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〜GS・短編集〜

美神と横島の怒り 〜おキヌの苦しみ〜 最終話


投稿者名:道化師の黒銀
投稿日時:07/ 4/ 8

理性と言う名の線が切れた二人は目を怪しく光らせ、全ての思考力を身体能力に変えた。
ただし、おキヌを傷つけない程度の思考はある。


・・5分


横島は足にも栄光の手を展開して、脚力をアップさせる。
通常でもものすごい逃げ足を見せたりしている横島は足に栄光の手による「栄光の脚」で逃げ足に加え、更なる破壊力を手に入れた。

美神は手に持った神通棍から出ている霊波と雷の混じったムチを完全に稲妻のムチにする。
通常のムチ状態の神通棍が稲妻のムチになったことで、しなる力を利用しての打撃に雷の力が加わった。
これで、美神は稲妻の神通棍「雷神通棍」で更なる攻撃力を手に入れた。


・・4分55秒



横島は、宙に浮んでいる文珠に『(味)(出)』『(敵)(残)』『(場)(暗)(入)(不)(結)(界)』の10文字を入れて発動させる。

まず、『(味)(出)』でおキヌとマスターが店の外へ移動する。

「な!? い、いつの間に・・!?」

「ふわ! ア!」


男達は、いきなり腕の中から離れた場所へ移動したおキヌに驚く。
マスターは、いきなりの瞬間移動に小さい悲鳴を上げて驚いたが、おキヌが男達に上着を斬られたことを思い出し、おキヌの方に駆けつけて自分の上着を脱いでおキヌに着せる。

「おじょうサん(お嬢さん)! コれをきテ(コレを着て)!」
「あ、は、はい。 ありがとうございます。」



・・4分



その様子を見た男達は店の外へ移動した二人を捕まえようとして、美神と横島から離れたところから出ようとしたが・・・・・

「あ! は、早く、捕まえるんだ!!」
「ちくしょう!」

壁が無いはずの空間にぶつかる。

バシッ!

「ぶべっ!?」
「な、何だ!? 見えない壁があるぞ!??」

その見えない壁はかって壁があったのと同じ場所にあった・・・。



・・3分



霊能力男が2人の横に浮んでいる物に気付く。
「あ、あれは!」


そう、2人の横に『(敵)(残)』が発動していたのだった。
これにより、敵である男達はこの場所からおキヌとマスターがいる外に、店の内側から出ることはできなくなったのだった。


「あの球の仕業か!」


そして、最後の『(場)(暗)(入)(不)(結)(界)』が発動する・・・。


ブワッ!!


・・2分

『遊夜心』の敷地全体に暗黒の結界が張られ、外からは見ることができなくなる。

「「!!」」
「店が!?」
「ミエなクなた(見えなくなった)!?」

『(場)(暗)(入)(不)(結)(界)』の文珠により、「遊夜心」の敷地全体に黒い結界が張られ、その 
結界は外からは見ることができなくなり、中で起こる出来事が全く見えなくなり、「(入)(不)」の文字で、中から出ることが出来ずに、外からも入れなくなった。

つまり・・・店があった敷地に漆黒の結界が張られて外側からは見ることができなった上に、中から外へ、外から中へ移動することができなくなったのだ。 

正に、文字通りの密閉空間である!

これは、中から起こる惨事をおキヌに見せないためと邪魔されないためでもあり・・・・・


「な、なんだ!?」
「黒いドーム!?」
「出られないぞ!?」


男共を1人でも逃さないで・・・・・・

地獄を見せるために・・・・

死よりも怖い恐怖を味わせるために・・・・・・・・デ アル。


・・1分


目の光が人間じゃなくなった美神と横島が最後の警告を・・・・する。


「さあ、あなた達・・・・・。」
「さあ、お前達・・・・・・。」


美神は前世帰りを起こし、人間の霊気に魔族のメフィストとしての魔気が混ざり・・・・・アシュタロト並みの超上級魔族の力を発する。

横島は、前世帰りは起こしてはいないもの、前世の陰陽師としての力が覚醒し・・・・・栄光の手と栄光の脚に術印が浮かび上がる。

それぞれ、激しい光を出している。

力の波動によって髪と服がバタバタと煽られる。

『おキヌちゃんに手を出した覚悟はできているだろうな。』


・・50秒

「ああん!?」
「ふっ、ふざけんな!」
「かっっかか・・・、返り討ちにしてやるぜわ!!」
「こっこここここ・・、このヤロウど・・・どもっっっ!!」
「やややややぃぃぃ・・・、やっちゃっ・・・・まえっ・・!」

