが出てきてる。
浅はかだわ、あたし。


「じゃ、後は頼んだよ。・・・美神の幸運を、祈ってるよ。」

「ナニ言ってるのよ。あんたが神様でしょーが。誰に祈るのよ。」

「あはは、そう言えばそうだったね。・・・じゃ、よろしく頼むよ。」

「いってらっしゃい。」


メドーサは、そう言うと、いなくなった。
彼女は自由自在に、何処かへと行ける。
神様だから、そういうのはもう驚かなくなったけど。

さて、とりあえず事務所でもそうじするかなー。


「♪Byebye Sadnees And Find out〜♪」


ま、正直掃除は苦手なんだけど、他にすることも無いしね。
うわ、ポテチの袋とかソファーの中から・・・横島クンね・・・・・・

いあ、そうだこれ、あたしだった。たははー。

ま、どっちにしろこの部屋のモンはほとんど残骸だから、ゴミゴミ。証拠は隠滅に限るわ。
あたしの内緒のゴミも荒ゴミも、とりあえず、部屋の隅にどけてどけて。
掃除ってのは、いらないものを捨てるってのが肝心だもの。

別に掃除の仕方がわからないわけじゃないのよ。
単にめんどくさかっただけ。


「・・・・・・・これ、横島クンのペンダント?」


たしか、ワルキューレが来た時に横島クンが持ってた奴ね。
懐かしいわねー。あの時、そういえば、横島クンとデートしたんだっけ。

ん。

あれ、デートだったのかしら。
結局最後は、メドーサに美味しい所もってかれたような気がするし。
やっぱりあたしってば、2号さんなのかしら。

でもおかしいわよ。

普通は技の1号力の2号でしょ?
どう見たってメドーサのほうが力押しじゃない?
てことは、私が本郷猛って感じがすると思うのよね。キック得意だし。


『ふふ、横島クン、いつ私のタイフーンベルトを回すつもりなのかな?』

『み、美神さん、そんな桜島1号のような瞳で見つめられたら・・・ボカァ、ボカァもう!』

『あーっはっは!駄目だね美神!アタシなんかダイナモ搭載で何時でも準備オッケーだよ!』

『そ、そうきたかー!』


って、なんで自分の想像でメドーサに負けてるのよ!

でも、なんでだろ、やっぱり所長と、横島クンがいて、あたしがいるみたい。
ずっと、ずっと自分だけでやってきてたのに。
一人で何だって出来てたのに。

でも、自分ひとりで・・・何が出来てたんだろ・・・



『君がこんなに早く独立できる実力を持つなんて驚きだよ。ガメツイけど。』

『正直、その実力は認めても良いワケ。ま、ガメツイけどね。』

『令子ちゃん〜だ〜いすき〜、ずっと〜おともだちよ〜、でも〜ちょっとだけ〜ガメツイかも〜。』

『アイヤー流石令子ちゃんアルなー。日本最高のGSは伊達じゃないアル。がめついアルが。』


ほら、みんな手放しで褒めてくれてたもの。
自分だけで出来た。何だってやれた。世界だってきっと征服できた。
あたしが全ての王様になって、全部思い通りになって、世界が滅んでもあたしだけ生き残って。




でも、あの時、あたしの妄想には常にあたし一人だった。




このまま、横島クンが見つからないで、きっと、メドーサはずっと捜し歩いてて、
あたしは、また一人に戻る。

それに、耐えられるかしら。

うわ、なんだかもう、想像が出来なくなってる。
やばいなー、弱ってるんじゃないかしら、あたしのココロ。

誰も仲間なんかいなかったのに、
誰も仲間なんかいらなかったのに、


「・・・・・そうじはこの辺で充分ね。」


そうだ、一号を何とかできないかしら。
人工霊魂は構造がイマイチよくわからないけど、
何とかできそうな気がする。

だって、あたしだって、1号なワケだし?

