椎名作品二次創作小説投稿広場


BACK TO THE PAST!

エンジョイ新生活


投稿者名:核砂糖
投稿日時:07/ 1/20

・・・なんだかんだ言って、今の俺の状況は、ほぼ文句無いシュチエーションなんだよね。






驚くべき事に俺は今、美神さん正当な給料を貰って働く事になっている。GS試験で勝っちまったもんだから、むしろひでー目に会うと思っていたのだが、実の所俺は美神さんにとって『役に立つが、下手に刺激しない方がいい奴』といった認識らしい。
・・・やっぱアレかな。この人は男(西条は除外?)には負けたくないって感じの意地が、少なからずあったろうから、俺が女だと分かって態度が軟化しているのかも知れん。

だけど流石は美神家の女というべきか、隙あらば追い越してやると言う心意気が事あるごとにビンビン伝わってくる。

・・・かつて俺が憧れたおねー様は健在だ。




そしておキヌちゃんはカワイイし、心眼の奴も時たま妙に子供じみていたりして微笑ましい。

そんでもって人工幽霊一号はサービスいいし、んで忠夫君は・・・・・・・嘆かわしい事この上ない。・・・ホントに俺はこんなんだったんだろーか?マジ落ち込むわ〜。












兎に角、皆が居る事が、堪らなく幸せなんだ。



・・・・・それが俺の知っている皆じゃないかもしれないとしてもだ。















・・・っと、シリアスはここまで。何時までも暗い顔しててもしょーがねーもんな!

せっかくの状況だ、楽しまんでどーする。
まずはアレだな、この身体を利用して楽しんじゃる!


今日の美神除霊事務所はGS試験が終了した次に日なので特に仕事は無く、俺の顔見せだけに終わった。・・・でも、帰りがけに笑顔の美神さんからやたら高そうな習字セットを頂いたのは、明日からお札の生産に関われ、ということなのだろーか。

・・・かつて俺が恐れたおねー様は健在だ。


・・・よし、それはともかくまずは銭湯でも行こう!!


身体は女〜、煩悩は男〜、その名はヨーコお姉さん〜♪ひょう!!



















かぽーん。


















・・・・なんてこった!!


まさか・・・そんな事って!!!

いや、決め付けるのはまだ早い。



とある衝撃的な仮説を前にした俺は銭湯を後にするとホカホカした身体で、『前から』行きつけのビデオレンタル屋へBダッシュ。

そしてお目当てのブツを素早く手に取るとカウンターに直行。もはや顔見知りとなっているバイトのにーちゃんが俺の姿と、その手に握られたブツとを見比べて目を白黒させているが、そんな事はどうでもいい!

「にーちゃん、早いことしてくれ!」

「あ、あの・・・会員カードがないと・・・」

あ、そうか・・・。今の俺とコイツは知り合いじゃねぇんだ。俺が毎夜のように例のブツをカウンターの持っていくと「言わなくても知ってますよ・・・」ってな感じで何も言わずに素早く手続きを済ませてくれる事は・・・もうないのか。

俺は、仕方なく財布を引っ張り出し、その中に指を突っ込む。

「・・・オゥ、シット!!」

って今の俺会員カードなんか持って無ぇよ!!

急いで申込書の必要事項を記入し、入会料を払う。

「・・・これでいいな」

「はい、結構です・・・」

そして俺は「あんな人でもこんな物見るんだ・・・」ってな感じでショックを受けているバイト店員の視線を感じながら店を飛び出した。



・・・ヒトがナニ見よーとテメーにゃかんけーねーだろーが!!



店を後にした俺は馴染みの道を駆け抜けて素早く『帰宅』する。(鍵はかけていない。だっれこの家に盗むのんなんて無いし)
そして薄汚い部屋の真ん中で、ででんと存在感を放っているビデオデッキに持ってきたブツをレッツコンバイン。







・・・・。






・・・・や、やっぱりや。



判明した新事実に打ちのめされ、俺はその場に方膝を付く。

「前よりも裸のねーちゃん見ても嬉しくない・・・」

いや、全く嬉しくないという事ではない。だが、本来俺が持っているはずのほとばしる熱いパトスはてんで沈黙してしまっている。どうやら俺の体に合わせて煩悩が低下しつつあるらしい。


