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時は流れ、世は事もなし

共闘 1


投稿者名:よりみち
投稿日時:07/ 6/10

 当作品の主な登場人物(1)

ベスパ 
 意識体(魂)のみで過去に。自分のオリジナル(作品中では霊基構造体のパターンを提供した者の意)と思われるフォンという少女の魂がない肉体に憑依中。

蛍  乱波 芦の部下で”教授”の護衛。ルシオラのオリジナルと思われる少女。

蝶々  感情探知を主とするエスパー 蛍と同じ。パピリオのオリジナルと思われる少女。

ホームズ  名探偵 
フォンに取り憑いた者の正体を探ることを依頼され、なし崩しに”蝕”とも向き合うことに。ちなみに、フォンの意識が別人であることは気づいている。

モリアーティー(”教授”)  元犯罪王
ホームズを”蝕”に関わる問題に巻き込む。

芦優太郎  陸軍少佐 
 アシュタロスが己の霊基構造体をベースに創造した上級魔族級の使い魔。過去世界において進められている”計画”の実行者。ただし、現時点では、自分の正体については知らない。

フィフス  女魔族
 芦を拉致するために現在時から送り込まれた使い魔。”蝕”と協力関係にあり、フォンから魂を抜き取る。

 前回『思惑』のあらすじ(それ以前のあらすじは13に掲載)
ベスパは蛍・蝶々やホームズとのやり取りを通し憑依が半ばがバレていることに気づき、真相の一端を明かすことを決断する。一方、ホームズは”蝕”がこの国が進める元始風水盤建造計画に関わりがあることを知らされより深く関わるようになる。

 同じ頃、 元始風水盤の建造責任者茂流田は呉公(”蝕”の首領)と進めてきた”企て”の実行を決定、動き始める。




時は流れ、世は事もなし 共闘 1

 ノックする音にホームズはちらりと時計を確認する。
 どちらかといえばゆっくりとドアへ、開けるとモリアーティーがいた。

「少し早いんじゃありませんか。たしかに”ベスパ”と話をする時には同席するよう頼みましたが、まだ彼女が来る時間ではありませんよ」

”ベスパ”と仮に呼んでいる少女が来るとするならば、”姉”、”妹”と余計な摩擦を避けるため(夜の警備を済ませた)二人が休んだ後を選ぶはずで、それはもうしばらく先だ。

「それは承知よ」とモリアーティー。当然の如く入り椅子に腰を降ろす。

 ちらりと不快そうな顔を見せるホームズだが何も言わず向かい合う。

「来たのは、儂のレポートについて君の判断を聞きいておきたいと思ったからだ。”ベスパ”から話を聞く前に片づけておいた方が良いと勘が言うものでな」

「いいでしょう。宿題は早く提出した方がすっきりしますからね」
 気安げに応じたホームズは少し皮肉っぽい笑みを口元に、
「で、レポートについてですが、いささか以上に驚かされましたな。どうすれば、あのような現状分析、すなわち”蝕”の目的が元始風水盤建造の妨害ではなく促進にあるということになるのやら」

 モリアーティーはデキの悪い生徒をたしなめるように、
「現状を見てみれば不思議ではなかろう。”蝕”を阻止できないことにより政府はオカルトの威力を認識し元始風水盤の建造に本腰を入れたのだからな。”蝕”の動きがなければ、このようないかがわしい計画に政府はどれほどの労力を注いだ事か‥‥ たぶん、現状の半分も達していないはずよ」

「結果から逆算したこじつけと言えないこともありませんが」

「まさか、本気でそう思っているわけではあるまい」とモリアーティー。
「この分析が正しいことは、奴らの元始風水盤関連の襲撃事件を見れば明かだろう。建造の遅延をもたらすような実害を与えたことは一度とてないわ」

「仰る通り、偶然では片づけられない結果だと思います。この辺り、演出面での洗練さに欠けるというのかいささか急いだ観があるのが残念と言えば残念ですね。あと半年、時間を費やし陽動や欺瞞を重ねられていれば、あなたでも気づけたかどうか」

