椎名作品二次創作小説投稿広場


横島、逝きま〜す!

プロローグ


投稿者名:担当V
投稿日時:07/ 2/ 1

「忠夫、俺はナルニアに転勤になった。」

「・・・はあ?」

俺が家に帰って来て一番、居間にすっわていた親父がそう言った。

「な、何を言って・・・」

突然のことに俺は何を言って良いか解らなかった。

「忠夫。私達とナルニアに行くわよ。」

お袋が言う。

「ちょ、ちょっと待ってくれよ!俺、高校に受かったばっかりだぞ!」

「そ、そうなんだが・・」

そうだ。
俺はギリギリの学力の中、お袋のスパルタ受験勉強特訓を受け、ようやく公立の高校に受かったのだ。

う、思い出したら涙が。

間違える度、布団叩きで打たれた記憶が・・・あれって地味に痛いんだよな〜。

と、言うかこれから俺の薔薇色の青春高校生活が始まろうとしているというのに、

「ナルニアにだって学校はあるわよ。」

「お、親父!何とかならないのかよ!いきなり転勤なんて言われてもっ!」

俺は親父に向かって言う。

目を閉じて静かに考えていた親父だったが、

「・・・母さん。忠夫は日本に残っても良いんじゃないか?」

「あなたっ!忠夫はまだ15なんですよっ!一人暮らしなんて」

親父の発言にお袋が驚く。

「ナルニア支社で俺がこっちに戻れるように結果を出すには・・・母さんが必要だ。」

俺とお袋は親父の言うことをジッと聞いている。

「だけど、今回のことは常務の策略を見抜けなかった俺の責任だ。忠夫の日本での生活までは奪うことは出来ないよ。」

「お、親父・・・。」

「あなた・・。そうね。忠夫、私達はナルニアに行くけど、こっちで生活出来るような最低限の仕送りはしてあげるからね。」

本当は、親父達と離れたいわけはなかった・・・だけど親父の目を見て何を言っても無駄なんだと、そう感じた。

親父の目には怒り、悲しみ・・・悔恨の念が見えたからだ。


だから、場を和ますために、俺は・・・・・・


「やったっー!!!念願の一人暮らし!!これでおなごを連れ込み放題やっ!!!!!」



ギロッ!!



・・・血達磨になりました・・・。

両親共々・・・強すぎるで・・・。




☆★☆★


「なにが、『最低限の仕送り』やねん!!!」

郵便局から出て来た俺の怒声が商店街に響く。

・・・あ、注目せんといてっ!

道行く人達が俺の方を避けて歩いて行く。

思わず関西弁になってしまったが俺は元々関西の出なのだ!

感情が高ぶったりすると関西弁になってしまうのだ。

・・・関係ないけど。

で、なんで俺がこんなに怒っているのか?というと、

そう、親父達からの仕送りだった。

あの場を和ますための発言の結果。

それがこの通帳に反映されている。

高校に通い始めて2週間、親父の仕送りが振り込まれているのを確認した俺の心の叫びだった。

人が生きていくのには、3つの用件がある。

衣・食・住

古今東西太古から現在まで変わらない絶対の法則だ。

『衣』ジージャンを筆頭に困らないくらいの服はある。俺はファッションに余り興味がないから幸いだ。

『住』住む場所は風呂がないものの、親父達が選んでくれた1DKの安アパート。そして、維持するための金額・・・授業費その他光熱費

『食』・・・

「食費が無いやん・・・・。」

(生きるって金が掛かるんやなぁ。)

これでは、来月の食費が全くない。

憧れの一人暮らしなんだが、先立つものが全く無いのでは・・・。

(あーあ。バイトでもせにゃ。明日からミイラだぜ。)