はっはっは・・・そりゃそーだよな。付いてないもんな。これじゃハッスルできねーよ・・・。


「・・・なんとゆー事だ。俺から煩悩を取ったらナニがのこるっちゅーねん!!」

「い、いや。俺に聞かれても・・・」

「うお!?」

独り言のつもりで上げたシャウトに反応されて、びっくらこいて後ろを向く。
するとそこにはいまいち状況が理解できない顔した過去の俺が、Tシャツにトランクスの格好でこっちを見ていた。


「・・・い、いきなり人ン家に無断侵入してきて、何の用っすか!?しかも勝手にエロビデオ見てるし、なぜか俺のお気に入りの奴だし!それどころか湯上りの色気がムンムンと!!しっとりと落ち着いた黒髪がいつも以上の艶っぽさをかもし出しててもーしんぼーたまらーん!!!」

「いきなり何しやがる!!」

俺はスイッチがONになったフライング横島君をエルボーで迎撃。

「・・・ヨーコ殿。確かに今の主は殴られるに値する事を行ったとは思うが、前触れもなしに人の家に押しかけるのはどーかと思うぞ」

するとボロっちいタタミに崩れ落ちた忠夫君とは別の方向―――天井のハリからぶら下がるハンガーに更にぶら下がっている布―――から遠慮がちに声をかけられ、そのお陰で現状を思い出した。


・・・あ〜。そうか。よく考えたらここ俺の家じゃないじゃん。


「え〜っと、何つーか弁解の言葉が思いつかん。ゴメンよバンダナ。・・・コイツが起きたらコイツにもしょーじきスマンかったと伝えてくれ。邪魔したな」


俺はビデオを回収すると部屋を後にする。


そーだった・・・俺って家無き子だったんだ。


世界名作劇場な哀愁を感じつつ、一人さびしく宿泊先のホテルを目指して歩きだした。















ううむ。ボロ臭いアパートだがいざ住めないと分かると愛しくなるナァ・・・。
そーいやこの後小鳩ちゃんが越して来たりするんだっけ。
・・・ちっ。いいトコに住んでやがるぜ俺のクセに。











「ちわ〜す。ミカワヤでーす」

「一々ネタに走らないでいいから、とっとといらっしゃい・・・」

翌日、ヨーコさんが美神除霊事務所に出勤してくると、もう横島クンとおキヌちゃんは何処かへ仕事に行ったらしく、事務所には美神さんが一人、霊体ボーガンなどの霊具を手入れしておりました。

「アレ・・・あの2人は?」

「はじめてのおつかい(除霊)よ」

「は〜〜。そうですか」

「・・・思ったより淡白な反応ね。もっと驚くかと思ってたのに」

「いや〜俺も同じような経験しましたから。
やっぱ大事っすよね。最初の一苦労って」



・・・なるほど。そう言えばあったねぇそんなイベント。



何故だか先ほどから「しまった!」ってな感じの顔をした美神の言葉を聞き、ヨーコの脳裏に遠い昔の記憶がぽわ〜んと蘇る。



・・・といっても、すごく恐かったという事位しか思い出せん。
しっかし後から考えるとよくあの頃の俺で除霊できたな・・・。



今となっては、当時の自分の実力を考えると、あのレベルの除霊は不可能であるような気がするのだが・・・、現に自分はその除霊をやり遂げたからココにいるのであって・・・っと、疑問のループに捕らわれるヨーコ。

実はその時、密かに美神に手助けされていたのだが、本人はその事を知らない。


そして自分が事務所に現われた事によってプライドの高い美神が横島達の事を助けに行くに行けなくなっちゃって、そんでもって横島君達が大ピンチに陥っているのも知らない。



「で、俺は何をすれば・・・」

「え〜っと(まずいわね〜。何とかしてこの場から引き離さないと・・・)。お札は書いといてくれた?」

「ええ。とりあえず100万レベルのを5枚。俺の実力ですとこの程度が限界ですね。施設と道具さえ調えばもっと可能ですけど、そこまでやると恐い人達(国家権力)に見つかりますから」

