椎名作品二次創作小説投稿広場


横島、逝きま〜す!

白竜寺でこんにちは。


投稿者名:担当V
投稿日時:07/ 2/ 3

はあ、はあ。ぐう〜!!

長い石段を登る。登っても登っても着きそうにもない。

山門はもう目の前に見えているのに・・・

「く、体力ねえなあ!おいっ!」

確かに俺は今まで格闘技とか習ったことは一度もない。

無論スポーツもやってない。

しかるにそんな俺の基礎体力ではこの山門までの石段を登るのですら厳しい。

・・・厳しいのもそうだが、それに拍車をかける・・・

「腹、減った〜!!」

空腹だった。

昨日の夜から何も食べてないんだった。

だから夕食付きの募集要項を見てここまで来たんだっけなぁ。

お腹がぐうぐう言っている。

あの破った広告を握りしめ、喜び勇んでここまで来たのが仇になった。

うっ!も、もうだめかも・・・

目の前が暗くなっていく。

視野が狭まる。

ああ。こんな処で死ぬんか?

童貞のまま、こんなとこで死んでまうんか?

身体が宙に浮いた様な感覚が、俺を捕らえて・・・

「あら?こんなところで転んだら危ないわよ?」

意識が落ちて行く刹那、誰かに抱き留められた感覚と声が聞こえてきた・・・



第1話 白竜寺でこんにちは。



☆★☆★


俺はジョニーBグッドを歌っている。

周りを見れば、俺に身体を預け、もみくちゃにしている美女達。

ここ、東京ドームを埋め尽くす美女達だ。

「う〜ん。そんなにされたら歌えないぜ・・・」

「おい!」

「あ、そ、そんなとこ。」

「おい!こらっ!」

(なんだ?遠いところから男の声が聞こえる。)

「〜ムニャムニャ・・・お、男はいややぁ。」

「ええ〜い!起きやがれえ!」

ゲシッ!!

「ぐあっ!」

突然の衝撃に飛び起きて周りを見渡す。

どうやら俺は布団に寝かされていたらしい。

6畳程の和室に布団が敷かれ、そこに俺が寝かされている。

右隣には眼つきの悪い同じ年位の男が一人、足を振り上げた体勢でこっちを睨んでいた。

「お、起きたか?」

そいつが声を掛けてくる。・・・こいつ蹴りやがったな。

「俺の美女を返せー!!」

俺は開口一番そいつに詰めよった。

(チクショウ。俺の夢が実現したと思ったのにい〜!)

「な、なんの話だ!?・・・っと大丈夫か?」

もっと文句を言おうと思ったんだが、身体がふらついて布団から起きあがれない。

心配そうに覗き込んでくるそいつに大丈夫だと言おうとして、


ぐうううう〜〜〜


盛大に腹が鳴った。

「なんだ?腹が減って倒れたのか?」

思わず腹を押さえて屈み込む俺に、そいつは笑いながら言って来た。

「ああ。恥ずかしい話だが・・・」

(空腹で倒れるなんてガキん時の3日間耐久食事抜き折檻以来だなぁ。)

