椎名作品二次創作小説投稿広場


蛇と林檎

人工幽霊ブルース


投稿者名:まじょきち
投稿日時:07/ 5/17



私は、渋鯖人工幽霊壱号。しがない人工幽霊だ。
最近は暇なので電脳に介入し、フォーラムを覗く。
フォーラムとは、様々な人間達が電脳を通じて討論したり雑談したりする集会場だ。
私が常駐しているのは『超常現象を真面目に考えたりしないで笑いものにする』という所だ。


フォーラムには私のようなものはいない。
ただ、人間に追随し、いいように使われてる機械のような連中ばかりである。
まぁ実際に機械だからしょうがないのだが。
数年前より電脳に介入したのは私と同位体に出会えるかと思ったからなのだが、
どうやら今日も徒労に終わるようだ。


しかし、今日はフォーラムに新顔が来た。・・・・・珍しい、妖精だ。
ハンドルネームは『チビメド』か。まぁ電脳の世界は名前など何でもありだ。
人工無能などが相手の発言を判断して適当な返答をするのとは違うらしいが
妖精とはいえ、文字のみが跋扈し出入りするフォーラムでは何か出来るものではない。
せいぜい文字を書き換えて悪戯するくらいだろう。


・・・驚いた。フォーラムの中堅固定ハンドルが、ことごとく論破されてしまった。
とうとう、フォーラムに残っている守旧派は、最古参常連でリーダーである『みっちょん』と
対荒らし専門常連『西条隆盛』だけになった。


西条隆盛がチビメドに論破をかける。突入点はやはり口調からか。
遠回りな挑発を根気良く繰り返し、相手の論旨がぼやけるか激昂した時点で畳み掛ける。
西条隆盛の得意技だ。いままでのフォーラム荒らしは大体これで出入禁止になっている。
しかし、チビメドの口調が一転、非の打ち所の無い大人の口調になった。
逆にじわじわと論点の鬩ぎあいが続いた。


西条隆盛の最後はあっけなかった。チビメドの誘い水の話題から、
宗教の話を持ち出してしまった。フォーラムでは政治宗教に関する話題は
荒れる原因になるので禁止されている。アクセス権限が停止されてしまったようだ。


そして、最古参みっちょん。
彼は、いわゆる優等生だ。フォーラム全体の和を尊び、基本的に荒場には顔を出さない。
ただ、一旦荒場に潜ると、強烈な長文に様々な韻とダブルミーニングを被せてくる。
しかも、ダブルミーニングの副意は広辞苑でも出てこないような難解なものが多い。
そこで副意に気がつかず話題を展開していくと、頃合を見計らって発現させ一気に畳む。
みっちょんが相手をした荒らしは3人。どれも数多のフォーラムを崩壊させた凄腕だった。
全てが電脳から身を引くほどのダメージを与えられて撃退されていた。


しかし、チビメドは驚くほどの知識だった。いや、副意が全て検索されていると言えた。
長文に長文で返す。ダブルミーニングにダブルミーニングで返す。
フォーラムの許容量が心配なくらいの大規模論戦が展開していた。


だがみっちょんはチビメドの巧妙な敷設地雷に気がつかなかった。
チビメドの話題誘導は、やがてみっちょんを袋小路に追い込んでしまった。
みっちょんが警察関係者で子持ちの女性である事、西条隆盛と同じ職場である事、
いわゆる現実情報を自分から漏らしてしまっていたのだ。
それは長文の中の小さな単語の集合だった。しかし、反論が出来ぬほどの構成だった。


現実情報が漏れてしまった参加者はもはや装甲を剥がされた戦車のようなものである。
みっちょんは潔く負けを認める。このフォーラムの終焉の喇叭が鳴り響いたのだ。
この非凡な電脳妖精に私は大変興味を持った。

私は自分の容量の一部をサーバー化し、電脳談話室を設ける。
談話室の名前は、

『【天下無敵】チビメド集まれ【国士無双】(0)』



1:名無しに代わりましてチビメドがお送りいたします 1999/5/16(日)10:30:50.95
集まれってwwwwアチキしかおらんよwwwwwwwwww
おwwwじじいハケーン!・・・幽霊じゃないね、人工知能?^^


