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例えばそれはこんな日常

戦乙女と母様と!


投稿者名:ちゅらうみ
投稿日時:07/ 2/20

皆さんの周りには関わると必ず何かが起こる人はいますか?

何故かその人と関わるときは厄介ごとが起こる・・・

美神除霊事務所にとって彼女はまさにそんな存在である。

ま、そりゃそうです。だって魔族で軍人さんですから。

「ヨコシマーーーーーーーーーッ!!!!」

ガシャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!

あ、人工幽霊一号が泣いてる。
みなさんお願いですから玄関からお入りください・・・しくしくしく。

「ヨコシマ!戦友のよしみだ!恋人になれ!!」

「・・・なんで・・・毎回・・・こんな・・・め・・・に・・・・」

横島の言葉にに人工幽霊一号は激しくうなずいた。・・・くびないけど。

ガラスの破片が突き刺さった横島は哀れ血を撒き散らして倒れた。






「は?」

「いや、だから、・・・横島に恋人のふりをして欲しいと言ってるんだ」

ワルキューレはどうにか落ち着きを取り戻して事情を話し始めた。

「ごめんなさい、疲れてるのかしら。変な幻聴が・・・」

「だ、だから!何度も言わせるな!!」

「大丈夫?ワルキューレ、熱でもあるんじゃないの?」

「はぐらかすな美神!私は真面目な話をしているんだ!!」

ガチャン!

思わず立ち上がる彼女の前にティーカップが乱暴に差し出された。
中身の紅茶がこぼれそうなほど揺れている。

「それで、真面目なお話でどうして横島さんに恋人のふりなんて頼むんですか?」

「ひ、氷室。おちつけ・・・」

「私はいたって冷静ですけど?」

しかし、その目は笑っているように見えない。
何かが彼女の背後から音を立てて滲み出している。

とにかく、事情を一から説明しなければ話が進まない。
ワルキューレはおずおずと事の始まりを話し始めた。

「そ、その。は、母上が・・・母上が妙神山に降りてくるんだ!」




そう、ことの起こりは数時間前の妙神山。

日課の自己鍛錬を終えたワルキューレは妙神山の数少ない娯楽である露天風呂で汗を流して上がって来たばかりだった。
妙神山に来てからというものすっかり着慣れてしまった浴衣姿に着替えて機嫌よく廊下を歩いていた、まさにそのとき・・・


ジリリン!ジリリン!

まるで自分が通りかかるのを狙いすましたかのように電話が鳴った。

「はい、もしもし?こちら妙神山ですが」

ここに来たばかりの頃は自分が取ることを戸惑っていた電話も最近は全く抵抗なく出られる。

「ハァイ!ワルキューレちゃん元気ぃ!?」

瞬間、鍛えられた自分の身体は固まった。
常に鍛錬を怠らずいかなる状況に際しても自分の意思に忠実だった身体が全く言うことを聞かない。
いや、自分の意思さえも、もはや自分のものではないかのようだった。

受話器の向こうからひしひしと伝わってくる強大な波動。
そして、自分のよく知る声。

・・・魔界正規軍少将でもあるワルキューレの母であった。



「・・・あの、魔界の偉い方が妙神山に降りてきて大丈夫なんですか?」

「あ、ああ。多分」

おキヌが不安げに尋ねるとワルキューレは自信無さ気に答えた。

なにせあの母の性格だ、デタントなんかそしらぬ顔で来ると言い出してもおかしくない。
それも許可を取るなんて面倒くさいの一言で・・・

「で?なんで魔界のお偉いさんがわざわざ妙神山まで出張ってくるのよ?」

「う、うむ。それはだな・・・」

ワルキューレは思い出すのも心苦しいといわんばかりに話の続きを語りだした。




「というわけでー、ワルキューレちゃんお見合いしてみない?」

「何がというわけで、ですか!?理由を言ってください理由を!!」

「えー、だってー、私もそろそろ孫の顔が見たいしー」

「そんな、いまさら何を言っておられるんですか!」

今までそんなそぶりなんて見せたことも無いくせに!!

「・・・・・・ほんとはわかってるでしょ?」

「うっ・・・」

突然低くなった母の声に思わずうめいてしまう。

「ワルキューレちゃんと同期の娘はもうみーんな結婚してるのよ?」

「・・・・・・」

わかれちゃってる娘もいるけど、みんな一度は経験済みなのよ?
私も自分の娘ががいつまでも「い×○れ」なんて言われるのは忍びないしー
お隣さんと娘や孫の話がタブーになっちゃうなんて悲しいわー


うんたらかんたら・・・


えんえんと愚痴を聞かされながらもどうにか抵抗を続けたところ。

「それともなあに?もう気に入った子でもいるのかしら?」

え、いや、それは・・・

あとはもうなし崩し的に

相手は誰か

どんな性格か

どれくらい付き合っているのか


うんぬんかんぬん・・・


最後には・・・

その子に会わせなさい

いや、会いに行く

もう決めた!