「たしかにな。こういうのをこの文化圏で『画竜点瞳を欠く』と言うそうじゃ」
 モリアーティーはそうした作品を前にした批評家のように笑う。
「ところで、今のやりとりをもって儂のレポートを君が正しいと認めたと受け取って良いのかのう?」

「かまいません。僕は『驚かされた』とは言いましたが『間違っている』とは言ってないはずですから」
 ホームズはいかにも演技めいた身振りで肩をすくめる。
「目的は完成させておいて横取り、それをもって未曾有の災害を引き起こしこの国を半身不随とする。 ‥‥というあたりですか」

「”蝕”が望む通りに事態が進めばな。半島に手を出すどころか国の存続も怪しくなる」

「だとして、『横取り』ができますか? ”風水盤”の”力”は政府も知るところ。たかが犯罪集団にどうこうできるとは思いませんが」

「そうとも言えん。関係資料は後で見せるが、建造現場は極秘計画ということで十分な警備はなされていない。一時的であれば占拠することは可能、一度、自由に使えるのなら結果を出すには十分のはずよ」

「順調すぎる建造に手薄な警備。この”如何にも”な状況、黒幕が希望する形に進んでいるようですね」
 そう語ったところでホームズは表情にある種の凄みを加え、
「そうそう、ここで言う『黒幕』とは”蝕”への表向きの依頼者ではなく、その依頼者が動いた事を含め”風水盤”建造決定からここまでの全てを陰で動かしてきた存在のことですが」

「『陰で動かしてきた存在』とは? 儂のレポートにはそのようなことは書いてなかったはずじゃが」

「誰が読んでいると?! 行間を読めないバカならともかく、まともな読解力があればレポートが示唆する真の結論にも気づきますよ」
 ホームズは嘲笑めいた口振りで応える。
「すなわち、元始風水盤建造決定からここに至るまでの全てはそれを必要とする何者かが立てた計画に沿ったものであり、”蝕”を巡る諸々もその断面の一つに過ぎない事を。付け加えれば、その『何者』かを、あなたは人を越える智と”力”を持つ存在と想定していることも」

「たしかにそう取れる部分も書いた気はするな」わざとらしくとぼけるモリアーティー。
「それで、その部分についての評価はどうかね。さらに飛躍した内容ではあるのだが」

「残念ですがそちらも認めざるを得ないと思っています」
 ホームズは苦々しさを込めるがきっぱりと言い切る。
「そのような存在を想定しない限り、大陸・島国・半島の情勢をリアルタイムで把握、適時干渉するというマネや推定三桁に及ぶ関係者それぞれがあくまでも自己の判断で下したと決定と思いこむような工作の説明はできませんからね」

「そういうことじゃ。ただ、それを認めるとすれば、そうした人を越える存在が実際にいるかという問題が持ち上がってくるわけだが、それについての意見はどうかね?」

「別に問題ではないでしょう。やはり、あなたがレポートで匂わせているように、我々が神や魔と呼ぶ存在ならその条件をクリアできるはず。もっとも、神や魔といっても、僅かばかりの”力”で人の世を惑わす小物ではなく、もっと高位の存在なら、ということですが」

「知っているかね? 我々共通の”旧友”が洩らした話だが、神と悪魔との間で、デタントという協定があり、そうした高位の者が人の世に干渉することを禁じているそうだ。君の推測が正しければ、その協定は破られているということになるな」

「僕の『推測』ではなくあなたの『妄想』ですよ」
 素っ気なく結論の出所を訂正するホームズ。
「まあ、あなたがそうであるように、ルールがあれば出し抜く奴がいる、そういうことでしょう」

「反論の余地のない論点だな」

「もっとも、その協定自体はかなりの抑止力を持って存在しているようですが。さもなければ、この高位存在は今回のように間接的というか遠回しなやり方は取らなかったでしょうし、焦りを見せることもなかったと思います」