2人の様子に気押されて、ビビリ口調でも口先だけで強がるが、もやは腰は引けている。


・・・20秒



『ソウカ、ナラバ・・・・』

・・・・・5秒

・・・・4秒

・・・3秒

・・2秒

・1秒


『地獄の宴のハジマリだ。』


0秒

ゼロ・・ゼロゼロゼロ・・・・・・・・・「



さあ、地獄の宴の幕上げだ


死よりもの恐怖の開幕ダ。


『うわああ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜・・・・・・。』

・・・・・・・・・・・・


店の外で立ち尽くしているおキヌとマスターは店の中からモノスゴイ音と地響きがしてくるのを聞いていた。



ダダダダダダ!!!
ゴオオオオン!!!
バキバキバキバキ!!!!!
グオンッ!!!


「・・・・。」
「ま、マスターさん大丈夫ですか・・・?」

マスターは自分の店で何かが起こっているかは予想はついているが、店はどうなっているかに呆然としていた。
「・・・・。」
「あ、あの・・?」

そして、マスターはズボンのベルトをつける部分につけていたミニホワイトボートみたいな砂鉄が中に入っているタイプのを取り出すと何かを書き出した。

カキカキ・・・

【私の店は、どうなるんだろう・・?】

カキカキ・・・

【お客さん、あなたの様子とさっきの男との関連に気付けなかった
 私にも責任はあるけど・・・。】

「ま、マスターさん・・。」

カキカキ・・・

【あの人達、あいつらを殺してはいないといいけど・・・。】
「・・・・・。(汗)」
マスターの言葉文におキヌは沈黙して苦笑いをするしかなかった。


そこへ、警察とオカルトGメンの車がサイレンを鳴らしてやってきた。

車から次々と警察官とオカルトGメンの隊員が降りてくる。

そして、オカルトGメンの車から降りた美神隊長と西条はおキヌに気付くと話しかけた。

『おキヌちゃん!?』

「美神隊長さん! 西条さん!」

2人はおキヌの方に近付くと何が起こっているかを聞いた。

「いったい、コレはどういうことなの? それに、その姿は・・・。」

「あ、あの、これは・・・・」
その質問におキヌは全てを話した。

数ヶ月前に男達に脅されてお金を渡したこと、暴力を振るわれたことを・・・

「・・・というわけなんです。」
「そんなことがあったの・・。」
「はい、全ては私のせいです・・・。」

ぽん
「おキヌちゃん、安心していいわよ。 別に、あなたのせいだけじゃないんだからね。」

美神隊長はおキヌの方に手を乗せるとそう言った。

その時・・・・

<うわああああああ!!!!!!!!>

結界の中からモノスゴイ叫び声がしたかと思えば黒い結界の内側から一筋の衝撃が走ったかと思ったその時、結界が裂けて中からボロボロになった1人の男が出てくる。

「たっ・・たしゅけて!!」


男は美神隊長達に助けを求めたが・・・・・・

ビュッ!!


鋭い音と共に、光の錘つき縄が飛んでくる。

しゅるるっ!!

縄は男の足に巻きつくと、ピンと引っ張られる。

「うわっ!!」

バランスを崩して倒れた男はずるずると遊夜心の方へ引っ張り戻される。

男は地面に指を立てながら助けを求めるが・・・

「たっ助けてくれ!! ゆっ許してくれ!!」

急な出来事に体がついていけなかった。

縄の先に縄を持っているのは・・・・・・・人外に目を光らせた横島であった。

そして・・・・結界の中へ引きずりこむと、文珠で裂け目を閉じた。

その一連の出来事を美神隊長と西条達は呆然としていた。
『・・・・・。』


<さて、皆様はここで何か不信に思うようなことはございませんか?>



<・・・・。>



<おや、反応があったようですね。>

<反応があった人はその考え通りに・・・・・・・>



<そう、シロさんとタマモさんも結界の内側にいるのでございます。>

ガタガタ・・・・
『あわわ・・・・。』


<なぜ、お2人が結界の内側にいると申しますと・・・・・>

<横島さんが文珠『(味)(出)』を使った時は、おキヌさんとマスターの2人を男達の側から放すことを念じておりましたので、その時、男達から離れていたシロさんとタマモさんのお2人には文珠の効果が及ばすに・・・・店に突っ込んだ自動車の中に取り残されてしまったのでございます。>


悲鳴と叫び声と鮮血、稲妻の光、爪の影、ムチの形の影、立ち込める霊気、魔気、殺気を舞台に無理やり観賞する事になったシロとタマモは二匹とも獣形態のまま、尻尾を丸めてしっかりと抱き合って恐怖に震えていた。

ああ、なんたる悲劇であろうか!!