という話になって


「近いうちに妙神山に行くから相手の子を連れて来なさい!」


ということになってしまった。

ちなみにセリフの一部にフィルタがかかっているのは・・・・・・
・・・さすがにその言葉は彼女自身にとってもショッキングなものだったようだ。



「・・・帰れ」

「は?」

「帰れっつってんのよ!」

「ま、待ってくれ!美神!!」

「冗談じゃないわよ!そんなバカらしい話で上位魔族と関わってらんないわ!!」

「そ、そこを何とか頼む!!礼ならいくらでも・・・」

「嫌よ!!」

ワルキューレは今にも泣き出しそうな顔で美神に懇願する。
こんな光景は普段なら絶対に見ることはできないだろう。
誇り高い彼女が、恥も外聞もあったものではない・・・

対する美神も珍しく頑固だった。
もしかしたらそれは相手が上位魔族だからというだけではないのかもしれない・・・

二人の様子を見れば今回の一件がいろんな意味でただならぬものであることは明白だった。


「頼むっ!何とか誤魔化さないと何処の誰とも知れぬ男と結婚させられてしまう!!」

「美神さん!他ならぬワルキューレの頼みです!協力しましょう!!」

「ほう、で?本心は?」

「そりゃもー!こんなええ乳何処の馬の骨とも知れない野郎にくれてやるなんてとんでもないはじめてあったときからこのちちにめをつけてたのはおれなんじゃつーかあわよくばおかあさまむすめさんをぼくにくださいなんつってそのばでこんやくせんげんしてそくじつきょしきでしょやにとつにゅうしてくんずほぐれつの・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・・・・・・・聞かなかったってことには・・・」

「「「「出来るかーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」」」」

合掌。

「で、でもでも。どうして相手が先生なんでござるか?」

「そ、そうですよ。なにも横島さんに頼まなくても他にも男の人は・・・」

「そうよねー、横島なんかを相手に選ばなくても・・・」

「そ、それが・・・。」

聞かれた相手の特徴に思わずヨコシマを挙げてしまった。

そっぽを向いた端正な顔は耳が赤くなっている・・・

再び合掌。ちーん・・・

「な・・・なぜ・・・・・・」




・・・・・・
・・・・・・




「わかってるわね?あくまでこれは”仕事”で”ふり”なんだからね!・・・変な気を起こしたら」

「だ、大丈夫っすよ!」

「本当ですか?」

「ま、ヨコシマでちゅからね〜。信用ないでちゅ」

「しょ、小竜姫さまにパピリオまで・・・」

「ヨコシマさん。くれぐれも失礼のないようにお願いしますね」

「お前もか、ジーク・・・・・・」

結局、魔族を相手に怒らせるわけにもいかない。
ということになり、美神は依頼金を絞れるだけ絞って渋々引き受けた。

ちなみに今回は相手が相手なだけにおキヌら三人は留守番を言いつけられている。
ついでに言うと、ハヌマンはデタント派とは言え魔界正規軍の幹部との接触はさすがにマズい・・・

・・・ということではなくて、例の異界空間でP○3の格ゲーにはまっていた。もう丸々三日ほどになるらしい。
・・・・・・加速時間で言うと・・・言うまでもなくやりすぎである。


〜小竜姫からのお・ね・が・い〜
 良い子の皆さんはてれびじょんやでぃすぷれいと長時間向き合うときは一時間ごとに休憩を入れてくださいね?
 神様との約束ですよ?破ったら仏罰を下しますからね?あ、もちろん老師にもあとでたっぷりお仕置きしておきます!

 ・・・これで良かったのよね?
 ばっちりでちゅ!
〜小竜姫からのお・ね・が・い・終わり〜


「よし、では行くぞ」

「お、おう」

緊張の一瞬。襖が開かれるとそこには・・・

透き通るかのように白い肌、

宝石のように輝くプラチナブロンド、

そしてまさしく黄金率を具現化したといえるスタイル。

黒のドレスにきわどいスリットからのぞく脚線美が眩しい。

絶世の美女がそこにいた。

「あらあら。ずいぶん可愛い子ね?この子がワルキューレちゃんの?」

「は、はい。母上」

「娘さんを僕にくださいお義母さまーーーーーーーー!!いえ!むしろもうお義母さまとーーーーーーーーーーーー!!」

「言ったそばから何をやらかしとるか貴様ーーーーーーーー!!!」

すぱーーーーーーーーーん!!!!

