<ある日、美神事務室の一室にて美神たち全員でご飯をとった時でございます。>
「皆さん、ご飯ができましたよ。」
「ありがと〜。 おキヌちゃん。」
おキヌがご飯を作り、それに美神が礼を言う。
横島とシロが肉を取り合うのを横目に油揚げが入っている料理を食べるタマモ。
<そこまでは、いつもの光景なのでございましたが・・・・。>
「?」
おキヌが着ている服から除く青アザにタマモが気付いた。
「ねえ、おキヌちゃん、そのアザって何の?」
その言葉におキヌはやや少し焦ったような感じで言い訳をした。
「あ、あれっ。 こ、このアザのこと?
これは、転んだだけだよ。」
「ふう〜ん。」
その時は美神たちも気にしてはいなかったのだが、翌日の昼・・事態は急変する。
美神事務所で仕事の依頼は今は入ってはいなく、美神と横島の2人はそれぞれ自分のペースでゆったりと休んでいた時、外出していたシロとタマモが帰ってくる。
「ただいまでござる。」
「ただいま。 はい、美神これ、厄珍堂に注文していた物全部あるよ。」
2人は、美神に頼まれて厄珍堂まで行っていたようだ。
そして、2人はある事を美神と横島に言う。
「そういえば、店から戻る時におキヌどのを見たでござるよ。」
「なんか、男の人と一緒にいたようだよ。」
ぴくっ
それに反応する横島。
「それは・・道とかを聞かれただけじゃないのか?」
横島の問いに答えるシロ。
「う〜ん。 そんな感じではなかったそうでござるよ。
肩と腰とかに手を回して、結構なれなれしい感じでござったよ。」
ぴくっ
シロの言葉に反応する美神。
「それは・・ナンパってやつじゃないかしら?」
美神の問いに答えるタマモ。
「そういえばそうだったかもしれないわ。
最近、おキヌちゃんの体からしている匂いの1つと同じ匂いがしていたから。」
ぴくっ ぴくっ
その言葉に反応する美神と横島。
同じ 匂い??
美神と横島に疑問を残したままシロとタマモは二人揃ってTVを見始めた。
そんな彼女らをしりめに、美神と横島は顔を見合わせた。
「・・・横島君、今の話どう思う・・?」
「・・・あはは、別の人間かもしれませんね・・。
ほら、おキヌちゃんが幽霊の時に会ったおキヌちゃんと同じ顔の人がいたことだ し・・。」
「・・それも、そうね。 おほほほ。」
「そうっすね。 美神さん。 あははは。」
2人はしばし話した後、乾いた笑い声をあげた。
<その日の夜、夕食を事務所のリビングで皆で食べることになりました。>
「あれ? おキヌどの、顔を怪我したでござるか?」
リビングに出てきたおキヌの頬には、ガーゼが張られていた。
「あ、これ? これは、学校の実践でちょっとね・・。」
「なるほど、学校の実践もけっこう大変でござるな。」
シロと話しているおキヌの何かを隠している様子に美神と横島はこっそり目を合わせてアイコンタクトを取った。
(横島君、いいわね。)
(ういっす。 文珠の数も十分ッすよ。)
(しくじるんじゃないわ。)
(了解っす!)
(よし! では、深夜に決行するわよ!)