仕送りをしてきた相手はジャングルの奥地。怒りをぶつけることも出来ない。

俺は諦めて、バイトを探すことにした。

金欠のこの状態で求人情報誌を買うのも勿体ないが、背に腹は代えられない。

部屋に帰って情報誌をパラパラっと捲る。

・・・・やっぱ15才では、なかなか良い条件のアルバイトなどあるはずもなく。

(う〜ん。時給650円か〜。マ○ドもあんまり良いもんじゃないなあ。)

早く決めなきゃいけないんだが、雇用条件の段階でアウト。時給がネックなのだ。

学生である以上夕方からしか働けない。

そうすると時給はなるべく高い方が良い。

(800円位が妥当なんだが・・・)

俺がバイトするのは周りの奴らの小遣い稼ぎと違って生活の為なのだ!

650円位では、ちょ〜っと厳しいのだ。

(ビデオレンタル出来なくなるしな〜。)


いや、生活のためだって!本当!!



☆★☆★


(おっ!?これって・・・。)

あれから小一時間。情報誌を捲っていた俺だった。

マ○ドとな○卯のどっちかで迷っていたんだが・・・

(GS助手募集!来たれ霊障と戦う正義の味方!!〜時給2万から応相談、GS免許取得者優遇・・・)

(って!!!2万〜!!!)

時給の金額を見てビックリ!そんなの凄すぎ。

GS(ゴーストスイーパー)ね。確か除霊の失敗で死んだとか何とかニュースでやってたな。

(う。ってことは命の危険があるってことじゃん。)

周りのGS関係の募集要項を見ると・・・おしなべて相場は高いが命の危険は大あり、か。

(俺は霊力なんて大層な物は持ってねーんだよ!期待させやがって。)

ちょっとがっかりしながら流し読んでいく

(美神・・小笠原・・稲田・・・村井除霊事務所・・・ふーん。こうしてみると結構あるんだな。)

「・・・はあ。つまりそれだけ命の危険があるってことじゃん。」

GSが助手を募集する・・・つまりそれだけなり手がいないってことか、若しくは直ぐに使い物にならなくなる。

つまるところ死んじまったり、再起不能になったりってことだろ?

(要項に命の危険あり。とか書いてあるし・・・。)

霊力を持った人間が一攫千金を狙うには良いかもしれないが、俺のような一般人には関係のない世界だ。

(俺は、今そこにある危機(食費)をクリア出来れば良いんだよ〜♪)

人は、食わねば生きてはいけない。

そう。生きるためには食べ物がいるのだ。食べ物をゲットするには自分で作るか買うしかない。

作る場所はない。となれば、買うか奪うか。

(無理や!犯罪なんか犯してみい!)

俺の背筋に悪寒が走るっ!

「たかがスカート捲りで死に掛ける折檻なんだぞ・・・。」

お袋と親父の折檻で死に掛け、いや。あれは生きていると言えない・・・のは両手で足りない。

(犯罪はダメ!例え地球の裏側でも駆け着けてきやがるだろうからな。)

・・・言ってて思うんだが、本当に人間か?家の両親。



☆★☆★


(・・・これは?門下生募集!?)

なんでアルバイト情報誌で門下生やねん。

思わず本に突っ込みを入れてしまった。

(格闘技の一種なんだろうか?・・・こんなところで宣伝するなんてよっぽど落ち目なんだな。)

(強くなったら親父達の折檻からも逃げられるかもな〜)

なぜか意味もなく悲しくなりながら募集要項と内容を見る。

『年齢問わず』

『さあ。今日から貴方も強くなりましょう!毎日の通いもOK!』

『稽古の後は、夕飯が出ます。』




・・・・毎日OK?=毎日夕飯!!?


俺は何も言わずそのページを破いてポケットに入れる。

(俺は即物的な男なのだ!)



この時の判断が俺の人生を変えるなんて思ってもいなかった。

俺の人生は、今日の夕食を食べれるかどうかで分岐してしまったのだ。




「待っててね〜!!『白竜寺』の夕御飯ちゃ〜ん!!!」



・・・まあ、その時の俺の頭には飯のことしか無かったんだが。


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