きっと、1号同士で何とかできるっていうご都合主義発動で。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

とはいえ、実際にはそうもいかないわけか。

なんとか、玉座の椅子だけは残っていたから座ってみて判ったけど、
横島クンが居ないせいで、霊力の供給がストップしちゃってるわけね。

でも、かなり損傷してるけど所有者の霊力さえ有れば復元できるはずだわ。


「・・・美神令子の名の下に、人工幽霊一号よ、目覚めよ!」

『・・・・・・ERROR。管理者権限がありません。アドミニストレーターでログインしてください。』

「・・・・・・・・・・我は横島忠夫である!人工幽霊よ、目覚めよ!」

『・・・・・・ERROR。ユーザーが違います。アドミニストレーターでログインしてください。』


駄目かー。
見た目だけなら厄珍ところでも押し入ってオカルトアイテムで変えられるけど、
コイツは霊魂だから、きっと霊の波動を識別してるわよね。

でも、けっこう最初の登録の時には色々もめてたわよね・・・戸籍とか・・・

・・・・・・・・・・・・・・戸籍?





「あたしは横島忠夫の同居人、美神令子!緊急時に伴い、一時的な所有権移動を命じるわ!」

『・・・・・・ERROR。根拠がありません。アドミニストレーターでログインしてください。』

「ふっふっふ、これが証拠の住民票の写しよ!豊島区役所の印も入ってるんだから!」

『・・・・・・ERROR。同居人だけでは権限がありません。』

「馬鹿ね!同居中愛人、つまり内縁の妻よ!行方不明の夫に代わり、ここを管理するわよ!」

『・・・・・・ERROR。内縁の妻の要件を満たしておりません。』

「くっ!何よ!あたし、横島クンが好きよ!大好きなのよ!コレじゃ駄目なの?!」



正直、本妻で婚姻届出そうか、むちゃくちゃ迷ったわよ。
サインさえ偽造しちゃえば、それくらい簡単なことだしねー。
でも、メドーサも居ないところでそういうのって、何だかずるい気もしたし。
つーか、自動応答なわりに、何だか妙に具体的なかんじが・・・・


『・・・くっくっく、了承した。暫定の暫定とは些か滑稽だが、美神令子、あなたを主と認めよう。』

「お、おーまーえーなー!いつから意識が有ったのよ!」

『美神殿が座った時からだ。許されよ、美神殿に他意が無いかどうか確かめたかったのだ。』

「他意?」

『横島殿を蔑ろにし己の利とせんとする選択肢も有る。メドーサ殿にはその気があったのでな。』

「め、メドーサが?まさか?!」

『過去に数度、強制的に服従するように指示を受けている。横島殿にも伝えてはいないが。』


所長が、何の為に?
だって、あの時、横島クンに所有権を渡したのは自分なのに?
だいたい、なんだかこう、引っかかるのよね。なんだろ?