・・・・ガタガタ・・・
「タ・・・タマモ・・・・。」
「シ・・・シロ・・・・・。」

「あっ、悪魔以上の魔族が・・・・おっ・・・おるでござる・・・・。」
「そっ、そうね・・。 ひっ!!」
「!!」

シロとタマモの前に2人の男が投げ倒される。
「あ・・あわわ・・、ゅ、赦して・・・くだりゃ・・・・い・・・。」
「う・・・げぇ・・・、ゴ、ごめんなさ・・・い・・・・・・・・。」

男2人は投げ飛ばした本人に赦しを乞うが・・・・・・

「オホホホ。」
「ハッハハハ。」

理性を無くした2人には聞き入られなかった・・・・。


男2人は近付いてくる美神と横島に怯えて後ずさりをする。

そう・・・シロとタマモの方にである。


男2人は何か逃げ道は無いか、後ろ手で探る。

そして、シロとタマモの毛皮に触れた瞬間、条件反射で美神と横島の方に掴んで突き出す。

「「ええい!!!」」

「「!!」」


間近で美神と横島の顔を見ることになった二匹は思わず、顔を伏せて目を閉じるが・・・
伝わってくるプレッシャーは嫌でも感じる。

ガタガタ・・・
ビクビク・・・

怯えながら小声で相談する。

ヒソヒソ・・・

「ねえ、シロ・・・」
「何でござる・・・」

「この際だから、思い切って見てみない・・?」
「そうでござるか・・。 でも・・」

「拙者はやめておいた方がいいと思うでござあるが・・。」
「それも、そうね・・・!」
「!」

タマモをなだめたシロだったが、いきなり二匹とも首の後ろを掴まれて吊り上げられる。

そして、プレッシャーの主へ近距離・・・零距離となる。

『・・・!!』
(・・・さっきの言葉・・・撤回するでござるよ・・・。)
(・・・・シロ・・?)
(どうせ、意識を失うなら早い方がいいでござる・・。)
(そうね・・。)
(・・・それでは、321のでござる。)
(いいわ・・。)

同時に数え始める。

(・・・3)

(・・2)

(・1・・・0!!)

同時に目を開けて振り向いたシロとタマモだったが・・・・・

『!!』


<しかし、この時のお2人は重大なことを失念していたのでございます。>


シロとタマモが見たものは・・・・・・


地獄以上の光景で殺さず、生かさずでギリギリの線を彷徨っている男達・・・・


そして、悪鬼、修羅、魔王、魔神・・・・などの言葉に相応しい光を持ち、人間以上のプレッシャーを放っているシロとタマモを掴んでいた人間でありながら人間で無い・・・・・・・・・横島と美神であった。  


<そう、お2人を掴んだのは・・・・・横島さんと美神オーナーだったのです・・・。>


その光景を一瞬で隅から、すみずみまで見たシロとタマモは頭が真っ白になるのを感じ、頭の中で何かが、ぐわんぐわんと響くのを最後に声も無く、意識を飛ばした・・・・。


ふ・・・・っ・・・・


意識を失ったシロとタマモは力なく二人の手からぶら下がるだけであった・・・・。


そして・・・・・・文珠に(浮)の文字が入ると、2人の手から浮かび上がるシロとタマモであった。


シロとタマモを放した二人は男2人の方へ、ゆらり・・・と歩を進めた。


「「ひっ、ひいい・・・・・。」」

「「オマエら・・・、殺しはシナイよ・・・・・。」」
「タダ、地獄をミセルだけよ・・・・。」
「オレ ハ、ブラックホールを体験させルだけださ・・・。」


暗転




ギャああ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜・・・・・・・・・











――

その後、警察とオカルトGメンにニコニコと笑顔で小切手で100億もの大金を支払う美神と、壊した建物、道路などをニコニコと笑顔で大量の文珠で直す横島の姿が見られた。

その様子を気味悪く見ている美神隊長と警察、オカルトGメンの皆であった。

(警察とオカルトGメンで美神令子を知っている人物は集まって話していた・・・・)
ひそひそ・・・
「アノ美神令子が笑顔で支払っている・・?」
「天地異変の前触れか・・?」
「今までの騒ぎは・・?」
「というか・・・」

1人が視線をオカルトGメンの車へ乗らせている男たちの方へむける。

視線の先には・・・・・・
「あはは・・・。」 「ぶっぶっ・・。」 「地獄だアレは・・・アレはアレは・・」
「うひゃうひゃ・・・」 「黒黒黒あ・・・真っ黒だあああじぇへへへ・・・」
意味不明なことを口走って、目がうつろな男達の姿があった・・・・。