「その辺り、ありがたい話よ。さすがにそのような高位存在を直接相手にするなると勝ち目は薄いからな」

「おや? 今の台詞、その高位存在を敵とするつもりのように聞こえましたが」

「聞こえて当然だな、そう言ったのだから」モリアーティーは逡巡することなく肯定する。
「そ奴はこの儂−ジェームズ・モリアーティーを”駒”扱いしおった。それを笑って済ませられるほど人格者ではない」

「たしかに。ここでの一幕も政府に対オカルト戦用の精鋭すら”蝕”とはせいぜい互角。より強大な対抗手段が必要だと印象づけるためのプレゼンテーションのようなものですからね。あなたや蛍たちが生き残ろうと死のうとどちらでも良い話だ」

「それに人の世は人のもの。神や魔が己の都合で利用できると思っているのなら、それが大間違いであることを示すことは人が”人”としての果たすべきことじゃろう」

「どうやらその高位存在もやっかいな人間を怒らせたようですな。まっ、私にとって前段は『あなたがそれを言いますか?!』と言う話ですが、後段についてはまったく同意見です。まして、その茶番のせいで少なくない人の命が失われていることを思えば、その高位存在の意図を挫き鼻を明かすのも面白いとは思います」

「それでこそホームズ君だ」協力の表明にモリアーティーは満足げにうなずく。

 あなたに認められることは本意ではないと顔をしかめるホームズ。
「それで、我々、その高位存在に勝てますか? 神や魔の”力”は良く知りませんが、およそ人の手に負える代物ではないでしょう」

「先に触れたように、何もその高位存在を滅ぼそうというわけではない。そ奴の意図を阻止すれば我々の勝ち。儂と君が協力すればその程度は可能だろうさ」
 そうモリアーティーは確信に近い自信を持って断言した。




「今朝は普段着ですか。お仕着せはやめにしたのですか」
 ノックに扉を開けたホームズは残念そうにベスパのつま先から頭のてっぺんまでを見る。

「そうさ! 護衛が役目なら動きやすいこっちの方が良いだろ。それに”あたし”にはあんたの目を楽しませる義理も責任もないからね」
 フォンでないことがバレていることは判っているとベスパは切り返す。

「なるほど”あなた”には『ない』でしょうね」それも判っていると応じるとホームズ。
 客を迎える恭しさで部屋に招じ入れる

「おっと! ”教授”もいたのか?」とベスパ。
 二人に対面する椅子に対等な関係だと誇示するように堂々と腰を下ろす。

「君の話にご一緒しようと思ってね。もちろんかまわないだろう」

「いいさ。話が一度で済む」ベスパは関心なさげにうなづく。
「けっこうたくさん”思い出した”んだがどれから話そう?」

「そうですねぇ」ホームズは考える風情で額に手を当てる。
「まず、君をどう呼べばいい? とりあえず、我々は君に”ベスパ”という名前でフォンと区別を付けているのだが、ここから先、そういう仮の名で呼ぶのも失礼だろう」

‥‥ 偶然の一致のはずだがどこか運命的ものを感じるベスパ。
「なら、その『ベスパ』でいい。名前など区別ができれば十分だろう」

 名乗るのを避けた形が気に入らないホームズは、一瞬、白けた顔を見せる。
「では、ベスパ、最初にあなたの正体から聞かせてもらいたいですね? 別な人間に入り込んで体を動かしている時点で並みの人間ではないわけですが」

「まあ、文字通り『人間』じゃないよ」ベスパは芝居がかった感じでニヤリとする。
「あたしの正体は魔族さ。ただし、今は意識体の形だけどね」

『どうだい!』というベスパに対して特に驚いた素振りを見せないモリアーティーとホームズ。

 ベスパは当てが外れたという顔で二人を見据え、
「あまり驚いちゃいないようだが、嘘とでも?」

「いや、そんなことは思ってません! 嘘をつくならもう少し”もっともらしい”ことを言うはずですからね」
 ホームズは苦笑めいた笑みで応える。
「驚かなかったのは、私も”教授”もこれまで色々と超常な出来事や存在に出合ったことがあるというだけのことです」