『恐らくメドーサ殿は、横島殿を利用していたのではないのかな。』


どういうこと?
それになんだか、すごく違和感があるわ。
確かに気配も声も波長も、一号。間違いないはず。


『美神殿、まずはここを復旧し、出方を待ってみるのはどうか?迂闊に動くのは危険だ。』


わけが判らない・・・でも、もしかして・・・
メドーサ、横島クン、一体何が・・・ん?メドーサ殿?
一号が、メドーサ殿・・・・・・


「メドーサが逃げるための手駒として横島クンを確保していた?」

『・・・それは想像の範囲でしかない。だが、可能性の問題なら、有り得るだろう。』


もう一つだけ聞いてみたい。
あたしの勘違いじゃなければ。


「おちびちゃんは、大丈夫なの?人工物同士、仲が良かったでしょ?」

『チビメドは、残念だが消滅は時間の問題だろう。だが、復旧さえすれば可能性は有る。』

「可能性、ね。じゃあ、こんな可能性も有るわけだ。」


玉座の椅子から霊力を特定方向に流してみる。
うん、やっぱり。『この』人工幽霊には、あたしからもアクセスできる。
おもいっきり霊力を叩きこんでおこうっと。


『ぐ、ぐがががが、な、なにをするのだ、美神殿、気は確かか?』

「リサーチ不足よ。・・・一号は、恋人を呼び捨てになんかしてないのよ。」



ほら、出てきた出てきた。
やっぱりね。一号は所長を竜神殿って呼ぶし、横島クンの事は主って呼ぶし。
この美神令子をたばかろーなんて何処のどいつかしら?
・・・う、あの黒い羽は・・・・・・・・・




「無茶をするな美神。・・・筋がいいのは言われていたが、こうも早く見つかるとはな。」

「ワルキューレ・・・あんたここで何してるのよ。」

「メドーサがな、お前を守ってくれと私に言ってきたのだ。人間を守るのは不本意だがな。」

「一号は?あんた、一号はどうしたの?」

「並行する異空間で、電子精霊ともどもジークに修復させている。」



一号とチビメドは無事だったんだ。
ていうか、こいつを頼って情報収集するんじゃなかったっけ?

てことは・・・・・・



「ワルキューレ!メドーサは、メドーサはどうしたのよ!」

「今頃は神界へ向かっているだろう。・・・横島は、もはや人間界には居ない。」



なんか妙に優しいから変だと思ってたのよ!
あのオバハン、自分ひとりで全部なんとかしようとしてやがる!
ふっざけんじゃないわよ!そんなの、そんなの身勝手じゃない!



「ワルキューレ!メドーサは横島クンを盾に取られれば何も出来ないって考えなかったの?」

「ふっ、勿論考えている。美神、お前たち人間のように我々は馬鹿じゃない。」

「・・・・何か策があるって言うの?」

「万一を考え横島に、緊急脱出アイテムを持たせてある。二人揃えば魔界へ逃げられる。」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・まさか、コレじゃないわよね?」

「ああああああああああああああああああああああああああああああああ!」

「馬鹿ァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!」



やっぱりか。
この悪趣味なシルバー髑髏がそうだったんだ。
てことは、コレがあるつもりで横島クンのところに行った所長は・・・・・



「は、早く連絡つけて呼び戻しなさいよ!何ボケっとしてるのよ!」

「まさかこんな事になろうとは・・・メドーサとはもう連絡が取れていない・・・」


うわ!ちょっと、ナニ泣きそうになってしゃがんでるのよ!
本気なの?本気の本気で、所長がピンチってこと?


「じゃあ、神界とやらに行きましょう!あんたくらいの悪魔なら行き方知ってるんでしょ?」

「冷戦中の我々や人間が出入りできるのは妙神山のみだ。だが、恐らく閉鎖されている。」

「確か世界中に神様との接点の伝説があるはずだけど?ほかの場所からは?」

「残念だが、世界中のほとんどの場所は下りのみ、つまり神界から下界に行くだけのルートだ。」


確かに、GSで妙神山に修行に来るのって、日本人だけじゃないって聞いたことがあるわ。
お膝元だからこそ日本はGS世界でトップレベルなんだって唐巣先生も言ってたっけ。
つまり向こうにとっては、その入口さえ突破されなきゃ勝ちってわけか。


「じゃあ、イゼル○ーンを突破しましょ。頼んだわよ奇跡のヤ○。」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・残念だが、それは出来ん。」

