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徒然なる儘に

ねがい


投稿者名:霧咲
投稿日時:07/ 3/28



 〜ねがい〜





まっくらやみのなか……

わたしはふらふらとただよっている……

なにもわからないけれど……

ひとつだけたしかなことがある……

なにもしらないわたしが…かれをおいつめてしまった……

かれのこころのなかはからっぽで…なにもない……

なにもないけど…わたしがいる……

きっと…かれがつくりだしたわたし……

そんなことをぼんやりとかんがえていると……

こえがきこえた……

もしかしたらこえじゃなくておとかもしれないけれども……

たしかにわたしはそれをこえだとかんじた……



…なぁ…ルシオラ……



その声を聴いた瞬間(とき)に私の意識がハッキリした……

そして…その声に込められた想いが私を締め付ける……

ただ…昔のままであろうと……

私が惚れた昔のままであろうと……

だけど…わたしはそんな事を望んだんじゃなくて……

ただ…あなたの…ヨコシマの生だけを願ってしまった……

きっと…それが私の罪なのだと思う……

ヨコシマの生を強く願うあまりにヨコシマの幸せを願わなかった……

いえ…ヨコシマの幸せは願った……

けれども…あの時ヨコシマの幸せの本当の形をしっかりと認識できていなかった……

だけど…今なら解る……

いえ…今だからこそ解ってしまった……

そして…想定してみる……

もしも私とヨコシマの関係が逆になっていたら……

結果は…全て死亡……

正確には…体は生きているけど心は死んでしまっている……

きっと…私たちはお互いが生きていないと私たちは幸せになれない……

そう…思い知らされてしまった……



そこまで想定して…愕然としてしまった……

これは傲慢なのかもしれない……

でも…私ならそうなった事……

それは…二度と幸せという物を手に入れることが出来ない……

何故なら…失うことを恐れてしまい先に進めなくなってしまう……

またあの時のように失ってしまったらどうしよう…と……

またあの時のように自分だけ助かってしまったらどうしよう…と…

私ならきっと…こんな事を思ってしまう……

そして…誰も近寄せないで生きてしまう……





そんな想定結果が出てしまった……

胸をかきむしりたい衝動に駆られながら…私は涙した……

そして悟ってしまった……

私が最初(はじめ)からいなければ……

そうすればヨコシマもこんな生ける屍となる事も無かったのに……



そんな時…ふと……

本当に前触れさえなくソレは聞こえてきた……

ソレは私が最も欲しくて……

最も聴いてはいけない禁忌……

だけど…抗う(あらがう)ことの出来ない悪魔の呼び声……

ソレは…ヨコシマの心の声……



…もう一度ルシオラをこの手に……



それを聴いてしまって……

それを感じてしまって……

私は…自己の完全消滅を願い……

過去…未来…そして現在……

全ての事象から私がいたという存在そのものの消滅を願い……

そして願いきれなかった……

彼の…ヨコシマの心の声を聴いてしまったから……

一人の人間を廃人寸前まで追いつめたくせに……

それでも尚…飽き足らないのかと……

そう…言われるかもしれない……

でも…もう一度逢って……

彼の本当の幸せを守りたいと思うのは行けないことなのでしょうか?

そう叫ばずにはいられない……

声にならない声で……





もし…私の願い事が叶うのでしたら…

私の願い事を叶えてくれる者がもし存在(い)るのなら……

ほんの少しだけでもいいですから魂(ちから)を分けて下さい……

そうすれば…私はヨコシマから離れて私となれるから……

ヨコシマと一緒の(おなじ)時間(とき)を歩むことが出来るから……

どうか…私の願いが聞き届けられますように……



暗闇の中で私はそう願い続ける……

例え叶わぬ夢物語でも……

信じていれば少しだけ楽になれるから……

信じていればもしかしたらこの願いが届くかもしれないから……

だから私は願い続けている……

だけど…今はなにもできない……

せめてヨコシマの心が壊れないように抱きしめていようと思う……

仄かな暖かさを感じてくれるといいな……






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