この間、わずか3秒であった。
その日の深夜、おキヌの部屋にこっそりと入る二つの人影があった。
<・・・そして、翌朝おキヌさんは皆の朝食を作った後、学校へお出かけとなりま した。>
美神と横島はおキヌが出かけるのを確認すると室長室に閉じこもった。
「? なんか、この頃先生方は変でござるな。」
「そうねぇ。 でも、気にすることはないでしょ。」
「それもそうでござるな。 さて、PS2の人生ゲームをするでござる!」
「いいわよ。 前の続きからね!」
<ちなみに、シロさんとタマモさんは最近PS2の人生ゲームに夢中になっていて おります。 何でも、架空の空間で別人の人生を歩むのが楽しいそうです。>
そんな2人を見たシロとタマモは気楽な会話をしていたが・・・数時間後に恐怖に
変わる事をまだ彼女らは知らない・・・・。
室長室に閉じこもった2人は何をしていたかといえば、なにやら紙に紋章を書きそれの上に台座のようなものを置き、さらにそれにコードを貼り、そのコードをTVにつなげていた。
「・・・これで、準備はできたわ。 文珠をこの上に置いてちょうだい。」
「分かりました。」
横島は言われたとおり、台座の上に文珠を置いた。
文字は視(しき)である。
文珠だけでは、制限時間があるのではと美神が一計を案じて術具と機械を使うことで消費を抑え、無制限に視えるようにした。
そして、TVのスイッチを美神が入れるのと同時に文珠が発動する。
TVに道を歩いているおキヌの姿が見える。
「感度は良好のようね。」
「そうっすね。 音声もハッキリと拾っていますし。」
<そう・・・深夜におキヌさんの部屋に忍び込んだ2つの人影は美神オーナーと
横島さんであったのです。>
2人がおキヌの部屋に忍び込んだ理由は、おキヌの制服に文珠を忍び込ませるためであった。
いくら、文珠がビー玉程度の大きさとはいえ、重さもあるので違和感に気付かれる恐れがあるのでまず、文殊(小)で文字を込め終わった文珠2つを小さくしそれを小さい袋に入れて美神がオキヌの制服に分からないように縫い付けた。
<カバンに忍び込ませるという手もあるのですが、それではもしカバンが離れた時 に様子が分からないということで制服になったようです。>
横島は、美神が縫いつけている間にもし、おキヌが起きた時の用心に文珠(眠)・(忘)をいつでも発動できるようにして見張っていた。
そして、美神の作業が終わって入ってきた時と同じように用心深く部屋を出る。
TVの映像を視ていた美神と横島は視ながら話し合っていた。
「学校では特に問題は無いようね。」
「そうっすね。 もし、あるとすれば弓さんと一文字さんが何とかするですし
ね。」
「式神使いの鬼道もね。」
「となると・・・」
「学校以外の関係ね。」
<ここで少し説明をしましょう。 なぜ、(視)だというのにおキヌさんの視点から でなく、都合のいいことにTVカメラのような映像になったのには訳があるので ございます。>
人工幽霊壱号はそう言うと説明を始めた。
<まず、さっき話した2つの文珠の事をお覚えでございましょうか?
あの2つの文珠に秘密があったのでございます。
(視)だけではおキヌさんの視点になってしまい、詳しいことは分かりません。
そこで、(遠)の文珠を入れることにより丁度よい視点になったのでございます。 それによって、受信する文珠(視)だけでもこのような映像になったのです。
これで、文珠は発動する者の意思と同じ効果を発することができるのです。>
授業の様子・異常無し
休み時間の様子・異常無し
(この時、トイレの時は横島は自らからその部屋を離れた。
美神も音声を無音にして画面から目を離した。)
昼ご飯は準備してあったパン、オニギリ、飲み物ですませた。
放課後・友人と下校して途中で別れた。
「予想通り、学校には問題はありませんでしたね。」
「そうね。 でも、おキヌちゃんの顔色が悪いわ。」
「となると・・。」
「ええ。 何かがあるわ。」
美神の言葉通り、顔色を曇らせて道路を進む。
[・・・・・。]
そして、ある店に入る。
「あ、この店に入りましたよ。」
「本当ね。 一体何の用かしら。」
<美神オーナーと横島さんは知りませんが、おキヌさんが入った店は・・・・・
『遊夜心』といい、耳が聞こえない障害者を持つ(難聴者)マスターが経営して いる喫茶店なのです。
マスターの応対と店に味があるとして、常連もおります。
そして、奥の方にはカラオケ用の個室がいくつかあるのです。>
[イラっしゃ〜イませ(いらっしゃいませ)。]
店の中に入ったおキヌに笑顔で話しかける人。
「あら、この人耳が聞こえないわ。」
「え?」
「まとまっている気と特有のある声で分かったわ。」
「それじゃ・・何があっても、この人は分からないんじゃ・・!」
「そうね。 横島君、この人の様子とおキヌちゃんの両方が視えるようにして。」
「はい。」
美神の言葉で台座にはめた文珠に霊力を注いで少し文珠に込めた意思を変える。
すると、TVの画像が2つに切り替わった。
1つは元のままで、新たに追加された画像はカウンターに座っているマスターになった。
店の中は入ってすぐにあるカウンターには耳が聞こえないマスターだけがいて、注文は伝票にチェック印と個数を書いてそれを書いた後はボタンを押すとマスターがいるカウンター、キッチンにランプが付いて、それを見たマスターが取りに行く仕組みになっている。
店の中に入ったおキヌはカウンターから離れた奥にある個室の席へ向かう。
おキヌはドアの前でノックをして声をかけて部屋の中に入る。
[・・・来ました。]
部屋の中には、数人の男がいた。
[おう、よう来たなあ。 おキヌ。]
真ん中に座っていた男がおキヌに話しかける。
[で、金を持ってきたか?]