「なに言ってるのよ!あんた友達でしょ!突破するわよ!」

「馬鹿を言うな・・・我々悪魔が神界へ行けば戦争だ。」

「あっそ!じゃ、あたしは人間だから関係ないわ!じゃあね!」

「ま、待て!お前ごときが、小竜姫や斉天大聖に勝てると思っているのか!」

「勝てるかもしれないわよ?ここでしゃがんで待ってるよりかはね!」


多分、ワルキューレは悪い奴じゃない。
ただ、それでも、やっぱり大人なんだとおもう。
世界は自分の命より友人の命より重いって言ってるんだとおもう。

でも駄目。
あたしは駄目。

世界より自分の幸せが大優先。
メドーサとか横島クンとか、そういうのも含めて、
ぜったい、ぜったい手放さない。もう手放したくない。


「わかった。・・・止めはしないが、せめて我々の装備を待ってから行かないか?」

「秘密装備ってわけ?・・・悪いけど、時間が惜しいの。ごめん。」


あーあ、飛び出しちゃった。
感情的で後先考えないのって直らないわね、あいかわらず。
つーか、どーしよ、今小銭しかないのに。妙神山てめちゃくちゃ遠いのよね。

・・・・・・・・・そだ、お金借りにいこ。





「で?返すあても無いのに、お金を借りにきたワケ?」

「うん、アテならキッパリと無いわ!・・・何かの時には手伝うから、ね?」

「・・・・・・・ったく、この借りは絶対返しなさいよね。」


なんか、赤いのが飛んでくる。
ん?
バイク用のヘルメット?


「こんなボロ売っても、そんなにお金にならないわよ?」

「馬鹿言ってるんじゃないわよ!SHOEIのビンテージなワケ!つか売るんじゃない!」

「じゃー、どーするのよ。」

「二ケツで出かけるわよ!朝っぱらから令子の取次ぎ出来ないかって煩いのがいるワケ!」


コブラもたいがい五月蝿かったけど、エミのバイクもなかなかだわ。
うーん、エミのバイクに乗せてもらうのって何年ぶりだろ。
GSになりたての時に、こうして乗っけてもらったっけ。


「そーいえば令子、電話なんで直さないの?」

「は?電話?なんのこと?」

「あんたんとこの電話よ!114で確認しても話してないから故障中だろうって言われたワケ!」

「ん?・・・・・・。」


たしか、事務所の番号はエミには教えといたし、間違ってないはずだけど。
故障中だろうって?事務所の電話が?
そーいや、あの電話使われたのって一回も見た事が・・・・

ああなるほど。
あれは横島クンのアパートの奴。
所長はもともと壊れてる事を知ってたのね。
だから、あたしに電話が鳴るのを待てって言ってたんだ。
壊れた電話なんか鳴るわけが無いから。


「くそー、あたしったら馬鹿みたいだわ。」

「・・・令子は馬鹿みたいじゃないわ。正真正銘、馬鹿なワケ。」

「じゃあさー、そんなあたしにGS試験で負けたエミは、超大馬鹿って事?」

「な、なんですって!東京湾に放りこむわよ!」


いよいよ、所長の魂胆が透けて見えてきたわ。
はやく追いかけなきゃいけないのに、エミってば何処に連れて行く気かしら。
ん?こうして湾岸から晴海通りって・・・・・


「エミ、まさか、待ってる人って国際展示場関係?」

「あんた時々馬鹿ね。コミケ関係の人間待ってどうするのよ。このまま銀座に行くワケ。」


銀座?
はて、銀座って誰か居たっけ?


「おお、美神ではないか。・・・えらい事になっておるようだな。うはは。」

「えらいこと?」


ああ、銀座って、鬼塚さんが居るところだったのね。
つーか、カオスのおっさん妙に嬉しそうなんだけど・・・。
でも、えらいことってなんだろー?