懐から取り出したるは、五枚の破魔札。昨日作ったばかりのそれらは、まさに出来たてといった感じで、市販の物よりも清涼感がある。
ちなみに本当は今のヨーコなら一日に破魔札5000万円分は量産可能なのであるのだが、その辺は出し惜しみだ。その訳は実力を隠す為・・・・と言うのはタテマエで、その能力を美神に聞かれたら最後、死ぬまでこき使われるかも・・・という恐怖心からだったりする。

「・・・いい品ね。上出来だわ」

「ども」

ヨーコから破魔札を受け取った美神はそれぞれ一枚ずつ念入りにチェックする。





―――そして次の瞬間、2人の目つきが変わった。

「全部で100万!」

「美神さん・・・ワタシにクビつれといいますか。480万!」

「うふふふ。ヨーコさん、あなたも分かっていないみたいね・・・110万!」

「何の事ですかな?セニョリータ・・・460万!」

「こんな危ない橋、私以外に何人が渡ってくれると思ってるの?・・・120万!!」

「くっ・・・。なかなか言いますね・・・400万!!」







ヨーコと美神による値下げ交渉はそれからしばらく続き、二人から放たれるプレッシャーで人工幽霊一号が体の不調を訴え始めた所で彼女らはガシリとお互いの手を取り合い交渉は終了した。

結果は市場価格の75.25%というややヨーコ有利かと思える数字に落ち着いたらしい。

「じゃ、代金はあなたの給料として支払う事でいい?」

「依存無しっす」


つまり、あくまでお札を購入したという事実を無くしつつ、お札をお友達価格で手に入れよう、と言う算段ですか。・・・う〜ん、相変わらずグレイトな事考えるぜ。


この女のずるがしこさに感心すら覚えるヨーコ。
一方、美神の方は今更になって「やっべぇ、このままじゃ横島達死んじまうよ」とゆー事を思い出し、何とかして人払いしようとあれこれ考えをめぐらせていた。





ちなみにこの時の横島達は・・・。



「3万五千円分の破魔札攻撃〜〜〜〜っ!!・・・・ってこれも効かんがなっ!!!」

「きぃ〜〜〜〜やぁぁぁぁぁぁぁ〜〜〜〜〜っ!!」

「そりゃそうだ。おぬしの投げた札は敵に当たる前に霊力が散ってしまっている。これじゃ威力も半減だ」

「きゃぁぁぁぁぁぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!」

「バンダナ!てめ〜冷静に解説してないで目からビ〜ムの一発でも出しやがれ!!」

「いやぁぁぁぁぁぁぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!」

「そうは言ってもな。今までの攻撃を防ぐだけで霊力は殆ど使ってしまった。もう霊波を放つ霊力など残っていなんだ。つーかビームって言うな」

「い〜〜〜〜〜〜〜やぁ〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!」

「ちっくしょ〜、肝心なときにコイツは・・・。

ってゆーかおキヌちゃん!!!耳元で叫ぶのはやめてっ!耳がキ〜〜〜〜ンってなるからっ!!!」





バンダナのおかげで横島達は結構粘っていた。・・・話を事務所に戻そう。こちらでは、美神令子が何とかヨーコを引き離そうと策を講じている真っ最中である。


「え〜っと、ヨーコさん?ちょっと厄珍道までお使いに行ってくれないかしら」

「何か足りないものがあるんですか?今破魔札購入したばっかりですし、見たところ不足しているものは無いと思うんですけど。
・・・出来れば行きたくないんですよね、あの店。店主の俺を見る眼がフツーじゃ無いんスよ・・・」



「う・・・(ちっ・・・ダメか〜。でも気持ちは分かるわ。だけどこのままじゃ本当に横島クンたち死んじゃうわね〜。これはもうなりふり構ってられないかも・・・)

・・・あ、そうそう。ヨーコさんってどう考えてもそんじょそこらの一人前のGSよりも実力あるじゃない。ちょうど暇だし、この機会に正式なGS免許の受け取りに行ってきたら?ってゆーか行きましょう。むしろ行け!」

「な、なんすか急に」

急にヨーコが一人前GSを名乗るために必要な必要書類を書き上げ、ズズイとこちらに詰め寄る美神にびびるヨーコ。
このまま見習としてこき使われると思っていたヨーコは突然の出来事に疑心暗鬼になった。そりゃそうだろう、相手は美神令子だ。何かウラがあるのでは無いかと思うのが普通である。