「あらあら、そちらのお嬢さんはどちら様かしら?」

「はじめまして。美神令子と申します。うちの従業員が失礼を致しました」

「・・・ミカミ・・・レイコ?」

美神の名前を聞いた彼女は白魚のような指先を唇にあてて思案げな顔をすると、
次の瞬間ぱっと顔を輝かせた。

「あら、あらあらあら。まーまーまー。じゃ、あなたが例のヨコシマくんなのね?」

「は、はあ、まあ」

「あの時はごめんなさいねー。私たちも頑張ったんだけどアシュタロスのやつってば、
 バカみたいに強力で複雑なジャミングをかけるもんだから」

ほんとにしょうがないといった顔で愚痴をこぼす。

「い、いえ。お気持ちだけ・・・」

「あらあら、さっきの勢いはどうしたのかしら、そんなんじゃ将来ワルキューレちゃんのお尻に敷かれちゃうわよ?」

「は、母上!!」

「なによぅ。恥ずかしがらなくったっていいじゃない」


そんあこんなで振り回されつつも、どうにか恋人らしく返すことに成功する二人。
そんな二人を外野の四人は心中それぞれに黙って見守っていた。

(まったく!なんだってこんなメンドーなことに・・・たくっ!なに鼻の下延ばしてんのよあのバカ!!)
(ヨコシマさんのバカバカバカバカバカバカバカッ!)
(わくわく、これからどうなるんでちゅかね〜!)
(姉上、私はどうしたら・・・)

そして四人が見守る中、ついに話が核心に迫ってきた。

「それで?二人の仲は何処まで進んでるのかしら?」

「え、えーと・・・」
「そ、それは・・・」

「あらん、そんなに恥ずかしがらないで。未来のお義母さんに話してごらんなさいな!」

「・・・」
「・・・」

「なに?まさかまだ何の進展もなし?」

「い、いやー!な、何をおっしゃられるんですかお義母さま!!そ、そりゃもー行き着くとこまで行っちゃてるに決まってんじゃないっすか!!」

「ば、ばかもん!」

バキィッ!!

演技とはいえ、いや、演技だからこそかもしれないが、
横島の言葉に顔を真っ赤にして殴りつけてしまうワルキューレ。

「あ・・・」

・・・沈黙。
いかにもマズイといった感じの表情を見た母様は

「?・・・なーんか、変ねぇ?」

ギクゥッ!

「何か隠し事してなーい?」

ギクギクゥッ!!

さすが魔界正規軍少将さま、お鋭い。

「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」


「・・・本当に二人は付き合ってるのかしらん?」

「も、もちろんです母上!」
「も、もうラブラブっすよ俺たち!」

「・・・本当?」

ブンブンブン!!
必死に頷く二人の努力もむなしく再び沈黙がおとずれ・・・

「・・・ジークフリート少尉?」

「は、はいぃ!な、何でしょうか母うっし、失礼しました!!何でしょうか少将殿!!!」

沈黙をやぶって突然フルネームでしかも階級つきで呼ばれたジークは、反射的に立ち上がり直立不動の姿勢で見事な敬礼をした。
それはもう、軍人のお手本のような敬礼だった。

なんてバカを言ってるひまもなく・・・

「本当に二人は付き合ってるのかしらん?」

「そ、それは・・・」

どう答えるべきか、姉の幸せか、自らの安全か・・・

「やーっぱり怪しい・・・」

ジークが即答できずにいると母様の疑惑の目はジトーッとさらに険しくなる。

「な、何をおっしゃるお義母上!こんなにラブラブな二人は後にも先にもいませんよ!」

「んーーーーー」

「は、母上・・・」

「じゃ、チューして見せて」

「「はい?」」

なんとおっしゃられたのかこのひとは・・・?

