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横島、逝きま〜す!

華麗なる必殺技!?


投稿者名:担当V
投稿日時:07/ 2/21

『霊力と霊能力』

オカルト業界ではよく聞く言葉であるが、まだまだ一般には浸透しているとは言い難い。

今日は、霊力と霊能力について語るとしよう。

『霊力』とは、人間が持っている霊的エネルギーの総称である。

人間は誰しも霊力を持っている。

その量には大小があり修行等で知覚出来れば霊力を操ることが出来るようになる。

では、『霊能力』とは?

これは、霊力をコントロールする事で何らかの現象を起こす能力のことを言う。

広い意味で言えば、『お札』を使用することも霊能力に分別されるらしい。

GSの使用する『お札』。

これには多種の種類があり、これに一定の霊力を注ぎ込むことでその札に秘められた効果を引き出す事が出来る。

(なるほど。前回、陰念が俺をヒーリングしてくれたのも陰念がお札に霊力を注ぎ込んでいたからお札の効果が現れたってことか。)

単にお札と言っても、退魔・吸引・封印・破邪等多種多様な種類がある。

が、ここでは割愛しよう。

霊視等についても霊能力と言える。つまり霊力によって見えざる物を見る能力を発現するからだ。

この様に、一言に霊能力と言ってもその意味は多様であることが解ることだろう。

実際には、霊的格闘術で伝えられる狭義の意味合いでの霊能力と言った場合、戦闘用霊能力か、非戦闘用霊能力かぐらいの説明で充分なのが実情であろう。

さらに一般に伝わっていない秘術や、一子相伝の技等で霊力を使う能力は霊能力に分類される物がある。

(そういや。闘竜寺の後継者は一子相伝の特殊な霊能力を代々継承しているって聞いたけど・・・。)


     〜民明書房刊・『霊力と霊能力』から抜粋〜





第7話 華麗なる必殺技!?





☆★☆★


パタン


読んでいた師匠の本を閉じる。

なるほど。今までは線引きが曖昧だったけど、これでよく分かった。

頷きながら膝元に置いてあった渋茶を啜る。


ずず〜


爽やかな陽気の土曜の午後。

縁側に座ってお茶を飲みながら読書をする。

あ〜。平和やね〜。

縁側から見える境内では現在、雪之丞&オカマによる「陰念パワーアップ計画in霊波砲」が行われている。

先程から陰念が指向性の霊波を出そうとして悪戦苦闘している。

どうやら、指向性ではなく単なる垂れ流し状態になっている様だ。

「あ。」

陰念が雪之丞の蹴りで飛んでった。

(何故、霊波砲の修行で蹴り?)