「み、美神さん!よかった、とりあえず美神さんは無事だったのね!」

「あ、あの、一体何が・・・・・」

「ちょっとこっち来て!早く!」

「ああああ、はいはい、いや、なんで呼ばれたのか・・・・」

「コレを見てちょうだい!」


薄型テレビってやつね。
たしかSH∀RPが20型の量産に成功したって言ってたけど。
これ試作機の28V型じゃない?やっぱり本物の金持ちは桁が違うわね。


「これは、国家元首と宗教責任者に送られた映像よ。・・・落ち着いて見てちょうだい。」


ん?
だれこの小娘。
メドーサの戦闘服に似てるみたいだけど。


『私は、天界最高会議第7席の関聖帝君が代理で小竜姫です。
我々は現在、メドーサという天界の重犯罪者を捜索しています。
しかし、残念な事に人間界のどこかで、人間に匿われています。
我々は悪を許しません。彼女の協力者も含めて、処罰します。
現在、協力者の一人、ヨコシマタダオを拘束、その他も捜索中です。
重犯罪者メドーサを匿う国は必ずや大いなる佛罰が下るでしょう。
・・・・・・・・言っておきますが、我々は本気です。』


コイツが小竜姫かー。
やっぱり、横島クンは・・・・・・
でも、なんでこんな映像を?


「美神さん、先ほど広島に巨大暴風雨が発生して大災害になったそうよ。」

「・・・・・・え?」

「ビビった政府はICPOと協力して、令子とメド姉さんを広域指名手配犯としたってワケ。」


うは、マジデスカ?
てことは・・・・・


「ちょっとエミ、あんたコレ知ってたの?」

「当り前でしょ。これでも日本最高のGSになってるワケ。」

「・・・・・・・・・・・そっか、ありがと。」

「ば、馬鹿言ってるんじゃない!こんな脅迫、気にくわないだけよ!」


はー、ほんとにエミにはいろいろ借りっ放しになっちゃったわね。
しかしまいったー。こりゃ、下手すればタイホってか。


「大丈夫よ美神さん。政府ごときが、何を言ってもね。」

「え?、鬼塚さん、それはどーゆー・・・・・」


うわ、おばーちゃんが、
目が、目がマジでヤバいんですが・・・・・


「いいこと?滅亡が予言されてから幾星霜、人類はね、ただ暮らしてきた訳じゃないの!」


うは、なんだか薄型テレビをマリアがどんどん持ってきてる。
何を始めるつもり?
何だかすごーく悪い予感が・・・・・・・


「黙示録の滅亡の予言は、勝手な天の遣いと魔物の争い、いわば異能者どーしの戦争!
でもね、そんなのは人間のせいじゃないわ!食べたい時に食べて飲みたい時に飲んで
笑いたい時に笑って怒りたい時に怒って泣きたい時に泣いて・・・何が悪いのかしら!
人間のルールは人間が決めるし、神様のルールなんか神様が守ればいいし、
経済はそうして動いてるし人間はそれで生きているわ!それを勝手な判断で、
世界を滅ぼしてリセットするなんて、私たちをゲームか何かと勘違いしてるのよ!」

『オウイエース、ミスバサラ!我々ガ、うぇぽんデ儲ケテ何ガ悪イデスカ!』

『ハラショー!アクノーの言う通りでスキー!』

『ハーベンレヒト!』


おいおい、おばーちゃん、キャラちがくない?
それに、なんか、TVのエキストラとかと違う外人がどんどん出てくるんですが。


「時は既に満ちました!我々『普通の人々』は、神様に対して、宣戦を布告します!」


え?ええ?
ちょ、ばーちゃん、何を言ってるんですか?


「カオスさん!例の準備はいい?」

「そりゃあ、あれだけ金を使えば出来てるに決まっておる。」

「マリアさん、ミュージック、スタート!」


部屋中にティンパニの音、アップテンポのBGM・・・・・・
あ、これって・・・ってことは・・・・。


「ちょっと、銀座の街が割れてるわよ?!」

「ふふ、この辺の土地は全部買い占めてあるのよ。それにあそこは、第七ハッチなの!」


ああー、やっぱりー!
この音楽、これってエヴァンゲソゲソのDetectiveBattle!