「でもよ。なんでこんな寂れた寺に来たんだ?」

「ああ。これを見てな。」

と、握り締めていた求人情報誌の広告を見せる。

「なっっっ!!」

「夕飯を食わせて貰らお・う・か・と「入門かっ!!入門希望なんだな!」

そいつは顔に驚愕の表情を貼り付けたまま、聞いてくる。

「ま、まあ。入門希望っていうか。学校終わったらここに来て飯食わせて貰いたいなあ。とか、強くなったら親父達の折檻から逃げられるかなあ。とか思ったんだ、が。」

「やった!やっと入門希望者が!!」

聞いちゃいねぇ。

「お、おい。いや、まだ入門するって決めた訳じゃ、「手当たり次第に広告乗せて募集したかいがあったぜ!」

1人で勝手に盛り上がって行く目つきの悪い奴・・・う〜ん。人の話は聞いた方が良いと思うぞ〜俺。

ヒートアップしてボルテージの上がったそいつは勝手に話しを進めていきやがる。

もう全然こっちを見てすらいない。

「これで、闘竜寺からの査察だってなんとかなるかもしれん!」

「え?査察って「定員割れてて除霊も満足に出来ない寺なんて言わせねえ!」

「な、なあ。って聞いてる?「ああ。腹減ってんだったよな!待ってろ今、何か持って来てやる!」

勝手に自己完結して障子を開け放ち凄いスピードで廊下の先に消えていった。

「あ、おい!・・・って人の話聞けよ。」

まあ。何か食わせてくれるのは有り難いんだが。

正直、人の話は聞いて貰いたい。きっとあいつの通信簿には『もっと落ち着きましょう』って書いてあるに違いない。

うん。そうだ。そう決めた。

俺はあいつが開けて行った障子から見えるちょっとした広さの庭を眺める。

この寺には、なんと言うか人の気配が無い。

単に凄く静かなだけってんじゃなくて。

こう、生活臭がしない?そんな感じ。

大勢の人が生活していれば感じられるものがまったく無くて・・・廃寺?って、そう思わせる感じがする。

あれ?

そう言えば、倒れる時に聞いた声・・・あいつじゃ無さそうだし。

トーンが低い女性の声。

俺が聞いたのは女性の声だったような気がするんだけど?

まだ、誰か居るのかな?・・・居るよな。こんなに大きな寺なんだから。

それが妙齢の女性なら最高なんだけど。

『寺』だしなあ

まあ、だまって飯が来るのを待ちますか。


☆★☆★


がつがつがつ!どががが!


飯を掻き込む俺を伊達くんが呆れた表情で見ている。

あの後、男は直に炊飯器と鍋(味噌汁入り)漬物その他を持って部屋に帰って来た。

そいつは、伊達雪乃丞と名乗り俺に飯をよそってくれた。

「んぐんぐ。・・・・ごっくん。おかわり。」

「ま、まだ食うのかよ!」

伊達くんが呆れながらも茶碗を受け取る。

「食える時に食う。それにこの味噌汁、旨いなあ。」

鰹出汁の味噌汁。インスタント出汁じゃなく鰹節から摂ったのが解る。

漬物も意外と手の込んだ物だし。

「これ作ったの女の人でしょ?」

なんか、こう〜お袋の味って感じだ。

「こんな味噌汁を作る女性は、きっと綺麗なんだろうなぁ。なあ、伊達くん?」

「そ、そうだ!今日は師匠が出掛けてるから、師範代に当たる人がお前に会いたいってさ。それと俺のことは雪乃丞で良い。」

引きつった笑みで無理やり話題を変えようとする雪乃丞。

釈然としないが、なんかその表情が全力で『触れないでくれっ!』って言ってる。

「・・・解ったよ。」

しょうがないんで味噌汁を啜る。

「ずず〜。ああ。旨いなあ。」

「あらぁ。気に入って貰ったかしらぁ?」

そう言って障子を開けて入って来たのは、石段から落ちそうになっていた俺を助けてくれた声で・・・。

低い声の、じょ、せ、い?

「私の手作り、お・み・そ・し・る(ハート)」


ぶはああ!


「お、お、お、おとこ〜!」

むちゃむちゃ筋肉質の男が、シナを作って

「いやあねえ。最近の若い子は。身体は男でもぉ。心はお・と・め(ハート)。なのよう。」

そう言い放ち、投げキッスをかましやがりました。

「オカマはいやじゃああ!!!」

俺は、全力で跳躍してオカマの横をすり抜け・・・

ガシィィッッッッ!