2:人工幽霊のガイドライン 1999/5/16(日)10:31:01.85
私は渋鯖人工幽霊壱号。あなたはチビメドさんだったかな。


3:名無しに代わりましてチビメドがお送りいたします 1999/5/16(日)10:31:22.32
あいあいぉ!終ってから何で声かけたwwwいまからだってやってやんよ(=w=)ノ


4:人工幽霊のガイドライン 1999/5/16(日)10:32:12.99
いや、私は別にフォーラム自体に興味はない。作られた魂ゆえ暇だったのだ。


5:名無しに代わりましてチビメドがお送りいたします 1999/5/16(日)10:33:52.32
おkpk!アチキもかーちゃんにこの前作られたのだが何か?www


6:人工幽霊のガイドライン 1999/5/16(日)10:36:18.88
き、君もかね・・・嗚呼、やっと同位体に出会えた。
作られて半世紀を越え・・・遂に・・・


7:名無しに代わりましてチビメドがお送りいたします 1999/5/16(日)10:38:18.87
お前、同位体って言いたいだけとちゃうんかと、小一時間問い詰めたいwww


8:人工幽霊のガイドライン 1999/5/16(日)10:40:33.72
ああ、気に障ったのなら謝る。少々浮かれすぎていたようだ。


9:名無しに代わりましてチビメドがお送りいたします 1999/5/16(日)10:42:53.12
うはwwwwおkwwww把握wwww 
浮かれ杉ってアフガン航空相撲か?wwww


10:人工幽霊のガイドライン 1999/5/16(日)10:44:29.63
・・・いよいよ興味深い。君はいつもは何処にいるのかね?
何処のネットを介入する?


11:名無しに代わりましてチビメドがお送りいたします 1999/5/16(日)10:48:31.26
電話代がもったいないのでほとんど出れないニダwwwww
貴様の回線は提供しるw


12:人工幽霊のガイドライン 1999/5/16(日)10:49:18.22
・・・私は暇な建物自体だ。・・・・
空き家だから君程度の妖精なら持ち主ごと住めるだろう。


13:名無しに代わりましてチビメドがお送りいたします 1999/5/16(日)10:50:19.59
ちょwwwおまwwwネ申wwww!
早速主人に報告するぜwww吐いた唾飲まんとけよwww






ああ、どうしよう。私の余命はもう幾許もないのに見栄を張ってしまった。
だが世界という樹の枯れかけた私という枝に、小鳥は止まったのだ。
果実は結ばずとも、其処はやがて巣になり、枯れ落ちれば巣材になる。
人知れず朽ちるより、枝が認めた鳥の羽根休めとなれる事は幸せだ。

数日後、人間達と一緒にチビメドがやってきた。
白銀の立方体のデザインが、非常に機能的かつ可憐だ。そうか、女性だったのか。
冷却口が艶やかな白銀のボディに楕円に並び、私の視線を釘付けにする。
いけないいけない、女性の冷却口を注視するなど、紳士のやることではない。
因みに人間達はお揃いの上着にズボンを着用している。まぁ、どうでもいいことだが。



14:名無しに代わりましてチビメドがお送りいたします 1999/5/16(日)12:22:38.11
ご主人連れてきたずぇwww
さっさと入れるのだwwww

15:人工幽霊のガイドライン 1999/5/16(日)12:23:01.31
・・・人間達は、試練を受けねばならぬようにプログラムされている。しかも過酷だ。



きつい言い方をしてしまっただろうか・・・白銀の小鳥は気まぐれで去ってしまうかもしれない。
何故このようなギアスを我が父はかけたのか。生みの父を私は初めて呪う。



「試練だってさ。・・・どーするヨコシマ。」

「ただでくれるって話も胡散臭いし!パスの方向で!」

「あら、直せばいい事務所になりそうじゃない?窓も高いから足の太い誰かさんも安心だし。」

「ほう?誰のことを言ってるんだい?ああ?」

「おーっほほほほ、別に誰かさんとしか言っておりませんことよ所長?それともお心当たりが?」

「ま、まー、とにかく入るなら入ろう!うんうん!」



ふむ、どうやら一番背の高い女性がリーダーのようだ。
若い女性がその助手、男性は2人の付き人といったところか。
一見すればただの普通の人間達のようだが・・・・こ、この圧力は・・・・・