「巨大な敵には巨大ロボ!最終人型決戦兵器、メドーサロボ28号よ!」

『ヴォォォォォォォ!』


うあちゃー。
デザインが80年代のロボットアニメで、まるっきり顔がメドーサしてるし。
ほんとの金持ちはやる事がむちゃくちゃだわ。
あたし、破産してよかったかも。


「さ、操縦席に行ってくださいな。そうそう、右の席にお願いね。左はメドーサさんの予定なの。」

「ミス美神・とりあえず・左席操縦は・マリアが・します。」

「あはは、頼んだわよ。」

「ほら、ぷらぐすーつに着替えて!大丈夫、えるしーえるは使ってないのよ。」

「うは、内側素材、ポリアラミド繊維と緩衝フェルトの混合?!いくらするのよ!」

「外は勿論ラバーでつやつや感アップな上に身体の線もバッチリよ。横島さんも大喜びね。」


どーなのかなー。
横島クンって意外とこういうオタク系に食いつき悪いのよね。
なんか、将来イベントとか出かけるなんて時に嫌な顔されちゃうのはやだなー。

・・・・ってちがーう!別に今そんな事考えてる余裕なんかないっつーの!


「ほら、その暖炉の穴から飛び込んでくださいな。途中で取っ手が出てくるから。」


見すぎ見すぎ見すぎ。
ていうか、いちいち反応しちゃう自分がすんごくアレな感じがしてナニだわ。

うーむ、操縦席は車みたい。これって、ハンドルとアクセルとブレーキよね。
・・・ああ、マイクが付いてる。要は声で命令してハンドルとかは気分ってわけか。

あら、スペック表はマリアが渡してくれるのね。
なになに。


「ちょ、ちょっとこれ、核パルスエンジンじゃない!いつのまに実用化されてたのよ!」

『ふふ、美神さん?本格的核研究が始まって60余年、時代は進むのよ?』

「装甲が圧縮純鉄と純タングステン積層って・・・研究室レベルでも出来てないものを・・・」

『大学研究室なんて所詮は学校の理科室ですのよ。・・・プロに言わせれば。』

「高出力ビーム熱線、劣化ウラン200mm機関砲、戦術核搭載ワイヤー誘導ミサイル・・・」

『どーじゃ!ワシも久々にワクワクしてきたぞ!こんなに金をかけた研究は500年ぶりじゃ!』

「芯から馬鹿かー!あんたらは世界を滅ぼす気かー!」


で、でも、これなら・・・・
メドーサロボなら・・・何とかできるかも・・・・


『で、マリアさん。第一陣はどうなりました?』

「メドーサ銀・メドーサブラック・メドーサホワイト・まもなく・妙神山に・到着します。」

「第一陣って・・・・」

『決まってるわ。メドーサロボ28号は真打よ!まずは雑魚で少々負けておかないとね。』


ああー、量産型の機体なんだ。
あの動きは、自動操縦かしら。ちょっと固いわね。


『(ツピー)人工幽霊2号より各人工幽霊へ!これより妙神山へ突入する!』

『(ツピー)了解!』

「ちょ、人工幽霊って、どういうこと?」

『父の遺産よ。父は人工幽霊の生成に成功したのよ。あなたもGSなら御存知じゃない?』

「ま、まさか、鬼塚さんの旧姓って・・・・」

『ほほほ、渋鯖婆沙羅。・・・あと数年もすれば、アンドロイドだって買える時代が来るわよ!』

「どーりで金があるわけだわ。」

『ほほほほほほ!メドーサ隊全機突入!バックアップは取ってあるから思う存分やりなさい!』

『(ツピー)了解!この戦場は地獄だぜ!フゥハハハーハァー!』



うは、妙神山ってまだ行ったこと無かったんだけど、しばらく行きたくないわね。
ウランの弾が次々と・・・・地形が、山が無くなっていくわ・・・・
これじゃあたしの出番なんか無いかも・・・・