「だーかーらー、チューして見せてっていってるの。本当に二人がラブラブなら別に人前でチュッチュするくらいわけないでしょー?」

「「「「「「え、えーーーーーーーーーーーーー!?!?!?!?!?!」」」」」」

「あ、言っとくけど、お子様なキスじゃ嫌よん?ちゃーーんとディープな大人のキッスをしてね?」

なんばいうとっとぉこのひとぁ?!
とは奇跡的に誰も突っ込まなかった。
いや、そんな原作に出てこないなまりで突っ込まれたら作者のほうが困りますけど。

「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」

とうぜん場は静まり返り

「はーやーくーーー!」

焦れた母様は子供のようにせかしてきます。

「それとも何か出来ない理由でもあるのかしら〜?」

ジトーーーーッ
と完全にお疑いモードの母様。


「う、・・・じゃ、じゃあ、ワルキューレ、め、目を閉じてくれ」
「あ、ああ」

覚悟を決めた横島はワルキューレと向き合った。

「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」

静寂に見守られる中、横島がワルキューレの肩にそっと手を置くとびくっと硬直する。
あ、同じような反応をした人が二人うつむいてます。

「・・・・・・ゴクリッ」
「・・・・・〜ッ」

静寂の中、横島の鳴らした喉の音がやたらと大きく聞こえる。
徐々に縮まる二人の距離。
迫ってくる横島の気配と熱い吐息に目を閉じたワルキューレの顔はどんどん真っ赤になっていく。

「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」

ついにその距離がゼロになるかというそのとき・・・

「「「や、やっぱりだめーーーーーーーーーーーーーー!!!」」」

ドバキャァーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!

「「あ・・・」」

ま、お約束ですね。


「ふーん。ようするに、お母さんを担ごうとしたわけね?」

「「あうあうあう・・・」」

「いい度胸してるじゃない?魔界正規軍の少将を謀ろうなんて」

「あ、あの母上。こ、これはその・・・」

「堪忍やーー!仕方なかったんやーーー!」

「言い訳無用!お仕置きよーーーーーーーーーーー!!」

「「イヤーーーーーーーーーーーーーッ!?!?!?!?」」


ドッゴーーーーーーーーーーーーンッ!!!

一瞬で軍服に着替えた母様が目を怪しげに輝かせて猛然と襲ってくる。
さすが魔界正規軍少将殿、すさまじい破壊力ですな。

どこぞのゲーム猿にも引けを取りません。
「うきゃっ!?・・・うっきーーーーーーーー!!!」
あ、どうやらくしゃみをしたらミスったようですね。
原作よろしく激しく地団太を踏んでいます。


「ぎゃーーーーーーーーー!!死ぬ!死んでしまう!!」

「イヤーー!!お母様ゆるしてーーーーー!!」


なんて馬鹿なこと言ってる間にずいぶん追い込まれてしまっている二人。


「こらーー!!逃げるなーーーーーーーー!!!」

ズガーーーーーーーーーーーーーンッ!!!

容赦のない一撃がワルキューレの足元をふきとばした。

「キャァ?!」

「ワルキューレッ!?」

「ほーーほっほっほっ!!ワルキューレちゃん!おとなしく私の決めた殿方と結婚なさーーーーーーーーーい!!!」

「!!!!」

つまづき倒れるワルキューレにもお構いなしに襲い掛かる母様。と・・・

ガキィンッ!!

振り下ろされた軍刀と霊力で作られた刃が金属質な音を立てて切り結んだ。

「!!?」

「よ、ヨコシマ?!」

「ぐぬぬぬぬ!」

「へー?なかなかやるじゃない?人間が私の攻撃を受け止めるなんて」

「そ、そりゃどーも!」

「でも、どうしてそこまでするのかしらん?あなたはただうちの娘に頼まれただけでしょう?」

「仕事は最後まで責任もってやれって、うちの社長に躾られてるもんですから・・・ッ!!?」

「あらあら、偉いのねー?でも、無理しちゃダメよー?」

グググッ!

遠慮なくかけられる圧力に徐々に押される横島。

「それにー、今となってはあなたはもう関係ないんだから、おとなしく退いてくれたらあなたのお仕置きは許してあげないこともないわよ?」

「そりゃうれしいっすね!けど・・・ッ!」

「けど、なーに?」

「ワルキューレは戦友っすから!仲間が望まないことを無理強いされたら助けるのは当然っすよ!!!!」

「!!!」

決然と言い放つ同時に、すばやく剣をひいて相手のバランスを崩した横島。
そこにあうんの呼吸で美神が駆け寄る。

「横島君!!」

その手には・・・


【合】【体】

カアァッ!!