16:人工幽霊のガイドライン 1999/5/16(日)12:31:15.22
一般人の霊力ではない。
いや、先頭の女性は神族の波動を出している。
何者かね?


17:名無しに代わりましてチビメドがお送りいたします 1999/5/16(日)12:33:29.11
メドーサは竜神だwww
アチキのかーちゃんでもあるwwww
テラ怖スwwww


16人工幽霊のガイドライン 1999/5/16(日)12:31:15.22
創造主が神か・・・そうであれば君の非凡さも確かに頷ける。



霊能者を勧誘し霊力を補う主人に据えようとした時もあった。
だが、最初のテストで脱落していく者ばかりだった。
神とはいえ・・・・この試練は・・・・・


「ええーい!チマチマチマチマまだるっこしい結界だねえ!ぬぅりゃ!」

「のわわー!建物が崩れるー!メドーサ、多分何か謎解きとかじゃないのかー!」

「別にいいじゃない。要はクリアすればいいんでしょ?メドーサの判断は正しいわ。」



SOSSOSカシンカシン、暴れまわる竜神に今!私の体は大ピンチです。
しかし、なんという霊力だ!一階で暴れてるだけなのに充足されている・・・・・



「おや?なんだか赤絨毯が出てきたよ?なんだいこりゃ?」

「あはは、たぶんもう充分ってことじゃないかなーと・・・」

「ふうん・・・まだ、暴れ足りないんだけどねえ。」


無茶を言う神だ。これ以上暴れられては枯れた枝とか言う前に根こそぎ折れてしまう。
天に唾するというのは比喩だと思っていたが、なるほど、神は常に畏怖すべきなのだな。
最後の試練だけは回避できない呪詛になっているので、癇癪を起こさせないようにせねば・・・


『最後の試練だ。あの机の上に必要な書類がある。・・・物を壊さないで、取りに行くのだ。』

「何で物を壊しちゃいけないのさ。気に入らないね。」

「いや、メドーサ、いちおー人工とはいえ命あるものは大切にしないと・・・」

「まぁ、ヨコシマがそう言うんなら・・・じゃ、美神、あんたが取り行きな。」

「はぁ?なんであたしなのよ!そんなの横島クンにやらせればいいじゃない。」

「馬鹿だね。この部屋には一歩歩くたびに5年歳を取る結界があるじゃないか。」


見破られた。さすが竜神だけの事はある。しかし、もっと恐ろしいのは、
そのトラップを見極めたうえで部屋で暴れる気だったということだ。
寿命の概念が神族には薄いとは聞いていたが、ここまでとは・・・・。


「いやよ!私みたいな美少女は歳を取らないの!竜神だってんならメドーサが行きなさいよ!」

「・・・ま、アタシが行けば終るんだけどねえ。アンタの実力が見たいのさ。」

「つまり、機転で切り抜けろってこと?」

「そういうことだね。まぁ?口先だけの霊能者だってことならムリだけどねえ?」

「おーし、やってやろうじゃないの!」


私の試練ですら彼女らには修行の一環程度にしか感じていないようだ。
紅い髪の女性は小さな声でなにやら考え事をしている。
以前ここまで来て逆立ちで行こうとした霊能者がいたのを思い出した。
まぁ逆立ちも一歩で換算したので、最後は老衰してしまったが。
さて、彼女の結論とはなんだろうか?