オカマが雪之丞の耳に息を吹きかけながら怒っている。・・・おおっ!凄いジャンプだな。雪之丞。

・・・つまり、痺れを切らして蹴っちゃったてことか。

相変わらず落ち着きのないヤツやな〜。

さて、只今、陰念君が鋭意特訓中の『霊波砲』

これも霊能力に属するものだ。

霊波砲とは霊力を収束または単に放出することによってビーム砲の様に飛ばす能力のことである。

白竜寺流霊的格闘術では遠距離攻撃の最もポピュラーな手段として取り入れられている。

事実、勘九郎はかなりの出力の霊波砲を撃つことが出来るそうだし、雪之丞に至っては出力が劣る物の、連続で撃つことが出来ると聞いている。

で。

今日は陰念が霊波砲を使える様になるため特訓中だそうで。



☆★☆★



戦闘用の霊能力を手に入れると言うのは非常に難しいと言われている。

昔は(と言っても20年くらい前だそうだが。)一般にGSと言えば除霊の秘術たる霊能力を持った者を指す言葉だったそうだ。

霊能力を手に入れるために仙人と呼ばれる術者や、闘竜寺の様な一子相伝の術を持つ者に弟子入りして命懸けで修行して何らかの霊能力を覚えていたらしい。

・・・現在は高度な除霊具が発達したこともあり、個々の戦闘用の霊能力というものを持たずしても除霊が出来る様になったのだ。

で、話しを霊波砲に戻そう。

先程までの話しと矛盾する様に聞こえるが、霊波砲自体の習得は途轍もなく難しいと言うわけではない。

これは、あくまで自分の持っている霊力を放出するだけなので特に難しい制限が有るわけではないからだ。

とは言っても、ただ垂れ流すだけであればGSの誰でも出来るだろう。

霊波に指向性を持たせ、時には収束し、いかに除霊に使える技とするかは個人の努力による。

中にはどんなに修行しても、現場で使用するに値しない霊波砲しか出来ない者もいるという。

それは個々の霊力の質という物が何に向いているか?と言う事とも密接に関係している。と言われているが本当のところは解っちゃいないそうだ。



☆★☆★



さて、前回の除霊?から帰ってきた後、この修行を望んだ陰念だったが・・・。

最初は止められたらしい。

それは霊力の総量が余り多くない陰念が霊波を放出する修行を続けた場合、最悪命の危険があるからだ。

しかし、余りにも真剣な陰念の説得の前に・・・遂に霊波砲の修行をする事に相成った。

雪之丞曰く。「彼奴はまだまだ強くなる!この間の除霊で何か感じる物があったらしいからな!」とのこと。

確かに陰念はあの除霊の後、修行に一層の気合いが入った様だ。

(俺も、感じる物は沢山あったんやがな〜。)

俺の方は、まだ基礎訓練中。

師匠曰く。「お前も何某か感じる物は有ったと思うんじゃが。焦ってはいかん。今は、霊力を知覚出来るようになるのじゃ。全てはそれからじゃて。」

俺の心に微弱ながらも何某かの変化があったことを師匠は感じたんだろう。

こういったところは本当に凄いと思う。

そうそう。本日、師匠はGS協会の方に用事があると言って出掛けている。

なんでも、適当な除霊依頼が無いか探しに行っているそうだ。

・・・今度は、雪之丞を連れて行って下さいよ?

前回行けなかったんで、フラストレーションが溜まってるみたいですから。

なるべく早く解消してやらないと、「おい!横島。陰念が伸びやがった。詰まらね〜から組み手しようぜ!」

(ほら、こうなるんだから。)


ハア…


ため息を吐きながら境内に目を向けると、何故か黒こげで気絶している陰念。・・・と、それを涎を垂らさんばかりの表情で介抱しているオカマ。

「なっ!やろうぜ!な!な!?」

キラキラと目を輝かせて詰め寄ってくる雪之丞。

まあ、もうちょっとのらりくらりと回答を先延ばしにしておけばオカマが止めてくれるだろう。

「う〜ん。でもなぁ。」

「大丈夫だって!ちょっと。ちょっとだけだからさぁ!」

「あら?良いんじゃない?忠夫ちゃん。やってあげなさいよぉ。」


なあ!!!


「おお!話しが解るじゃね〜か!勘九郎。」

お、オカマ〜!あんた雪之丞のストッパーじゃ無かったのかよ!?

何でこっちを見ないで、陰念を担ごうとして・・・あ!

「オカマ!お前っ。さては・・・。俺に雪之丞を嗾けておいて、自分は陰念にナニする気じゃね〜だろ〜な!?」


びっくぅぅ!!


「ななな、なんのことかしらぁ?」

俺の発言にめちゃめちゃ動揺しているオカマ。

・・・おい。図星かよ!

「雪之丞!陰念を助けるぞっ!」

「ああ。」

言葉少なげに頷き戦闘態勢を取る雪之丞。おお!目が本気だっ!!

「あらぁ?2人とも私とやろうっての?」

オカマが縁側に陰念を寝かせ、俺達の方を振り返る。

「絶対にっ!おめ〜に陰念はやらせんっ!」

・・・多分、陰念のこの後の境遇を自分に重ね合わせたんだろう。雪之丞の身体から湧き上がる全開の霊気。

俺も師匠に教えられた通りに右半身に構える。

縁側に続く階段からオカマ・・・勘九郎が超然と歩み、降りてくる。

「いいわよぉ。偶には、ちょっと構って上げなきゃ〜ね〜。」

そう言って霊力を解放する勘九郎。

「なっ!」

「なんちゅう霊気だ!」

パッと見て雪之丞よりずっと多い。5メートル以上離れているって言うのに、ビリビリと肌を刺す様に霊力の圧力が掛かる!

雪之丞は・・・すっごく嬉しそうに笑っている?

ああ、バトルジャンキーモードに移行したのね。

「行くぜぇ!!」

雪之丞が仕掛ける!一気に間合いを詰めて右フック、いや。リバーブローか!