 自身について言えば不老不死の錬金術師と被造物である人造人間、異界の神に人界にいる魔族の代表とも言える吸血鬼を見知っている。まして、今、神か魔かは知らないが高位存在の陰謀に直面している状況では、『魔族』程度で驚くことはない。そして、それはモリアーティーも似たようなもののはず。


「それよりも『意識体』という言葉の方が興味深いですな。意識体と言うのは魂のようなものだと思いますが、体の方は? それとも最初から体はないとか‥‥ そういう魔族もいるのでしょう」

「たしかに物質的な基盤を持ってない魔族はいるが、私の場合は体をなくしちまってね。敵の罠に引っ掛かっかったせいでドジな話さ」

「それで失った体の代わりにフォンに取り憑き体を使っているということですか?」

「『取り憑き』って部分には言いたいことは色々とあるんだが、四捨五入すればその理解でいい。元は体のあるタイプだから、こっちの方が何かと便利なんだよ。そのことであんたたちを騙す形になったのは、状況を掴んだ上で身の振り方を考える時間が欲しかったからさ。そのことが不愉快だってことなら謝罪させてもらうよ」

「なら‥‥」ホームズは気配を消したままドアのところに移動。
 不審気なベスパとニヤりとするモリアーティーの視線を受けつつドアを開く。

「「わぁーー!」」
 ”お約束”とばかりにドアに聞き耳を立てていた蛍と蝶々が倒れ込んでくる。





 人数が増え手狭になったため、場所をホームズの部屋から広間に移す。

 どちらかといえばくつろいだ雰囲気の年長−ホームズとモリアーティー−二人と対称的にぴりぴりとした感じの蛍と蝶々。
 ベスパは表情を消してそうした四人と向き合っている。

「さて‥‥」「待ってください!!」
 口火を切りかけたホームズを遮った蛍はベスパに指を突きつけ、
「ベスパ、最初にフォンを解放してちょうだい! 謝罪云々なんて殊勝な台詞を言うのなら、それが当然の事でしょう」

「ところがそういうわけにもいかなんだ、これが」

 考える間も取らない拒否に蛍の手が隠し武器が収められている所に動く。

「やめたまえ! 攻撃でダメージを受けるのはフォンの体だよ」

ホームズの指摘に蛍は唇を噛みゆっくりと手を戻す。

‘穏やかそうでいて激しい気性‥‥ 姉さんと同じか!’
 ベスパはその表情に懐かしさを感じる。もちろん、そう言うわけにはいかず、浮かびかけた微苦笑を引っ込める。
「別に喧嘩を売ろうってわけじゃない。解放したくてもできないって話さ。というのも、この体、持ち主の魂が入っていないんだ」

「魂が‥‥ 魂が入っていないってどういうこと?」

「言葉通りさ。あたしがこの体に入った時には当人の魂はなかったんだ」

「まさか、あなたが奪って‥‥」

「冗談はよしてくれ! そんな後ろ暗いコトをしてるんだったら、ここでのんびりと話をしているわけないだろう」

「たしかに筋は通っているな」とホームズ。
「では、フォンの魂が失われた時の状況について知っていることを教えてくれませんか? 蛍や蝶々から聞いたところをまとめれば、フォンが魂を失うのとあなたが憑依するのとはほとんど連続しているのようですから何かあるでしょう」

「いや残念だが直接は何も」ベスパは申し訳なさげに頭を横に振る。
「ただ気になることがあってフォンの記憶を浚ったんだが、そこにフィフスっていう名の女魔族に魂を抜かれた時の記憶があったよ」

「”蝕”には魔族もいるの!」絶句する蛍。

「一員って様子はないけどね。せいぜいが利害”だけ”で結びついた同盟者。どっちかというと”蝕”の連中は嫌っている感じだったな」
 ベスパはそこで問いたげなホームズに、
「考えているように、”蝕”にマインドコントロールをもって手を貸しているのはそいつのはずさ。フォンに自分には人を操る能力があるようなことを言っていたよ」