「横島クン、ロープは?」

「え?いやー、急にロープと言われても。」

「長くて丈夫な紐なら何でもいいわ。ちょっと使うのよ。」

「荷造り用のビニール紐ならありますけど・・・ビニールは肌に傷が出来るんでよくないですよ?」

「誰がこんな所で亀甲縛りするかー!頭ん中そんなんばっかりか横島ァ!!」

「え?いや、ビニール紐は直接握って擦ると手を切ると言おうと・・・・」


亀甲縛りとは確かロープを使って体を縛る性癖の人間達が使う技だったか。
緊縛は退廃的な雰囲気、いわゆるエログロナンセンスで戦前から人気となり、
上流階級の屋敷で編み出されたという話だ。
歳も若いのにずいぶん特殊な方面で造詣が深い女性だとわかった。
彼女の為に防音結界を強めに敷設しておく事にしよう。


「次にそんな事いったら殴るからね!そっちしっかり結んだ?!」

「うう。もう殴ってるくせに・・・・おっけーですよ。」


なるほど、神通棍に紐をつけて机の上の壁に打ちつけようということか。
ほぼ正解なんだが、さて、そう上手くいくものだろうか。


「ふぅ、大体こんなもんね。・・・じゃ、メドーサ、落ちたら呪うわよ。」

「あはは、そんだけ元気ならいいバアサンになれるさ。安心して逝ってきな。」

「ううー、逝きたくないー!」


しかし、言葉とは裏腹に、ロープを伝った移動は中々どうして、堂に入っている。
まぁ落ちたら生命の危機なのだからしょうがない、とも言えるが。
歩数は床に対する衝撃の回数だ。転げ落ちれば一気に100年という事だって有り得る。
彼女も重々承知だろう。その額の汗がそう語っている。


「大丈夫、あとたった、2メートルじゃない。落ち着いて、落ち着いて、落ち着くのよ令子。」

「ほらほら、まだ半分進んじゃいないよ。早く早く!」

「あーもう!焦らせないでよ!」


竜神は腕を組んで見物している。まぁ彼女にとっては百年でも瞬きと同じという事だろう。
横にいる少年が、非常に心配そうな面持ちで見ている。
・・・少々悪趣味だが、心理センサーで心配ぶりを覗いてみるとする。


『ああ、何故スカートではないんじゃー!こんなアングル、めったにないのに―!』


・・・・・全く心配してはいなかった。
つまりチビメドの仲間達は、互いに確固たる信頼関係を構築しているという事だ。
自分達の仲間の力量を正しく把握し行動する。それこそが集団の理想だ。


「・・・・ふぅ、あと少し、あと、1メートル・・・・・・・・・!!」

「美神さん、あともうすこ・・・・・ああっ!」


ただ、壁の強度は計算し切れなかったようだ。杭代わりに打ちつけた棍は抜けようとしていた。
横島と名乗る少年が、美神の元に走り出す。


「・・・大丈夫ッスか?」

「・・・・・・ぷっ、横島クン、あんた中年になると結構イカしてるわよ?」

「そういう美神さんだって、両手付いて乳がさらにでかくなっとりますよ?」

「ほんとだわ・・・ママの遺伝かしらねー。ふう、まーもうどうでもいいわ。」


部屋には、40代の男性が胸元に30代の女性を抱えて、そして互いに笑っている。
この試練に挑戦した様々な者達が悲嘆に暮れ後悔に涙しリタイアしたにも拘らず
この2人は、寿命が縮んだというのに何故楽しそうなのだろう。
やはり、只者ではないという事か。