ガシイ!


勘九郎が左肘で拳を受け、そのまま肘打ちで右米神を狙う!

それを左に流れて避けようとした雪之丞が足を払われて側面に一回転!うそぉ!!

「はいっ!やぁぁ!!」

「なっ!・・・ぐはああ!」

180度回転して天地が逆になった雪之丞のボディを殴り突ける!


ずざぁぁ!


・・・俺の左側。戦闘開始時に居た場所に地面を削って倒れる雪之丞。

あ、あり得ね〜!!

まさに一瞬の出来事だった。雪之丞が仕掛けて10秒も経っていない。

俺は構えたまま動けない。

(レベルが違いすぎる!)

流石は師範代ってことか。・・・性格には非常に難があるが。

陰念は絶対に助けてやりたい!

それが俺の偽らざる本音だ。

・・・本当は、戦闘開始と同時に、

「後は任せたっ!雪之丞!!」

って陰念を拾って、戦略的撤退を仕掛ける予定だったのだが・・・。

チラリと雪之丞を見る・・・ダメだ、完全に気絶してやがる。

「あら?雪之丞はもうオネンネなの?」

「仕方無いわねぇ。」と呟きながら俺を見詰め舌なめずりをする勘九郎。

やばい。やばいやばい!

この間、雪之丞と戦った時よりやばい。

(どうするっ!どうやって逃げるっ!?)

山門は・・・ダメ。陰念の事が有ってから外での稽古時は山門を閉めているのだ。

境内・・・ただ広い場所では、どうにも出来ない。

寺内。は、勘九郎の後ろ。か。


つまり、絶対絶命!!?



☆★☆★



「さあ。時間よ。忠夫ちゃん。遂に、遂に。うふふ・・・。待ってたのよ?この時を。」

ま、まさかっ!この状況を作り出すために、ワザと!?

ワザと雪之丞を嗾けて、陰念を黒こげに?

俺達を陰念を使って挑発して?

(なんつぅ、駆け引きだよ!」

「あら?恋する乙女の恋の駆け引きの前には、男の駆け引きなんて全て無駄なのよ?」

俺の叫びにウットリと、陶然と笑いかける勘九郎。

(こ、こうなったら破れかぶれだっ!!」

「来なさい!忠夫っ!」

気持ちを落ち着けろっ!冷静に相手を観察しろっ!師匠の言葉を思い出せ!

『良いか!横島。自分よりずっと実力の高い相手と戦うことになった場合は、奇襲か奇策。若しくは罠に嵌める。これしか勝ち目は無い。』

『若しくは、最大の必殺技・・・寝返り。または逃走。このどちらかの奥義を使うのじゃ!・・・あ、諦めると言う選択肢もあるんじゃが。』

・・・後半のは思い出さなくても良かったな。

奇襲・奇策。この状況で!?どうやって?

「来ないの?怖いの?・・・初めてなのね?大丈夫よ。私が優しくしてあ・げ・る。」

勘九郎が一歩踏み出す。

(アレしかない!)

今だっ!

俺は右半身の構えのまま軸足の踏み込みだけで勘九郎に突っ込む!

「なっ!早い!?」

「蝶の様に舞いっ!!」

咄嗟に反撃に移ろうとする勘九郎の間合いギリギリで急制動。

右ストレートが俺の左側を抜けていくっ!ここで踏み出した右足を軸に180度回転!!

「ゴキブリの様に逃げるっ!!」

「えええぇぇ!!」

全・力・疾・走!・・・ふっ!これぞ師匠直伝の最大の奥義!

勘九郎が呆然とした瞬間、更に急制動&ターン!!うぐぅ!軸足に負荷が掛かりすぎる!

「で、蜂の様に刺〜す!!」

ターンの遠心力と共に渾身の右ストレート!・・・狙うは勘九郎の鳩尾!

(霊力の使えない俺じゃあ勝ち目がない!これを目眩ましに境内に逃げ込む!)


バシィィィ!


「くぅぅぅ!」

俺の渾身の一撃は勘九郎の左の掌で止められていた。すっげぇ痛そうに顔を顰めてらっしゃいます。

奇襲・奇策もダメかっ!?

(すまん。2人とも。俺は逃げるっ!)