「美神さん、アナタ何か隠して・・・・・・・・・・やっぱいいです」

『イタリア系マフィアは殺す相手を油断させるために贈り物をするそうです』という友の言葉が脳裏を駆け巡りまくりで大運動会なヨーコは、その疑問を口にしようとしたが、美神の手の中で整備中の霊体ボーガンの矢が『何故か』暴発し、ヨーコの頬を掠めて事務所の壁に突き刺さり、人工幽霊一号が屋敷全体から泣きそうなオーラを放った為、その疑問は引っ込めた。


「・・・いってきま〜す」


触らぬ美神に祟りなし。ヨーコは足早に事務所から退散した。
背後から人工幽霊一号が―――たすけて、行かないで ヨーコさん!―――などと叫んでいるような気がするけれど、それはきっと気のせいだと思いながら。



ちなみに、ヨーコが出て行った直後、美神もすぐさま事務所を出て行ったために、人工幽霊一号は存在しないはずの胸をそっと撫で下ろしていた。











「・・・仕事場を追い出されてしまった」

なんだか良く分からない内に事務所から放り出されてしまったヨーコはヒマを持て余したように近くの公園でブランコに腰掛け、一人キィコキィコやっていた。

せっかく仕事が休みになったのだから、その辺で遊べば良いのだろうが、何分自分にはこの世界に友達と呼べる者が居ないと言う恐るべき事実に気付き、そして一人で遊んだって寂さが募るのというわけで・・・・、こうしてヨーコはさながら職を失い、かと言って何も知らずに毎朝笑顔で「いってらっしゃい」と笑いかける家族に真実を告げる事もできずに近くの公園で時間を潰す元サラリーマンのお父さんの如く、さびしい背中を晒すのだった。(もぉ訳分からんなこの描写)


そんなにヒマならさっき貰った書類持って正式なGS免許もらいに行けば良いじゃない・・・と人は思うだろう。しかし、ヨーコにはそうする事が出来ない理由があった。



(・・・一体何処なんだろうね。こーゆー手続きをしてくれる施設って)



イロイロと疎いヨーコにとって、そのミッションはインポッシブルで実現不可能な難題であった。



(最初はまた美神除霊事務所でコキ使われると思ってちょびっと憂鬱になったりしたもんだが・・・。逆にそれがないとなるとココまで何も出来んのか俺って奴は)



思えば、コキ使われてたり、命狙われてたり、逃げ隠れてたりしてばかりの人生であった。当時は「クソッタレ!・・・何時か必ず平穏を手に入れちゃる!!」と意気込んでいたものの、いざこうして平和の真っ只中で「何してもいーのよ(はぁと)」ってな状態になった所、逆に何も出来ない自分に腹が立つヨーコ。



(・・・俺ってもしかして実はすんげぇつまらない人間だったりして)



ちょっとナイーブな気持ちが再来してきたヨーコ。その肩の辺りでSD体形の触角の生えた女の子がにこやかに「そんな事無いわよ」と・・・同じくSDで尻尾を生やした女性が元気良く「先生はカッコイイでござるよ〜」と・・・またもやSDでタカビーな女性がツンツンデレデレしつつ「・・・アンタほど人を退屈させない人間、珍しいんじゃない?」と、それぞれヨーコを慰めているような幻覚が見え、その公園の砂場でお城を作って遊んでいた男の子は思わず手元が狂い、作成中の1/144スケール江戸城を崩壊させてしまった。



(・・・悩んでても仕方が無ぇ。どっかテキトーにブラブラして時間潰すか)



ちびルシオラーズ達の応援が届いたのかヨーコ(←こいつには見えてない)は気を切り替え、ブランコから立ち上がった。



(そーだな〜・・・駅前でもうろついてナンパでもしよーかナ〜。・・・ってこんな身体じゃナンパなんか出来るかい!!)



今日の予定を立て始め、しかし早くも挫折するヨーコ。全身からどーしよーもない感じのオーラを垂れ流しながらとりあえず公園を後にする。

そして「はぁ・・・なんかおもしれーイベント転がってないもんかね」と何気なく目線を上げると、立ち並ぶ民家の向こうに小さな十字架が見て取れた。



「あ・・・ココって唐巣神父の教会の近くじゃん。
・・・神父ならGS免許の受け取り場所、知ってるよな。・・・行ってみっか。・・・ヒマだし。やる事ねーし」



ヨーコは、死んだ仲間を生き返らせたいドラクエな勇者の如く、教会を目指しててくてくと歩き始めた。











どきゅあっ!!!