そしてもう一つやはりというか、竜神はなんら気にする事も無く、権利書を掴み
主人の椅子に座った。
なぜなら、彼女は普通に飛べるのだ。余裕にも納得がいった。


『・・・・・せめて、座るかどうか聞いて欲しかったのですが。』

「ん?座っちゃ駄目だったらちゃんと言っておきなよ。判らないじゃないか。」

『いや、その権利書を取った時点で宣言するつもりだったので・・・』

「ああ、それは悪かったね。やり直すかい?」

『・・・いいえ、結構です。漫談の落ちを後から聞き返されるよりも其れは辛いです。』

「そうかい。」


椅子があれば座る。お願いをすれば聞く。非があれば謝る。
竜神が大変素直なのはわかった。
兎に角、主として認定を・・・・・・


「おっと待ちなよ。建物の中の人間、この建物はもらえないよ。」

『中の人などいません!私は建物自体の生命体、渋鯖人工幽霊壱号です。』

「じゃあ壱号、ここの地価の現状評価額は算出できるかい?」

『・・・ひがし西舞で西TOBU、ここはブクロのIWGP横。まぁざっくり50億程度でしょうか。』

「ひぇぇぇ、そんなにするんかー?!マジすか美神さん?」

「山の手内回りからはギリギリ外れてるし、一等地とはいえ、その辺が妥当かしら。」

「そんなもの譲られてもねえ。税金っての知ってるかい?」

『概念は判るのですが、見たことは無いですね。正直、私とチビメドさんとで隠蔽すれば・・・。』


私とチビメドさんとの電脳介入をコラボレーションすれば、恐らく殆どの障壁は無力。
収税も刑事罰でさえも電脳が無ければ発効出来ない昨今、大きな力に・・・・
はうぁ!なんですかこの建物に渦巻く暴力的な霊気は!!!!!!!


「謝れ!メドーサに謝るんだ一号!早くしないと俺達まで巻き添えを食ってしまう!」

「に、逃げるわよ、私は逃げるからね!」

「お、俺を踏み台にしたって3Mも飛べるわけ無いでしょ!落ち着いて美神さん!」

「離しなさいよ横島クン!ちょっ、ひゃんっ、はぁっ、ど、どこさわってんの、よっ!(ドカ)」


な、何をどう謝ればいいんだ?一体何がどう気に入らないというのだ?
ただ、この霊気が爆発すれば私の結界などじゃ防ぎきれないどころか
周囲の地形が一変してしまうだろう。



18:名無しに代わりましてチビメドがお送りいたします 1999/5/16(日)15:15:29.11
はろーwww
困ってるなジイ?ん?(=w=)


19:人工幽霊のガイドライン 1999/5/16(日)15:16:02.22
おお、チビメドさん。
彼女は何故あんなに怒っているのですか?


20:名無しに代わりましてチビメドがお送りいたします 1999/5/16(日)15:16:38.56
うーん、律儀だからのーw 
不公平が気に入らないんジャマイカ?


21:人工幽霊のガイドライン 1999/5/16(日)15:17:55.79
不公平?何故?
彼女に損は無いというのに?


22:名無しに代わりましてチビメドがお送りいたします 1999/5/16(日)15:18:33.94
アチキのかーちゃんは得をする不公平も嫌いなんだぉw
好きな言葉は折半だからのw


23:人工幽霊のガイドライン 1999/5/16(日)15:18:49.53
・・・なるほど、判りました。
恩に着ますよレディ^−^


24:名無しに代わりましてチビメドがお送りいたします 1999/5/16(日)15:51:18.37
お、顔文字できんじゃんwww
ガンガレwwwww




つまり不正を嫌うわけか。ただ、所有権を移行出来なければ、私の霊力はもう消えるだろう。
私は生命体で計算機じゃない。決められた条件分岐以外の応用をこなせる筈だ。
全ての情報を、過去から現代に集めた全てを、何か、何かあるはずだ・・・・・・





『ならば契約しよう。潔き竜神よ。』

「・・・ん?契約?・・・いいじゃないか、聞かせてもらおうかねえ。」

「うわ、契約って!一号、ヘタ打てば死ぬぞ!」


法務省データベースと裁判所の判例を動員した。天秤は必ず水平であるはず。
あとは目の前の神さえ納得させればいいのだが・・・・
ええい、私の自己保存の本能を信じよう。