映像の光景に驚く2人。
「!?」
「!?」
その言葉にカバンから封筒に入れたお金を取り出して男の方に差し出す。
[・・これです。]
それを別の男が受け取って数える。
[・・ひい、ふう、みう・・全部ありますや。]
[・・これで、怪我をした分の治療費と慰謝料を払い終わったんですから、もう許し てください!!]
映像を見ていた2人は、おキヌの言葉に驚く。
「・・なっ!?」
「・・なんですって!?」
[あ〜ん? まだまだ、だぜぇ〜。]
おキヌの言葉を聞いた男は包帯を巻いた右腕を上げると下劣な言葉を言い放った。
[この怪我は治るのにまだ4ヶ月かかるってよさ〜。]
[そんな・・!! この前は・・・1ヶ月だって言ったんじゃないですか!!]
[お〜お〜。 今の叫び声で怪我に響いたぜぇ。]
そう言って、痛そうに腕を押さえる。
[・・・そんな・・!!]
別の男たちがおキヌに近付いて話しかける。
[なあ、お前さん今、知り合いの家に下宿させてもらってるんだってな〜]
[聞くところによれば、そこにはチョーいい女が3人もいるんだってなあ。]
[そこに行ってもいいんならってなあ〜。]
[男一人だけってなら、ラクショーだぜぇ。 ハハハハ。]
男達の言葉におキヌは顔を蒼白にさせる。
[・・・!!]
そして、腕に包帯を巻いた男が話しかける。
[〜でだ。 4ヶ月の金は200万円だ。 1ヶ月に20万円だ。]
[・・そんな! そんな大金は・・・!!]
思わず抗議したおキヌの顔を一人の男が殴る。
[てめぇ! このアマ!! 払わねぇってのか!?]
もう一方の映像に映っているマスターは奥の部屋に気付いた様子は無く、普通の客を迎えている。
その映像を視た美神と横島は、こめかみに血管を浮かせ怒りのマークが浮かんだ。
「・・・あいつら・・・・・・・・!!」(← マスターは入ってはいない)
「・・・よくもおキヌちゃんに・・!!」(← 上と同じく)
顔を殴られたおキヌは床に倒れこんだ。
そして、おキヌの胸ぐらを別の男が掴んだ。
[払わねぇっていうんなら、ふざけんなよ!!]
[う・・]
その言葉におキヌが反論する。
[ふざけているのはそちらです!!]
[あん?]
[第一、腕が少しぶつかったくらいで腕が折れるなんて・・!!]
ダン!!
その言葉を聞いたおキヌを掴んでいた男はおキヌを床に叩きつけた。
それを視ていた美神と横島の何かが単体だけでなく、連続してキレる音がする。
ブチ!! ブチ!!
2人から殺気と霊気が漏れ始める。
別の部屋にいるシロとタマモゲームに夢中でまだ気付いた様子は無い。
・・・・恐怖の時まで後5歩・・・・。
<ちなみに、私はおキヌさんのプライバシーを守るために、室長室の記録を解除
し、室長室の結界を強化しております。>
床に叩きつけられたおキヌは呻き声を上げた。
[う・・・。]
そんなおキヌに叩きつけた張本人の男は更なる残酷な事を言う。
[どうしても、払えんつったら、フーゾク、つまり風俗で働いてもらおうかぃ。]
それに別の男が下卑た顔で言葉を投げつける。
[もろちん、収入の金はそのまま、そっくり俺たちが頂くけどなぁ!]
それに、別の男が便乗する。
[まあ、待てよ。 これだけの上玉なんだ。」
[それは、つまりアレかい?]
[そいつあ、おもしれぇなあ。]
おキヌは男たちの会話をおびえた表情で見る。
[・・・!!]
美神と横島の殺気と霊気がさっきよりも膨れ上がる。
ブワッ!!
部屋には、結界を強化してあるがまだ結界の方が強い。
ただ話の前提としておキヌちゃんて心霊治療が出来るのでこう言った脅しは意味が無いのではと思いました。
話が原作のどの時点かは不明ですがおキヌの保護者で有る美神を知らないチンピラと言うのにも違和感を感じました。
何しろヤクザのクライアントがいる美神です、そう言った噂は結構広まると思うので普通のチンピラなら怖がって近寄らないのではと思います。
そう言う感じなので話としては面白い気もしますがすんなり受け入れられませんでした。 (白川正)