られずに後襟を捕まえられ、ぶら下げられる。

「まあ。だめよう。逃げ出しちゃぁ。」

「はあ〜ん!放してえ!お家帰るう!!」

ぶら下げられる子猫状態の俺の魂の叫びが、境内に虚しく響いた。

そんな俺達を雪乃丞は生暖かい目で見守って居た・・・。助けろよ!!


☆★☆★


「・・・・と言う訳なのよ。」

あの後、どうにか雪乃丞に鎌田勘九郎(オカマ)を止めて貰った俺はオカマ(なんとこのオカマが師範代なのだ!)からこの白竜寺について説明を受けている。

勿論、オカマとは3メートル以上離れているが。

説明を要約するとこうだ。

白竜寺というのは霊的格闘を専門とする闘竜寺の流れを汲む一門で、主に霊的格闘術を教えているとのことだ。

で、今代の住職。つまり師匠に当たる白竜斎さんも、その霊的格闘術でGS稼業を営む傍ら才能の有る孤児(オカマや雪乃丞)を引き取ったりし、門下生として訓練を施しているそうだ。

しかしながら、師匠も寄る年波には勝てず年々霊力が落ちて来ており、今では報酬以上のお札を使用してしまい赤字になることも多々あるとのこと。

師匠がそんなだから、一緒に除霊に行った他の師範代や門下生も怪我人が続出。

一人、また一人と寺を去って行き・・・。

今は、オカマと雪乃丞が残るのみ。

そんな状況が上、つまり闘竜寺の耳に入った様で近いうちに闘竜寺の筆頭がじきじきに査察に来るらしい。

このままなら取り潰しになりかねない。

そこで、外見だけでも何とか取り繕うと考えた苦肉の策が一般の門下生の募集であった。

取り合えず片っ端から求人情報誌に広告を乗せて門下生を増やそうと言うのだ。

通常こういった寺は門下生もある程度の霊能力持ちか、その才能のある家系の者を受け入れて活動している。

霊能力持ちの門下生が大量に育ち、その門下生がGSに成れば寺の実質的収入源であるGS稼業が捗る。

そして、一門での発言力も上がって行く。と言う公式が成り立つのだが・・・。

今現在GSとして活動できるのは師匠だけ。

オカマと雪乃丞はこの寺以外に行くところが無い。

そんな状況の中、外面だけでも何とか取り繕い実際の仕事は師匠、オカマ、雪之条でやりくりしよう。と言うことらしい。

「・・・じゃあ。命の危険は無いんすね?」

一応確認して置こう。『人手不足』とか言われて除霊現場に連れて行かれても困るし。

「だ〜いじょぶよぅ。今の忠夫ちゃんじゃ、ぶっちゃけ役立たずだもの。」

オカマが言う。

(つか、忠夫ちゃん言うな!悪寒が走るわ!)

でも、直接言う勇気は無いッス。

「まぁ、言い方は悪いけど、名前を貸してくれれば良いのよ。門下生ですってね。」

オカマがホッペに人差し指を着けて流し目を送ってくる・・・やめれ。

「だから、毎日通ってくれても構わない。飯も出すから。」

雪乃丞が真剣に言ってくる。

「で、でもなぁ。急に寺の存続の危機とか言われてもなぁ。」

雪乃丞は良い奴そうだから構わないが、門下生となるとこのオカマとも会うってことだろ〜?

しかも、飯はオカマの手作り。

格闘技を習って、飯も食わせて貰えるってのは凄くそそる話なんだけど。


「嫌ならしかたないわねぇ。」

そう言ってにっこりと微笑むオカマ。・・・っておい!雪乃丞!なんでそそくさと離れていくっ!

「門外不出の秘密を知られたからにはぁ」

オカマが微笑みながら近付いてくる。

(秘密って、そっちが勝手に話したんじゃ〜!)

ジリジリと後ずさる俺。・・・って後ろは壁かいっ!



「手込めにしてぇ。秘密を守って貰うしか無いわねぇ(ハート)」



オカマの極上の笑顔の前に、俺は泣いて門下生入りを志願したのだった。


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