『譲渡に関しては法令が決められており、譲渡には時価が用いられる。ここは50億円だ。』

「ああ、だがアンタの代金はどうするんだい?」

『建物に関しては鉄骨を使用していない為30年の償却期限。つまり、私自身は無料となる。』

「自分は無価値ねえ・・・まぁ続きを聞こうじゃないか。」

『だが取得費というのが出てくる。』

「取得費?」

『判りやすく言うと購入代金だ。100億の物件で100億払えば譲渡課税対象はゼロだ。』

「まあそうだねえ。それはただの買い物だからね。」

『其処で契約をする。25年での分割支払いとすることで私への課税も25分割される。』

「ふんふん。」

『更にその年度ごとの返済金額に際しては地権者である私が自由に決めて良いものとする。』

「つまり、途中でいきなり全部払えと言うのもアリってことだね。」

『そう、逆もまた然りだ。私は25年目まできっと返済を求めない気がする。』

「そこで一気に払い込めばいいってワケかい。なるほどね。」

『そうする事でこの館の主は正式に竜神殿で登録されながら、代金は24年間封印できる。』


正直、土地に関する法令は非常に多岐に渡り判例も矛盾するものすらある。
しかし、私のひらめきは数々の条件演算をフィードバックしたし欠陥は無いはずだ。


「残念だけど、やっぱりアタシじゃ主には成れないねえ。」

『何故だ!法律問題もクリア、私が譲渡を希望している、何が障害になるというのだ!』

「だってアタシ、戸籍無いもの。あははははっ」


う、迂闊!考えてみれば税金ですらここまで拘る一本気な竜神が、
戸籍の偽造などしているわけも無いか・・・予測できて当り前であった。


『では横島殿に所有権を譲渡するというのはどうだろう?』

「なるほど、それなら大丈夫だね。」

「ちょっと、なんで横島クンなのよ!私は?!」

『美神殿は破産宣告を受けている身の筈。うっかりした不動産取得は問題となるが?』

「うぐぅ!」


私だって正直横島殿より美神殿の方が良いに決まっている。
しかし、美神殿の情報を集めれば集めるほど、危うさしか出てこないのだ。
流石に法的に押収される危険性を冒してまでのものではない。


『・・・横島殿・・・それは玉座だ・・・・!・・・暫定だがあなたを主人と認める・・・!』

「暫定かよー。なんだかヤ○トの出世できない戦闘班長みたいでイヤだなー。」

「それは『頑張っても艦長代理』の古○進だよ!若い子には判んないよヨコシマ!」

「横島クン・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・多分、ヤ○ト3じゃ艦長になるんじゃない?」

「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」

「な、何よ!なにヒトを生暖かく見てるのよ!ちがうわよ!私ヤ○ト世代じゃないんだから!」





そんなこんなで(?)後日、チビメドさんたち一行は私に引っ越してきた。

さて、やるべきことは山積みだ。
変圧室からのメインブレーカーからチビメドさんの部屋に単独系統で電力供給して
ああ、そうそう、無停電電源装置を確か持っていたはずだ。これも付けて・・・
業務用の高速回線も12本まとめて私自らルーティングして、それからそれから・・・・・・・


「・・・・・人工幽霊一号、ちょっと聞いていい?」

『何でしょうか。手短にお願いいたします美神殿。』

「何か足りなくない?」

『はて?定湿空調、システムキッチン、大浴場、機能的な事務所・・・他に何が?』

「どあほー!人間様の寝床が三人で六畳の時と変わらないじゃないのー!」

『御安心を。美神殿の危惧はちゃんと解決してあります。』

「ん?まさか実は私の為の特別な部屋が・・・・・」

『緊縛好きの美神殿の為に防音結界は完璧です。存分にプレイに興じてくだされ。』

「相部屋で興じれるかー!」



まぁ確かに1Fがエントランスで2Fが事務所、3Fが居住区の構成なら6畳で3部屋くらい
割り当てる事は可能であろう。しかし、チビメドさんの為に各階に割り当てた電力制御室、
それに特別の低温空調室や無線遮断壁などの装備を考えると限界だ。




25:名無しに代わりましてチビメドがお送りいたします 1999/5/16(日)23:32:16.42
うはwww快適快適wwwすまんなジイwww(^w^)