・・・・・・
・・・・・・




「まったく、ひどい目に会ったわ」

「あの、母上。今度のことは本当に申し訳ありませんでした」

合体した美神と横島による『穏便な』説得によってほこりまみれの母様。
でも、乱れた髪がちょっとセクシーです。

「その、私、まだ結婚というのは・・・ちょっと・・・・・・」

「ふぅ、ま、いいわ。もともと、そんなに急ぎってわけでもなかったし」

しかたがない、と溜息をこぼす。


「どうやら、気になってる子もいるみたいだしね?」
「は、母上!!」

「うふふふ、ヨコシマくん。うちの娘をよろしくね?」
「へ?」
「母上!!」

なんの話とばかりに間抜けな返事をする横島の横で顔を真っ赤にするワルキューレ。

「まあ怖い。お母さんに向かってそんなに大声出しちゃだめよう」

そんなワルキューレを気にした風もなく茶目っ気たっぷりに笑う母様。



「それじゃ、ワルキューレ、ジーク、またね。」

「はい、母上もお元気で」

「・・・」

久しぶりにゆっくりと親子の時間を楽しんだ三人は夕暮れの妙神山の庭で別れを惜しんでいた。
・・・のはずが、笑顔のジークにたいして、ワルキューレの表情は憮然としている。
どうやら親子水入らずの時間にそうとう母様に可愛がってもらったようだ。

そんなワルキューレに近づいてそっと耳打ちをする母様。

「うふふ、ワルキューレ?ライバルも多いみたいだし、頑張んないと彼、誰かに取られちゃうわよ?」

「ッ!!!!・・・・・・大丈夫です。私は魔界正規軍大尉ワルキューレ、狙った獲物は逃がしません」

「そうそう、そのいきよ!」


「じゃ、たまにはお家に帰って来るのよー!?」

こうして嵐のような母様は帰っていった。




「ふう、やっと終わったわね」

「もう、くたくたっすよ」

「お疲れ様でした、お二人とも。お風呂にでも入ってゆっくりしていってくださいね」

「あ、いいっすねー!」

心から疲れたとぼやく二人に小竜姫は妙神山自慢の露天風呂を勧める。


「スマン、迷惑を掛けたな、ヨコシマ」

「ん?ああ、いや、気にすんなって!」

温泉へと向かう途中、前を行く小竜姫と美神の後ろでワルキューレがそっと横島に近づいた。
囁くような言葉がくすぐったくて明るく返す横島。


「なあ、さっき自分で何て言ったか覚えてるか?」

「え?・・・あ、ああ、戦友がどうこうってあれか、なんかまずかったか?」

「いや、嬉しかったぞ。ヨコシマ」


チュッ・・・


「ッ!?!?!?!?」
「・・・ん」


ぷは!


「「「んな!ななななななな!?!?!?!?!?」」」

「かばってくれた礼だ。魔族は借りを作らんからな。」


横島は固まっている。
美神は肩を震わせている。
小竜姫は顔を赤くしている。

「ふふ、なんなら本当に恋人になってみるか?」

とどめの爆弾投下。
ワルキューレは横島がはじめて見る可愛らしい表情で微笑んで見せた。


「横島ーーーーーーーー!!」
「ヨコシマさん?!」

「お、俺は無実だーーーーーーーーーーーーーー!?!?!?!?」




後日妙神山。


「なあ、パピリオ。今度の休みに一緒にデジャブーランドに行かないか?」

「ほんとでちゅか?!行く行く!行くでちゅよ!!」

「待ちなさい!ワルキューレ!!あなた先日下界に降りたばかりでしょう!?」

「さあ、どうだったかな?それに、私の休みに私が何をしようと私の勝手だろう?」


こうして、妙神山では小竜姫とワルキューレが下界に降りる権利をめぐってパピリオのご機嫌伺いと舌戦を繰り広げるという新しい日常が加わった。















・・・・・・
・・・・・・




終幕




・・・・・・
・・・・・・































追記〜後日美神除霊事務所〜

「最近、小竜姫さまやワルキューレさんがよくいらっしゃいますよね?」
「へ?あ、そうだね」
「しかも、会うたび綺麗になってらっしゃるような」
「そ、そうかな?」
「そう言えば月に一度くらい横島さんが事務所に来ない日がありますよね?」
「や、やだなー!おキヌちゃん。俺にだってそんな日ぐらいあるよ」
「この間、お二人が携帯電話持ってるの見て吃驚しました。」
「へ、へーそうなんだ?」
「あれ、美神さんが仕事用にって横島さんにあげたのと同じでしたよね?色違いですけど」
「そ、そうなの?」
「昨日なんか、デジャブーランドのストラップがついてましたよ?横島さんとおんなじ・・・」
「えっ?!あれはパピリオにって・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」


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