シロとタマモはまだ人生ゲームをしていた。
「あ〜! 不幸マスに止まってしまったでござる!」
「ふふん♪ あら、私はカードマスにとまったわ。」
2人は、まだ美神と横島の殺気と霊気に気付いてはいない。
・・・・・恐怖の時まで後4歩・・・・。
おキヌを見下ろしたまま、男たちの下卑た会話は続く。
[おっと、そういえばお前の下宿先には上玉の女が1人、ガキが2人いるんだったけ。]
[ついでに、男も1人いるけどな。]
[まあ、男の方は痛めつけてヤクを打てば大人しくなるとして、女3人はどうするよー?]
[そりゃあ、決まってるんだろ! 犯して風俗店かソープ、ピンクサロンなどで働かせるだろう! ギャハハハハ!!!]
[ついでに、金もいくつか貰っていくとするかぁ!!]
TVからする男たちの会話にますます怒りマークが増え、こめかみに青筋がさす。
ブチ!! ブッチ!! ブイッチ!!!!
2人の我慢の神経が次々とキレる音がしてくる。
それにともない、殺気と霊気が膨れ上がる。
幸い、最後の大事な線はキレてはいない。
今のところ、結界の力が勝っているが、軋みの音が少し大きくなった。
映像に思わず、美神は神通棍を手に取る。
横島は、手に霊力を集める。
2人とも、無意識のうちに行動をしている。
そして、その行為により結界に歪みが生じる。
ビリッ
この時、カウンターに座っていて店を出る客を送り出したマスターは店の中を見渡して客がいないのを見て、一息つこうとして伸びをした時に奥のカラオケがある部屋の方から不穏な感じがするのを感じた。
そして、かなり前に店に入ってきたガラの悪い男たちが奥の部屋に入った後しばらくしてこの店に入ってきた女の子の様子を思い出して不穏な気配を感じてマスターはカラオケ部屋に設置してある6つの監視カメラの映像を確認するが、何も映っていないのを不信に思い部屋の方に向かった。
そう、嫌な予感を感じて・・。
<そう、遊夜心のマスターは耳が聞こえない変わりに他の感覚が鋭いのでございま す。 予感もその1つです。>
別室で人生〜をしていたシロとタマモは結界から少し洩れ出た気に気付いた。
「? この気は・・・。」
「これって、また横島が美神にセクハラをしたじゃない?」
「止めるでござるか?」
「あの美神相手に?」
「う・・・。 と、とりあえず行ってみるだけ行ってみるでござる。」
「そうね。 ついでだし、私も行くわ。」
そのような会話をした2人はセーブをして、簡単に片付けると室長室の方へ向かった。
・・・・・恐怖の時まで後3歩・・・・・・。
男たちの会話を聞いたおキヌは逃げ出そうとしたが・・・・
ドアに手をかける前に男に髪を捉まれて包帯を巻いた男が座っているソファーの方へ投げられた。
[きゃあ!]
飛んできたおキヌの体を受け止める男たちの中には腕に包帯を巻いた男もいた。
[へへっ、どこへいくつもりだい。 おじょーちゃん♪]
[がははは、胸は小さいが楽しめそうだな!]
おキヌの目に恐怖の色が浮かぶ。
[あ・・・。
あなた・・・、その腕使えるんじゃないですか!!]
[おーっと、バレちゃまったでえ!]
[ぶわっはっはっ! ドジだな!!]
[最初からバレていても、することは1つだけだぜぇ〜。]
そのような事を言う男達におキヌは抗議をした。
[・・う!! ・・こんな事をして、店側にバレないはずがありません!
この部屋には、監視カメラが・・・!!]
しかし、おキヌの希望を砕くような事を包帯を巻いた男が言う。
[はっハハハハ!! あのカメラのことかぁ? ムダだぜぇ。]
[・・・?]
[あのカメラには、レンズに何も無いこの部屋の写真を切り取ってはめ込んで音声も切ってあるから店のやつは来ねぇよ!]
その言葉におキヌは目を見開く。
[・・・!!]
そんなおキヌの前髪を掴むと更なる追い討ちをかける。
[それに、この個室はカラオケ用の部屋だからぁ防音になっていて、音が洩れねぇよぉ!! それに、ここのマスターは耳が聞こえねぇしなあ!!!]
[つまり、誰も助けは来ないってことだあ!!!]
絶望な真実におキヌは声が出ない。
[・・・・!!!!]
その時、奥のカラオケ用の部屋から不穏な感じを感じたマスターがウソをついてドアを叩いた。
[オキャく様ぁ(お客様)。 ちゅウー文(注文)のデンピョウ(伝票)をトリニぃー(取りに)来ました。]
[!!]
その言葉に男たちはドアの方を向いた。
男達が応対する前に、ドアが開かれる。
部屋の中に入ったマスターに男達の腕の中から逃げたおキヌが飛び込んだ。
[シツレイ(失礼)しま・・!!??]
[助けてください!!]
一目で状況を把握したマスターは男達に向かって叫びながらおキヌを背後に庇った。
[オマエたち!!]
それに、近くにいた男達が攻撃するがそれらを返り討ちするマスター。
[眠りやがれ!!]
[庇うつもりか!?]
[・・・・フン!!]
[うぐっ!?]
[うげええ・・・。]
[な!? 一撃で沈めやがった!!]