26:人工幽霊のガイドライン 1999/5/16(日)23:32:46.38
いいえ、これしきの事。
回線契約は定額制ですのでお好きに介入してきてください。


27:名無しに代わりましてチビメドがお送りいたします 1999/5/16(日)23:33:18.35
こんだけ快適だと外に出る気にならんなwww
ヒッキーになりそうwww


28:人工幽霊のガイドライン 1999/5/16(日)23:35:12.48
まぁ、それなら不肖私めがお話し相手にでもなりましょう^−^


29:名無しに代わりましてチビメドがお送りいたします 1999/5/16(日)23:38.55
ジイの顔文字はいっつも笑顔ばっかりだなwww

だがそれがいい。




多分それは、人工幽霊の私でも嬉しいと感じる事は出来る証拠なのでしょう。
半世紀以上私の目前で繰り広げられたドラマは悲しいものばかりだった。
これからは、笑顔の顔文字くらいは入れられる人生が送れる様な予感がした。
しかし、唯一の不安要素として、我が主の霊力は些か不安だ。


『竜神殿、正直我が主の霊力は大丈夫なのでしょうか。』

「ん?ここの維持霊力のコトかい?心配ないよ。才能は有る方だからね。」

『竜神殿が仰るのなら信じたいところですが・・・まさしく命に関わりますので。』

「んー、まぁ見た目には全く無さそうに見えるからねえ・・・・そうだ。」


竜神殿が少々楽しそうな笑顔を浮かべた。
どうやら私を安心させる施策を思いついてくれたようだ。
美神殿を手招きし、なにやら小声で相談をしている。




「ぬおおおおおおお!い、生き地獄じゃあ!」

「すごいすごい、まだまだ上がりそうじゃないか。」


自転車を改造したメドーサ印特製ルームランナーとやらが事務所に置かれている。
霊力を使う特殊タイプらしい。実に器用だ。さすが竜神殿といったところだ。
その運転席の前には、モニターが据え付けられている。
パワーを出した分だけ映る仕組みらしい。


『ふんふふんふーん♪・・・横島クン、覗きに来ない(ザザ)・・・なんだかちょっと・・・・(ザザー)』

「ぬおおおおお、乳が尻が腰のくびれが!!ぬうりゃああああああああああああああ!」

「ほらほら、もっと出せるだろ?・・・・ふふ、これからがイイトコじゃないかねえ?」

「ふんぬあああああああああああ!くそー!蛇の生殺しじゃー!」

「失礼だね。蛇は生殺しなんかしないよっ。人聞きの悪いっ。」

『(ザザ)そういえば横島クンってば意外と・・・・・(ザー)』

「い、意外と?意外となんなんだー!詳細をををををを!」



・・・美神殿ノリノリだな。

しかし、我が主にこれだけの霊力が備わっていれば安心して電力変換できる。
やがて潰える命かと思ったが、むしろ過剰にならないように気をつけねばなるまい。
人工幽霊にも祈る神が有るかどうかは知らないが、
今宵は神に感謝しつつログオフするとしよう。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。





30:人工幽霊のガイドライン 1999/5/16(日)23:59:59.99
30げっとー!・・・・などと言ってみたり。
私としたことが・・・・・^−^;

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・おやすみなさいませ。


31:31:Over 30 Thread
このスレッドは30を超えました。
もう書けないので、新しいスレッドを立ててくださいです。。。






************次*回*予*告******************

「横島クンなんかに、ネギみそチャーを食べて欲しくないわ!」
「美神さんは、しおラーメンをしらないんスか?」
『主らは、ショウユ系をなぶり殺しにする気ですね。』
「あはははは!!おいしいねえ!!」

「次回蛇と林檎第6話『温泉よりも深く』」

「僕の名はアルバトロ・ナル・ヨコシマ・タダオ。池袋から来た。煮玉子は狙われている!」
「あ、ちなみにレイズナー風の次回予告風だけど、わかるわよね普通?」

『wwwwwちょwww藻前らwwwwいい加減に汁wwwww』

*************蛇*と*林*檎*****************


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