『(ツピー)結界内部より巨大な霊積体出現!情報どおり、猿神かと!』

『(ツピー)司令部、攻撃指示を!』

『まちなさい。音声回して。・・・話くらいはしておかないとね。』


うわー、どう見ても悪役フラグがこっちに立ってる気がするのよね。
まー、借り物の機械の中だし、静観するしかないんだけど。


『ここを天界の門と知っての狼藉か?・・・機械人形よ。』

『ほほほ、横島さんを帰してもらえるかしら?』

『・・・小竜姫の映像は送ったはずだがな。その上での事なら、人間界は滅ぶぞ?』

『相互不干渉は古よりの約束のはずですわ。人間を攫っておいて良く仰いますわね。』

『・・・・・・天界の決定事項だとでも思ってくれてかまわん。頼む、退いてくれんか?』

『ふ、ふふ、ふふふ、ほほほほほほほほほほほほほほほ!』


あちゃあ。
声だけでわかるわ。
もう、単に楽しんでるわ。


『愛し合う二人、いえ、三人の前には神とて無力と知りなさい!全機攻撃開始!』

『(ツピー)全機攻撃開始!』

『(ツピー)まってましたぁぁぁぁぁぁ!』


ちょ、ちょっと!三人ってどういうことよ!
まさか、あたしも入ってるんじゃないでしょうね!
・・・ま、ちょっとは三人ってつもりでいたところもあるんだけど・・・


『貫目は壱萬参千五百斤、如意金箍棒を受けるか傀儡共よ!去れ!去るがいい!』

『サルはあなたよ!機動限定解除、全機格闘戦モードで突入しなさい!』

『(ツピー)了解!ええい、奴は上さまの贋物じゃ、であえ、であえー!』

『(ツピー)うぉぉぉぉ!』


うわ、そういう事言ってると・・・・
あはは、あれじゃまるっきり悪役じゃない。
ま、あちらは責任ある役職のようだし、ちょっとカマかけてみますか。


「マリア、あたしの声も戦場に割り込ませられる?」

「イエス・ミス美神。回線・切り替えます。」

「そーいえば、小竜姫ってのは出てこないの?孫悟空のひと。」

『・・・小竜姫は、メドーサを追って天界に向かっておる。・・・もはや、戻っては来まい。』

『ちょ、ちょっと!どういうことですの?メドーサさんは捕まってらっしゃるの?』

「・・・一番嫌な予感が当たっちゃったか。横島クンは、メドーサを誘き寄せるエサだったのよ。」


でも、追ってるって言ってた。
まだつかまったわけじゃない。
でも、メドーサが、横島クンを盾にされたときには。


『これは神同士の問題じゃ。人間はわしの責任で必ず返す。』

「・・・・・・・・・メドーサはどうなるの?ただの軽犯罪なんでしょ?」

『知ってどうする。・・・だが、どうしても知りたいなら、わしを倒してみよ。』

『ぜっぜっ全機上空に展開しなさい!あの猿を、あの猿を、あの猿を!』

『(ツピー)了解。各機エネルギー同調!』


メドロボもどきが、空中で繋がってる?
背中のツバサが光りだして、一つの機体に集められて・・・これは・・・・・


「わかった!ソーラレイね!」

『ちがうわ!サテライトキャノンなワケ!』

『(ツピー)反射衛星砲、発射!』


うわ、ふっる!
って、判っちゃったあたしは別にヤマト世代じゃないんだからね。誤解しないでよね。
・・・・・誰に言い訳したのかしらあたし。


『(ツピー)命中!・・・・新しい霊積体一柱確認!攻撃が効いてません!』

『オヤジ、メドーサを追ってくれ。物騒な現場は俺達に任せときな。』


ち、新手か。
随分なマッチョマンだけど・・・あら、背中に名前が書いてあるのね。
ははん、八戒ってことはアレがブタね。
つーか、サルが逃げちゃうじゃない!