<ここのマスターは、耳が聞こえないために自分の身を守るために格闘技をしているのでございます。 もちろん、知識の方もでございます。
しかし・・・・>
[おジョーさん(お嬢さん)!! 早く、こノバから(この場から)・・・。]
おキヌを逃がすために話しかけた間を見計らって離れていた男達のうち1人が取り出した布切れでマスターの口元を押さえた時、マスターは崩れ落ちた。
TVからの様子を見ていた美神と横島はマスターの行為に殺気と霊気を収めたが・・・・
「よかった・・・この様子だと、おキヌちゃんは無事ですむみたいっすね。」
「そうね。
この映像は、人工幽霊壱号に見ないようにして記録してあるようにと言ってあるから、十分な証拠になるわ。 後でたっぷりとあいつらを脅迫するわ。」
室長室のドアまであと少しの所までシロとタマモが来ていた。
「あ、気が収まったでござる。」
「となると、美神の折檻は終わったって事ね。」
[!??]
[もう逃げられぇぞ〜。 こいつはコレで眠らせたからな。]
男が使った布をおキヌの顔に近づける。
布からは、刺激臭がする。
[この匂い・・・まさか・・・!!]
[その通りだぜぇ。
クロロホルムと睡眠剤をブレンドした最新薬の麻酔薬だぜ!]
[・・・なんで、そんな物を持って・・・!!!]
[へへへ、ちょっとしたルートでなぁ〜。]
[おい、店のカギを閉めて終わりの看板を下げろよ。]
[おう!!]
[ついでに、ブラインドも閉めろ。]
マスターを薬物で眠らせたその汚いやり方に美神と横島の怒りが再び、ぶりかえった。
シロとタマモがドアの前に来て、ドアにシロが手をかけた瞬間・・・・
「入るでござる・・・・っ!!!????」
「入るわよ・・・・っ!!!??????」
ドアの向こうからいきなり美神と横島の殺気と霊気が膨れ上がったのを感じたシロとタマモは人外の反射神経で後に退いた。
その途端! 結界が2人の殺気と霊力に耐え切れず軋みを上げながら崩壊した!!
そして、部屋から霊力の爆発が起こる!!
ズドオオオオンンン!!!!!
それに、シロとタマモは2人とも防御の構えをとり、飛んでくる破片と吹き付けてくる霊圧から身を守る。
『うっ!!!????』
気の激流により巻き上げられたほこりが収まった時は部屋のドア、壁、部屋の中は半壊していた。
だが、仁王立ちしている2人の前にあるTVと2人の周りは無傷である。
美神は神通棍を伸ばし、ムチ状態に変化させ放電をさせている。
横島は両腕に栄光の手を纏い、その形状は変化し強力になっている。
「先生・・? 美神どの・・?」
「横島・・? 美神・・・・?」
ジロッ!!
美神と横島が2人の呼びかけに振り向く。
『ひいっ!!!』
その眼光の迫力に思わず2人は抱き合う。
美神の武器からはバチバチと稲妻が音を立てて光っている。
電気ではなく、稲妻。
横島の武器、栄光の手の凶悪な姿からは稲妻の光を反射している。
これに比べたら霊波刀は可愛いものだ。
2人は恐る恐る美神と横島に尋ねた。
『あ・・あの・・・、い、一体何が・・・あったの(でござるか)?』
しかし、それに答えずTVから流れる映像に2人は再び釘付けになった。
映像は、マスターがおキヌの元に行った事により1つの画像になっている。
[・・へへ、この店の金を後で頂くとするか。]
[そうだな。 おっ、こいつ女だぜ。]
ヒュー!(口笛) [・・へへ、楽しみが増えたな。]
おキヌは男たちの1人に腕を押さえられており、抵抗をしているが非力な力では腕を振りほどくことができない。
おキヌは抵抗しながらこのような事を思っていた。
【・・・私のせいで、マスターさんが・・!
意を決して、美神さんたちに事情を話せばよかった・・・!!
せめて・・カバンの中に入れたネクロンマサーの笛さえあれば・・!!
でも・・・今、手元にあったとしても・・吹く時間をこの人たちが与えてはくれないけど・・!!
それでも・・!!】
この心の声は、服に縫い付けてあった文珠の力により、TVに字幕となって流れる。
その卑劣で下卑た様子とおキヌの心の声に男達に対する美神と横島の殺気と霊気がますます膨れ上がった。
『ひいいいい!!!!』
その殺気と霊圧に当てられたタマモは変化を解いて元の獣形態に戻る。
そんなタマモをシロは両腕に抱きかかえる。
シロは首にかけた精霊石の力により、獣形態に戻らない。
こうして、冒頭の光景になるのだった。
・・・・・恐怖の時まで後2歩・・・・・。
TVを見ながら美神と横島は顔を合わさずに微笑みながら話している。
美神は名の通りに、美の女神の如きの美しき顔に笑みを浮かべているがその笑みは放っている殺気と霊力と同じ凶悪で冷酷なる冷たさをもっている。
「うふふふ・・・・。」
横島は、美神と同じく笑みを浮かべているが横島という名をよこしまと読みを書いて邪まなる、邪(じゃ)ともいう邪悪である凶悪な笑みであり、殺気と霊力も邪で凶悪なのを放っている。
「はっはは・・・・。」
そんな彼らの殺気と霊圧に当てられたシロとタマモは床に座り込んで引きつった声を上げていた。 もうすでに涙目になっている。
『ひっ・・ひっ・・ひっ・・・。』
「シ・・ロ、精霊石の力・・どれくらい持ちそう・・・?」
「うう・・今は・・・ギリギリのところでござる・・・。
これ以上・・・は耐え切れない・・・そうにで・・・・ござる。」
「げっ・・・原因は・・・あのTVの・・・映像・・・みた・・いね・・・。」
「そっ・・・・そうで・・・ごさっ・・・る・・・な・・・・。」
<そして、この時の私は絶えずお2人の殺気と霊力に当てられてシロさんとタマモさんよりも一足早く、現実逃避をしたのでございます。 はい。>