「‥‥ そんなところでしょうね」
 ここまでの情報から推理に取りかかったホームズは上の空で言葉を返す。

その様子からベスパは注意を蛍と蝶々に戻す。
「抜かれた魂がその後どうなったかは判らないが、”蝕”は抜いた後の体に魂モドキを入れて操るつもりだったらしい」

「ほう、それはそれは。”蝕”もなかなか面白いことを考えるものよ」

「『面白いこと』‥‥ 意味が分かりませんが」
 口を鋏んだモリアーティーの言葉に不愉快そうな蛍。そして蝶々。

 それを気にする風もなくモリアーティーは、
「もしフォンがこちらに寝返ったことが偽装で、その結果、蝶々なりが傷ついたとすればどうする?」

「もちろん決まっています。地の果てまでも追いつめ、命をもって償わせます!」

「自分は操られていたと抗弁しても?」

「当然‥‥」蛍は言わんとすることを察する。

「そういうことよ。不信に囚われ仲間が仲間を手に掛ける、なかなかの面白い見物ではないかね」
 冷たく微笑むモリアーティー。かってヨーロッパに君臨した犯罪結社の長の酷薄さを垣間見させる。
「もっとも、これはこれで悪い話でもない。今の話、フォンを助けるチャンスが残っていることも意味するのだからな」

「「本当です・ちゅ・か?」」口をそろえる蛍と蝶々。

「このやり方、最後にフォンの魂を体に戻してこそ意味がある。ということは、未だ彼女の魂は奴らの手で無事に残されているはずよ」
 モリアーティーはベスパに向き直ると、
「魂を無力化し捕らえておくことは簡単なんだろう?」

「一概には言えないけど、”蝕”ほどにオカルト使う連中なら難しくないと思う」

「けっこう」と満足そうなモリアーティー。
「フォンの体に別の魂が入ってしまうと言うアクシデントを受けて”蝕”がどう出るかは気がかりといえば気がかりだが、捕まえておくのが容易なら、現時点であわてて魂を処分することもあるまい。それが残されている以上、奪回できる可能性はある」

 奪い返すまでに越えるべきハードルを考えると数字としてゼロではないと言うだけの話だが、蛍と蝶々にとってはそれでも朗報と言える。

 少し表情を明るくした蛍はベスパに向き直り、
「話は解ったわ。でも魂がないからといって、人様の体を勝手に使って良いって話はないでしょ。とりあえずは体だけでも返して。”妹”の身を守る”姉”として他人が体を勝手に使うことを認めるわけにはいかないから」

「それもダメだね ‥‥ おっと、それもちゃんとした理由がある話だよ」
 ベスパは再び怒りかけた蛍をなだめるように応える。
「人の場合、魂と体は相互に強く依存する関係でね。魂がないこの体が今も生きているのは、あたしという魂が入っているからだ。ここであたしが出てしまうと‥‥  そうだねぇ 2・3時間で体は死んじまうんじゃないかな。まさか、それでも出て行けって話じゃないだろ」

 代案を持たない蛍は苦い顔で沈黙する。入れ替わる形で蝶々が、
「ベスパちゃんの言い分は判ったでちゅが、それが本当かどうかを確かめるのに心の”壁”外して欲しいでちゅ。今まで私達を騙してきたんでちゅからそれくらいの誠意を見せたって良いでちゅよね!」

「ああ、プロテクトだな」とベスパ。
 無意識レベルでプロテクトを展開していたことを思い出す。
 それにしても、幼い語り口に大人顔負けの状況判断、こちらもパピリオのオリジナルというところか。
「小さくたってさすが選ばれた精鋭のことはある。あたしの言うことを鵜呑みにしないところなんか頼もしい限りだ」

「余計なお世辞はいらないでちゅ!」ぴしゃりと返す蝶々。

「すまない。悪かった」ベスパは素直に謝罪しプロテクトを解除する。
 これで嘘がついていないことが保証され、話が進むのならその方が良い。

 もちろん、蝶々の超能力が感情探知タイプで、いくら”読まれ”ても具体的な情報−未来から来たことなど−を漏らさずに済む事や感情をコントロールすれば嘘を隠すこともできるという事は計算している。

軽く目を閉じる蝶々。プロテクトがないことを確認すると周囲にも判るよう大きくうなずいた。


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