そして、おキヌと西条の腕の中の方へ流す。

おキヌと西条に抱えられているのは・・・・・

ビクビクと痙攣しているシロとタマモの姿であった。

「・・・・ウ・・ウ・・ゥゥゥ・・・・。 父上ぇ〜・・?」
「・・・・ア・・ア・・ァァァ・・・・。 か・・賀茂〜・・?」

人狼であるシロばかりか、九尾の妖狐の転生体であるタマモも意識不明で、うわ言を漏らしているのみだった・・・・・。

そんな二匹におキヌと西条が抱いて霊力を流し込んでいた。



その様子を見て至極的な真理を言った。
「・・・もう起こり、終わった後なんじゃないか・・・・。」



美神隊長と西条、おキヌの傍らでマスターは・・・・・・


「み・・・・・ミセか(店が)・・・・・。」
店があった場所は爆弾でも落とされたかのように、壊滅していた・・・・。

「ウ、ウリアけが(売り上げが)・・・・。」
「き、キョ・・、今日から・・・のジク(野宿)・・・・?」


その様子を何とも言いたがい表情で見ている隊長らであった。


そして、美神と横島がマスターの方へ近付く。

ニコニコ・・・

「マスターさん、ちょっといいかしら。」

「?」
カキ・・・カキ・・

【何か用ですか? ・・・・コレに書いてください。】

2人の方を見たマスターはボートを差し出した。
ボートを受け取った美神はニコニコと何かを書き込んだ。

「はい、マスターさん。」

【私、美神令子はマスターさん、あなたの全財産と店の再建を全責任を持って請け負います。 金額に関しては上昇ナシです。 そして、迷惑をかけたお詫びとして私の所有している財産の5%を譲り、更にこれから生涯かけて所得する利益の1%を毎月差し上げます。】

ボートを受け取ったマスターは書かれている内容に呆然とした。

そして、美神は美神隊長達を呼んだ。
「ママ、西条さん、おキヌちゃん、こっちに来て〜。」

『?』

呼ばれたとおりに3人の方へ近付いた。

「ママ。」
「何? 令子。」
「あのね。 今からママ達に証人になってもらいたくて。」

美神の言葉に口を揃えて疑問の声を上げる。
『え?』


まだ呆けているマスターの肩を横島が叩いて話しかけた。

ぽん
「マスターさん、それを隊長さん達に見せてください。」

ニコニコと笑顔で美神隊長達の方を指し示す横島の指示どおりに、マスターはボートを見せるのであった。

そして・・・・

『!!』

書かれている内容に度肝を抜かれたのであった。

「令子! 本気なの!?」
「うんV ママ、本気なのよV」
「・・・!!」

美神の肩を抱いて聞く美神隊長であったが、返ってくる返事に言葉を失った。

更に追い討ちをかける事が横島からしてくる・・・・・・

「そして、俺の文珠を同じく生涯かけて時価ですけど、基本的に毎月3個渡します。 陰陽の文珠が出た時はそれもつけます。」

『!!!』

それに、タマモを抱いて霊力を流したままの西条が片手で横島を揺さぶる。
「横島君! それ、本気なのかい!?」
「はい、ホントに本気ッすよ。」

2人の顔と目と言葉で本気で言っているということを見取った3人は心の底から激しく驚いた。
『!!!!!!!』

そして・・・・・


数時間後、美神と横島のお詫びの行動により、世界中の経済関連とGS関連の間に衝撃が走り抜けた。

「何!? アノ美神令子が・・・!?」
「ああっ!! 急なインフレが!??」
「税金はどうなるんだーー!!??」
「ぎゃあああ!!!! 悪夢だ!! これは、悪夢なんだ!!」
「この世の破滅だーーー〜〜〜!!!!!」

「何ィ!? 文珠が!!!!!??」
「はうっ・・。」
「文珠といったら、伝説の中のアイテムだぞ!!」
「というか、アノ美神令子が・・・・」
「?」
「利益の1%を店主に差し上げるそうだと・・・・。」
「んな!!??」
「世界の終焉・・・! 終わりだーー!!!」
「最後の審判が来たのかーーー!!!!????」


数日後、美神と横島のお詫びの行動により、世界中の経済関連とGS関連の間に走った
衝撃はまだ止まらない。

「大変です! 美神令子から連絡があって・・・」
「なんだ!?」
「所得税、相続税などの全ての税金を美神令子自身が支払うそうです!!」
「!!!!!」
「やっぱりこの世の破滅だーー!!」