・・・・・・・・またもや俺の手の平から霊気の塊が噴き出し、ただでさえボロ臭い教会の備品をなぎ払い、ガラクタへと変貌させる。

「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!(滝涙)」

・・・唐巣神父の事だ。恐らくはその備品一つ一つに思い入れがあるのだろう。それらが破壊されるたびに声にならない叫び声を上げている。



・・・スマン神父。俺には止められないの。



あ、またピートが隙を見て俺を取り押さえようとこっちに飛び掛ってきた。

・・・だがやはり今回も失敗。意思とは関係なく俺の右腕が見事なストレートを繰り出し、ピートは霧になる間もなく、その顔面に拳が突き刺さる。


「へぴっ!?」


そしてピートは間抜けな声を残して吹っ飛ばされ、距離をおいて応戦していた唐巣神父の近くに着弾した。








・・・まさに教会は地獄絵図だった。


もちろん、これらの凶行は俺の意思でやっている訳ではない。
諸悪の根源は、俺の後ろで無償に腹が立つ美形顔を邪悪に歪めてニヤニヤ笑っているクソ野郎だ。


「ヨーコ君、自分をしっかり保つんだ!!君ならその程度の術、必ずや抜け出せる!ってゆーか抜け出してくれ!!頼むから!!!」

「・・・それがね〜神父。さっきから頑張ってるんだけど、ちょっち無理っぽいんだな〜これが。スマンが教会は諦めてくれ」

「〜〜〜〜〜っ!!!(滝涙)」

「ふふふ。このお嬢さんの言う通りだよ。レディがこの私の術を破るなんて不可能さ。
むしろ心まで支配が届いていない事が奇跡に近い。たいした精神力をお持ちのようだ。

だがその方が堕としがいってモノが・・・・・うわっ!汚っ!!!」


悔しいことに、このクソ魔族の言う通りだった。かつて三世界中で暴れまわった魔人たるこの俺でも、首だけ動かしてツバ吐きかけるのが限界だ。

この魔族はインキュバス。エロゲーとかでよく出てくるアレだ。先日やっとの思いで誰かに取り付いていたのを引っぺがし、この日、唐巣神父達が教会で完全に除霊しようとしていたらしい。
相手が女性なら無類の強さを誇るこの悪魔だが相手が男性となれば力も吸い取れないし操れない。唐巣神父達はコイツを除霊するに当たって適役といえよう。

んで野郎2人でボコボコにしていざトドメって時に・・・こともあろうに尋ねてきちまったんだよ異常に高い霊圧と戦闘能力を持つ女性、つまりこの俺ヨーコお姉さんが。


もちろん、教会には結界が張ってあってインキュバスが無理に逃げ出そうとすれば大ダメージを食らうようになっていた。

だがこの場合、それは意味をなさなかった。たとえ無理やり結界を突破して致命傷を負おうとも、生きてさえいれば手に入るのだ。・・・俺という極上の魔力供給源が。



そして、騒がしいとは思ったけどまさか除霊中だとは思っていなかった俺は突然の不意打ちについ不覚を取り・・・今に至る訳だ。



(ちくしょう。こんな除霊、原作に無かったぞ・・・。まぁ描写が無かっただけなのかも知れないけどさ。
つーかやり直して早々、何でこんなピンチに陥ってるんだよ!自惚れるつもりはねーが俺結構強いはずだぞおい)



全身全霊を持って叩き潰してやりたいようなヤツがすぐ後ろに居るのに、しかもまともに遣り合えば一瞬でそいつをミンチにしてやれるのに、それなのに何もできないという歯がゆさに、俺は忌々しげに顔をゆがめる。
だがその時、とんでもない仮説を思いつき、表情が凍りついた。

(・・・・まさか、ね)

だがすぐにそんな仮説は脳裏から拭い去る。



















『宇宙意思は逆行者を望まない』・・・な〜んて。流石にないよな、ははは・・・


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