「ゴキブリの様に、(ギュ!!)・・・げ。」

勘九郎はそのまま俺の右手を握りしめる。

「つ・か・ま・え・た(ハート)」

「うぐああ!!」

そのまま俺を抱き締めに掛かる!(胸板がぁ!胸板がぁ!!)

「忠夫ちゃん?貴方みたいな母性本能くすぐられる子は私の好みにドンピシャなのよねぇ。」

「息っ!掛かってっ!耳!いやぁぁぁ!!はあーん!!」

「い・た・だ・き・ま〜す!」

(も、もうダメや〜!!!)


ドカン!!!


衝撃っ!?締め付けが弛んだっ!?


がすっ!


「きゃあああ!」

足を蹴り上げ、勘九郎の股間を打つ!・・・ちっ!致命傷には程遠いか!そのまま腕を擦り抜け間合いを取る。

(何の衝撃だった!?)

現状を把握する。

股間を押さえて蹲る勘九郎。地面に倒れている雪之丞。

(陰念!?)

縁側に寝ていた筈の陰念が居ない?

「大丈夫かっ!横島!」

「い、陰念!」

勘九郎の後ろに隠れて見えなかったが、どうやら陰念が勘九郎を後ろから蹴り上げた様だ。

・・・陰念。君は俺の貞操の恩人だよ!!・・・感謝を!



☆★☆★



とは、言っても状況が変わった訳じゃない。

今、勘九郎は俺&陰念のダブルてぃん○キックを受けて脂汗を流しているが・・・。

俺のは入りが浅かった、直に回復するだろう。

その前に、どうにか逃げ出さなくてはならない。

「陰念!山門を開けて街の方に逃げるぞっ!」

声を掛けて山門の方にダッシュ!・・・閂が固くなってたからなぁ。早くせねば。

振り返ると、陰念が雪之丞を連れてこようとしていた。

「陰念!早くしろっ。こんなところで散りたいのか!?」

「で、でもよっ!雪之丞が・・・。」

「彼はもう手遅れだっ!骨の髄までブラザーソウルなんだっ!」

すまん。雪之丞。お前の犠牲は忘れない。

焦りからか、訳の分からない事を口走る俺。・・・ブラザーソウルってなんだ?

山門に辿り着く。くそっ!やっぱり固くなってる。

閂を力ずくで掛けてたのは雪之丞だったよな。・・・俺の力じゃ開けられない。

「陰念っ!手伝えっ!俺だけじゃ開けられねぇ。」

「解った!」

気絶した雪之丞を放置して来た(何気に酷い)陰念が閂に手を添える。

「行くぞ。・・・せっーのっ!」

スライドさせようとするがビクともしない。

何でだっ!くそぉ!

陰念も額に汗を流しながら必死にスライドさせようとしている。

「動け。動け。動け。動け動け動け動け動け動け動け!今、動かないと大変なことになっちゃうんだよ!お願いだっ!動いてよ〜〜!!」

(それは、違うキャラだろ〜!!!!)


「うふふ。うふふふふふふ。うふふふふふふふふふふ!」


ビクッ!ぅぅぅぅ!!


地獄の、いや。魔界の深淵から響いてくる様な不気味な笑い声が境内に響く。

「油断だったわ。危うく私のお(ピー)ちんが破裂するところだったじゃない。」

俺達の後方から尋常じゃない霊圧が襲いかかって来る!!

恐怖で棒立ちになる。だ、ダメだ。逃げないと。


ザック・ザック・ザック


(ち、近づいて来てる〜!!!)

「あ、ああああ。うあ、うあああ。」

「い、いいいい陰念?」

陰念の方からも恐怖の声が。

見ると、口から泡を吹きながら後方を見てガクガク震えてる。

吊られる様に陰念と同じ方向を見て。



夜叉が居た。



いや。

彼奴は、夜叉なんて生易しい者じゃない。悪魔だ。魔王だ。恐怖の具現だ!


「覚悟・完了?」


魔王が俺達に問い掛け、返事を待たずして飛び掛かって来る!

向かって来る先は・・・俺ぇぇぇぇ!

「た、た、助けてぇぇぇぇ!!陰念んんんん!!」

咄嗟に右横の陰念の背に隠れて陰念を魔王の方に押し出す!

「う。うわあああああ!!来るな!来るな!来ないでよ〜!!」

今、正に陰念が十数年大切に守り通して来た貞操が奪われるというその瞬間!