『すまんな。・・・人間よ、悪く思わんでくれ。わしらはわしらで考え有っての事でな。』

「こらー!逃げるなー!ひきょうもーん!」

『お嬢ちゃん、鼻息荒いだけじゃ男にもてないぜ?』

「ブタは黙ってろー!マリア、発進するわよ!あらいざらい吐かせてやるんだからー!」

『ちょ、ちょっとまって美神さん!あと10時間で他の国の部隊も来るわ、それを・・・』

「マリア!交信カット!メドーサロボ、発進!」

「交信・カットします。メドーサロボ28号・発進。エンジン始動・Gに気をつけてください。」


ふざけるんじゃないわよ!
勝手にいなくなって!みんな勝手に!
この美神令子をのけものにして、ただで済むと思ってるの?
全部まとめて極楽に、いいえ!宇宙の果てに逝かせてあげるわっての!







美神令子がロボを発進させたその頃。
コメリカ合衆国、エリア51。


『ミス婆沙羅が、Mtミョージンに攻撃を始めたようでスナ。』

『マトナデシックルはお淑やかだと聞いてたので少々アマク見てまーシタ。』

『ノノ、ヤマトナデシコルスキーね。しかし、こんな楽しそうな事、自分達だけでズルイデース。』

『『『我ら軍産共同体も、新兵器試しに行きマース!!!』』』



そして、同時刻。
イギリスの首都ロンドン。


『Mはなんと言っているかね?』

『女王陛下は敬虔な国教徒であらせられるぞ、ですって。』

『そうかね。バーテン君、それでは我が祖国と目の前の麗しき姫君のためにダイキリを。』

『貴方の分は?ミスターボンド?』

『Qの秘密兵器がそろそろ腐りそうだからね。不本意ながらそちらを頂くさ。』



さらに同時刻。
ドイツ、ペーネミュンデ。


『貴官に問う!ドイツの科学力は!』

『世界一ィィィィィィィィ!』

『さらに問おう!ドイツの医学は!』

『世界一ィィィィィィィィィィィィィ!』

『よし、貴様に日本に行ってもらおう!安心して敵の不可解な生物を倒して来い!』

『俺を気の毒だなんて思うなよ!ゲルマン民族の最高知能の結晶であり誇りであるゥゥゥ!』

『・・・・・・嫌なのか?』

『あァァァんまりだァァァ!』

『だが行ってもらう!』



その上同時刻。
中華人民共和国、上海。


『福音戦士もPOLYSTATIONも大いなる中つ国の完全オリジナルなのでアル!』

『米帝日帝の毒々しい模写複製には我慢の限界アル!』

『今こそ中華40000000000年の独創性を世界に示すときアル!』

『秘密兵器<機動戦士高達機械女神三隻眼魔剣美神駆魔大作戦>いざ発進アル!』

『アイヤー!たくさん真似過ぎてうまく動かないアルー!』

『シーッ!』




世界は、今動き出した。
美神令子も動き出した。

では、メドーサは?横島は?
疾風怒濤の中篇を待て!




************次*回*予*告******************

「という訳で、皆おなくなりになりました。皆様、短い間御声援ありがとうございました。
最終回でした。ご冥福を御祈りします、アーメン。次回からは美少女GS細腕繁盛記
『令子ちゃんと愉快な下僕ども(主にエミ)』をお送りします。
あたしが主役!うふふ、あははははははははは!」

「ちょ、ちょっと待つワケ!あんた何勝手な事を!」

「冗談よ。次回蛇と林檎第12話『愛の禁じ手』。次も続くわよ。」

「でも令子、ビバップってちょっと新しすぎない?」

「エセマニアのエミにも判るチョイスにしといたのよ。感謝しなさい?ビバップビバップ!」

「よろしくビバップ!ってナニ言わせるのよ!ウガ○クなんて若い子には判らないワケ!」

*************蛇*と*林*檎*****************


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