GS関連に走った衝撃は少しやんできたが・・・・・
「おい! 文珠を買い付ける準備は!?」
「連絡が繋がりません!!!」
「あ! 霊的妨害がされています!!」
「何!?」
「くそー!!」

・・・・・この様な光景が世界各地で見られた。


数十日後、美神事務所にて・・・・・


「ま〜ったく、あれから数十日も経つのに、未だに騒ぎが収まらないわね。」
「本当っすね。 美神さん。」

新聞紙を見ていた美神が言った言葉にTVで同じようなことを言っていたのを見ていた横島が同意する。


その様子を見ていたおキヌ、シロ、タマモは何とも言えずにいた。
『・・・・・。』
(美神さん、横島さん・・・。)

(そりゃ、あの美神がお金に関して嫌な顔をするどころか、笑顔で支払って、なおかつ、マスターにお詫びとはいえ、惜しみも無く執着をみせずに自分の財産の一部をあげた上に報酬の1%を渡したんだもん・・・・。)
(そうでござるな・・・。 それを言えば、先生も文珠を時価とはいえ、毎月3個、渡すことにし、なおかつ陰陽とやらの文珠が出た時はそれも渡すというでござる・・・・。)

シロとタマモは、あの時の2人の姿がまだ忘れられないらしく、2人に聞こえないように人間には聞き取ることはオロカ、獣の声で小声で会話をしていた。


(・・・シロちゃん、タマモちゃん・・・、よほど怖かったのね・・・・。)


――――

この時の出来事から、マスターは安全面から顔は伏せ、名前は偽名を使ってはいたがあの騒ぎで隠し通せることはできずに店を再建してからというもの、毎日のように客が大量に来るようになったので、急遽にアルバイトを雇うことになり、店を建て増しすることになった。

そして・・・・
「こんにちは、マスターさん。」

美神事務所関連とGS関連と格闘技の人達が常連に加わるようになった。


「マスターさん、耳が聞こえないという障害に負けずに勉学、格闘技などをしている、その姿勢、尊敬しますわ!!」
「ド、トうモ(ど、どうも)。」

「アタシも。」
「弓さん、一文字さん・・。」


「あら、おキヌちゃん。」
「やあ。」
「隊長さんと西条さん、 今日もアフターケアにですか?」

「ええ。 」
「なにしろ、あんなことがあったからね。」


唐巣神父の協会にて・・・・
「・・それじゃ、もう戻るわね。」
「ああ、美神君も気をつけて。」
「先生も。」

「ところで、タマモ、何でいつも私の頭の上に乗っているの?」
「・・・!! それは・・・(言いにくそうにしている。)」
「まあ、いいわ。」
(・・・・・ホッ。)

あの出来事以来、美神のことを見る目がすっかり美化されたタマモは親愛の意味で美神の頭上によく乗るようになったのであった。

・・・・俗にいう恐怖心が他の感情に変わる自己防衛である行動である。



そして・・・・・シロは・・・・・・



「う゛ぎゃわーーーー!!!!!??????」

ビュービューーーーー



・・・・・と言う叫び声と何かが高速回転する音はしなかった・・・・・。





「う゛お、お、お、おおオーーーーーーッッッ!!!!!!!」

シロは、叫びながら人狼の脚力をフルに発して、全力を出した高速で海岸の横にある道路を爆走していた。


「ゴクゴク・・・・・ぶはーっ。」
「あいつ、いつもより全力で1人で走りたいからと言ってたけど、何があったんだ?」
「まあ、俺としては自転車に乗って付きあわされなくていいんだが。」


その様子を堤防塀の横に自転車を止めて立てかけて、堤防に腰掛けてスポーツ飲料水を飲んだ横島は、道路の向こうを爆走しているシロを見た。


「それにしても・・・あいつ、なんで両手、両足、背に50kgもの重りをつけて走ってるんだ??」


「うおおおーーーーっ!!!!」
(今日も、夢も見れないほどにするでござる!!!!!!!)


そう・・・・・寝た時に見る夢にあの出来事が出てきてこないようにするためであった・・・。


横島は美神と同じく、2人とも自分が暴れた事と結び付けて考えてはいなかった・・・。




男達の行方は・・・・・・・今、精神科に受診しているだけとしか言えない・・・・・。



人工幽霊壱号からの追伸

美神隊長と西条のアフターケアとは、土地の霊気的な異常が無いかをチェックすることです。
なにしろ、ものすごい霊気を急激に浴びたものだからでございます。

それでは、コレにておしまいです。


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