陰念の心の叫びと共に体中の傷痕から霊気の刃が迸る!

「なっ!きゃああ!」

「うわああああ!ああああ!」

勘九郎が飛び去る。その後を追う様に霊波の刃が触れた地面ごと裂きながら迫る!

これが。これが霊波砲!?

「た、忠夫ちゃん!陰念を止めてぇ!」

「お、俺に出来るわけ無いでしょうがっ!」

「うわああああ!あああああああ!来るなぁぁぁぁ!」

「殴るなり何なりで気絶させなさい!」

陰念は恐怖で暴走中の様だ。

幸いこいつの霊波砲?は正面にしか撃たれていないので後ろにいる俺に被害は来ない。

でも、殴るったって。

「ああああ!ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

「霊力を消費しすぎよっ!このままじゃ陰念が死んじゃうわっ!!」

な、なにい!そんな!?

霊気の刃を必死に避けながら俺に怒鳴り付ける勘九郎。

それは、不味い!

俺は足下に落ちていた石を持ち上げ陰念の背後に回り込む。

「ぁぁぁぁぁ。」

心なしか陰念の声も小さくなって来ている様な気がする。・・・やるしかない。

(・・・ち。許せよっ!陰念!)

俺は、石を振りかぶって陰念の後頭部に打ち下ろすっ!


がすっ!


・・・陰念が倒れ、それまで荒れ狂っていた霊気の刃が収まった。



☆★☆★



陰念は俺に背を預ける様に寄り掛かって気絶していた。

勘九郎は、境内の石畳の上に仰向けに倒れ荒い息をついて倒れながら俺に声を掛けてくる。

「はあ。はあ。忠夫ちゃん?陰念を、休ませて上げて。」

疲れたでしょうから。と続ける勘九郎に怒りが込み上げてきた!

「・・・元はと言えばお前の所為でこうなったんじゃぁ!!」

先程の恐怖も忘れて、有らん限りの声で勘九郎に怒鳴り付ける!

そうだ。

元々このオカマが暴走しなければ俺達はこんなに怖い思いをしなくても良かったんじゃ〜!


「ぬぁぁぁぁ!!愚かなり!横島!勘九郎の考えも見抜けぬとはっ!」

「えっ!?師匠っ!?」

何処からともなく師匠の声が響いてくる!

慌てて周りを見渡す。・・・今だ倒れている雪之丞が哀愁を誘うが今は見なかったことにする。

境内の何処にも師匠の姿はない。

勘九郎は・・・静かに膝を着いて跪いている。

どこだ?どこにいらっしゃるんですか?師匠?

「何処を見ておる。ワシはここじゃあ。ここにおる!」

声がした方、山門の上を見る。

「し、師匠〜!!」

山門の上に悠然と腕を組んで立ち此方を見ているのは、紛れもなく師匠だった。


「・・・お師匠様。陰念の修行。終わりましてございます。」

「うむ。よくやったの勘九郎。」

勘九郎がお師匠様に報告している。・・・へ?修行?

「ただ、犯そうとしてただけなんじゃ?」

「あら?心外ね。陰念はちゃんと霊波砲を使える様になったじゃない?」

「下地のちゃんと出来てない陰念に無理矢理霊波砲を教えるんだから、命の危険やら貞操の危機は付き物でしょう?・・・彼も望んだ修行だったんだしぃ。」

呆然と呟く俺に、勘九郎が言う。

師匠も山門から俺に向けて発言する。

「良いかっ!横島。勘九郎は陰念に霊波砲を教えるために此度の状況を創り上げたのじゃ!」

「がんばったんだから〜。」

え?

え〜と。つまり、あれですか?

俺は、いや。俺達は、ずっとオカマの掌で踊って居た。と。

「だから言ったじゃな〜い。恋する乙女の駆け引きは凄いのよって。」

「うむ!しかし、横島よっ!陰念を救おうと雪之丞と共に勘九郎に立ち向かおうとしたのは天晴れじゃ!」

(・・・って、最初からずっと見てたんですかっ!?」

「当たり前じゃ。協会の用事なんぞ直ぐに終わるからの。さっさと帰って来たのじゃが・・・。」

良い物を見させて貰ったの。そう呟く師匠の声を聞きながら、

「詐欺だー!!!」

陰念を抱き締めたまま叫ぶ俺の声が、澄み渡った空に吸い込まれていったのだった。


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